マンガ『ジャイアント・キリング』に学ぶ、「初志貫徹か変革か」リーダーが行うべき意思決定とは――大事なことは全部マンガが教えてくれた

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©ツジトモ・綱元将也/講談社

突然ですが、「マンガ」のあるシーン・ある言葉に、ハッと気づきを与えられたこと、勇気づけられたこと、ありますか?

普通に仕事をしているだけではなかなか気づくことのできなかった考え方など、「マンガから学べた!」ってこと、あると思います。そんな仕事に人生にジンジン効いてくるマンガの1フレーズを、筆者の独断と偏見で選定、解説までしてしまうこのコーナー

今回は、監督という新しい視点からサッカーを描く人気マンガ『ジャイアント・キリング』(講談社)より、道を指し示す立場のリーダーとして持っておきたい心構えをご紹介します。

頂上に辿り着くまで、その道が正しいかどうかはわからない

山の麓にいるときに頂上への最短ルートを描こうと思っても、誰も登ったことのない山だった場合、事前に答え合わせをすることはできません。そうである以上、ある程度仮説を立てて、自分で「正解と思われる道」を選ぶ以外に方法はないのです。

しかし、選んだルートを進んでもなかなか頂上が見えてこない場合は、本当に自分が選んだルートが正しかったのか、と不安に思ってしまうものです。

正しいと信じてひたすら突き進むべきか、間違っている可能性を考えて違うルートを模索するべきか。どれだけ悩んでも、結局そのルートが正しかったかどうかわかるのは、頂上に辿り着いて振り返った時なのです。

そのことを改めて説いている1シーンがこちら!

“今まで自分がやってきたこと信じねえでどうすんだ。貫くことが大事なんだよ!”

“そんなの頭固いだけじゃないスか!変わろうとしないで勝てるわけないっスよ!”

©ツジトモ・綱元将也/講談社

Jリーグで戦う下町のサッカーチーム、ETU(イースト・トーキョー・ユナイテッド)。

かつては、日本代表にも選ばれたスター選手を擁したそのチームも、ある時を境に常に残留争いをする下位チームへ変わってしまいました。

GM(ゼネラル・マネージャー)を務める後藤はチームを生まれ変わらせようと、イギリスから一人の日本人を監督として呼び寄せることを決意します。

その日本人の名は、達海猛。かつてETUのスター選手だった男であり、本作の主人公です。活躍を期待されて渡ったイギリスで深刻なケガを負い、若くして引退を強いられることとなった彼は、その後監督としてサッカーを続けていたのです。

かつての同僚でもある後藤に口説かれる形でETUの監督を引き受けた達海は、チームの立て直しを図るため、それまでの実績や、ベテランか若手かといったことを考慮せず、一から新たなチームを作り上げようとします。

彼らには果たして勝利への意思があるのか。いつしか下位争いをすることに慣れてしまって、負けることに慣れてしまったのではないか。

選手たちの意思を確かめるため、シーズン前の大事なキャンプで達海がまず選手に課したこと。それはプロのサッカークラブとしてはあるまじき内容、「自習」でした。

プロである以上、自分から自主的に動け、そう言い残して姿をくらます達海。

その後選手たちがどういった動きを見せるのか、そっと覗くことにしたのです。

残された選手たちはそれぞれに練習を始めますが、さらに達海が行動に出ます。複数あるボールを、1つだけ残してすべて回収してしまったのです。たった1つのボールで何をするか、選手たちはやむを得ず議論を始めます。

これまでのやり方を貫こうとするベテランの黒田と、変化が必要なことを訴える若手の赤崎。二人の議論は白熱し、互いの主張をぶつけ合い、上記の言葉が発せられました。

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「選んだ方を正解にする」という意思決定

成功に向けて一度決めた方針や方法があっても、必ずしもすぐに成果が出るとは限りません。成果が出るようになるまでには時間や試行錯誤が必要で、方針や方法自体は間違っていなくても、ただ熟練度が足りないだけという場合もあるでしょう。

そんな時に、なかなか成果が出ないからと、コロコロ方針を変えていてはせっかく積み上げてきたものを失ってしまいかねません。ですので、一度「こう」と決めたのなら、成果が出るまで自分を信じて貫く意思が大切だ、という黒田の意見は間違っているわけではないでしょう。

一方で、ETUが毎年降格争いに巻き込まれてしまっていることもまた事実。なかなか成果が出ないのならば、やはり方針や方法を見直し、必要に応じて変えていく柔軟さも必要です。「こう」と決めたからってそれに固執してしまい、変えるべきタイミングを逸してしまうというのも避けたいものです。そういう意味では、変化を求めるべきだとした赤崎の意見もまた、間違いではないのでしょう。

これが「正解」と事前に示されることではないからこそ、どちらも間違いではなく、意見が平行線のまま、対立してしまうのです。

監督である達海は、選手の議論を促すために敢えて静観するポジションを取りましたが、本来は正解がわからないことに対して意思決定を下すのが、リーダーの大きな仕事のひとつ。

正解が、最短ルートがわからないからといって歩みを止めてしまっては、頂上に辿り着くことはできません。正解がわからなくても選んだ方を正解にするんだ、という強い意志をもって歩みを進める必要があります。組織を邁進していく必要があります。

正解のわからないことであっても、覚悟を決めて向かうべき方向を指し示す。それこそがリーダーに求められる「意思決定」なのです。

この議論を静観していた達海が最も確認したかったのは、「勝ちたい」という意思が選手に残っているかどうか。その意思こそが、選んだ方を正解にしていくためにもっとも重要な原動力になるのです。

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変わるべきタイミングを逃さないために、指標 / 仮説 / 検証を怠らない

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強い意志を持っていたとしても、状況に合わせて変化する事もまた必要です。そのタイミングを逃さないためには、本当に前進しているのかどうかがわかる状態にする必要があります。

現在地とゴールまでの間にいくつかの指標をたて、選んだ方法がうまくいった場合、どの指標がどのように変化していくのか、という仮説を立てる。その上で、実際にそのように変化しているのかをきちんと検証し、必要に応じた修正、変化を加えていく。そういった作業が必要になるのです。

決めた道を正解にすることはとても大事なことです。しかし同時に本当にそれが正しいのか、変化・修正は必要ないのか、というのをチェックしていくこともまた同じくらい重要なことだと認識しましょう。

貫くべきか、変えるべきか。この2つの対立する議論を、リーダーは常に頭の中に持っておくべきでしょう。

一番避けなければいけないことは不安に駆られて足踏みをしてしまうこと。

これまでのやり方を踏襲するか、変化させるか、いずれにしても選んだ方を正解と信じ、歩みを進めることが必要です。そしたまた、強く信じるあまり柔軟性を失ってしまうことにも気を付けたいものです。

自分を信じて突き進む主観と、本当に正解かどうかをチェックする客観を同時に持ちながら進んでいくことで、強い推進力と柔軟性の双方を持つことができるのではないでしょうか。

>>『大事なことは全部マンガが教えてくれた』シリーズ 大事なことは全部マンガが教えてくれた

  • 監修:リクナビネクストジャーナル編集部
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