若手ビジネスパーソンから「仕事が暇すぎる。やることがないのは辛い」という声が聞こえてくることがあります。なぜ「暇すぎて辛い」という状況に陥ってしまうのか、そのようなときにどう対処すればよいについて、人事・採用コンサルタントとして多くのビジネスパーソンと向き合ってきた曽和利光さんにアドバイスをいただきました。

目次
若手ビジネスパーソンが「仕事が暇すぎて辛い」と感じる理由
「仕事が暇すぎて辛い」と感じる理由は、人によってさまざまです。まずは自身が置かれた状況や、なぜ「暇すぎて辛い」と感じるのかを見つめ直してみましょう。若手ビジネスパーソンが陥りがちなパターンは、大きく2パターンあります。
やることがなくて不安や焦りを感じる
指示された仕事を早々に終えているのに、上司から次の指示がもらえず、時間を持て余してしまうことがあります。やるべきことがない状況では「自分が役に立てていないのではないか」という不安や、「早く成長したいのに」といった焦りを感じることもあるでしょう。
自分の仕事に意味や価値を見出せていない
上記は「物理的に暇」な状況ですが、一方では、決して暇な時間を過ごしているわけではないのに「暇だと感じる」ケースもあります。業務を行っていても、時間の流れ方が遅く感じるのです。その原因として、自身の仕事に意味や価値を見出せていないことが考えられます。
近年はビジネス環境の変化が激しく、先行きが読めないため、チームの方向性や戦略が定まらないことが多いようです。方向性が不明確だと、自身の役割も曖昧になり、何をすれば貢献できるかがわからず、存在意義を感じられないかもしれません。
特に最近では「ジョブ型」と言われる働き方が広がり、各専門担当者による「分業」が進んでいる職場が多いでしょう。しかもリモートワークをしていると、周囲の仕事が見えづらく、全体像をつかみにくくなります。すると、自分が担当している仕事がどこでどのように役立っているかも実感しづらく、意義や価値を感じられないこともあるでしょう。
このように精神的に満たされていないと、時間の流れを遅く感じ、「暇」という感覚になっている可能性があります。
若手ビジネスパーソンの仕事が暇になる原因
上記では「物理的に暇」「精神的に暇」の2パターンを挙げましたが、「物理的に暇」になってしまうのは、次のような原因が考えられます。
上司が「非同期」の働き方に対応できていない
近年はリモートワークが広がり、チームメンバーが空間も時間も異なる環境で業務を行う「非同期」の働き方をしているケースが増えています。そのようなチームをマネジメントするのが「同期」の働き方を長く経験してきた上司である場合、非同期でのチームワークをうまく機能させられていない可能性があります。
つまり、これまではお互いの姿が見える職場で「アイコンタクト」「阿吽の呼吸」「暗黙の了解」などによって協業してきたため、「言語化」がうまくできないのです。それゆえ、リモートワーク環境下でメンバーの状況を確認したり、明確な指示を出したりできない状況が考えられます。
長く一緒に働いているメンバーであれば、「この難易度のタスクなら、この人はこれくらいの時間でできるだろう」と把握できますが、配属されて間もない新人や若手の場合はそれがつかめません。結果、早々にタスクを完了しているメンバーに次の指示を出すまで、タイムラグが生じることもあります。
ある程度経験を積んだビジネスパーソンであれば、上司からの指示を待たずに自分で判断して行動することもできますが、若手は自分で仕事をつくり出すことが難しい。上司の指示を待たざるを得ず、暇になってしまっているのではないでしょうか。
上司のディレクション能力が低い
実務とマネジメントを兼務しているプレイングマネジャー、あるいは、プレイヤーからマネジャーになったばかりの上司の場合、「自分がやったほうが早い」と、業務を抱え込むケースが見られます。育成のため、若手に任せるべき仕事であっても、早く成果を挙げることを優先し、自分でこなしてしまうのです。
このように、プレイヤーとしては優秀でもディレクション能力に欠けている人が上司である場合、自分に仕事が振られず、暇な時間ができてしまうことがあります。
若手ビジネスパーソンの「仕事が暇すぎる」を改善する7つの対処法
若手ビジネスパーソンが「仕事が暇すぎる」状況を改善するための対処法をお伝えします。状況に応じて、自身に合うものを試してみてください。
1.上司に相談して現状を共有する
上に挙げたような「非同期の働き方に慣れてない」タイプの上司であれば、自分が暇を感じている現状を率直に話しましょう。担当業務量を増やす、指示のタイミングやフローを見直すなど、改善策を講じてもらえるはずです。
2.自分の仕事に関連することを学ぶ
暇な時間があるなら、仕事は早々に切り上げるようにして勉強をしましょう。本を読む、動画を視る、ネットで情報収集するなど、空いた時間をインプットに使ってください。
自身の業務に関する知識を増やすことはもちろん、周辺にも視野を広げてみることをおすすめします。近年は、さまざまなスペシャリストと協業するプロジェクトや働き方が増えています。自身の担当業務の周辺にある工程や職種のことを学んで理解しておくと、スムーズな連携をとれるようになるでしょう。
3.周囲の仕事を手伝う
手が空いたら、周囲の人に「何か手伝えることはないですか」と聞いてみましょう。他の人の仕事を学べますし、感謝されて人間関係も築けます。自分が困ったときに助けてもらえるようにもなるでしょう。
