競争に「生き残る」ために必要なのは、“トラック2周分”の差だーーマンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー(→)。今回は、三田紀房先生の『インベスターZ』です。

『インベスターZ』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい奥深い一言をピックアップして解説します。

©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「2周差がつけば海外企業は追うのを諦める」

(『インベスターZ』第7巻credit.59より)

大人気マンガの『インベスターZ』より。創立130年の超進学校・道塾学園にトップで入学した主人公・財前孝史は、各学年の成績トップで構成される秘密の部活「投資部」に入部します。そこでは学校の資産3000億円を6名で運用し、年8%以上の利回りを上げることによって学費を無料にする、という極秘の任務が課されているのでした。

「他社に勝つ方法とは、圧倒的な差をつけること」

道塾学園を創設・管理する藤田家から、ベンチャー企業への投資を許可され、そのための資金として15億円を託された財前。「海外に負けたくない」と考える財前は、「日本のバイオ関連のベンチャー企業に投資をしよう」と思い立ち、ミドリムシを商品化した企業に興味を持ちました。

ミドリムシは、その辺の田んぼにもいる平凡な微生物ですが、体内で光合成を行うと同時に動き回ることもできるという、植物性と動物性の両方の特徴を兼ね備えています。ミドリムシの体内には59種類もの栄養素があり、さらに燃料としての利用価値もあるとして、その有用性は、研究者の間ではよく知られていました。ただ、大量培養できないことが長年の課題でした。

財前は先輩の月浜とともに、その大量培養に成功した、という企業を訪れます。すると、社長が自ら面会に応じてくれました。財前たちに向かって、社長はこのように話します。「わが社は現在、トラック1周分、他社を引き離している。これを2周分にできれば、他を完全に引き離して市場で圧勝できる。細かい顕微鏡動作が得意な日本の強みを発揮すれば、それは十分に可能だ」と。

ビジネスも投資である以上、リターンが見込めなければ出資はできない

上記では、ビジネスにおける競争を、トラックで走る陸上競技にたとえています。実際の陸上競技では、すでに1周分の差がついていれば、ほぼ順位を逆転されることはないでしょう。しかし、ビジネスにおいては、資金と人員を大量投入すれば、まだ順位を覆される可能性は残っています。ビジネスには基本的に終わりがないため、常に他社に挽回される危険性はあるからです。

それでもトラック2周分の差がついてしまえば、「特に合理的精神を持つ外国の企業は、自前で開発することをあきらめる」と『インベスターZ』では述べています。資金力のある大手や外資であっても、ビジネスが営利目的である以上、出資した金額以上のリターンが返ってくる見通しが立たなければ、お金は投じられません。

ビジネスには「早く参入した者が有利になる」という特質があり、「先駆者としての経験知は、大きな財産となる」ことを示しています。後発組がいくら資金を投じても、先発組がはるか先を行っていれば、その差を縮めることには限度がある、というわけです。

©三田紀房/コルク

大きい会社は、身動きも取り難い

実は今回のお話は、主にベンチャー企業が競争に勝つための戦略について述べています。例えばミドリムシを例にとると、ミドリムシの有用性については、前々から知られていました。しかし、商品化には「ミドリムシの大量培養」という課題を克服する必要がありました。

もしかすると、ここまで聞いて「ミドリムシが有用とわかっていたのに、なぜ大手は先に開発を行わなかったのか?」と思った人もいるでしょう。一般に、大手企業は知名度があり、安定的な売れ筋商品を持っているので、かえって新しい分野に対しては消極的になる傾向があります。もともと彼らは関係者が多いため、成功するかどうかわからない新規分野に参入しようとすると、あちこちから反対の声が挙がるのが常です。

その点、ベンチャー企業は関係者も少なく、比較的身軽に行動できます。逆に知名度がない分だけ、普通の商品を出しても売れません。仮に同じ商品が並んでいた場合、ユーザーが選ぶのは、よく知っているメーカーの商品です。ですからベンチャー企業は、できたばかりの市場に参入するか、自ら新しい市場をつくることが主な企業戦略だと言えます。

可能性に賭けられるのが、ベンチャーの強み

まとめますと、市場とはだいたい次のように形成されるのが一般的です。

(1)(多くの場合)ベンチャー企業が新しい市場を切り開く
(2)市場が成長し始めると、多くの企業が参入してくる
(3)大手企業が大資本のもとに参入してくる

最初にベンチャー企業が新しい市場に参入し、ある程度、市場の将来性が見えてきたころから競争が激しくなり、コンプライアンス等も作成されます。大手が参入してくるのは、たいていこのあたりです。よって、そうなる前に彼らが参入をあきらめるよう、「2周の差をつけておく」のがベンチャー企業にとっての必勝法です。

こうした過程を経て、市場の一角を占めることに成功した企業が、一時代を築くことを許されるのです。

マンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス 第47回

俣野成敏(またの・なるとし)
30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン(→)』および『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?(→)』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」(→)』を上梓。著作累計は42万部。2012年に独立、フランチャイズ2業態5店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、『日本IFP協会公認マネースクール(IMS)』を共催。ビジネス誌の掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』1位に2年連続で選出されている。一般社団法人日本IFP協会金融教育研究室顧問。

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