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非シリコンのデバイス、化合物半導体etc.
東京エレクトロン“次世代半導体技術”開発の舞台裏
次世代の半導体デバイス・製造装置の研究開発に向けて、東京エレクトロンの動きが強まっている。その源流にあるのが、技術開発センター。グループ全体の次のビジネスのシーズを生み出す、要素開発研究が進められている。その研究テーマとともに、テーマを担う研究開発者の人材像を聞いた。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/佐藤聡)作成日:10.04.14
非シリコンのデバイス開発、化合物半導体に注力していく
技術開発センター
プロセス装置検証開発グループ
グループリーダー
柏木 勇作氏
大学院を卒業後、石油メーカーで太陽電池の薄膜トランジスタや、石油精製用触媒の開発に従事。2001年東京エレクトロンに入社。CVDプロセス触媒開発などを経て現職。

 東京エレクトロングループは、グループ全体を統括する東京エレクトロン(TEL)本体の傘下に、「東京エレクトロン」の名を冠したグループ会社──東京エレクトロンAT、東京エレクトロン東北などを複数抱えた事業体だ。研究開発機能は、グループ全体に関わる「コーポレート」開発と各プロダクト毎の開発を行う「BU(ビジネスユニット)」に分けられるが、BUサイドが1〜3年以内の短期的課題に取り組むのに対して、コーポレート開発はどちらかというと、3年から10年先を見越した中長期的な課題をターゲットにする。

「一言でいえば、グループ全体の次のビジネスを生み出す研究です」  というのは、コーポレート開発本部の「技術開発センター」で、プロセス装置検証開発グループを率いる柏木勇作グループリーダーだ。 「これからの東京エレクトロンは、シリコン半導体製造装置のビジネスをメインにしながらも、それ以外の新しい分野も手がけるようになるでしょう。有機デバイスはもちろんのこと、化合物半導体、有機ロボティクスなどの研究が必要となります。私たち自身がデバイスメーカーになるということではありませんが、それらの製造プロセスを確立する上でも、次世代デバイスの研究は不可欠なのです」
 と、柏木氏は言う。3年先に、現在の半導体マーケットがどうなっているのか、新しい材料を使ったデバイスは何が伸張しているのか。社内の新事業企画室や開発企画室などのテクノロジー・マーケティング部門と共同で、そうした市場の先読みをしながら、自社の技術シーズを検証し、蓄積していくのが技術開発センターの役目だ。

 数ある次世代技術のうち、ある特定分野の将来性が高いとなれば、今のうちから研究者やエンジニアを獲得しておかなくてはならない。あるいは、研究者・エンジニアを採用することで、新しい技術シーズが生まれる可能性もある。つまり、技術開発センターの動きは、これからの東京エレクトロンにおける、エンジニア中途採用戦略の鍵を握っている、といっても言いすぎではないのだ。

求めるのは広い視野と柔軟性。潤沢な研究費と人材交流豊かな研究環境が支える

 こうした新素材・デバイスの研究は、国内外の大学や研究所でも進んでいるが、企業がこの手の研究に予算を投じるうえでは、事業化に向けた可能性が重要な指標になる。
「企業内研究ですから、将来それがビジネスにつながらなければ、何もやらなかったことに等しいと見られてしまいます。だからこそ、何をやるか、どのようにやるか、どのように社内コンセンサスをとるかは重要」と柏木氏。説得力をもって技術の将来性を語り、的確な研究手法と研究体制を生み出せる「人」が、やはり重要になる。

 次世代技術に向けた要素開発を進めるうえで、共通に求められる研究開発者の資質を、柏木氏は次のようにまとめる。

1)ものごとに対して論理的に考え、問題解決ができること
2)現象をとらえて、より本質的な課題を抽出できること
3)将来のビジネスを展望できること
4)熱意

 こうした資質に加えて、物理、化学、電気電子、材料などの基礎知識は必須だ。もちろん特定の技術に関する知見もあるにこしたことはないが、それ以上に柏木氏が求めるのは、「全体を俯瞰できる柔軟な視野と、専門性を高めるためにたえず勉強しようという成長意欲」だ。
「転職後も、その人のこれまでの研究テーマと全く同じことができるかどうかはわからない。市場や技術動向に応じて、柔軟にテーマを拡大したり変えたりしなければならないこともよくある。あまりにも狭い領域で、一つのものに深く集中しすぎると、他分野にシフトしづらい。そこが大学での研究とは違うところ」と、柏木氏は企業内研究の特徴を述べる。

 こうした特徴を“制約”と捉えるか。ビジネスにより近い研究だから“面白い”と捉えるのか。そのあたりはまさに研究者の資質によって違ってくる。とはいえ、東京エレクトロンは国内のエレクトロニクス系企業の中でも群を抜く研究開発投資で知られる。不況のあおりをうけてハイテク企業が軒並み研究開発費を削減する中で、同社は09年度の研究投資を対前年度比6%増やした。手元流動性資金が2300億円、自己資本比率75%という強い財務力がそれを支える。
「それに加えて、社内外の人の交流を通してたえず刺激を受けることができる環境が整っています。私自身がグループリーダーとして心がけているのは、一人ひとりと話す時間をできるだけもつこと。全員が集まって議論する会議でも、たえず自分たちの技術が、世の中のニーズにどう応えているのか、その問いかけをするようにしています」

