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リクナビNEXTジャーナル

キャリア・ビジネスの情報満載【リクナビNEXTジャーナル】

「20億円の損失、全社員解雇」から、なぜV字回復できたのか?――『マネーの虎』で“冷酷な虎”として人気を博した南原竜樹氏の仕事論

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南原竜樹(なんばら・たつき)

1960年、岡山県生まれ、愛知県育ち。大学在学中に高級外車の並行輸入で起業。88年オートトレーディングルフトジャパンを設立。輸入車ディーラー、インポーターとして事業を拡大する。2005年に取引先だった英国MGローバー社の経営破綻の影響で、全社員の解雇という事態に。その後、会社を再生し、現在は出版、自動車の個人売買、医療派遣、レンタカー、飲食店経営など多くの事業を展開。16年3月期には年商120億円を見込む。15年株式会社LUFTホールディングスに社名変更。

 

人気テレビ番組「マネーの虎」で
“冷酷な虎”として人気を博した南原氏。
当時、年商は100億円近くあったというが、
絶好調の2005年、取引先だった
英国MGローバー社の破たんにより、
突然20億円の損失を抱え、
全社員を解雇する事態に。
その後、奇跡のV字回復を遂げた南原氏に、
当時の状況を聞いた。

 

破たんを聞いても、茫然自失としている暇はなかった

取引先だった英国MGローバー社の破たんを知ったのは、友人からのメールです。「ローバー、潰れたらしい、知ってるか?」。そんな文面だったと思います。

最初は信じられなくて、「嘘じゃないの?」と。すぐに調べて、本当に破たんしたということがわかってからは、まずやるべきことをシビアに考えました。さほどショックはなかったですね。私はいつも淡々としていますから。これほどの緊急事態になると、経営者はやらなくてはならないことが一気に増えるんです。それも時間との戦いで。通常の仕事だったら、締め切りに少し遅れたりしてもなんとかなってしまうこともありますよね。でも、こういう緊急事態になると、遅れることが命取りになる。すべて期限内にやらないと全部の組み立てが狂ってしまうんです。だから茫然自失する時間なんてないんですよ。経営者というのは、不測の事態が起きたら反射的に行動を起こせるタイプじゃないと務まらない。ショックなことが起きて茫然自失となるような経営者は、その時点でもう終わっていますね。

 

自分の特性に基づいたプランを立て、それに沿って行動していくことが大事

英国MGローバー社の破たんにより、弊社は20億円の特別損失を出しました。純資産は45億円ほどあったのですが、当時、銀行からの借り入れが30億円あったんです。その返済を銀行から一気にせまられました。半年間は在庫の車を処分するなどして経営再建に取り組んでいたのですが、1カ月後には社員を全員解雇する事態になってしまった。自分自身の貯金も再建に充てていたから、ローバーの破たんですべてを失うことになったわけです。

少しの期間ですが、公園のベンチで寝たこともあります。正直に言うと、そのときどんな気持ちだったか覚えていないんです。だから推測ですけど、大して気にしていなかったと思います。日本人って外で寝ることにすごく抵抗があるけど、私はもともと、そういうことが平気なんですよ。今から3年ほど前のことですが、沖縄でホテルを予約するのを忘れていて、面倒くさいから野外のベンチで寝たこともあります。夏でしたが、石のベンチは冷たくて気持ちがよかった。ただ、目が覚めたら蚊にたくさん食われていて、気持ちいいけど、これはいかんなと(笑)。

私は外で寝るのが平気なタイプですが、そうじゃない人もいるでしょう。その場合は、それに合うように普段から行動していればいいんです。いざとなったら泊めてくれる友達を確保しておくとかね。僕は友達に頼むくらいならベンチで寝たほうがいい。だからベンチで寝たし、そうなっても落ち込まなかったんです。

自分が嫌だと感じることが分かっていれば、落ち込むことなんてないんですよ。自分がもともと持っている「特性」ってあるでしょう? 行動パターンというか。自分の特性に基づいたプランを立て、それに沿って行動していけば、不測の事態が起きてもつらくないし、効率的に成功することもできるんです。

 

再建から10年。
現在は自動車の個人売買、
医療派遣、出版業など
多岐にわたって事業を拡大。
16年3月期には、年商120億円に
到達する見込みだという。
V字回復できた理由とは
何だったのだろうか。

 

どんなにうまいパン屋でも、10軒持ちたいと思わなければ拡大しない

V字回復をするために一番大事なのは、「根拠のない自信に基づいてチャレンジしていく」ことです。会社というものは拡大させなくても食べてはいける。それこそ1軒の店だけ経営していてもいいんです。しかし、会社を拡大したいなら、常に勝負をかけていなければならない。

