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離職率50パーセントからの意識改革。自らでキャリアをつかむ「エリアマネージャー解散総選挙」の意義とは

株式会社オンデーズ
取り組みの概要
全社員が自由に立候補でき、全社員の投票でエリアマネージャー(部長職相当)を選出する取り組み。
取り組みを始めたきっかけ
50パーセントという高い離職率を低下させるために人事制度を透明化し、業績回復につなげたいという社長の考えから。
取り組みを運用する秘訣
全員参加の選挙イベントや特設WEBサイトを通じて社員の当事者意識を醸成。役職を得るために自ら手を挙げる風土を作っている。
よかったこと
取り組み開始5年目で離職率が当初の50パーセントから5パーセントに低下し、業績も7年連続で拡大。若手社員の間にも上昇志向が広がっている。

華やかな総選挙イベントは、上司が人生をかけて戦う舞台

本物さながらの選挙ポスター

自分たちの上司は、自分たちで選ぶ--。

それが、全国に眼鏡専門店を展開するオンデーズ独自の「エリアマネージャー解散総選挙」に込められた思い。年に一度の選挙イベント「オンデーズサミット」で全社員が投票し、任期1年のエリアマネージャー(定員5名)を選出するのだ。

「選挙活動」によって現場を盛り上げる

入社12年目の水島健雄さんは制度開始前からエリアマネージャーを務めている。2011年に解散総選挙が始まり、時には降格もあり得る選挙戦を、5期連続で勝ち抜いてきた。現在は旗艦店が集中する東日本と沖縄を束ねる。

「1年で結果を出せなければ次がない。だから常にプレッシャーと戦っています。エリアマネージャーは営業部門の最高役職ですが、決して安泰ではないんです」

日頃から、「来年も選挙で勝つためにはどう動くべきか?」を常に考えているという。立候補時に「マニフェスト(エリア運営の企画書)」で掲げた業績目標達成に全力を尽くす。エリア内の店舗スタッフ一人ひとりとコミュニケーションを密にし、現場の実情を把握。後輩を飲みに連れて行くことも選挙活動の一環だ。

「結果的に、『会社の発展のために何が必要か』を考え抜くことにつながっているんです」

「自分次第で上を目指せる」というモチベーション

エリアマネージャー候補者が戦う姿は、若手社員にとっても大きな刺激になっている。

下北沢店(東京都世田谷区)の貫野日菜子さんは、2014年に新卒で入社。入社式と同時にオンデーズサミットが開かれた。「最初は『アイドルグループのイベントみたいだ』とおもしろおかしく見ていたのですが、候補者のプレゼンを聞いてその緊張感と本気度が伝わってきました」と振り返る。

エリアマネージャーによって自店の方針や営業成績も変わってくる。選挙期間中は特設サイトにアップされた各候補者のマニフェストを見て、サミット当日はプレゼンに真剣に耳を傾ける。

「私も店長を目指して積極的に動いていきたいと思っています。上司が人生をかけて戦う姿を見て、『この会社では手を挙げれば上を目指せる』『自分次第なんだ』というモチベーションをもらいました」

選挙イベントでの水島さんのプレゼン

透明な人事制度が、「挑戦する風土」を生んだ

マニフェストや政見放送も……3カ月の熱い選挙戦

2015年は17名が立候補した解散総選挙。その運営を支えるのは本社の選挙管理委員会だ。PRマネージャーの町田吉瞳(よしみ)さんは、「社長の田中修治自らがエリアマネージャー解散宣言の動画を制作し、全社に配信するところから選挙戦が始まります」と舞台裏を話す。

社長の解散宣言を受けて立候補受付が始まり、毎年1月に全社に向けて公示。社員全員が閲覧できる特設サイト上で候補者のマニフェストや政見放送を流す。サイト内ではスタッフから候補者への応援コメントも表示され、コミュニケーションツールとしても機能している。約3カ月の選挙期間を経て、4月のオンデーズサミットで候補者が最終プレゼン。この場で全社員からの投票結果を発表する。

手間もコストもかかる大掛かりな制度を始めたのはなぜなのか。町田さんは「壊滅的な状態だった会社を立て直すための風土作りがきっかけでした」と打ち明ける。

全社員の投票

「離職率50パーセント」から「5パーセント」へ

現社長の田中さんが就任した2008年当時、オンデーズは14億円の負債を抱えていた。業績回復のために異業種から管理職を採用しては配属していたが、「現場を知らない上司」に対して店舗の不満は高まる一方。一時期は離職率が50パーセントを超えていた。

1台の社用車で当時50以上あった全国の店舗をすべて回り、社員一人ひとりの声を聞いた新社長は人事制度の透明化を図る。「やりたい人間に管理職を任せる」「意欲のある人はとにかく目立て」と全社に号令し、社員の個性を大切にするために「スーツ着用禁止令」も出した。そんな大変革期に導入したのがエリアマネージャー解散総選挙の取り組みだったのだ。エリアマネージャーだけでなく、下の役職であるスーパーバイザーや店長職への昇進、他部署への異動にも「自ら手を挙げて」挑戦する制度を作っていった。

「初めての総選挙では25歳の女性エリアマネージャーが誕生しました。こうした社内の変革をみんなが実感し、『自分を積極的に売り込む』という風土が作られていったんです」と町田さんは話す。5期連続でエリアマネージャーを務める水島さんも「昔の自分は黙って仕事をするだけの人間でしたが、『強いチームを作るためには自分も発信をしなければ』と思うようになっていきました」と振り返る。

自分次第で、誰にでも昇進のチャンスが与えられる会社。その風土に魅力を感じて入社する社員も増え、各現場が能動的に動くことでオンデーズの業績は7年連続で拡大している。離職率は5パーセントにまで減少。かつての停滞ムードは一掃された。

自分たちの上司は、自分たちで選ぶ。そしていつか自分たちも上を目指して手を挙げる。「キャリア作りに自由に挑戦できる」透明な人事制度が好循環を生み、組織全体の活性化と業績拡大を支えているのだ。

投票結果

受賞者コメント

水島 健雄 さん

当社では、この取り組みによって離職率を50%から5%まで減らすことができました。また、状況を変えていけるような発信力のある社員をみんなで選ぶことで、業績拡大にもつながっています。今後もこの取り組みを通じて会社を発展させていきたいと思います。

審査員コメント

アキレス 美知子

「人事の透明性」に力点を置いた素晴らしい取り組みだと思います。昔から、日本企業では「密室人事」で物事が決まっていく傾向があります。それを完全に透明化し、手を挙げれば新入社員でも管理職に立候補でき、管理職を社員全員で決めるようにした「エリアマネージャー解散総選挙」は、これまでの日本の人事の常識にとらわれない素晴らしい取り組みだと感じました。そして、この取り組みが企業業績を大きく向上させていることも注目すべきポイントです。常識を覆し、結果につなげた取り組みとして、高く評価しました。

※ 本ページの情報は全て表彰式当時の情報となります。

第2回(2015年度)の受賞取り組み