「ユニークな福利厚生制度」は、成長企業の強み。楽しそうな会社レポート

 「ユニークな福利厚生制度」を持つ企業が注目を集めている。

 福利厚生といえば、住宅手当や家族手当、社員食堂などを思い浮かべる人が多いだろう。いずれも従業員への経済的な補助を目的とするものだ。しかし昨今では経済的な補助に限らない、「おもしろい仕組み」を持つ企業が増えている。ユニークな福利厚生はどのような効果を生んでいるのだろうか。
 
 今回は成長著しい2社に注目し、それぞれの制度について話を聞いた。共通しているのは「事業拡大」と「急激な人員増」。独自の仕組みから垣間見える、成長企業の「強さの源」を紹介したい。

社員が講師を務める!朝日を浴びてリフレッシュする「朝ヨガ」制度

f:id:tany_tanimoto:20151209134622j:plain

 レバレジーズ株式会社(東京都渋谷区)は、IT・WEBや医療、人材など多種多様な領域で自社メディアを運営している。急成長に伴って毎年100名規模の採用を続けており、現在の社員数は約400人。過去3年間で4倍になった。

 同社がオフィスを構えるのは渋谷ヒカリエ。天気の良い日には、緑地フロアに面するエントランスに陽光が注ぎ込む。この環境を生かした「朝ヨガ」活動を、会社の福利厚生策の一環として月2回開催している。始業前の40分間を使って朝日を浴びながら体を動かす取り組みだ。毎回10人程度の社員が参加しているという。

 以前は外部講師を迎えていたが、現在は社員が講師役を務めている。メディカル事業部の土方里紗さんは2015年1月に入社したばかり。もともとライフワークの一環として、ヨガインストラクターの資格を取得していた。「以前からレバレジーズの朝ヨガ制度を知っていて、入社動機のひとつには『資格を生かして企業活動に貢献したい』という思いもありました」と話す。

 「深く呼吸をして体を動かすことで代謝が活性化し、集中力やモチベーションを高めてくれます。会社での朝ヨガは、健康増進だけでなく仕事面でもプラスに働きます」(土方さん)

8,568通り、あなたはどのタイプ?

社内に多くの顔見知りを作る「基本習慣」。メンバーとの交流の場に

f:id:tany_tanimoto:20151209134722j:plain(左から、メディカル事業部の土方里紗さん、人事部の加藤美月さん)

 同社には2005年の創業以来ずっと続けてきた「基本習慣」がある。毎朝10分間、部署の垣根を超えた4?5人のチームで、日常のうれしかった出来事や新しい発見などのポジティブな世間話を行う「GOOD & NEW」という取り組みだ。半月に一度メンバーを入れ替え、組織が拡大しても社内にたくさんの顔見知りを作ることができるようにしている。

 朝ヨガを運営する人事部の加藤美月さんは、「当社が従来から大切にしてきた社内コミュニケーションの延長に朝ヨガがある」と話す。さまざまな立場の人が自然と集まり、活動をともにする文化があるからこそ続いている取り組みなのだ。また、「不規則になりがちな社員の生活習慣や運動不足を改善する狙いもあった」という。

 この活動には社外からの参加も可能。社員だけでなく家族や友人・知人など、出勤前の時間を利用して体を動かしたい人達の参加も受け入れている。今後は社内だけでなく社外のひととの交流機会としても朝ヨガを活用していく予定だ。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

社員が開く40以上の自主講座は、経験・スキルの「自己PR」も兼ねている

f:id:tany_tanimoto:20151209134850j:plain

 即戦力を求める成長企業では、新卒採用より中途採用の割合が高くなる場合も多い。こうした採用の現状を生かし、「スキルアップの場」と「自己PRの場」を巧みに両立している会社がある。スマートフォン向けゲームアプリを中心に多数のヒット作品を配信している株式会社gloops(東京都港区)だ。

 同社独自の「gloops study」は、社員が自由にテーマを決めて社内講座を開くことができる制度。エンジニアが多い会社らしく、外部講師を招いた「話題のパーソナルロボットと遊ぼう」というテック系の講座から、「弁護士に聞く『結婚と離婚』」、「人事担当が教える『上手な口説き方』」などといった業務に直結しない講座まで、さまざまなテーマが並ぶ。社内共有ツールで自由に講座を立ち上げて参加者を募ることができ、週に一度の全社朝礼で社長が「今週のstudy」を発表するという力の入れよう。毎月約20講座が開かれているという。

 なぜこうした制度を運用しているのだろうか。同社広報部の西山すのさんは、「当社のメンバーはさまざまな業界から中途入社で集まっている。それぞれの得意領域で勉強会を開いてもらえば、幅広くスキルが共有できる」とその狙いを話す。

 また、社員が活発に講座を開く理由は、それが「自分自身のため」でもあるからだという。講師を務めたり、外部人脈を活用して講座を主催したりすることで、これまでの経験・スキルを多くの社員に伝えることができる。「gloops study」は、何よりも分かりやすい自己PRの場となっているのだ。

2~3カ月に一度の「癒しイベント」で社内コミュニケーションを活性化

f:id:tany_tanimoto:20151209134922j:plain(左から、広報部の峠(とうげ)玲奈さん、西山すのさん)

 gloopsの社員数は約500人。組織は「ゲーム制作」「マーケティング」「管理」の3部門に大きく分かれており、部署を超えた交流を促すには仕掛けが必要だ。そこで同社では「Relaxation Day」という癒しイベントを定期開催し、社内コミュニケーションの活性化を図っている。

 2?3カ月に1回という頻度で、業務時間中に「フルーツビュッフェ」「かき氷イベント」「ハロウィンパーティ」などを開催。社内の広大な休憩スペース「ハングアウトフィールド」を使い、社員が好きなタイミングで参加できるようにしている。

 広報部の峠(とうげ)玲奈さんは「イベントの写真をSNSでシェアし、社内の知り合いを増やしているメンバーが多い」と話す。年間を通して中途採用を行っているため、イベントには毎回多数の「初参加者」がいる。頻繁にイベントの機会を設けることで、拡大し続ける組織内のつながりを強化しているのだ。

f:id:tany_tanimoto:20151209134951j:plain

 一方で、「Relaxation Day」には社内イベントにありがちな強制参加ルールはない。「もともとはお祭り好きなメンバーが自然と始めたイベントで、今もゆるく運営している」のだという。イベントへコミットする度合いは人それぞれ。楽しみたい人だけが自由に参加できるという気軽さも、制度を続けていくうえでの秘訣になっているようだ。

 急成長を続ける2社の福利厚生制度は、単に「うれしさ」「楽しさ」を社員に提供するだけでなく、拡大していく組織をまとめるための重要な仕掛けとしても機能していた。それは莫大な投資を必要とせず、アイデア次第で可能になる仕組みだ。それぞれの企業で培われた文化・風土がユニークな福利厚生制度を実現し、「強さの源」となっている。

 あなたの職場にも、ほんの少しのアイデアとひと工夫で開花する「強さの源」が眠っているかもしれない。

(WRITING 多田慎介+プレスラボ)

PC_goodpoint_banner2

Pagetop