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常識を越えたコンセプトが、半導体の世界を変える
東京エレクトロンが挑む!最先端エッチング装置開発
微細化・高集積化の進む半導体デバイス。製造装置の業界では、たえず技術革新が繰り広げられ、新しいコンセプトを持つ製品が生み出されていく。実際、そうしたアイデアはどのようにして生まれ、開発され、製品になっていくのだろうか。東京エレクトロン宮城のエンジニアに話を聞いた。
(取材・文/藤本健 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/中村泰介)作成日:10.04.07
チャンバー材料にセラミックスを導入。世界が驚いたその「非常識」
東京エレクトロン宮城株式会社
開発部門 開発部
開発第4グループ グループリーダー
小林 義之氏

 半導体デバイスの性能向上の鍵を握る重要な工程にエッチングがある。ウェーハ上に現像されたマスクパターンにしたがって、不要部分を除去して溝を掘ったり、穴を空ける工程で、その精度向上は半導体の微細化に直結する。

 世界中の半導体メーカーのチップ製造工程を支える東京エレクトロングループ。その中で、エッチング装置の開発を担当するのが東京エレクトロン宮城のES(エッチングシステム)開発部だ。
「エッチングの方式や装置の材料をめぐって、世界トップレベルの競争が日々ここで繰り広げられています」と、グループリーダーの小林義之氏は語る。

 エッチングシステムにはいくつかの種類があるが、小林氏が担当しているのはプラズマエッチング。薬液で腐食させるウェットエッチングとは違い、プラズマエッチングでは、エッチング・チャンバーと呼ばれる真空容器の中で、プラズマによって生成された活性粒子と、シリコンなどの固体材料とを化学反応させ、不要部分を揮発、除去する。
「私の仕事はエッチング装置の開発全体を取りまとめるグループリーダーとしての役割と、そこに使う材料を開発するプレイヤーとしての役割の2つがあります」という小林氏は、エッチング・チャンバーの材料開発にあたって、常識を打ち破る画期的な技術を開発した経験がある。

 もともとエッチング・チャンバーにはアルミを酸化させたアルマイトを使うのが常識。確かにアルミであれば価格も手ごろだし、大きなものを加工するのにも適している。さらに酸化させればクリーンな状態にできるという面でもメリットがある。反面、アルマイトは耐久性に問題を抱えていた。
「プラズマをチャンバー容器の中で発生させると、コーティングさせた皮膜が消耗しやすいのです」(小林氏)

 そこで小林氏のグループは、新たな材料開発に乗り出した。
「チタン、タングステン、ステンレスなどにもチャレンジしましたが、汚染や価格などの面で問題がありました。ようやく5年目に行き着いたのがセラミックスです。金属の下地の上にセラミックスを乗せるとセラミックスがコーティング材として機能し、プラズマ環境下でも消耗しにくくなるのです」

 材料選びの次は作り方。焼いて作る、塗って作る、溶射するなど、セラミックスメーカーと共に試行錯誤を繰り返した。こうして世界で初めてセラミックス皮膜のチャンバーを使ったエッチング装置を量産化したのは2000年頃のこと。その後、競合他社も追従し、いまセラミックス皮膜・チャンバーはエッチング装置の主流になりつつあるが、世界をリードした誇りと実績は揺るがない。

多岐にわたる技術開発。転職者の経験と知恵に期待

 たえざる新技術の投入で、世界先端を行く東京エレクトロン宮城。不況下にあってもけっして研究開発費を切り詰めることがないことでも知られている。今後もその競争優位性を維持するためには、開発チームの質的・量的拡充が欠かせない。

「エッチングシステムに関わる技術は多岐に渡り、材料開発はその1つに過ぎません。例えば、チャンバー内部は真空にしなくてはならないので、排気技術に長けている人、高周波に知見のある人など、関連する分野はいくらでもあります。以前、通信キャリアで伝送技術の研究を行っていた人が中途入社して、処理ウェーハの温度測定に光ファイバーを用いる技術を開発したことがあります。必ずしも半導体製造装置の経験がなくても、何か深い専門知識や経験があれば、それが生かせます」と小林氏は、これから求める技術者のイメージを語る。
 一見、関係ないと思える技術でも、世界最先端の半導体製造装置の開発に寄与できるチャンスがある。転職者の力の見せ所は、大いにあるというべきだろう。

