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自ら手を挙げてミッションに挑み、報酬と評価をつかめ!遊び心あふれる「クエスト制度」が事業拡大期のベンチャー企業を支える

株式会社エストコーポレーション
取り組みの概要
部長や経営陣から出されるクエスト(任務)に社員個人やチームで自由に挑戦し、報酬を得られる制度。
取り組みを始めたきっかけ
事業拡大とマネジメント強化に向け、人事評価制度を見直したことから。
取り組みを運用する秘訣
ゲームや漫画の世界観を取り入れて遊び心を持たせ、挑戦したくなる仕掛けを作っている。
よかったこと
社員の自己成長感を高めることができた。また部署間の業務理解と連携が進み、将来のリーダー候補がマネジメントを学ぶ機会にもなっている。

「目に見える自己成長感」が新たなモチベーションを生んだ

手配書風にアレンジされた「事業部クエスト」

酒場の壁に貼り出されたさまざまなクエスト(任務)。主人公は自らでクエストを選び、仕事を成し遂げ、報酬を得る--。そんなロールプレイングゲームのような世界観を職場に体現し、遊び心あふれる制度で成長し続ける会社がある。

「一任務クリアで4万円」も。

「営業目標110パーセント達成で1万ポイント」

「社内セミナーを企画・開催し4万ポイント」

エストコーポレーションの社内には、事業部ごとに掲示板が設置され、人気漫画に登場する手配書風にアレンジされた「事業部クエスト」が掲示されている。内容は事業部長が考案し、「エストポイント」と呼ばれる報酬と達成期限を明示。メンバーは挑戦したいクエストを自由に選び、達成によって得られるポイントは同社の福利厚生プログラムで用意した約80万点のアイテムと交換できるほか、1ポイント=1円で換金することもできるという制度だ。

どんな企業で働いていても、新たなミッションや役割を「上から」与えられる機会があるだろう。しかし同社のクエスト制度では、社員がその機会を「自らつかみに行く」ことが当たり前になっている。

「自分はこの会社にいていいんだ」と実感

管理部の吉田陽香さんは2014年に新卒で入社した。職種は社内で一人だけの「広報担当」。会社をメディア露出させることに成功し、自分なりの手応えを感じた1年目だったが、「仕事が評価されているのか分からず不安」でもあった。ロールモデルとなる先輩がいない。営業職のような分かりやすい成果の指標もない。そもそも広報というミッションを理解してくれる人が少ない。そんな悩みを抱える中でクエスト制度が始まった。

「メディア関係者との新たなリレーション作り」「テレビ番組に出る」……。上司が提示するさまざまな事業部クエストの中から、2年目の自身に課すテーマを選んだ。新たなミッションは自分のためにもなると感じたそうだ。「一つひとつの達成が評価され、報酬という形になることがやりがいでした」と振り返る。

副次的な効果も生まれた。他部署のメンバーに「広報」という仕事への理解が広がったのだ。掲示板のクエストと報酬ポイントを見れば、吉田さんが今どんな挑戦をしているか、仕事の難易度とともに一目で分かるからだ。

「他部署の皆がお菓子の差し入れで応援してくれたことも。『自分はこの会社にいていいんだ、役に立てているんだ』と実感できました」

吉田さんは現在エストコーポレーションを卒業し、同社で身に付けた積極性を武器に、新たな領域へのチャレンジを始めている

達成によって得られるポイントと交換できる約80万点のアイテム

「部署横断のクエスト」で、組織の壁を超えた連携

エストクエストに挑戦し、マネジメント業務に触れる

同社にはもう一つのクエスト制度が存在する。清水史浩社長をはじめとする経営陣「清水家」から課される「エストクエスト」だ。こちらは飲み会やスポーツ大会など、会社全体のイベントに関わるクエストが中心。対象は事業部を横断して結成するチームで、各リーダーの名字を取って「●●家」と名付けられている。エストクエストは、将来のリーダー候補がマネジメント業務を学ぶ上でも重要な役割を果たしているという。

ヘルスケア事業部でチーフコンサルタントを務める殿村一之さんは、「殿村家」を率いるリーダーでもある。本社オフィスの移転を記念して出された全社飲み会企画のクエストに、10人の家族を率いて挑戦。新設された社内のリラックススペースを使い、たこ焼きや手巻き寿司、ソフトクリームを手作りで振る舞った。テーマは「殿村家主催のホームパーティー」だ。

「過去の例では、全社飲み会の企画といっても店を予約して案内する程度でした。でもメンバーとの打ち合わせでは『せっかくクエストとして挑戦するんだから皆が驚くような仕立てにしよう』という意見が出てきて……。イベントを準備する過程で、アイデア出しのブレストやタスク振り分け、スケジュール管理など、プロジェクトを進める流れを学ばせてもらいました」

殿村さん自身は営業職だが、「家族」にはエンジニアやデザイナーなどさまざまな職種のメンバーがいる。彼らが、日々のコミュニケーションを円滑にするチャットツールの共有や、社内PR用ポスターの制作を買って出る姿を見て、他部署の強みを知る良い機会にもなった。こうした発見は日常業務にも生かされているそうだ。

上場を目指して……社員それぞれの意志で成長する組織へ

制度を考案した管理部・部長の森脇かほりさんは、「高い目標をトップダウンで課すのではなく、社員それぞれの意志で挑戦できるようにしたかった」と話す。

「医療×IT」を事業領域とする同社は、2007(平成19)年の創業以来さまざまなサービスを展開。社員の自主性を重んじ、マーケティングから事業化、予算案までを各事業部に委ねる方針で急成長してきた。現在は2017年の上場を目指している。人員増による組織拡大と事業拡大。成長期の同社には、社員一人ひとりのスキルアップによる生産性向上と、マネジメントの強化が必須だった。

「上場を目指すことを社内外に宣言し、人事評価制度の見直しに取り組みました。残業による報酬ではなく、能力と成果によって多くの報酬が得られる新しい仕組みが必要だったんです。何より、社員の自主性を重んじるという文化をより浸透させていきたいという思いがありました」

同社では今後、事業部長が出すクエスト内容の精度を評価したり、エストクエストでビジネスに直結するテーマを出したりといった進化を通じて、個人と組織のさらなる強化を図っていく考えだという。社員の自主性を第一に置いたクエスト制度は、事業拡大期のベンチャー企業を前向きに成長させる原動力となっている。

誰もが見られるオフィスの壁にクエストを掲示

受賞者コメント

森脇 かほり さん

当社は平均年齢28歳の若い組織です。成長意欲が高い社員に対して、どのように評価・報酬を提供していくかを考え、今回の制度設計に至りました。自主的に仕事と報酬を獲得していく、社員の成長に役立ち、プラスしてユニークな制度のため面白みもあります。今後も社員がイキイキ働ける職場づくりに努めていきます。

審査員コメント

細野 真悟

「クエスト制度」は、私自身が自社のマネジメントに取り入れてもうまくいきそうな仕組みだと感じました。何重にも仕掛けが施されていて、「社員が自らミッションに手を挙げられる」「部門を超えて連携できる」「報酬を自由に選べる」という3点を実現し、確実に運用できるパッケージとなっています。クエストを出すマネジメント層の側にも工夫が必要となっており、全体を通して制度設計が非常に秀逸。完成度の高い取り組みでした。この仕組みを考え出した方にぜひノウハウを伺いたいですね

※ 本ページの情報は全て表彰式当時の情報となります。

第2回(2015年度)の受賞取り組み