伸びる人の3大共通点「素直」「好奇心」あと1つは?―Yahoo!アカデミア 伊藤羊一

入社時は同期と一斉スタートを切ったはずなのに、数年経つといつの間にか差ができている――デキるアイツと自分は、一体何が違うんだろう……そう思ったことはないだろうか?

今回はヤフー株式会社の企業内大学「Yahoo!アカデミア」の学長を務める伊藤羊一さんに、伸びるビジネスパーソンに共通する3つのポイントについて教えていただいた。

プロフィール

伊藤 羊一 (いとうよういち)

ヤフー株式会社 コーポレートエバンジェリスト/Yahoo!アカデミア学長/株式会社ウェイウェイ代表取締役
東京大学経済学部卒。1990年に新卒で日本興業銀行入行、企業金融、事業再生支援などに従事。2003年プラス株式会社に転職し、ロジスティクス再編、事業再編などを担当後、2011年より執行役員マーケティング本部長、2012年より同VPとして事業全般を統括。
2015年4月にヤフー株式会社に転じ、次世代リーダー育成を行う。グロービス経営大学院客員教授としてリーダーシップ科目の教壇に立つほか、多くの大手企業やスタートアップ育成プログラムでメンター、アドバイザーを務める。

独りでできる「成長」には限界がある

成長する人の共通点、1つ目は「斜に構えていない」……つまり「素直である」こと。これが後の2つの大前提になると伊藤さんは語る。

伊藤さん「斜に構えている人は、独力で改善しようとするので、ある程度は成長します。そのまま伸びればいいのですが、結局独りでできる成長には限界があるので、いずれ伸び悩んでしまうんです。一方、人の意見を聞き入れながら真面目に取り組める人は、外からの刺激を受けて一気に成長できるタイミングがあるんです」

自分の力だけで進むのと、チームや外からの刺激を成長材料として取り入れるか、どちらがより成長できるかは明らかだろう。


2つ目のポイントは「Action(行動)・Skill(能力)・Mind(思考)のサイクルを回す」ことだ。

氷山を思い浮かべてほしい。一番上の目に見える部分が「Action」でその水面下にはSkillとMindがあるとする。Actionだけしていても成長はできるが、いずれ限界がくるのでSkillとMindも鍛える必要がある。SkillとMindは、鍛えたらまたすぐActionに移すことが重要だという。

伊藤さん「鍛えるだけでなく、自分のActionをいかにSkillやMindに反映させるかも大事です。そのためには『振り返り』が必須。自分がやったことを事実として並べて『つまり何なんだ?』と自問自答することで気づきを得る。振り返ることによって、自分のSkillやMindに気づき・学びがインストールされるんです。そしてそれをまたすぐにActionに落とし込むというサイクルを習慣にすることが重要です」

現時点で習慣になっていなくても、習慣化に挑戦することで成長につながる――と伊藤さんは断言する。SkillやMindを鍛えようとするだけでは不十分。成長するためには「振り返り」がキーなのだ。

活用すべきは「日記」と「メンター」

では具体的にどのように「振り返り」を行えば良いのだろうか?
一番簡単なのは、日記を書くこと。伊藤さんも毎日書いているという。その内容は「今日一番印象的だったこと」。

伊藤さん「印象的だったことに対して、それはつまり何なのか、自分にとってどういう意義があることなのかを考えます。たとえば先ほどの成長サイクルの話をしたときに、興味深そうに聞いてくれる人がいたら、その人はもしかすると別の成長の仕方をしてきたのかもしれない。人の成長にはいろいろな方法があるんだな、という気づきを得られます」

日記は後で読み返すためというより、言語化する過程で「こういうことなんだ」と客観視するのが目的だ。TwitterやFacebookなどSNSで発信するのでも構わないが、「つまり何なのか?」を必ず考えることが重要だという。

メンター(指導者、助言者、理解者)との対話」も有効だ。仕事でモヤモヤしてしまうのは、たいてい「内省(=振り返り)と対話」が足りていないからだと伊藤さんは語る。

伊藤さん「利害関係がなく、仕事の話ができる存在は非常に重要です。自分で考えているだけだと思考が無限ループに陥ってしまうこともありますが、メンターから質問をされることで『こういうことかもしれない』という気づきが得られます

「メンターになってほしい」と誰かに依頼することは、なかなか恥ずかしいかもしれないが、勇気を振り絞ってでもメンターはいるほうが良いと伊藤さんは言う。
メンターにはアドバイスは求めず。ひたすら壁打ち相手として話を聞いてもらい、時にメンターからの質問に応えるだけで思考がスッキリしてくるはずだ。

Yahoo!アカデミアの合宿でも、伊藤さんは毎回対話のセッションを設けている。
4人1組で1人20分=1セッションとし、冒頭7〜8分で過去の話をする。そこで気づいた自分の「譲れない想い」まで言語化してもらう。さらにそれを踏まえて将来どうありたいか、どうしたいかを話す。後半12〜13分は残りの3人からひたすら質問攻めをしてもらう。それによって「気づき」を得るのが基本フォーマットだ。仮に早く話し終わったからといって、次に進まず20分を使い切ることがポイントだ。
セッション後、多くの参加者は「こんなこと、職場では話したことがない!」と驚きを口にするという。

