仕事でやりがいはどんなときに感じる?やりがいの見つけ方、好循環を生むやりがいの捉え方

「仕事にやりがいを感じない」と悩む人は少なくないようです。そもそも仕事におけるやりがいとは何であり、見つけるにはどうしたらいいのでしょうか。

企業向けのビジネススキル研修を手がける、株式会社プレセナ・ストラテジック・パートナーズ代表の高田貴久さんに、働く上でやりがいの見つけ方や仕事のやりがいの捉え方についてアドバイスをいただきました。

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Photo by Adobe Stock

仕事のやりがいとは?

一般的に「やりがい」とは、物事に取り組んだときに得られる満足感や手応えのことを指すようです。つまり、仕事のやりがいとは、「仕事や仕事の対価や成果から得られる満足感や充足感」を意味します。

仕事でやりがいを感じることができれば、日々働くモチベーションは上がり、意欲的に取り組むことで高いパフォーマンスが発揮され、自身の能力も磨かれていくといった好循環が期待できるでしょう。

しかし、仮に同じ仕事をしていても、やりがいを見つけられるかどうかや、やりがいを感じる理由は、人によって全く異なります。「目標を達成すること」「周りから感謝されること」「仕事の成果が報酬に表れること」など、一人ひとりの価値観によって満足や喜びを感じるポイントは全く違うからです。

ですから、自分のやりがいや、やりがいに対する考え方を人に押しつけてはいけないと考えています。

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やりがいは「自分にとって仕事とは何か?」によって異なる

「仕事にやりがいを感じない」と悩んだときは、まず、悩む前に「そもそも自分にとって仕事とは何なのだろう?」と考えてみてはどうでしょうか。仕事に何を求めているかを考えることで、自分を客観視することができるからです。

私の場合は、自分のこれまでの体験から、仕事の状況をフェーズで捉え、以下のように次の3つのフェーズに分けて考えています。

フェーズ1「金銭を得るための手段」

プライベートの人生と仕事とを切り離し、「仕事はお金を稼ぐ手段」と割り切る捉え方です。例えば、音楽活動や演劇活動を続けるにあたって生活費を稼ぐために働いたり、「人生で最も大切なのは家族」であり、「仕事は時間を売って収入を得るためだけのもの」と割り切ったりするケースです。

身近な例として、みなさんの学生時代のアルバイトもそれに近い感覚ではなかったでしょうか。私自身も学生時代は、「効率よくお金が稼げればそれでOK」と考えつつ働いていた気がします。

フェーズ2「人生の多くの時間を費やす活動」

「ワーク・ライフ・バランス」を大切にしながら、仕事でも自己実現をしたいという捉え方です。社会人になると多くの場合、1日の3分の1という長い時間を仕事に費やすため、「せっかく働くなら手応えを持って仕事に取り組み、毎日を充実させたい」と考える人も増えるでしょう。

私自身は、最初に就職したコンサルティングファーム時代がそれに該当します。早く昇進しようと頑張っていましたが、一生コンサルタントを続ける気はなく、かといって本当にやりたいこともよくわからない手探りの状態でした。

フェーズ3「人生そのもの」

仕事=「自分の人生で本当にやりたいこと」という捉え方です。フェーズ2のテーマがワーク・ライフ・バランスなのに対して、フェーズ3は「ワーク・ライフ・アラインメント(人生と仕事の整合)」と表現できるかもしれません。一般的には「天職」や「ライフワーク」とも言われます。

私自身は、人材育成という大きなテーマを見つけ、現在の会社を立ち上げてからこのフェーズに入ったと言えるでしょう。

「やりがいがない」と悩みやすいのはフェーズ2

ここで改めて、仕事のやりがいについて考えてみましょう。まずフェーズ1や3の状態の人が「やりがいがない」と悩むことは、あまりありません。

なぜなら、フェーズ1は効率的に稼げることが最重要であり、仕事は手段でしかありません。そしてフェーズ3は、仕事が人生の目的と整合しているため、大きなやりがいがあって当然だからです。