自分の職務の範囲外の仕事をして組織の役に立つ行動は、「組織市民行動(=OCB/Organizational Citizenship Behavior)と呼ばれます。これができる人は組織内で評価され、次世代リーダー候補として期待を寄せられることもあります。他メンバーの仕事を手伝うことは、自身のキャリアアップにもつながる可能性があるのです。
ただし、ちょっとした作業をサポートする程度ならいいのですが、「自分がやるべきではない仕事」を振られてしまう可能性もあるため、注意が必要です。上司は意図を持ってメンバーに仕事を割り振っており、それを他の人がやることを想定していない可能性がありますので、手伝う仕事内容によっては上司への確認が必要です。
4.「ジョブ・クラフティング」を実践する
「仕事がつまらなくて、時間が流れるのが遅く感じる」というケースでは「ジョブ・クラフティング」をおすすめします。これは、目の前の仕事に対し、やり方を工夫することでやりがいや意味を見出して楽しめるようにすることを指します。
今の仕事と、自身の志向・価値観・モチベーションリソースなどと照らし合わせて、「楽しむためにはどんな工夫の仕方があるか」を考えてみましょう。「将来どのような自分になりたいか」を想像し、それに近づくためには、今の仕事の中でどんな工夫ができるかを考えると、仕事の意義を感じられるでしょう。
5.「改善策」を考え、提案する
今の仕事や組織で、「非効率だな」「もっといいやり方があるんじゃないか」と感じる部分があれば、改善策を考えてみてください。提案書としてまとめ、上司に提出してもいいでしょう。
このような改善への取り組みのほか、「重要だけど緊急ではない」課題に目を向けてみます。「取り組んだほうがいいけれど、目の前に業務に追われてなかなかできない」という課題が、どのような職場にもあるはずです。時間を持て余しているのであれば、そうした課題に向き合ってみるといいでしょう。
それにより、業務フローの効率化が進んだり、トラブルを未然に防げるようになったりすれば、より本質な仕事に集中できるようになります。
6.「内省」の時間を持つ
仕事の意味や価値を見出せないせいで「暇」と感じているのであれば、「内省」の時間を持ってみることをおすすめします。
仕事に対する価値観は人それぞれです。「自分は何を目的に、何を大切に働くのか」「仕事においてどんなことに喜びを感じるのか」「どのようなキャリアを築きたいのか」を、掘り下げて考えてみましょう。
こうして自分の気持ちや方向性を明確にすれば、今の仕事への取り組み方を変えるなり、異動や転職の道を探るなり、次に起こすべきアクションが見えてくるのではないでしょうか。
7.仕事を早く切り上げ、プライベートを充実させる
仕事が暇だと感じたら、可能であれば早く帰って、趣味の活動など好きなことをすればいいと思います。有給休暇など会社の制度を活用し、週5日分の仕事を週4日で終わらせて、1日を休日にあててもいいでしょう。
仕事から離れて自由な時間を過ごしてみると、改めて自分にとっての仕事の意義を感じられることもあります。「仕事を通じて社会と接点を持つことで、自分は生き生きしていられるんだ」など、新鮮な気持ちで捉えられるかもしれません。そうした機会を自分で作り出すのも一つの手です。
仕事が暇でもやってはいけないこと
「物理的に暇」「精神的に暇」、どちらの場合であってもやってはいけないのは、「悶々とすること」です。人は何も行動せず、ただ悶々としていると、どんどんネガティブな思考にはまっていくものです。「自分は認められていない」「役に立っていない」「存在価値がない」などと、実際にはそうではなくても、マイナスの思考にとらわれるようになってしまいがちです。悶々と考えて動かない、ということは絶対に避けてください。
仕事が暇で辛いときは、転職を検討する選択肢も
仕事が暇で辛いのであれば、まず先に挙げた7つの対処法のうち、自分に合うものを試してみてください。
暇を感じるということは、自分が優秀であるからこそ、今与えられている仕事に物足りなさを感じるのかもしれません。それであれば、「もっと難易度が高い仕事をください」と意思表明しましょう。それによって成果やスキルアップにつながり、会社の評価が高まる可能性がありますので、安易に転職してしまうのはもったいないことです。
ただし、対処法を試してみても悩みが改善されないのであれば、転職も選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。
暇と感じる時間があることを「チャンス」として活かそう
昨今は人手不足で、余裕がない職場が多く、世の中全体がバタバタしている状況です。そうした社会にあって、「暇」と感じるということは、ある意味「チャンス」であるとも捉えられます。目の前の仕事をこなすことに追われるのではなく、自身の内面に向き合い、考えを深く掘り下げられるのですから。
振り返り、教訓化し、再度試していくサイクルを回していくことで、成長につながります。ぜひ与えられた時間を有効活用してください。
株式会社人材研究所・代表取締役社長 曽和利光氏
1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャーなどを経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)など著書多数。新刊『部下を育てる上司が絶対に使わない残念な言葉30』(WAVE出版)、『シン報連相~一流企業で学んだ、地味だけど世界一簡単な「人を動かす力」』(クロスメディア・パブリッシング)も話題に。