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製造技術の融合から市場開拓まで、太陽電池製造装置に注力!
太陽電池産業に参入!東京エレクトロンが技術職を急募
東京エレクロトンの太陽電池製造装置事業が本格化する。シャープ社との共同開発、Oerlikon Solar社との提携に加え、自社独自の装置開発にもより積極的に乗り出すというのだ。第3の柱となる新事業での装置開発に、開拓者精神のあるエンジニアを募集する。
(取材・文/高橋マサシ 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/佐藤聡) 作成日:10.04.28
半導体とFPDの製造技術を融合させて太陽電池へ

 東京エレクロトンが太陽電池製造装置を開発する。どのような製品なのか、ビジネスとしての勝算はあるのか、そして、どんなエンジニアを求めているのか。太陽電池製造装置事業を指揮する伊藤高司常務執行役員が語る。

常務執行役員
FPD・PVE事業本部
PVEBU
ジェネラルマネージャー
伊藤 高司氏

「弊社は半導体製造装置とFPD(フラットパネルディスプレイ)製造装置で伸びてきた企業であり、どちらも市場は拡大しています。ただ、次第に成熟産業になりつつもある。次の柱になる事業を育てるためには、今のうちから手を打つ必要があり、これまでの技術や資産を活かせる分野を探すなかで最もマッチしたのが太陽電池ビジネスです」
 光エネルギーを電力に変換する太陽電池は、光を吸収する素材や素子により種類が分かれる。現在の主流である「結晶シリコン」、市場シェアが拡大している「薄膜シリコン」、シリコン以外の素材を使う「化合物半導体」、次世代技術と呼ばれ無機でなく有機化合物を使う「有機半導体」に大別される。東京エレクロトンが最も注力しているのが「薄膜シリコン」だ。薄膜シリコンではガラスなどの基板の上に気化した半導体物質を蒸着させるのだが、これはまさに半導体製造装置のCVD(Chemical Vapor Deposition)の技術。また、太陽光パネルのサイズは約1メートル四方などだが、このパネル加工にはFPD製造装置の開発で培った技術が活かせる。東京エレクロトンには両者の技術を応用し、融合させられる高いアドバンテージがあるのだ。

 同社は昨年2月、スイスの太陽電池製造装置メーカーのOerlikon Solar社(以下、エリコン・ソーラー社)とアジア、オセアニア地域での独占代理店契約を結んだ。エリコン・ソーラー社は薄膜シリコン太陽電池用一貫製造ラインおよび製造装置の世界トップメーカーであり、東京エレクロトンはアジアおよびオセアニア地域での販売とサポートを担当する。太陽電池製造装置の開発も共同で進め、相乗効果を出していく予定だが、それとは別に目指すのは自社独自の装置開発。既に実験機は完成しているという。
「薄膜シリコンでは化学・材料系の基礎研究と同時に、製造装置の設計・開発を進めていて、量産機の開発に入るところです。また、薄膜シリコンだけでなく結晶系、化合物系、有機系の要素開発も行っています。今は開発部署がいくつかに分かれていますが、これらを集約したR&Dセンターを設置する予定です」
 4分野の太陽電池はそれぞれ素材も発電効率も異なるが、製造装置としてみれば共通する部分も多くある。例えば、真空系、塗布系、ウェット系などの製造装置であり、素材によらず応用できる技術があるという。このコア技術を持っていることが同社の大きな強みだ。

自社製品の完成を目指して多彩なエンジニアを募集

 今回募集するエンジニアは、近々設置するR&Dセンターに入るメンバーになる。先行している薄膜シリコンに加えて、結晶シリコン、化合物系、有機系の4分野が対象。職種は化学系の要素開発のほか、プロセス、メカトロニクス、電気・電子、組込みソフトなどを幅広く募集する。まさに黎明期である太陽電池製造装置開発は、各プロジェクトで開発段階が異なり、開発・設計において様々な知見が求められる。そこで、多種多様な人材が必要になるわけだ。

 太陽電池製造装置に携わったエンジニアだけでなく、真空系、塗布系、ウェット系の半導体製造装置やFPD製造装置の経験者でも問題ない。開発エンジニアの他にマネジメント職や、太陽電池の開発プロセスを、全体を通してインテグレーションするような仕事も募集する。
「数年後には自社オリジナルの太陽電池製造装置を販売したいと考えています。この計画のためにもより多くの人材を投入したいのです。マインドとして求めるのは開拓者精神。『私の仕事は何ですか』ではなく『これがやりたい』と手を挙げるような人です。過去の成功体験に縛られている人は、この業界では生き残れないと思います」

