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患者満足度によるアワードが成長の原動力!調剤薬局の真価を追い求める業界大手の取り組み

日本調剤株式会社
取り組みの概要
患者満足度調査の結果をもとに、年に一度、薬局サービスに優れた店舗・社員を表彰するアワードを実施
取り組みを始めたきっかけ
優れたサービスレベルの事例を表彰することで、全社にノウハウを共有しさらなる満足度向上につなげたいと考えたことから
取り組みを運用する秘訣
簡単に返信できるアンケート形式にして、店頭で積極的に協力を呼びかけている
よかったこと
患者満足度の向上が店舗の売上増につながっている。また受賞をきっかけにスタッフがステップアップを実現している

競い合うのは、患者からの「感謝の声」

全体総会で表彰

サービスレベルの向上を通じて、選ばれる薬局になる--。

全国に500店舗以上を展開する調剤薬局大手の日本調剤は「真の医薬分業」を掲げ、医療機関や医師におもねる経営ではなく、高いサービスレベルの「通いたくなる薬局」作りを進めてきた。その事業戦略に直結する取り組みが、患者満足度調査によって店舗・社員を表彰する「JP-CSアワード」だ。

自分へのコメントがモチベーションに

2008年から実施しているJP-CSアワードは、患者を対象に満足度調査のアンケートを実施し、その集計結果をもとに年に一度、優れた店舗・社員を各エリアから選出し表彰する制度。

「従業員の応対」「薬の出来上がりを待つ時間の対応」「総合満足度・薬局紹介意向」「信頼できる従業員の有無」という接遇面での満足度を探り、薬剤師と医療事務という職種を超え、雇用形態に関わらず同じラインで評価する。満足度の点数による「店舗表彰」、患者からの指名数による「個人表彰」のほか、より良い接遇につながるアイデアを社員投票によって実用化する「アイデア賞」がある。

実際のアンケートでは、「顔と名前をしっかり覚えてくれている」「待ち時間が長いときに気遣いの言葉をくれる」「薬の説明が丁寧で分かりやすい」「医師に打ち明けられなかった悩みも話せた」など、患者からの感謝の言葉がダイレクトに伝わる。こうした評価はすべて店舗にフィードバックされ、従業員のモチベーションアップの源となっている。

アンケート協力の呼びかけを積極的に実施

「以前から、高いサービスレベルを発揮する従業員は数多くいました。こうした事例を表彰し、全社にノウハウを共有していくことで、さらなる意識向上を図りたいと考えたのです」

JP-CSアワードを統括する薬剤本部・教育情報部長の福岡勝志さんは、取り組み開始の背景をそう語る。患者に寄り添い、数ある競合の中から選んでもらえる薬局になることが同社の最重要戦略。そのため、アワードは初年度より全国規模で開始した。

アンケート用紙には料金受取人払いの返信用封筒を添付し、各店舗で積極的に協力を呼びかけている。現在では全体の約3割の患者から回答を得られているという。

受賞者は全社総会で表彰され、有名テーマパークの入場パスポート、あるいは京都の保養所利用といった特典が与えられる。またイントラネット上で取り組みの共有を行い、全国の店舗にそのノウハウを共有する仕組みを整えている。

アンケートを掲示する店舗も

企業理念と戦略、スタッフのやりがいが1本の線でつながる

親身な対応が患者を増やし、売上増へ

実際にアワードを受賞したスタッフは、患者からの感謝の声に大きなやりがいを感じているという。

2011年に中途入社し、店舗で医療事務として勤務していた山﨑静さんは、2013年に個人賞を受賞した。開業まもない店舗でオペレーションが安定しきらず、処方内容によっては患者を待たせることもあったという。そんなときには一人ひとりに声をかけ、待ち時間が少しでも短く感じられるよう配慮した。

「患者さまからは、“丁寧な対応がうれしかった”“薬の説明を聞いている間に子どもの遊び相手になってくれてありがたかった”というコメントをいただきました。何気ないこちらの対応が患者さまに喜ばれているんだ、と感じてうれしかったですね」

2010年に中途入社した豊泉友美さんは、2012年と2013年に連続で個人賞を受賞した。勤務していた店舗は競合が多い激戦区。服薬指導が終わった後もゆっくり会話するなど、患者ごとに丁寧なコミュニケーションを心がけていた。結果、親身な対応が口コミで広がり、患者が増えていった。

「患者さまに多くのご支持をいただけたことで、結果的に店舗の売上も伸びていきました。忙しくなる中でコミュニケーションの量を維持することには苦労もありましたが、激戦区で選ばれる薬局を作ることができ、貴重な経験となりました」

お話をうかがった福岡さん

スタッフのステップアップで、さらなるノウハウ展開へ

アワードの受賞者の中には、薬局での仕事にさらなるやりがいを見出し、ステップアップしたスタッフも多い。パートスタッフとして8年間勤続していた薬剤師は、受賞をきっかけに正社員となり、活躍の幅を広げた。

ほかにも、店舗での経験を生かし受賞ノウハウを全社に展開していくため、本社の教育部門へ異動したスタッフも多い。イントラネット内に設けたeラーニングシステム「バーチャルクラスルーム」を通じて、これまでのノウハウが着々と蓄積され、全国の店舗で参考にできる事例として活用されている。

福岡さんは現在、日本調剤が実践してきた患者満足度(CS)向上の取り組みを元にして都内の薬科大学で講義する活動も行っている。業界大手企業の責任として、「調剤薬局の本来の存在意義」を発信し続けていく考えだ。

「場所や利便性だけではなく、“信頼”によって選ばれる調剤薬局を増やしていくことでしか、本当の意味で患者さまの役に立つ存在になることはできないと考えています。そのためには、店舗スタッフが高い意識で患者さまと接していくしかない。今後も、患者満足度向上への取り組みを拡大していきます」

企業理念と戦略、そしてスタッフのやりがいが1本の線でつながるJP-CSアワードは、今後も同社の成長の原動力として機能していくだろう。

お話をうかがった教育情報部のみなさん

受賞者コメント

山﨑 静 さん

グッド・アクションに選ばれ、喜ばしい気持ちでいっぱいです。当社は全国各地に調剤薬局を展開し、数多くの薬剤師やスタッフを抱えているため、制度の目的や成果をより浸透させていく意味でも貴重な機会になると考えています。今回の受賞を通して、社内にさらに良い変化を起こしていきたいと思います。

審査員コメント

細野 真悟

お客様に満足度についてアンケートを行うことはよくありますが、サンプル数が少ないなど評価に組み込めるほど仕組み化できているケースは少ない印象があります。本取り組みではアンケート回収率が30%ときちんと確保できています。そのため、働く人にとってもそのアンケートによって評価されることに納得性があり、その納得性から社員の方々も受け入れやすい取り組みになっていると感じました。

※ 本ページの情報は全て表彰式当時の情報となります。

第2回(2015年度)の受賞取り組み