薬剤師の資格を持っていると、薬剤師として病院や薬局で働くだけでなく、研究・開発職からメーカーの営業職など働き方に幅があり、「安定して長く働ける仕事に就ける資格」として人気です。また、自身で薬局を開業するなど、独立開業の道もあります。
薬剤師になるには、薬学科のある大学を卒業し国家試験に合格する必要がありますが、2006年からは薬学部では6年制課程がスタートしました。6年間学んで国家資格を受験し、合格して初めて取得できる薬剤師資格。今回は薬剤師の年収について、リクナビNEXTの会員登録者のデータから調査してみました。
薬剤師免許保持者の平均年収は631.8万円
リクナビNEXTの2010年12月~2015年11月までの薬剤師免許を持っている人の平均年収は、約630万円でした。そのうち、20代の平均年収は460万円、30代は570万円、40代は791万円、50代は987万円、60代は851万円と、年齢を重ねるごとに年収は高額になる傾向があります。なお、少し時期がずれますが、リクナビNEXTの2015年12月の全データでは、20代の平均年収は299万円、30代は416万円、40代は495万円、50代は628万円、60代は524万円と、薬剤師資格を持っている人の年収は全体と比較し、どの年代で見ても1.3~1.5倍程度高いことが分かりました。
次に職種ごとに収入をみていきましょう。病院や調剤薬局、小売業で働いている薬剤師の場合の平均年収は487万円。臨床開発モニターは457万円、薬事申請は535万円、監査やQC、QAなどの臨床開発では575万円。そして医薬品の品質管理や保証は580万円と、400万後半~500万後半の金額になっています。しかしゲノムやバイオ研究、製品開発での仕事になると一気に800万円代へと高くなります。そして金額が高くなるとともに、年代も40代、50代のシェアが高くなっています。
先述で紹介した通り、平均的な年収が高い職種はゲノム、バイオなどの研究員でした。ゲノムやバイオを研究するスタッフはガン治療をはじめとした高度な研究を行っており、これらの研究に携わるには薬学や分子生物、理学系の博士号を取得している必要があります。また、研究部門を持っている企業の多くは大手メーカーであり、給与も年功序列に近しい場合も多いため、経験と知識を積んだ人材は、年収もその分高額となるようです。
自由な働き方が出来る?薬剤師の勤務形態とは
ここで薬剤師の勤務形態について考えてみましょう。薬剤師は調剤薬局や病院が主な職場です。例えば調剤薬局の場合は朝9時ごろから夕方17時ごろまでが勤務時間。病院も日中の勤務が多いですが、入院施設のある場合は入院患者への投薬の都合で夜勤を含めたシフト制を導入しているところもあります。また、製薬会社に務める場合はビジネスマンと同様に終日勤務を求められますし、休日出勤や出張、残業をこなすケースもあります。
最近ではドラッグストアでの勤務も多くなっていますが、業態上、営業時間が比較的長くなるためシフト制で勤務している薬剤師もいます。つまり製薬会社に所属する場合は残業が発生する場合はありますが、病院や薬局、ドラッグストアなどの場合は業務時間が一定しているため、ワークライフバランスを重視したい人には向いている職場かもしれません。また、資格を活かして派遣として働くことも可能です。国家資格を持っている人を対象とした専門職のため、時給が高いことが魅力のひとつです。
結婚や出産でライフスタイルが変化し「フルタイムでの勤務は無理だけれど、空いた少しの時間を使ってパートやアルバイトをしたい」といった場合にも薬剤師の資格が重宝します。特にドラッグストアは薬剤師のパートタイマーを募集している店もあるので、家庭での時間を重視したい人にとって重宝する資格といえるのではないでしょうか。
さらなる医療従事者を必要とする社会へ
薬剤師の資格は、薬剤師として働くだけでなく、研究職や薬事申請、臨床開発など多岐に渡り、仕事内容や経験年数で収入が異なることがわかりました。いずれも平均年収は、全体の平均値よりも高い傾向にあります。また、資格を活かしてフルタイムの正社員として働くだけでなく、希望する時間のみの勤務というスタイルも可能であるのが薬剤師の大きな特徴のひとつといえます。
専門的な知識を有し、人々の健康に寄り添う薬剤師の仕事。医療の発展と未曽有の高齢化社会に伴い、医療費の拡大は今後も続くとみられています。そのため、医療現場を支える薬剤師のニーズは、今後も安定しているといえるのではないでしょうか。
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