 伊藤氏がここまで言うのには訳がある。東京エレクトロンというより太陽電池産業そのものが、「約束されたビジネス」ではないからだ。巨大な有望市場であるのだが、逆に言えばリスクも高いということ。先の4分野にしても5年後、10年後にどの技術が主流になっているかは予測できず、同社が薄膜シリコン以外の分野に着手した理由もこのためだ。エンジニアにとっては自由な仕事ができる半面、進めてきた開発を中断して新たなテーマを探さざるを得ない場合もある。だからこそ「開拓者精神」が必要となるのだ。

 太陽電池産業の将来性は非常に豊かである。各国の政府や自治体の後押しもあって、電力の中で太陽電池が占める割合は年々増加しているが、それでもその割合は現時点で1%以下。これが20〜30%に伸びることが予測されており、世界的な市場規模は十数兆円〜数十兆円になると言われている。また、現在の太陽電池は結晶シリコンで約90%のシェアを占めるが、薄膜シリコンの成長は確実視されており、ここに注力できる東京エレクトロンの競争優位性は高い。加えて同社では、電力市場の開拓にも乗り出している。
「原子力、天然ガス、火力、太陽光……どんな方法でつくっても同じ電気で、品質は変わりません。ただ、政府の補助はあっても太陽光発電は原価が高く、補助もいずれは打ち切られるでしょうから、コストを下げて早く『グリッドパリティ』(既存の発電方法による電力と同じ価格帯になること)を実現しなくてはなりません。そのためには、変換効率のアップ、生産性の向上、材料費の削減が求められますが、どれも弊社の得意とするところです。ただ同時に、エネルギー産業で太陽電池が使われるようにしていく、バリューチェーンを高めることも必要なのです」

30年振りに原点に戻り、太陽電池市場を奪取する

 同社の市場開拓のひとつはエリコン・ソーラー社との代理店契約であり、これまで「接点のなかった」企業にも積極的にアプローチしている。もともと太陽電池業界には異業種からの参入が多いが、製造装置や生産ラインを一括受注する「フルターンキー契約」を使えば、技術力がなくても事業ができるため、参入企業の多様性に拍車をかけている。欧米や中国だけでなく、韓国、台湾、タイ、マレーシア、インドネシア、オーストラリアなどアジアやオセアニア地域の企業も入ってきており、東京エレクトロンの対象にはこうした企業も含まれる。

 また、以前はグリッドパリティが実現するのは早くて2020〜2030年と言われていたが、企業の淘汰と技術革新が進んだ結果、早ければ数年のうちに達成できると考えられている。これは世界で同時に起こるわけではなく、電力コストが高くて太陽光が豊富にある地域、例えばカリフォルニアなどが有力な候補地とされている。日本の電力の値段はKW当たり十数円だが、太陽光発電による値段は徐々に下がって20円代までになってきた。日本でのグリッドパリティは2015年頃と予測され、現在は企業努力が加速している最中なのだ。
「これからは時間との戦いです。遅れるとほかのところに先を越されてしまいますから。太陽電池製造装置は半導体製造装置のようにデバイスを開発する場所が限定されず、世界中のあらゆるところに設置できますから、私たちもさまざまな相手に商談を持ちかけています。太陽電池産業は市場を創造できる、『夜明け前』の産業なのです」

 もちろん市場開拓は簡単ではない。また、いかに半導体製造装置などの技術力が高く、実績が豊富とはいえ、メーカーが商社の真似をするのは無理だと考える人もいるだろう。しかし、実は東京エレクトロンは、半導体製造装置を含めて輸入代理店からスタートしたまさに技術商社だったのだ。代理店業を通じてノウハウを吸収し、約30年の年月をかけてトップメーカーに成長したのである。そして、伊藤氏は入社してから一貫して営業畑を歩き、輸入した海外製半導体製造装置の日本市場開拓を担った人物。当時と今回で異なるのは、世界有数の半導体製造装置メーカーとして蓄積してきた技術力という資産が、同社には既に備わっていることだ。
「私は、昨年のエリコン・ソーラー社との契約から太陽電池事業に入りました。それまで太陽電池は知らなかったし、興味もなかった。ただ、知れば知るほど面白くてやりがいのある分野ですよ。入社当初はエッチング装置の販売をしていて、月に1台出荷があるかどうかだったのですが、一から市場を広げていきました。半導体市場が今後どうなるか誰もわからない時代でしたから、同じことをもう一度、立ち上げからやっていくだけです」
 半導体製造装置の若手営業マンが執行役員となり、太陽電池製造装置事業のトップとなった。東京エレクトロンは再び原点に戻り、太陽電池製造装置の市場を取りにいく。

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