【マンガでわかる】AIや自動化で「仕事がなくなる」は間違い?クラウド時代の運用者の歩き方― 『運用☆ちゃん』Incident 009

いつもサービスを支えてくれているシステム運用の人たちの仕事の苦労や醍醐味を妖精「運用☆ちゃん」が、2年目システム運用担当者・海野遥子(うんの ようこ)と体当たりでお伝えする本連載『運用☆ちゃん』。

前回、海外でのシステム運用管理者のプレゼンスの高さに驚き、運用自動化、AI、クラウド化で自分たちの仕事がなくなってしまう不安を感じつつ、「いやいや、運用のノウハウとスキルの重要性はますます高まるはず!」と決意を固めた遥子。でも、明日を生きる運用のプロになるためには、どうしたらいいの?

アイレット木檜さんが語る!クラウド時代の運用者の歩き方



Q1.アイレットってどんな会社なんですか?


えーと、アイレットさんってそもそもどんなことをしている会社なんですか?
(すみません、この妖精に突然連れてこられたもんで……)


AWSを基盤としたITサービスのインフラ設計から構築、運用までトータルで提供する「cloudpack(クラウドパック)」と、アプリケーション開発などを手掛ける「システム開発事業」を提供している会社です。詳しいサービス内容はこちらをご覧になってくださいね。


(だ、だぶりゅーびーえす……って何!?)


AWS(エーダブリューエス)。Amazon Web Servicesの略。
(Amazon.comが提供している、クラウドサービスよ!)


すごい!最先端を走っていらっしゃいますね!

Q2.木檜さんの現在のお仕事内容を教えてください


「cloudpack」の提供するサービスにおいて、”SRE”として、あるクライアントさん向けにAWSを活用したインフラサービスの提供と改善を行っています。


え、エスアールイーって何ですか? 木檜さんは運用担当ではないんですか?


あはは。運用を中心に、ITサービスを安定して提供するための工夫と改善を繰り返す役割といった感じかな?


いま、「運用を中心に」……っておっしゃいました!?(末端じゃなくて?)


SREはSite Reliability Engineeringの略で、米国Google発のITサービス提供手法と言われているわ。


??? いまいち、ピンとこないんですけど……


顧客のビジネスニーズや、外部環境の変化に合わせて価値あるITサービスを提供するためには、与えられたシステムをただ運用しているだけではダメ。常に最新の技術やトレンドをキャッチアップして、スピーディーに改良していかないといけないわ。新しいクラウドサービスを組み込んでみたり、APIを作って連携させたり。


そう。運用☆ちゃんの言うとおり。まさにシステムの利用、すなわち運用を中心に、企画をしたり、開発をしたり、改善をしたり、クラウドを利用したりと柔軟にITサービスを提供する考え方なのですよ。図にすると、こんな感じかな。


ほんとうに、運用が中心に回っているのね!(私の現場とは大違い…)

Q3.木檜さんはどんなキャリアパスを歩んで来られたのですか?


実は、私はもともと運用のエンジニアではなかったのです。


えっ!?そうなんですか?まさか、歌手だった……とかですか!?


歌うのは嫌いじゃないですね。いえいえいえ、もともとはプログラマーだったんです。新卒で入社した会社では、C言語を使った開発をしていました。オンプレミス(※1)畑でしたよ。

※1:オンプレミス型
情報システムのハードウェアやソフトウェアを、自社で購入/構築して利用する形態。クラウドサービスが普及する以前は、一般的なスタイルであった。


最初から運用の専門家だった訳ではないのですね!


で、あるとき会社から「インフラやってみないか?」って言われましてね。最初はイヤイヤだったのですが、やってみたらこれが面白い!


面白い……!?どんなところがですか?


システム全体を俯瞰できるようになったんですね。開発もやって、運用もやって。一気に視野が広がった。そして、あるとき気づいたのです。


むむっ!


開発も運用も、すべてが平等に大事だって。


平等に大事!


そうです。よく上流とか下流とかって言うじゃないですか。


(ピングっ!?)


