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生産性と社員満足度向上の鍵は「オフィス環境の維持管理」働きやすい職場作りに情熱を燃やす名コンビの活躍

コクヨ株式会社
取り組みの概要
働きやすいオフィスにするため、毎月10件の「カイゼンアイデア」を集約し、オフィスカイゼン委員会が実行していく取り組み
取り組みを始めたきっかけ
オフィスリニューアルを機に、快適さが経年劣化をしないオフィスの維持にチャレンジしたいと考えたことから
取り組みを運用する秘訣
キーマン2名が委員会の運営をリード。中堅社員が参加することで取り組みに実効性を持たせ、遊び心のあるルール周知方法で社内に浸透させている
よかったこと
声を上げれば実際にオフィス環境が良くなるという実感が広がり、自らカイゼンに動く社員も増えている

コクヨならではの知見と課題感でプロジェクトがスタート

2年間で160ものカイゼンアイデアを実施

真新しいオフィスをずっと気持ちよく使い続け、高い生産性を維持するにはどうするべきか。オフィス設計や家具の販売を手掛けるコクヨの社内では、自社の事業で得た知見を生かし、オフィス環境の維持管理を目的とした「オフィスカイゼン委員会」が活躍している。「一か八かコンビ」と親しみを込めて呼ばれているふたりの社員を中心に、各部署の代表者を含めた約20名がメンバーだ

些細な不具合を見過ごさない

2013年、コクヨは東京・霞ヶ関のオフィスをリニューアルした。この際、新オフィスの円滑な稼働開始とその後の適切な維持管理を目的に誕生したのが「オフィスカイゼン委員会」だ。

「オフィスの設備は年数を経ればどうしても劣化しますが、快適さは必ずしも経過年数に関係するわけではありません。しかし維持管理を怠ると、些細な不具合が積み重なって業務の生産性やESを下げる原因となっていくのです」

ファニチャー事業本部・提案マーケティング部の40代社員、八塚裕太郎さんは、オフィス維持管理の重要性についてそう語る。ホワイトボード用のマーカーが切れている、イスのキャスターが壊れているなど、一つひとつは小さな不具合でも、すぐに対応せず見過ごしてしまうことでどんどん「働きにくいオフィス」へ変わっていってしまうのだという。

同じ部署に所属する一色俊秀さんは、定年後の再雇用制度を利用して働く60代。コクヨが手掛けたクライアントオフィスの経年劣化について長年研究してきた。中には、社員が高い意識でオフィス環境を守り、コストをかけることなく上手に維持管理している企業もあった。

「多くの場合、総務部が多忙で社員の要望に対応しきれず、『指摘してもどうせ変わらない』と社員が諦めてしまう。そうなるとオフィス環境も生産性も悪化する一方です」

オフィスカイゼン委員会は、そんな課題感がきっかけだった。2人の名字の頭文字を取って「一か八かコンビ」と名乗り、活動をスタートする。

宿題なしの気軽なミーティングでアイデアを募る

委員会の活動内容はシンプルだ。委員会を構成する各部署の代表18人が参加し、日常会話で聞かれるオフィス環境への不満を毎月のミーティングで共有する。事前準備は必要なし。出された意見を一か八かコンビが総務部の担当者とともに検討し、毎月10件のカイゼンポイントを発表して即実行する。大掛かりな工事や多額の予算が必要になることはやらない。

「シュレッダーのゴミ置き場設置」「ホワイトボード備品箱設置」「置き忘れ傘のリユース利用」など、約2年間で160のカイゼンアイデアを実施。毎月の成果は「オフィスよくなっ10(てん)」という一覧資料で社内広報している。

また、委員会メンバーに30代を中心とした中堅社員をそろえていることも特徴的だ。各部署での発信力があり、活動内容が伝わりやすい。会社の予算などを踏まえて現実味のある提案を出してもらえる。普段の業務を通じてクライアントのオフィス事例を数多く知っているため、新たな知見がもたらされることも多い。

「一か八かコンビ」の八塚さんと一色さん

目に見える成果が、社員の自主的なカイゼン意識を呼んだ

ルールを守ってもらうための工夫も

オフィスカイゼン委員会に参加するメンバーは、それぞれの観点でその効用を感じている。スペースソリューション事業部に所属する三平久子さんは、「運用ルールの伝わりやすさ」を一例として挙げる。

「社内の至る所に、かわいい“サイ”のキャラクターシールが貼ってあるんです。『共用カタログもどしてくだサイ』とか、ランチタイムに休憩室のテーブルで仕事をしている人に向けた『席空けてくだサイ』といった注意書きなんですが、押し付けがましさがなく、ルールを守ってもらうための上手な工夫だと思います」

プロジェクト開発部に所属する大友高志さんは、「営業活動を後押しするためのアイデアも実現しています」と話す。クライアントを招く社内の会議室には「室内の面積表示板」が設置されており、商談でオフィス設計を提案する際、スペースの広さをイメージしてもらうためのツールとして役立てているという。

カイゼンによって、委員会メンバー以外の社員の意識も変わっていった。人事総務部の鹿野明子さんは「“与えられたオフィス”ではなく、“自分たちのオフィス”だという意識が浸透してきているのを感じます」と語る。落ちているゴミを拾うといった行動が当たり前になった。

“サイ”がかわいく注意

全社で注目を集める一か八かコンビ

コクヨには、社員の投票によって組織に貢献したメンバーを表彰する制度がある。一か八かコンビの2人はオフィスカイゼン委員会を主導してきた功績からこの表彰を受けた。2人を中心とした委員会の活動内容は拠点を超え、全社的な注目を集めているという。

「みんなが日頃感じている不満を我慢させることなく意見として集め、実際にオフィス環境を変えていけることがやりがいになっています」と八塚さん。一色さんは「定年後も会社に貢献できていることがうれしい」と話す。

参加メンバーの負荷を最小限に抑えつつ、着実にオフィス環境をカイゼンし続ける一か八かコンビの取り組みは、多くの職場で参考にできるのではないだろうか。

“サイ”がかわいく注意

受賞者コメント

一色 俊秀 さん

当社の取り組みが評価されたことを素直に喜んでおります。また、表彰式では他社さまの取り組みを知り、とても刺激を受けました。今後も「社員がイキイキと働き続けられる環境」を作り続け、その延長線上に他社さまの取り組みを参考にした新たな一手をどんどん打っていきたいと思います。

審査員コメント

アキレス 美知子

いくら練られて作られたオフィスでも、使っていればどうしても汚れてしまい自分自身もすごく気になります。そのため、新しくしよう、ではなく、維持しよう、という着眼点を評価いたしました。また、オフィス家具の製造・販売という事業との親和性が高いことも高ポイントのひとつですね。さらに、様々な部署の人が委員会に関わることで、それぞれの視点で改善点を見つけていることが、長期的にオフィスを維持していくことに繋がると感じました。

※ 本ページの情報は全て表彰式当時の情報となります。

第2回(2015年度)の受賞取り組み