一方、フェーズ2の人は、必ずしも人生の目的と一致しているとは言えない仕事に対して何らかの満足感を求めるため「やりがいがない」と悩むケースが多いのかもしれません。

ただ、このフェーズは年齢や経験、環境などによって変化し、小さなきっかけで、モチベーションが飛躍的に高まることもあります。ですから「今、働くことにやりがいを見いだせない」と悩んでも、必要以上に焦る必要はないのです。

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仕事でやりがいを感じない理由とは

「仕事のやりがいを感じない」という場合に考えられる、そもそもの理由を解説します。

「生きる目的」「本当にやりたいこと」がはっきりしていない

そもそも「自分が本当に何をしたいのか」「何を大切にして生きるか」という人生の目的が明確ではないと、日々の仕事にやりがいを見つけるのは難しいものです。特に若い時期は、「あれもこれもできる」と自身の可能性に期待する半面、どんな仕事をしても「それほど満足できない」「ピンと来ない」と思いがちです。

しかし、若い年代で「やりたいことがわからない」のはごく自然なことで、焦る必要はありません。経験と共に自分のやりたいこと、向いていること、好きなことの手がかりは少しずつ見えてくるでしょう。

今の人生のフェーズが決め切れていない

もう一つは、「自分は今、何に生きる時期か」という人生のフェーズが定まっていないことです。

人は一生同じペースで働き続けられるわけではなく、年齢やライフイベントとともに「趣味に生きる」「家庭に生きる」「仕事に生きる」と、人生の中心に据えるものが変わります。自分にとって今大切なことを明確化し、それに合わせた仕事や働き方を選択すれば、「やりがない」と悩むことも少ないのではないでしょうか。

人生の目的を見つけるには時間が必要ですが、人生のフェーズは自分自身が決断すればいいだけなので、「意識付け」で改善できる部分でしょう。

ただし「今の時期は仕事を突き詰めよう」などと自分で決めたにも関わらず、やりがいが得られない場合は、「正当に評価されていない」「仕事内容が合っていない」「仕事に見合う報酬・待遇が得られていない」「仕事が単調で成長感がない」などの外的要因が大きい可能性があります。

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今すぐ自分のやりがいを見つけるためのアクション

「仕事にやりがいがない」と悩む人が、状況を改善するためにすぐできるのは、まず「自分のやりがいの元は何か」を探ることです。

自己分析で「自分は何に満足するか」を知る

上述したように「やりがい=満足ポイント」は、一人ひとりの価値観によって異なります。まず過去の経験を振り返り、自分がどんなときに喜びや満足を感じるのかを思い出してみましょう。

この場合、周囲の評価や一般的な価値観は気にせず、「自分がうれしいかどうか」だけを基準にすることが大切です。既存の自己分析ツールを利用しても良いでしょう。

また、私が考えた下のような簡易な自己診断も、自身の満足ポイントを知る一助になるかもしれません。例えば、学生時代を振り返り、「テストで100点を取れたとき」を想像してみてください。結果に対して「一番うれしい」と感じるタイミングは、人それぞれでしょう。

【質問】テストで100点満点を取ったら、どのタイミングが一番うれしいですか?

【回答1】100点だとわかったとき──「達成」

地味な仕事であっても、自分の責任において取り組み、自分の力でやり遂げることに喜びを感じる。

【回答2】先生に褒められたとき──「権威」

上に立つ人に褒められるとモチベーションUP。理解ある上司の元で成果を出していくことがうれしい。

【回答3】クラスメートにもてはやされたとき──「承認」

人目に触れる成果や貢献によって、お客さまや職場の同僚などに喜んでもらえることが力となる。

【回答4】帰宅して親に褒められたとき──「信頼」
親や配偶者、社内の尊敬するロールモデルなどからの信頼を得て、仕事を頑張ることに喜びを感じる。

小さな成功を積み重ねる

満足ポイントを探すもうひとつの方法として、まずは目の前にあるタスクに集中し、少しずつ小さな成功を積み重ねることを考えてみましょう。

「お客さまと共通の話題ができた」でも「プレゼンが上手くなった」でも「繁忙期に早く仕事を終えられた」でも、何でも良いのです。人間関係の成功、感謝される成功、評価された成功、目標達成の成功など、いろいろなパターンの体験を積み、「自分は何がいちばんうれしいのか」を振り返ってみましょう。