 自分たちが技術をリードしていく。世の中にまだ存在していないとしても、自分たちにはそれを創り出せる力がある──そうしたパイオニアとしてのポジションは、研究開発者に無限の可能性と喜びを与えてくれるはずだ。

産総研からの転職者が語る、東京エレクトロンの魅力とは

10年先を見越した中長期的な次世代研究開発のためにエンジニア採用を強化している東京エレクトロン。その最前線で研究開発を行う松本貴士氏に話を聞いた。

カーボンナノチューブの半導体利用。共同開発プロジェクトに参画
技術開発センター
プロセス装置検証開発グループ
松本 貴士氏
工学博士。米国大学に1年留学後、産業総合技術研究所へ。2006年東京エレクトロン入社。

 シリコン以外の材料を研究し、次世代半導体技術のシーズを生み出す。これが当社の技術開発センターのミッションの一つです。そのミッションに沿って私が取り組んでいるテーマは、カーボンナノチューブ。これを半導体の材料として使うための研究を進めています。カーボン系素材の利点は、まず、シリコンに代わるトランジスタ材料として使えば、信号速度が速くなること。さらに、配線に応用すると、これまでの銅以上の微細化が可能になるということです。大きな電流を流しても十分耐えられるような、微細な配線が可能になります。

 カーボンナノチューブの半導体への応用研究には膨大な費用がかかります。そこで、産業技術総合研究所(産総研)のつくば本部が音頭をとり、主たる材料メーカーやデバイスメーカー、機器ベンダーが参画した産学共同のプロジェクトが始まろうとしています。ある程度までは合同で開発して、その成果をそれぞれの企業に持ち帰り、製品化までこぎつけようというわけです。当社はあくまでも機器ベンダーとして、カーボン系半導体のプロセス開発技術と装置技術を蓄積するのが、共同研究参加の目的になります。

 カーボンナノチューブを半導体材料として使う場合の最も難しいところは、加工にあたっての温度条件です。カーボン系材料は700〜800℃の高温で加工するのがふつうですが、半導体として使う場合、半導体を構成する他の材料との兼ね合いで、実際は400℃を超えることができません。それ以下の温度でいかに効率的にカーボンを加工するかが、大きな課題です。

 プラズマ技術を使えば、400℃前後でも優れたカーボンナノチューブを作れることがわかっています。RLSAプラズマという手法を当社独自でより高性能化することで、この分野にも応用ができるのではないかと考えています。300ミリウェーハの上に一律にカーボンナノチューブを生成する技術も、温度やガスのコントロールが鍵になります。ここにも当社のプロセス技術が介在できる余地が十分あります。

民間企業での最先端研究。そのスリルと醍醐味を味わう

 次世代半導体に限らず、今は存在しないものを生み出す研究には、筋書きというものがありません。どういう手法が最適なのか、誰もわからない。だからこそ面白いと私は思います。もちろん、不安もありますよ。自分でレールを敷きながらの研究ですから、間違った方向に進んでいたらどうしよう。しかも、競合他社も似たような研究を始めているわけですから、たとえいつか良いものができても、遅れを取ったらビジネスとしては負けです。

 さらに社内での競合もあります。企業である以上、ビジネスとして将来稼げるかどうかは、研究テーマを設定するうえで重要なファクター。資金と人材を投資するための優先順位がたえずつけられます。つねに優先上位にいるためには、社内の競合にも勝たなくてはなりません。でも、こうした不安とスリルがあるからこそ、民間企業での研究は面白いですよ。大学や独立行政法人の研究機関での研究とは、明らかに緊張感が違います。

 私はこれまで自分の研究の“出口”が見つからず悶々としていた時期もあったのですが、転職してそれが開けたような気がします。営業やフィールドエンジニア、設計・製造部門のスタッフなど、これまで触れたことのない人々との交流も、それぞれの文化の違いがあって、刺激になります。経営層に直接、自分の研究の進捗状況をプレゼンする機会も増えました。世界の研究動向、市場予測、必要な予算などを説明しなければなりませんから大変ですけれど、その醍醐味はたしかにあります。

 これからカーボンナノチューブの研究を私達と一緒に担ってくれる人材を求めています。材料に関するベーシックな知識以外に必要なのは、アイデアと実行力、そして自社内外の人と協業するためのコミュニケーション力、さらに英語ができれば言うことはありません。 特に、自分は実験系なので、数式でものごとを考えることができる理論系の人がいたら、いいコンビが組めるのではないかと思います。当社のカーボンチームはまだ小さな所帯。今なら、カーボン系では社内で随一、世界でも有数の研究開発者になれるチャンスだと思います。

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