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旭川での森林浴とアクティビティで健康意識アップ!「健康経営の実践」が社員の日常を変え、新規事業を生む

サイバートラスト株式会社
取り組みの概要
旭川での森林浴プログラムに社員が参加し、ストレス軽減を図る取り組み。前後に血圧と唾液アミラーゼ、POMS(気分プロフェール検査)を測定し、効果を検証。
取り組みを始めたきっかけ
ストレスチェック制度の先駆けとして、長時間労働などの職業生活でメンタル不調になる社員の予防および事業継続体制の強化に経営が取り組もうと判断したことから。
取り組みを運用する秘訣
参加期間を有給とし、社員の自由意志・任意チームでの参加とした。現地でのテレワーク時間も導入している。
よかったこと
ストレス評価測定値が軽減。社内での健康意識向上、チーム力向上につながった。また自社の新規事業につなげる実証実験の場にもなっている。

ストレス軽減の取り組みは、新規事業開発の場でもある

旭川での森林浴

「健康経営」という言葉が話題となっている。社員の健康増進を図ることで生産性が高まり、企業の信頼と業績の向上につながるという考え方だ。経済産業省が東京証券取引所と共同で「健康経営銘柄」を発表するなど、広く注目を集めるこの分野で、サイバートラストはいち早く社員のストレス軽減に向けた取り組みを始めた。

1週間の森林浴プログラムで日頃の業務を忘れ、ストレス発散

舞台は東京の本社から遠く離れた北海道旭川市。社員は3、4人のチームを組み、1週間(月~金)の日程で行われる現地での森林浴プログラムに参加する。森を歩くだけでなく、乗馬やカヌーなどのアクティビティを自由に選び、体験。滞在期間は通常枠とは異なる有給扱いとし、会社からはコテージとレンタカー、さらにレクリエーション費用が支給される。取り組みを主導する人事・総務部部長の児玉光行さんは、「日常を離れて、日頃の仕事のストレスを忘れてもらうことが滞在の目的」と話す。過去2年間で、のべ78人の社員が参加した。

「ストレス軽減度合いをチェックするために、指標として唾液アミラーゼと血圧を滞在前後の1週間ごとに測定し、比較しています。参加した社員大半の数値が改善していますね」

トップダウンで取り組み開始を決定

プログラムへは経営陣も積極的に参加している。何しろ、この取り組みは会社の意志としてトップダウンで決定されたものなのだ。2013年に旭川市観光課と旭川医科大学が連携して誘致する「健康ツーリズム」の存在を知り、経営戦略の一環として2014年からの実施を決めた。

取締役COOの眞田勉さんは導入のきっかけについて、「健康経営の推進、特にメンタルヘルスケアへの取り組みの必要性を強く感じていました」と振り返る。約100名の社員は30代と40代が中心。メンタルに問題を抱える社員もおり、ストレス軽減策を実行することで改善と予防につなげたいという思いがあった。

もうひとつ、取り組みには先々の事業展開に関わる目的もあったという。対象者の個人情報を扱うヘルスケア領域の事業は、この健康ツーリズムのようにセキュリティ対策を提供する同社のビジネスモデルとの親和性が高いと考えたのだ。自社で実施するプログラムは、将来の新規事業に向けた実証実験の場としても期待されていた。

アクティビティで乗馬も

「満足度90パーセント超」。健康意識が根づく職場へ

自身のストレス度合いを知り、対策を考えるきっかけに

プロダクトマーケティング部部長の田上利博さんは、2年連続で森林浴プログラムに参加。「セキュリティに関わる商材を扱う仕事はミスが許されず、緊張感も高い。ストレス対策にはもともと関心がありました」と話す。

普段から仲の良いメンバー3人で集まり、「気軽な観光気分」で参加を決定。現地での滞在を楽しみ、専用のSNSツールを使って東京の同僚たちも見られるよう、プログラムの様子を毎日投稿した。後日渡される唾液アミラーゼや血圧の測定結果を見て、自身のストレス度合いの現状や改善効果を目の当たりに。「日常のストレスをいかに軽減していくか、具体策を考えるきっかけになりました」と振り返る。

また、管理職として1週間席を離れるにあたり、事前に周囲との業務調整を綿密に行った。いつ何時、急な病気や怪我でメンバーが欠けるかもわからない。そうした事態を想定した“有事シミュレーション”にも役立ったという。

東京のオフィスにも血圧計を設置

「健康」を共通話題にコミュニケーションが活発化

ビジネスマネジメント室に所属する入社1年目の井田直哉さんは、初めて参加した朝礼で森林浴プログラムを知り、2カ月後には実際に参加。別部署の上長や中途入社の先輩とチームを組み、現地では「互いをニックネームで呼び合う」というルールを設け、農業体験や薪割りの共同作業を体験した。打ち解けた雰囲気の中で先輩たちとの関係性が深まっていったという。

「ともに参加した先輩には、会社に戻ってからも気軽に相談できるようになりました」と話す井田さん。中途入社が多い同社にあって、「健康」はコミュニケーションを円滑にするための共通話題にもなっているそうだ。

参加者への事後アンケートでは、プログラムに対する満足度が91.4パーセント、次年度も実施するよう希望する声が97.2パーセントと、好評の制度となった森林浴プログラム。現地でのリモートワークを可能にするなど、2年目の改善も実施した。社内には唾液アミラーゼ測定器と血圧計が設置され、社員が定期的に自身のストレスチェックを行う風景が当たり前になった。

また、当初の目的にあったヘルスケア事業の実証実験に加え、「ドローン×セキュアの技術で農業監視実験を行う」など、現地でのアクティビティをそのまま新規事業開発につなげる動きも始まっている。

児玉さんは、「森林浴プログラムは当社の重要な経営戦略の一環なのです」と語る。数値で効果を振り返ること。自社の事業にも生かしていくこと。強い目的意識を持ってこの両軸を回していくことが、健康経営を実践するうえで重要なポイントになるだろう。

森林プログラムに参加した井田さんと田上さん

受賞者コメント

眞田 勉 さん

他社さまの取り組みを数多く知ることができ、非常に参考になりました。ありがとうございます。当社の健康経営に向けた取り組みは、社員からの満足度も高い制度となりました。今後もより多くの社員が健康を大切にして働き続けられるよう、「持続性」を大切にして取り組みを運用していきたいと考えています。

審査員コメント

アキレス 美知子

「健康経営」は日本でも話題となり始めていますが、では具体的に社員の健康のために何をするのが良いのか、という点ではまだまだ悩んでいらっしゃる企業が多いと思います。この取り組みは、ぱっと聞くと「森林浴」という施策のユニークさに目が行きがちですが、それだけでなく、旭川大学の協力も得て医療的な観点からも社員のウェルネスを追及しているところが素晴らしいと感じました。

※ 本ページの情報は全て表彰式当時の情報となります。

第2回(2015年度)の受賞取り組み