ああ、運用☆ちゃんが大嫌いなコトバを……


上流=設計(開発)、下流=運用みたいな風潮がある。でもそれっておかしい。単にシステム作りのフェーズが違うだけなのです。なのに、従来のオンプレミス型主流のウォーターフォール型(※2)の開発では、運用が登場するのは最後。開発がつくったものを、そのまま押しつけられる感じですよね。

※2:ウォーターフォール型
従来のソフトウェアの開発手法の一つ。開発工程を、要件定義→設計(外部設計、内部設計)→プログラミング→テスト→運用のフェーズに分けて順に進めるやり方。水が上流から下流に流れ落ちるがごとく進んでいくことから、ウォーターフォールと呼ばれる。


むむむ……。


システムがお客様の利益を生み出すのは、間違いなくリリースしてから。すなわち、運用フェーズなんです。運用を中心に、新たなサービスの発想が生まれて、新しい仕事が増える。

しかし、ウォーターフォール型ではなかなかそれがうまく機能しない。川を流れる水は海に注げど、上流に戻ってこない。海の水は蒸発して雨となってまた川に戻るのがあるべき姿です。つまり、運用の知見がノウハウとしてシステム全体を熟成させていくべきなのにそれができていない。運用の知見がノウハウとして還元されにくい。そこにもどかしさを感じるようになりました。

Q4.木檜さんがクラウドにシフトしたきっかけを教えてください


従来のオンプレミス型の、「作ったら終わり」のスタイルに納得いかなかった。自分が作ったシステムを、主体的にきちんと運用していきたい。
しかし、オンプレミスの運用担当ではそうはいかない。他人が作ったシステムを、オペレーションするだけ。それでは楽しくないし、自分も成長できない。そこで、AWSを使ったサービスを展開する今の会社に転職しました。

Q5.AWSを使うようになってから、どんな変化がありましたか?


いろいろありますよ。まず、運用中心の仕組み作りを考えるようになりましたね。


例えば、どんなことでしょう?


例えば、サーバ100台に設定作業をするとしましょう。昔は1台ずつ、順に設定作業をしていた。


気が遠くなりそうね…… 作業ミスのリスクもあるわ。


いまなら、Docker(※3)やAnsible(※4)を使ったり、クラウドやその周辺サービスを使うことで仕組み化して効率よく作業をこなすことができます。

※3:Docker
Docker社が開発した、仮想化環境を提供するオープンソース(ソースコードが無償で公開され、改良や再配布が許可されているソフトウェア)ソフトウェアの1つ。コンテナ型と呼ばれ、文字通りコンテナを積むかのごとくITサービスをインフラ上に積んで細切れで利用することができる。※4:Ansible
オープンソースの構成管理ツール。物理サーバやクラウドなどのITインフラの構成管理、および運用作業の自動化を行うことができる。


なるほど! ほかにはクラウドにどんなメリットを感じていらっしゃいますか?


調達がとにかくラクになりました。
いままでのオンプレミスのやり方だと、キャパシティを拡張するのも一苦労。サーバを追加購入したり、ストレージを買い足したりするのに、いちいち稟議書を書いて、決裁を取って。煩雑な事務作業に振り回される。そこから購買部門がベンダと価格交渉したりと、時間もかかる。


あぁ、わかります。稟議書に不備があると差戻しされたりとか、もどかしいですよね。


でしょ! その点、クラウドはラクです。必要な時だけ、必要なキャパシティや機能を買って、要らなくなったらすぐやめられる。都度の稟議が不要。
エンジニアが稟議書を書く事務作業から解放され、エンジニア本来の仕事に集中できるようになる! このメリットは大きいですよ。


たしかに、大きい!


運用人材のキャリアの面でのメリットもありそうよね。


ありますね。運用者はクラウドやったほうがいいです!
ただ手を動かせるだけのオペレータはこれから先、生き残るのに苦労するでしょう。一方で、AWSをはじめとするクラウドを中心に、ITサービス全体を俯瞰してデザインできるSRE人材は間違いなく価値が高い。


間違いないですね!