伊藤さん「セッションでは聞き手側の質問力も問われます。僕はマネジメントは『ちゃんと質問できる人』と定義しています。ヤフーでは1on1という個人面談を定期的に実施していますが、この対話セッションはいわば『3on1』。マネジメントの訓練にもなるんです」

「すげぇ!やべぇ!」と声に出してみよう

成長する人の共通点、3つ目は「面白いことに気づく力」。
ビジョンを描いたり、成長のサイクルを回し続けたりするためには、最初の時点で「スターター(起動する力、きっかけ)」が必要だと伊藤さんは言う。

成長力の高い人は、面白いことに気づく力、いわゆる「好奇心」が圧倒的に強い。例えば最新のiPhoneやデジタルガジェット発表のニュースを見て「面白い!」と食いつける人などだ。世の中のさまざまなニュースや出来事に好奇心を持てるかどうかは、成長する上での基礎になる重要な要素といえる。

一般的には、好奇心が旺盛かどうかは先天的な資質である……といわれるが、伊藤さんは後天的に好奇心を育む手法を開発したのだと語る。

伊藤さん「ソフトバンクアカデミア(孫正義氏の後継者発掘・育成を目的とした企業内学校)に通っていた頃、周りには好奇心バリバリの優秀な人ばかりでコンプレックスを感じていました。当時の僕は、あまり好奇心がないタイプでしたから。
このままでは対抗できないと思い、彼らをひたすら観察しました。すると『すげえ!』と『やべえ!』という2つの言葉を多用していることに気づいたんです(笑)」

そこから伊藤さんは、彼らが「すげえ!」と言うニュース&トピックスを見ては、実際に「すげえ! やべえ!」と声に出してみることにした。脳科学者の茂木健一郎さんによると、「すげえ!」と声に出したものは、「すげえ!」というタグ付けが自動的に行われ脳に記憶されやすいのだという。

伊藤さんは「涙ぐましい訓練だった」と振り返るが、「すげえ!」と声に出すことで周りの人が「なになに?」と寄ってくる効果も生まれ、何がすごくてヤバいのか議論する習慣が生まれたそうだ。結果として好奇心を身につけることができたのだという。

成長サイクルを回し続けるのに必要な3つの「Lead」

成長のサイクルを回し続けるのも、好奇心を養うために「すげえ! やべえ!」と声に出すのも、根本は「気合と根性」の世界だと伊藤さんは語る。

伊藤さん「気合と根性は、世の中に対する希望や、自分に対するポジティブな想いから生まれます。スタートアップを立ち上げる人や、大企業の中で圧倒的な成果を出す人は、社会を動かす『Lead the Society』になりますが、いきなりは難しい。その前に『Lead the People(人を動かす)』があります。まずは社会を変えるような大げさなことではなく、人をマネジメントすること。それをやっていれば自然と『Lead the Society』になっていくんです」

「Lead the People」の前提には、自分が熱狂していることが大切だ。それが「Lead the Self(自身を動かす)」。組織にいると役職がついた途端に部下ができるのでイメージしにくいかもしれないが、自分が熱狂しているうちに、だんだん周りの人が付いてくるようになる。スタートは「自分自身がリードされる」ことだ。

「Lead the Self」のベースには、未来に対する何らかの想いがある。未来といっても「このチームのみんなが元気でやっている」「3年後こんな仕事ができたらいいな」など小さなことでも構わない。

その未来は、現在の自分の譲れない想い、いわゆる「信念」から作られると伊藤さんは言う。とはいえ、自分の信念を意識している人は決して多くはない。

伊藤さん「信念っていうと大げさに聞こえるかもしれないけど、思い出せばきっとあるはずなんです。僕は『フラット』であることに非常にこだわっていると気づいて、それが信念だと思っています。信念は作るものではなく、自分の中にすでにあるもの

譲れない想いは人それぞれ違うが、伊藤さんにとっての「フラット」のように、誰しも「何かあるとスイッチが入る」ことはあるはず。
自分の信念や譲れない想いに気づいていない人は、もしかしたら「振り返り」が足りないからかもしれない。でも、自分の人生は自分でケアするしかない。世のため人のためを考える前に、まずは自分のために貪欲でいてもいい。

自分はどんなことを考えている人間なのか、何にワクワクするのかを考える。いきなり「志」と言われても難しいので、まずは自分のことを好きになる。
そのために自分の過去をちゃんと振り返ってみると、案外「自分は今までダメだと思っていたけど、結構がんばってきたな」「大したことはできないけど、ここはしっかりやりたいな」という気づきが得られると伊藤さんは教えてくれた。

▲伊藤さんの半生を振り返ったグラフ

まずは「今日一番印象的だったこと」と、それに対する気付きを日記に書くところから始めてみてほしい。振り返り、成長のサイクルを回すことで、きっと「Lead the Self」、自分で自分の人生を生きる実感が持てるようになるはずだ。

文・筒井智子 写真・小澤亮 編集・鈴木健介

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