そこから、自身が取り組みたい仕事や働き方のヒントが見えて、人生の目的の発見に繋がっていく可能性もあります。

他者との対話でフィードバックを得る

上司や同僚、友人など、周囲の人たちとの対話を通じて、「自分がどのような仕事をしているときに楽しそうにしているか」など、キャリアに対する客観的なフィードバックを得ることで、成長に活かす方法もあります。自分が気づいていなかった強みや特性に気づくこともあるでしょう。

 

仕事のやりがいを実感する機会や環境を見つける方法

自分のやりがい(満足ポイント)を、仕事のやりがいにつなげ、実感できるようになる方法をご紹介します。
自分のやりがいと一致する仕事のやりがいを実感するためにどういった行動を起こせばいいのかを、いくつかご紹介しましょう。

好きなことや強みや経験を活かせる機会を作る

自身の満足ポイントは、自分の好きなことや強みとつながっていることが多いものです。自分の「好き」を積極的に周囲に話せば、やりたい仕事は向こうからやって来てくれますし、強みや経験を活かせる目標を設定することで、やりがいを自ら作り出す方法もあります。

スキルアップのために新たな勉強をしたり、ワンランク上の仕事にチャレンジしたりできれば、仕事がより充実するでしょう。

社内で新たな挑戦ができないか探す

自分の強みが活かせる提案をしたり、社内募集やプロジェクトに手を上げたりすることもおすすめです。まずは自分自身が望む企画やプロジェクトについてリサーチし、アサインを実現するための方法を探してみましょう。

すぐに実現することが難しい場合でも「今の仕事で成果を出して希望を叶える」という目標に向かうことでモチベーションを高められます。

部署異動や転職を考える

どうしても今の会社や部署ではやりがいを実現できない場合は、社内での異動や転職などのキャリアチェンジも視野に入れると良いでしょう。

社内の制度や人脈を活用するなどして、自分の理想とする仕事や働き方ができる別の部署やポジションがないか、情報を収集してみましょう。

社外で挑戦、活躍できる場所を探す

仕事環境は変えられず、社内で新たな挑戦をすることも難しい場合は、趣味や副業、ボランティア活動などに挑戦するのも一案です。

新たな世界が広がることで、「自分は何にやりがいを見出して生きていきたいのか」をより広い視野で考えることにも繋がります。それにより仕事に対する意欲もアップするかもしれません。

本物のやりがいは、焦らなくてもきっと見つかる

仕事のやりがいは、もちろんあった方が日々楽しく働けると思います。

しかし、一般論にとらわれすぎて「仕事にはやりがいがなければ」「やりがいがないのはダメなこと」と焦ってしまうと、それに値しない労働環境の中で消耗して、「やりがい搾取」の罠に陥ってしまうかもしれません。

特に若手ビジネスパーソンの多くは、「自分は何ができるか」「何が本当にやりたいか」を模索している途中です。その過程で大きなやりがいが実感できないのは自然なことなので、必要以上に悩んだり、焦ったりすることはありません。

小さな成功を積み重ねることで自信がつき、自分なりの仕事観ができてくれば、いつか「やりたいのはこれだ!」というものに出会えるはずです。

株式会社プレセナ・ストラテジック・パートナーズ
グローバルCEO・代表取締役社長 高田 貴久(たかだ・たかひさ)氏

高田貴久氏_プロフィール画像東京大学理科Ⅰ類中退、京都大学法学部卒業、シンガポール国立大学Executive MBA修了。戦略コンサルティングファーム、アーサー・D・リトルでプロジェクトリーダー・教育担当・採用担当に携わる。マブチモーターで社長付・事業基盤改革推進本部長補佐として、改革を推進。ボストン・コンサルティング・グループを経て、2006年にプレセナ・ストラテジック・パートナーズを設立。トヨタ自動車、イオン、パナソニックなど多くのリーディングカンパニーでの人材育成を手掛けている。著書に『ロジカル・プレゼンテーション』『問題解決―あらゆる課題を突破するビジネスパーソン必須の仕事術』がある。
▶プレセナ・ストラテジック・パートナーズ 公式サイト

取材・文:鈴木恵美子 編集:馬場美由紀
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