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タクシー業界に女性の活躍できる場を!環境整備と意識改革で女性ドライバーを積極採用

国際自動車株式会社
取り組みの概要
「2020年までに女性社員を1000名採用すること」を目標に掲げ、女性が働きやすい職場環境をソフト面/ハード面の双方から整備している
取り組みを始めたきっかけ
女性ドライバーは固定客からの指名も多く、お客さまのニーズが高いことから、会社として女性を積極採用する必要性を認識した
取り組みを運用する秘訣
定期的に女性社員からのヒアリングや座談会を行い、環境整備やサービス開発に活かしている
よかったこと
男性ばかりだった職場に女性社員が入ったことで、コミュニケーションが活発化。お客さまのニーズに合わせた新サービスも始まった

男性ばかりの業界に新風を吹きこむ! 女性ドライバーの存在

女性ドライバーが行う新サービス「Re:laxi(リラクシー)」

圧倒的に女性ドライバーの少ないタクシー業界において、積極的に女性を登用している企業がある。東京都を中心にタクシー事業を行う国際自動車は、創業100周年となる2020年に女性乗務員1000名の雇用を目指す。

社内調査で判明した女性ドライバーのニーズの高さ

女性の社会進出が進んでいるとはいえ、依然「男性が就く職業」というイメージが色濃い業界は数多い。タクシー業界は単独で業務にあたることもあってか、東京エリア(23区・武蔵野市、三鷹市)のタクシードライバー数に占める女性の割合は、わずか約1%(出典:「東京のタクシー2015」2015年3月31日現在、東京タクシーセンター調べ)と、まだまだ少数というのが現状だ。

「古い慣習にとらわれたタクシー業界が大きく変わらなければ、多様化するニーズに応えられない」と執行役員の川田政さんは、その危機意識を語る。2008年に初めて三鷹営業所に女性専用の仮眠施設やシャワールーム、トイレを設置したものの、女性ドライバーの積極採用には至らなかった。

乗客の男女比は半々にもかかわらず、ドライバーは男性がほとんど……それが会社にとっても乗客にとっても、いわば当たりまえ。しかし2013年、女性ドライバーを対象に初のヒアリング調査を実施したことで、乗客のニーズが判明した。「そこで初めて、女性ドライバーは固定客から指名されることが多く、トップクラスの営業成績を残していることがわかったのです。お客さまから『安心する』『くつろげる』などといったお褒めの声も多く、会社が掲げている「ホスピタリティ・ドライビング」のモットーを間違いなく体現してくれる女性ドライバーの必要性を認識しました」と管理部人財採用課係長の小山玲奈さんは話す。

ソフト/ハードの両面から女性が働きやすい職場環境を整備

ヒアリング調査を皮切りに、国際自動車は一気に「女性の積極採用」へと舵を切る。同年7月に「女性が働きやすい職場を作るプロジェクト」を発足(※2014年11月「km2020ウーマンプロジェクト1000」に改称)。「2020年までに女性社員を1000名雇用すること」を目標に掲げ、ソフト面、ハード面の双方から、女性が働きやすい職場環境の整備をはじめた。

基盤となったのは定期的に開催される女性社員座談会だ。ここでの意見を参考に、各営業所に女性仮眠施設やトイレ、シャワールームなどを新設。また研修施設「ホスピタリティ・カレッジ」を新設し、「ビジネスメイク講座」「ホスピタリティ研修」など女性社員のニーズに応える研修を実施。また管理職を対象とした「セクシャルハラスメント研修」や「男女脳差セミナー」など、男性社員の意識変革にも取り組んでいった。

主婦や女性求職者など外部の女性を集めての座談会も実施した。寄せられた意見をもとに、高齢者の病院送迎・付き添い、買い物の付き添い・代行、お子様の送迎など、各種サポートを女性ドライバーが行う新サービス「Re:laxi(リラクシー)」を開始した。

女性社員のニーズに応えた研修「男女脳差セミナー」

プロジェクト推進がもたらした波及効果とは

女性社員が増えたことで、職場のコミュニケーションも活発に

2010~12年はのべ10名だった女性ドライバーの採用が、2013~15年は新卒・キャリアを含めて126名に。現在は総勢約300名の女性ドライバーが活躍している。2014年新卒入社の松沢香奈波さんは、もともと総合職として応募したものの、選考の過程でドライバーに転じた。「女性が少ないからこそ活躍の場があると思いました」。ペーパードライバーだった松沢さんは、第二種運転免許を取得し、後に続く後輩の良きメンターに成長している。

2014年中途入社の大槻実千代さんは「もともとタクシードライバーが女性の仕事だというイメージはなく、不安なことばかりでした。けれど応対してくださった社員の方が丁寧で、施設も清潔感がありました。入社してからもしっかり研修をしてくれるし、ここまで女性を大切にしてくれる職場は今までなかったですね」と話す。深夜に乗車された男性のお客さまからは、「酔っていても女性の前だと『しっかりしなきゃ』という意識が働く。女性が増えれば、きっと乗客とのトラブルも減るのでは?」との声もあったという。

各営業所に女性社員が増えたことで、職場の雰囲気が良くなったと話すのは、管理部人財採用課の福島治さん。「男性ばかりのころはおたがい気兼ねすることがないので、武骨な雰囲気でした。女性社員が配属されてからは自然と会話が生まれ、明るい雰囲気に。また男性社員も身だしなみに気を配るようになり、結果としてお客さまからも好感を持たれるようになりました」

女性ドライバーとして活躍する大槻さんと松沢さん

ダイバーシティの推進で、タクシーの社会的評価の向上を

「相変わらずタクシー業界のイメージは良いとは言えません。また、弊社でも毎年200名前後のドライバーが高齢などを理由に退職し、労働人口も減少していく中で、優秀な人材の確保が喫緊の課題です。私たちが目指しているのは、ホスピタリティを追究しお客さまに満足と感動を感じていただくこと。その達成には女性の活躍が必要不可欠なんです」と話す川田さん。これまでは男性のみだった管理職だが、2015年からは5名の女性が管理職を務めている。「会議に参加できるようになったことで、自ら提案できるようになった」と小山さん。古い慣習に縛られてきたタクシー業界を牽引する国際自動車の挑戦は、いよいよこれからが本番だ。

お話をうかがった福島さん、小山さん、大槻さん、松沢さん、川田さん

受賞者コメント

川田 政 さん

ありがとうございます。まさかこうして選ばれるとは思わなかったので、本当にうれしいです。当社は男所帯ということもあって、女性社員はまだ全体の2%。この取り組みを始めて3年、まだまだなところはありますが、目標に向かってがんばっていきたいと思います。

審査員コメント

アキレス 美知子

今回改めて気づかされたのは、タクシー業界がこれほどまで男性優位であるという事実です。2010年の女性採用実績はわずか1名。そこから取り組みを始めて、2015年は全部で300名が活躍するまで大きく変わっています。今まではおそらく男性社会の中で女性が働くことは無理だと考えていらっしゃったのでしょう。けれどもセミナーや研修を通して意識改革を行うことでいろいろと工夫をされ、確かな成果を出されています。2020年に向けて女性社員1000名採用という大きな目標を掲げていらっしゃいますが、必ずや達成されるだろうと大いに期待をしています。

※ 本ページの情報は全て表彰式当時の情報となります。

第2回(2015年度)の受賞取り組み