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なぜ日本人は「それはダメだよ」と直接注意しないのか? | ユリコタイガー

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第一線で活躍するビジネスパーソンに、「ファッションへのこだわり」をうかがうシリーズ第 3 弾。今回は日本のゲーム・ビジネス業界や芸能界で活躍中のイタリア人コスプレイヤー、ユリコタイガーさんです。活動の場を日本に選んだ理由、そしてコスプレイヤーという仕事への向き合い方についてお話を伺いました。

<プロフィール>
ユリコタイガー(YURIKO TIGER)
イタリア出身。コスプレイヤー、モデル、タレント。幼い頃から日本のアニメに魅せられ2013年来日、2014年より本格的にタレント活動をスタート。『鉄拳』シリーズ公式コスプレイヤー。アニメ・ゲーム関連コンベンションを中心にメディアへ出演。近年ではCDリリースや声優・女優業など幅広く活躍中。
ユリコタイガー (@YURIKOTIGER) | Twitter

子どもの頃から、将来の夢は「日本に行くこと」

——14歳のときに初めてコスプレをされたそうですが、きっかけは何だったのですか? 

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日本のアニメやマンガが小さい頃から大好きだったんです。「ユリコ」という名前も、11歳のときに自分で付けました。2006年にイタリアで開催されたイベントでコスプレイヤーさんを初めて目の当たりにして、感動したんです。翌年友達が「一緒にコスプレしようよ」と誘ってくれたのですが、当時は「コスプレイヤー=特別な人」というイメージがあったので「私なんかができるのかな?」と不安でした。昔の私はシャイな“オタク”って感じの女の子で、ぽっちゃり体型だったので(苦笑)

でもやっぱり「好きなキャラクターの格好がしてみたい!」と思いきってイベントに参加したら、写真を撮ってもらえたりパフォーマンスで拍手をもらえたりして、アニメ好きの友達も増えました。そのときに「もっと色んなキャラクターの格好がしたい」「もっとコスプレのクオリティを上げたい」という想いが芽生えて、その気持ちは今日までずっと続いています。

——その後、2014年に来日された理由はなんでしょうか?

子どもの頃からの夢だったんです。両親から「将来の夢はなに?」と聞かれるたびにいつも「日本に行きたい!」と言っていました(笑)19歳のときに「これ以上遅くなるより、いま行くしかない」と、日本にやってきました。最初は日本語学校に通いながら、少しずつモデルやイタリア向けのゲームリポーター等の仕事をしていました。

イタリアでも日本文化について本で勉強していたのですが、実際に日本人と接するとコミュニケーションが難しいと感じる場面が多かったです。日本人の真面目で完璧主義な部分はとても尊敬していますが、一方で、細かなことをとても気にしますよね。けれど「日本では、そんなことをしてはダメなんですよ」と直接注意してくれるわけでもないので、挨拶や振る舞いで「私のやり方は正しいのかな?」とわからなくて悩むことが多かったです。周囲の人を見ながら少しずつ覚えていき、今ではわからないことがあっても「そうなんですか〜」と笑顔で対応できるようになって……少し日本人らしくなりましたかね?(笑)

——アニメやマンガ以外で、日本の好きなところはありますか?

東京という街が好きです。東京の風景を見ているだけでホッとして、まるで自分の故郷のように感じます。いまでは「イタリアに帰る」ではなく「日本に帰る」と言って、家族と喧嘩することもあります(苦笑)またJ-POPやファッションも大好きです。音楽ならm-flo、タレントなら篠原ともえさん、木村カエラさん、きゃりーぱみゅぱみゅさん、といったカラフルで元気をくれるタイプの女の子がとても好きです。

肩書きにとらわれず、「自分がやりたいこと」を追求する

——日本で働くようになってから、日本人の働き方で疑問に思うことはありますか?

