仕事で大きなミスを犯してしまった、会社の意にそぐわない行動を取ってしまった、会社に重大な損失を出してしまった…そんなときに「進退伺い」を上層部に提出することがあります。単純に辞職の意志を伝えるだけではない、進退伺いについて、ここでは詳しく述べていきます。
進退伺いとは
会社に重大な損失があったなど、自分自身に非があったときに会社に出す書面の一種が進退伺いです。進退伺いを提出すると、自分の処遇を会社の上層部に委ねることとなります。特におとがめなしの場合もあれば、ポストを左遷させられることもありますし、減給などのペナルティを課せされることもあります。もちろん、会社を退職する方向で話が進んでいく可能性もあります。進退伺いを提出することが多いのは、中間管理職以上の役職に就いている社員です。そして、自らの過失の責任を負うというよりも、直属の部下の過失に対し、自らに責任があると認め、処分を判断してもらうために提出するケースが多く見られます。これには、さまざまな理由があります。例えば、役職がある社員が簡単に辞表を提出しても、人事の関係上、すぐに受理されないことも多いので、一度進退伺いを出して「自分はいかなる処分でも受ける覚悟がある」ととりあえず意志表明をする意図です。また、部下の過失の程度が大きすぎて、部下を処分するだけでは見合わないと考えられるときに、責任を負う意志を伝える意図もあります。しかし、若い社員が進退伺いを出すケースもあるので、キャリアが浅いからといって無関係な書面とは言えないでしょう。
進退伺いと辞表の違いは
進退伺いと辞表は全く異なる意味を持つ書面だといえます。辞表はあくまで辞職の意思を伝えるための書面です。よって、辞表が受理された時点で、当人の退職は決定します。もしも会社側に退職させる意図がないのであれば、辞表の提出を考え直してもらうための交渉が持たれます。一方、進退伺いとはあくまでも「処遇を伺う」ための書面です。提出が受理されただけでは処遇が決まるわけではなく、決定する処遇も上層部の判断によって異なってきます。進退伺いを出しても処分がなかった、ということも起こりえるのです。これが、自分の過失に責任を感じて提出する辞表と、部下の過失に責任を感じて提出することの多い進退伺いとの違いです。例え、部下の過失であっても、「部下の教育に問題があった」などと深く責任を感じているときには進退伺いではなく、辞表を提出することもあります。
進退伺いの書き方と例文
会社員にとって、できるだけ提出を避けたい書面ではありますが、いざというときのために若い社員も進退伺いの書き方を知っておいたほうがいいでしょう。まず、ビジネス文書のマナーとして提出の日付、宛名(上司の名前)、自身の名前、そして「進退伺い」というタイトルは必ず入れましょう。そして、事のあらまし、自分自身の責任の詳細、謝罪文、最後に「進退を伺いたい旨」を記載します。進退伺いは報告書ではないので、全体的にはシンプルかつ、手短に書くのが良いとされています。以下、例文を記載します。「平成○年○月○日、○○社との取引で発生した、部下○○による大量の発注ミスにより、我が社が莫大な損害を被った事態について、上司である小職の十分な確認が行われなかったことに原因を認めます。誠に申し訳なく、深く謝罪いたします。小職の過失が明白である以上、いかなる処分も謹んでお受けする所存であります。よって、小職の進退についてご指示を賜りたくお願い申し上げます。以上」こういった進退伺いの内容と同様に、注意したいのは進退伺いを提出する時期です。原因となる過失が起こった際には、まず、進退伺いは置いておき、その処理に全力を注ぎましょう。そのうえで進退伺いを提出するのが社会人としての礼儀です。本当に責任を感じているのなら、すぐに辞めることではなくて、第一に目の前のトラブルの火消しに注力することが大切です。
進退伺いは会社都合と自己都合のどちらになるの?
進退伺いを出した後、退職になる場合、それは会社都合になるのでしょうか?それとも自己都合になるのでしょうか?転職活動や雇用保険の受給において、会社都合と自己都合の違いは大きな意味を持つので、気になるところです。その違いは、退職へのプロセスによって決まります。進退伺いを出した後、退職になるときは上層部から「懲戒解雇」を言い渡されて、退職への手続きが始まります。会社から解雇を言い渡されるとき、通常であればそれは「会社都合」に分類されるのですが、「懲戒解雇」は就業規則に乗っ取ったペナルティとしての解雇ですので、雇用保険法に基づき、「自己都合」に分類されてしまいます。つまり、進退伺いを出した時点で「会社都合による解雇」という退職ケースは無くなるので注意しましょう。