「会社とは何か」と聞かれたら、あなたはどう答えるか?ーー『マネーの拳』に学ぶビジネス格言

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。今回は、三田紀房先生の『マネーの拳』をご紹介します。

『マネーの拳』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

ここでは、私がオススメする名作マンガの一コマを取り上げます。これによって名作の理解を深め、明日のビジネスに生かしていただくことが目的です。マンガを読むことによって気分転換をはかりながら、同時にビジネスセンスも磨くことができる。名作マンガは、まさに一石二鳥のスグレモノなのです。

©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「あなたにとって、会社とは何ですか?」

(『マネーの拳』第5巻 Round.44より)

地元・秋田の高校を中退した花岡拳(はなおかけん)は、友だちの木村ノブオとともに上京。花岡は、偶然始めたボクシングによって才能が開花し、世界チャンピオンにまで上り詰めます。

その後、ボクシングを引退した花岡は、タレント活動をしながら居酒屋を開業しますが、経営は思うようにいきません。そんな時に知り合ったのが、通信教育業界の成功者・塚原為之介会長でした。花岡は会長の教えを受けながら、ビジネスの世界でも頂点を目指すべく、新しいビジネスをスタートさせますが…。

「会社とは何か」と聞かれたら、あなたはどう答えるか?

Tシャツ専門の直営店を出して大成功を収めた花岡。海外出店も順調で、ネット通販の将来性も十分です。次にどこを目指すべきなのか、と思いあぐねた花岡は、ビジネスの師匠である塚原会長に相談。会長は花岡に株式の公開を勧め、証券アドバイザーの牧を紹介します。

やってきた牧は、花岡に株式公開のメリットとデメリットを説明。その上で、ある質問を投げかけます。それが「社長にとって、会社とは何ですか?」でした。花岡の出した答えは「会社とは、1人でも多く雇用し、給料を支払うことだ」というもの。その答えを聞いた牧は、「こんなに簡潔にキッパリと言い切る経営者はなかなかいない」と言います。

「これならいけます。上場しましょう!」と言う牧。しかし、花岡は「この男を本当に信用していいのか?」と踏み止まります。実のところ、花岡は師匠の塚原会長のことも、純粋に信じているわけではありません。「弱肉強食であるビジネスの世界において、すべては自己責任。自分の身は、自分で守るしかない」ことを熟知している花岡は、「もう少し慎重に協議を重ねて結論を出したい」と返答するのでした。

相手が答えに窮するような質問をすることの有用性

新しく登場してきた証券アドバイザーの牧は、敵か味方か、まだわかりません。相手がどのような人物なのか見極めがつかない花岡は、警戒姿勢を崩しません。ところが、私たちはたいてい“知人の紹介”には弱いものです。普通なら信じないような話であっても、「この人の言うことであれば」というので、盲目的に信じてしまう傾向があります。

私は現在、金融の専門家と組んでマネースクールを運営しています。ここに相談が寄せられる失敗事例の多くが、他人の情報をそのまま鵜呑みにし、判断までを情報提供者に依存してしまっているケースです。つまり、自分で考えることまでを放棄しているのです。そのため、後になって思った通りに行かなかったと悔やむ結果になってしまいがちです。そんな傾向がある方でも、原因が自分の勉強不足にあったと考えることができた瞬間から着実に好転します。たしかに、情報は人が媒介しますが、価値は100%受け手が決めるのですから。

©三田紀房/コルク

あえて「正解のない」議題を話し合う

さて。今回の「本日の一言」に取り上げた、牧からの質問「会社とは何か?」というのは、個人的にはとてもいい質問だと思います。こう聞かれたら、おそらく大部分の人が戸惑うのではないでしょうか。実はこういう「正解は1つではない」という議題について、会社で話し合うことは非常に有効です。

通常、社内の勉強会というと、「専門的な知識を深めよう」という内容のものが一般的です。しかし、会社で働くとは、技術をもって業務を遂行するだけに止まらず、「仲間と協力して苦労を分かち合う」とか「同じ目的に向かってともに努力する」などといった側面もあります。「結束力を高める」「お互いを理解し合う」などのために、もっと双方が考えていることを知る機会があってもいいのではないでしょうか。

誰もが知っていて、普段、当たり前に使っている言葉ほど多様性があり、深い意味を持っています。言葉の大切さに触れることを通して、仲間同士の絆が深まれば、仕事に対する姿勢も変わってきます。私の会社では、有志でこうした勉強会を定期的に行い、一定の成果を上げています。よかったら、あなたのチームでも試してみてはいかがでしょうか。

会社とは単なる「器」にすぎない

議題としては、先ほどの「会社とは何か?」以外にも、例えば「顧客とは何か?」「店長とは何をする人か?」などにすると、いろいろな意見が出るでしょう。これらを話し合う目的とは、必ずしも答えを1つにすることではありません。参加している人が、「そうか、そういう考え方があったのか」とか「自分はまだまだ、そこまで考えが及ばなかった」といったように、お互いの視野を広げるキッカケとすることです。

ちなみに、私が考える会社とは「器」のことです。つまり「会社自体は、単なる容れ物・箱にすぎない」というのが、私の見方です。会社という器の中に、商品やサービスを用意し、スタッフがいて、ようやくその器は意味を成します。人がいてこそ、会社に命が吹き込まれるのです。ですから、会社を盛り立ててくれるスタッフには、いつだって感謝しかありません。

俣野成敏(またの・なるとし)
30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン()』及び『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?()』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」()』を上梓。著作累計は38万部。2012年に独立、フランチャイズ2業態5店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、『日本IFP協会公認マネースクール(IMS)』を共催。ビジネス誌の掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』1位に2年連続で選出されている。一般社団法人日本IFP協会金融教育研究室顧問。

俣野成敏 公式サイト(

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