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よく言われていることですが、日本人は働きすぎだなと思います。世界で二番目に自殺率が高いという事実もショックです。真面目に働くからこそ日本の企業は世界的に有名なのだと思いますが、皆さんはロボットじゃなくて人間なのだから、もっと自分を大切にする時間を取ってもいいのではと思いますね。

また、規律正しいことも日本人の素晴らしいところだと思いますが、「こうあるべき」という空気や固定観念にとらわれている傾向も強いと思いますね。例えば日本で「コスプレイヤーです」というと、なぜか社会的な地位が低いように見られがちです。また、日本のビジネスマンは「◯◯会社の者です」と肩書だけの自己紹介をよくしますよね。あれを見ると「あなた自身はどんな人なの?」と疑問に思います。

私は「コスプレイヤーだから」と自分のエリアを狭めるのではなく、日本でもっと色んな仕事や経験をしたいと考えています。アイドル活動もしてみたいし、女優のお仕事もしたい。でも活動の幅を広げすぎて「(ひとつの道の)プロフェッショナルではない」と見られることもあって……難しいですね。「私はコスプレイヤーです」ではなく、「私はユリコタイガーです」と伝えられるようになりたいですね。

——コスプレイヤーとしてのこだわりはなんですか?

私の本名は「エレオノーラ」というのですが、イタリア人初といわれる女優の名前から親が付けてくれたんです。「彼女のように、多くの人から注目される女優になるように」という願いを込めたそうですが、子どもの頃は「女優なんて絶対いや!」と言っていました(笑)けれど今コスプレイヤーになって、母は「キャラクターを演じるのだから、コスプレイヤーも女優と同じでしょう?」と話してくれます。

私はコスプレをするとき、できるだけキャラクターに近づきたいので、ストーリーやキャラクターの性格、振る舞いや声まで全部勉強して真似します。女優とコスプレイヤーを比較すると「コスプレイヤーはレベルが低い」と思われるかもしれませんが、キャラクターを理解しながら作り上げていく点では同じじゃないかな、と思います。

——自分なりに仕事に向き合い、よりクリエイティブにしていくという姿勢は、ユリコさんだけではなく多くのビジネスパーソンに求められるものですよね。

日本では「クリエイター」と「それ以外の仕事」とが分けられていて、両方の視点をもった人は少ないように感じます。でもたとえクリエイターのように何かを生み出す仕事じゃなくても「もっとこうしてみよう」と自分の意見を持って取り組んだほうが、仕事はもっと楽しくなりますよね。

日本人は「◯◯はミスするリスクが高いから、やめておこう」と一見ポジティブなようで、実際には後ろ向きな選択をする傾向も強い気がします。目標に向かうとき、ミスしたとしても、それをひとつの経験ととらえたらいいと思うんです。「ミスした、もうダメ!」と極端にせず、ミスの経験を活かして少しずつ目標に向かっていく。そうすれば自殺なんて悲しいことも少なくなるのでは……と思います。「真面目にコツコツ」というメンタリティこそ、日本人の素晴らしいところですから。

大好きなアニメやファンを大切にしながら、新しい分野に挑戦したい

——今後、ユリコさんが挑戦してみたいことはなんですか?

いまのゲームってCG技術が進んで、まるで本物の人間みたいですよね。そのCGキャラクターのモデル、あるいは女優になりたいです。私の表情や話し方をしたゲームの主人公が生まれたらいいなぁって。あとは、まだまだ日本語の勉強が必要ですが、声優にもチャレンジしたいです。最近ドラマのお仕事があって、セリフが無い役でも「セリフが無いからこそ演技が難しい」ということを学びました。どんなお仕事でも勉強になりますし、新しいことに少しでも触れると「もっとやってみたい!」と挑戦したくなるので、いまはやりたいことが多すぎて。

また、私はガチオタクなので(笑)大好きなアニメの仕事も大切にしたいです。あと、きゃりーぱみゅぱみゅさんに代表されるようなポップ・カルチャーの勢いが少しトーンダウンしているように見えて悲しいです。ポップ・カルチャーこそ“日本”でしょう!? そんな文化も私は守りたいです。だんだんコスプレイヤーという枠に収まらなくなってきているかもしれませんね。

私はごく普通の女の子で、何ができるか分からないまま日本に来て、色んな挑戦と経験を経ていまの自分になりました。自分は特別な存在だと思っていないので、ファンの方に対しても遠い存在になりたくないし、いつまでも対等な立場でいたいと思っています。

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取材・文:伊藤七ゑ 撮影:向山裕太