お客様との関係も密になり、受注者/発注者の関係からともにサービスを育てていくパートナーの関係に進化できる。オペレータではそうはいかないですよね。そして、SREができる人材はまだ日本では希少。いまがチャンスですよ!


いまがチャンス!

Q6.最後に、運用の皆さんへのメッセージをお願いします!


そうは言っても、いまの現場がオンプレミス&ウォーターフォール型である限り、クラウドを経験するって難しいと思うんですよね(私の現場もそうですし)。どうしたらイイのでしょう……?


クラウドを使うかどうかは、手段の問題でしかありません。それよりもまず、開発と運用の垣根を越えてほしいです。壁を作らず、企画や開発プロジェクトにも顔を出してみる。そうすると視野が広がります。「私はSREです!」と名乗ってしまってもイイと思いますよ。宣言して行動する。それと…。


それと?


従来のオンプレミス型であっても、実業務を通じて経験学習できることはたくさんあります。たとえば、日々発生するインシデント。ただ単に検知して、エンジニアやベンダにエスカレーションしているだけでは、オペレータから脱却できない。「自分だったらどう切り分けをするか?」「自分ならどう解決するか?」対応策まで主体的に考えるクセをつけてください。なんなら解決しちゃってもいい。


いまの環境でも、できることはあるのね!


オンプレミス型のシステムの運用で経験した、インシデントや問題の切り分け力、対応力、あるいは勘所は間違いなくクラウドでも役に立ちます。
オンプレミスって、すごく勉強になるんですよ!


そう言われると、いまの環境でも十分成長できる気がしてきました! なんか、勇気もらったかも……。


そうよ、運用の未来は明るいのよ!


遥子さんも、SRE目指して楽しく頑張りましょう!


はい!ありがとうございましたっ!

そうだ!運用の未来は明るい!!


—第10話(Incident 010)につづく
『運用☆ちゃん』連載はこちら

登場人物紹介

運用☆ちゃん

妖精。ある日、遥子のもとにやってきた。システム運用業務の認知の低さ、運用者のモチベーションの低さを嘆き、空から舞い降りた。彼女の使命は、運用のプレゼンス向上、価値向上、そして運用者の誇りの醸成。好きな言葉は「ありがとう」。好物は、かき氷ブルーハワイ(嫌なことがあるとやけ食いする)。
見た目も言動も幼い感じだが、実は65535歳らしい。

海野 遥子(うんの ようこ)23歳

大手製造業 日景(ひかげ)エレクトロニクスの情報システム子会社に勤める2年目社員で、認証基盤システムの運用担当。クラスの端っこで目立たないような女子。今日もサーバルームで、システム監視したりパッチ当てたりと目立たぬ日々を送る。好物はいわた茶。

※この漫画はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

湊川あいマンガ:湊川あい(みなとがわ あい)
フリーランスのWebデザイナー・マンガ家・イラストレーター。マンガと図解で、技術をわかりやすく伝えることが好き。
主な著書 わかばちゃんと学ぶ Webサイト制作の基本わかばちゃんと学ぶ Git使い方入門わかばちゃんと学ぶ Googleアナリティクス〈アクセス解析・Webマーケティング入門〉
Twitter: @llminatoll

沢渡あまね

シナリオ:沢渡 あまね(さわたり あまね)
IT運用エバンジェリスト。業務改善・オフィスコミュニケーション改善士。ITサービスマネジメント/プロジェクトマネジメントのノウハウを応用した、企業の働き方改革・業務プロセス改善・インターナルコミュニケーション改善の講演・コンサルティング・執筆活動を行っている。
主な著書:『新人ガール ITIL使って業務プロセス改善します!』、『職場の問題かるた』『働き方の問題地図』『職場の問題地図』『仕事の問題地図』、『チームの生産性をあげる。』、『話し下手のための雑談力
Webサイト「あまねキャリア工房」 / Twitter / Facebook

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