開発部門 開発部 開発第4グループ グループリーダー 小林 義之氏

大学院で機械システム工学を専攻し、92年4月大手半導体メーカーに就職。地元へのこだわりから同年8月、第二新卒の形で東京エレクトロンATへ転職する。入社後は、一貫してエッチング装置に携わり、主にメカニカル部分を担当する。2000年まではPEモードエッチャーの改善・改良を行い、2000年にポリ・エッチャーのリーダー(課長)、2002年に静電チャックのリーダーに就任。2003年より現職。エッチングシステム部門の分社化のため、東京エレクトロン宮城の所属となる。

ウェーハ大口径時代の画期的製品。搬送系を常識破りの方法で改善
東京エレクトロン宮城株式会社
開発部門 PM技術部
部長代理
廣瀬 潤氏

 熾烈な開発競争が繰り広げられる半導体製造装置の開発現場。エンジニアたちは、専門分野の造詣に加えて、幅広い技術知識を総動員しながら、半導体メーカーのニーズを的確に掴んでいく。こうした開発競争の中では、時として従来の常識を覆すような斬新なアイデアが必要になることもある。

 そうして生まれた革新的製品のひとつに、2000年に発表された「Telius(テリウス)」という300mmウェーハ向けエッチング装置がある。ウェーハ大口径化の要求に対し高いコストパフォーマンスを実現した装置で、とりわけ200mmウェーハ向け装置と同等な小型装置、搬送スループットの向上が注目を集めた。

 「Telius」のプロジェクトは当初6人の中堅エンジニアたちでスタートした。機械系エンジニア、電気系エンジニア、フィールドエンジニア、マーケティング担当など、それぞれ異なる経験をもつメンバーたち。その一人が、現在、開発部門ES PM技術部で部長代理を務める廣瀬潤氏だった。

「それまで、さまざまな分野の開発に携わってきましたが、入社8年目、突然新規プロジェクトへの異動を命じられました。まったく何もないゼロベースから、コンセプト作りを始めることになりました」と当時を振り返る。
 コンセプトの鍵を握ったのが、ウェーハをどのように流していくかという搬送系の技術や小型チャンバーへの取り組み。
「ちょうど顧客ニーズが少量多品種へシフトしていく中だったので、当時は非常識ともいえる方法を考え、採用しました」(廣瀬氏)

新製品開発の苦難を乗り越えた東京エレクトロン・エンジニアの誇り

 コンセプトができあがると、各方面から中途採用者も含む約30名のエンジニアが集められ、実際の開発へと向かっていった。しかし、集まったメンバーからは「現実的に難しいのでは」という、開発を危惧する声が噴出したという。

 廣瀬氏らは、「非常識」は承知のうえ、コンセプトの優位性を丁寧に説明した。厳しいディスカッションを重ねることで、開発の道筋に少しずつ光が見えだした。
「これまでも、まったく新しいコンセプトの製品を生み出し、世界中の半導体メーカーの製造プロセスを大きく変革してきたという歴史が自分たちにはある。みんなの知恵を集めればけっしてできないはずがない」という自負と情熱が開発メンバーを支えた。

「当時のメンバーとは、今でもよく話をすることがありますが、みんな『キツかったけれど、楽しかった』『新しい技術をいっぱい身につけることができたプロジェクトだった』といってくれますよ。私自身でもこれまでで一番、思い入れのあるプロジェクトでしたね」と廣瀬氏は語る。

 ところで「Telius」やその後のハードウェア開発を行った「Vigus」の開発メンバーを含め、同社に中途入社した多くのエンジニアが語る共通のことがある、と廣瀬氏は指摘する。
 それは「この会社って、自由ですね」という言葉。東京エレクトロングループでは自分のやりたい技術、チャレンジしたい研究があれば、自由にやらせてもらえる風土がある。新卒で入っている廣瀬氏自身は当然のことと感じていたが、彼らの話を聞いて、この会社の楽しさ、面白さを再認識しているという。そうした自由な風土が、まったく新しい技術、製品を生み出す原動力の一つになっているようだ。

※「Telius」「Vigus」 は、東京エレクトロン株式会社の登録商標です。

Telius
Telius
S開発部門 ES PM技術部 部長代理 廣瀬 潤氏

工学部精密工学科を卒業後、91年4月、地元へUターンする形で東京エレクトロンATに入社。メカニカル担当として機構・設計課に配属され、エッチング装置に携わる。当時は直径150mmのウェーハをエッチングする装置だったが、その後その装置を改善・改良する形で200mm、300mmウェーハ向け装置を担当する。98年に新しいコンセプトのエッチング装置「Telius(テリウス)」のプロジェクトに抜擢され、コンセプト作りから開発、量産まで携わり、その後、「Vigus(ビガス)」の開発に従事。2010年より現職。エッチングシステム部門の分社化のため、東京エレクトロン宮城の所属となる。

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