【医師に聞く】「眠れない」原因は自律神経にあった!不眠解消に効く「1日1分」呼吸法

在宅ワークの拡大など働く環境が大きく変わり、心身ともに「何となく不調」を抱えているビジネスパーソンが増えているようです。中でも、「なかなか眠れない」「眠りが浅い」など、睡眠に関する不調を訴える人が多いとか。
そこで、自律神経研究の第一人者であり、数多くのトップアスリートやアーティストなどのコンディショニング、パフォーマンス向上を手掛ける、順天堂大学医学部教授の小林弘幸先生に、睡眠の悩みを軽減する方法を伺いました。

ストレッチをするビジネスマンのイメージ

プロフィール

順天堂大・小林教授プロフィール画像順天堂大学医学部教授・小林弘幸先生

1960年、埼玉県生まれ。 順天堂大学医学部教授。日本体育協会公認スポーツドクター。順天堂大学大学院医学研究科(小児外科)修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属医学研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学小児外科講師・助教授を歴任。自律神経研究の第一人者として、多くのアスリートの指導にかかわっている。80万部突破となったベストセラー『医者が考案した長生きみそ汁』のほか『自律神経を整える「長生き呼吸法」』『医者が考案した 聞くだけで自律神経が整う15曲』(いずれもアスコム刊)など自律神経に関する著書多数。

自律神経が整えば、睡眠の悩みが一気に軽減する

新型コロナウイルス感染症拡大など昨今の不安定な社会情勢を受けて、眠れない、眠りが浅い、寝ても疲れが取れないなど「睡眠」に関する悩みを抱えている人が増えています。実は、これらの症状はすべて、「自律神経の乱れ」が原因です。

自律神経は、脳から指令を受けなくても独自に機能している「人体の生命維持装置」。呼吸、脈拍・血流、消化・呼吸、免疫機能、体温調節などを司っています。自律神経が整えば、腸内環境が整い、血流がアップし、きれいな血液を前進にたっぷり行き渡らせることができます。

しかし、自律神経は簡単に乱れるもの。連日報じられているコロナウイルスのニュースが心理的ストレスになって自律神経を乱れさせるケースもありますし、ステイホームによる運動不足もそう。低気圧など天候変化も、自律神経を乱れさせる要因として知られています。

自律神経が乱れると、まず睡眠に影響が出て、寝付けなかったり眠りが浅くなったりします。するとますます自律神経が乱れ、イライラが募り、倦怠感も増していく…という悪循環に陥ってしまう恐れが。自律神経を整えることで、この悪循環を断ち切ることが重要です。

そこで、注目してほしいのが「呼吸」。自律神経を整える唯一無二の方法が呼吸なのです。

横隔膜の周囲には、意識しなくても呼吸ができるよう、自律神経が集まっています。ゆっくり深く息をすると、横隔膜の動きがより大きくなり、自律神経が刺激され副交感神経が高まります。つまり、深く呼吸をするだけで「自律神経が整う」のです。

短時間でもいいから、意識して「ゆっくり、深く、呼吸する」時間を設けるだけで、自律神経が整い、睡眠の悩みも改善するはず。忙しいビジネスパーソンにこそ、ぜひ試してみてほしいですね。

 

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1日1分の「6秒吐いて、3秒吸う」で、安眠が叶う

自律神経を整える呼吸法は、「6秒吐いて、3秒吸う」が基本。
6秒間、口からゆっくりゆっくり息を吐き、鼻からすーっと3秒間息を吸い込む。これだけです。まずは1日1分でOK。1分でも十分に効果を実感できますし、すきま時間にも気軽に行えるでしょう。

「なかなか寝付けない」「眠りが浅い」という場合は、就寝前に行うと効果的。この「6秒吐いて、3秒吸う」呼吸法を1分間、できれば3分間ほど行うと、自律神経が整い、リラックスして眠りにつくことができます。全身に酸素や血液が巡るイメージを持ちながら行うと、より効果を実感してもらえると思います。

●「基本の呼吸法」

「6秒吐いて、3秒吸う」の呼吸はいつでもどこでも、思いついたときに行えばOK。もしも時間の余裕があれば、以下のように姿勢に注意しながら行うと、より効果が期待できます。

基本の呼吸法 実践イメージ
出典:『自律神経を整える「長生き呼吸法」』(アスコム)

1.まずは基本姿勢を整える
足を肩幅に開き、肩の力を抜いてまっすぐに立ちます。両手はお腹の横に置くと、腸のマッサージ効果も期待できます。

2.6秒、口から吐く
上体を前に軽く倒しながら、ゆっくり、ゆっくり息を吐きます。
息を吐きながら両手を使いわき腹の肉をおへそにぐっと集めるイメージで、腸に刺激を与えるといいでしょう。

3.3秒、鼻から吸う
背中をそらしながら、ゆっくり息を吸います。
息を吸いながら、超に刺激を与えていた両手の力を緩めていきましょう。

 

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「呼吸法+寝る前のエクササイズ、3行日記」で、さらに質のいい睡眠を目指す

「6秒吐いて、3秒吸う」の呼吸法に、毎日できる「ちょっとした工夫」を加えると、さらに自律神経が整い、さらなる睡眠の質改善が期待できます。気軽にできそうなものを追加してみてはいかがでしょうか?

●「エクササイズ」で副交感神経を優位にする

自律神経は、交感神経と副交感神経によって構成されています。交感神経の働きが上がると気持ちは高揚し、副交感神経の働きが上がるとリラックスします。この2つのバランスが重要なのですが、我々を取り巻く今の環境はどうしてもストレス過多で、交感神経が優位になってしまっていることが多いのです。

質の良い睡眠を取るためには、寝る前に副交感神経を優位にすることがポイント。夜、「6秒吐いて、3秒吸う」呼吸法に、このエクササイズを追加すると、全身からほどよく力が抜け、リラックスして眠りにつけるようになります。

快眠に効くエクササイズ 実践イメージ
出典:『自律神経を整える「長生き呼吸法」』(アスコム)

1.足を肩幅に開いてまっすぐ立つ
2.全身をできるだけ上へ伸ばす
3.手首をクロスさせる
4.一気に脱力して、6秒息を吐く
5.元の姿勢に戻って、3秒息を吸う

これを、寝る前に10回行いましょう。

●「3行日記」でその日の嫌なことを吐き出す

「3行日記」とは、その日の「一番失敗したこと」「一番感動したこと、嬉しかったこと」「明日の目標」の3項目を、1行だけの簡潔な文でまとめるものです。1日の終わりにこの「3行日記」をつけながらその日1日の嫌なことを吐き出し、嬉しいことを思い出すことで副交感神経が高まり、質の高い睡眠につながります。

自分の過去や未来のことに思いを馳せながら、必ず手書きでゆっくりと、丁寧に文字を書くことで、すっと呼吸が落ち着きます。この後に「6秒吐いて、3秒吸う」呼吸法を行えば、穏やかな気持ちで睡眠に入れるでしょう。

呼吸法にこれらのエクササイズや日記を組み合わせても、1日10分程度です。まずは1日1分の呼吸法を取り入れ、慣れてきたら+αを取り入れてみてください。寝つきが良くなり、朝すっきりと目覚められるようになるはず。気持ちが穏やかになり、リラックスできている自分にも気づけると思います。

 

EDIT&WRITING:伊藤理子
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