例えば、すごくおいしいパン屋があったとします。朝、パンを焼いて近所の人に喜んで食べてもらって、対価をもらって…。それでも十分に食べていけるし、その状況に喜びを感じるなら、そのままでいいと思う。ただ知っておいたほうがいいのは、その人が1軒のままでいいと思っているうちは、いくら頑張って働いても10軒にはならないということ。もし10軒にしたいという目標があれば、たいしてうまくないパン屋であってもあっという間に10軒にすることができます。もちろんその場合は勝負しなくてはなりませんが。大事なのは、自分がこうなりたいという目標を決めること。おいしいパン屋をやりたいのか、パン屋を10軒にしたいのか。自分がこうなりたいと思う目標に応じて行動することが大切なんです。

ただ、目標というものは変わることもあるし、変わってもいいと思う。私の場合もそうでした。最初は単なる車好きが「車を輸入したい」というところから始まっています。会社を興したころは、たくさんの車を輸入することが面白かった。例えば洋品店で「このジャケットを一着ください」と言うよりも、「端から端まで全部ください」と言うほうが気持ちいいですよね。車の場合だと100台買うよりも200台。200台買うよりも、1000台…。やはり醍醐味が違います。私の場合はそのために会社を大きくしたくなったんです。

人の欲望はずっと同じとは限らない。おいしいパンを作りたいと思っていた人が、お客さんがたくさん来たところで考えが変わる人もたくさんいます。大事なのは、今の自分が本当に欲する目標を持つということ。それに応じて働き方や戦略を変えていく。仕事というのは、「自分のため」にするものですからね。うちの社員に対しても、いつもそう思っていますよ。「自分のために、どうぞ」って。

 

負荷がかかるくらい無理をするから、さらなる成長がある

どんな仕事に就いたらいいのかわからないと悩んでいる若い人が多いというけれど、20代の人たちにアドバイスをするなら、「自分が磨かれるような厳しい仕事に就きなさい」ということですね。「あんまり無理しないで」なんていう人がいるけれど、無理をするから、さらなる成長があるんです。若いうちは特にそう。負荷がかかるくらい無理をしたほうがいい。

以前、1時間に20枚しか伝票処理ができなかった新卒の社員がいました。上司から「もっと早くやれ」と言われて、その人はすごく頑張って1時間に60枚伝票処理ができるようになった。そしたらすごくいい会社に転職していきましたよ。筋トレでもそうだけど、軽いものをホイホイ持ち上げても筋肉はつきません。私はベンチプレス100キロとか、もう、死ぬんじゃないか?というようなものを持ち上げます。そのくらいの負荷に耐えていると筋肉は太くなるんです。軽いのを持ち上げるのは、ただの時間の無駄。仕事でもそれぐらい負荷がかかることをすると、いい結果を生み出せるようになる。すると次はもっと重いものを持ち上げてみる。その繰り返しで大きな仕事ができるようになるんです。

仕事でも何でも、粘ることが大事。特にビジネスの世界では、あと一歩頑張れば手が届くところに獲物がいることが多い。だから、もう駄目だと思っても踏ん張ったほうがいいのだけど、一方で全くの焼け野原に力を注いでも仕方がないわけです。その見極めはとても難しいのですが、その見極めポイントを知るには、仕事でものすごい負荷をかけるしかない。野球でもジャストミートできる筋のいい球を見極めるには、1万球くらい打たなくてはわからないですよね。いきなり打席に立ってわかるわけがない。「どうやったらビジネスはうまくいきますか」なんて私に聞いてくる人がいますが、ふざけてると思いますよ。そんなもの、素人がプロの打席に立って、「どうやればホームラン打てますか?」と聞いているようなものです。

1000人それぞれが違っているように、成功は千差万別なんですよ。だから自分で成功法則を見つけるしかない。それにはある程度、失敗も必要です。失敗せずに百発百中を狙おうと思ったら、一打も打てなくなってしまいます。だから、まずは一歩踏み出すことが大事。準備ばっかりして何も動き出さない人、いますよね。その時点でもうダメ。どんな状況でもできることは必ずあるんですよ。小さなことでもいいから、できることをまずやる。石橋を叩き過ぎて割ってしまう人、いっぱいいるんですよ、世の中にはね。

【information】

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『借金100億円からの脱出』南原竜樹著
いきなり中近東に行って車を購入したり、フェラーリを福利厚生施設にと提案し、大もうけしたり、数々の波乱万丈な試みで企業を拡大させてきた南原社長。その斬新な思いつきは、緻密なセオリーとロジックに基づいたものだった。本書ではその一端を分かりやすく解説している。「逆風を追い風にする方法」「負債と不良債権は違う」「情報は多角的に分析せよ」「交渉は相手の立場で進めよ」など、非常に実践的な内容となっている。効率的に大きな仕事をしたいビジネスパーソン必読の書。河出書房新社刊

※リクナビNEXT 2016年12月14日「プロ論」記事より転載

EDIT/WRITING高嶋ちほ子 PHOTO栗原克己