ビジネスメールの書き出しは何が正解?相手やシチュエーション別の書き出し例を紹介

ビジネスで信頼関係を築いていくためには、第一印象が重要。メールでも、書き出しを意識すれば印象が変わり、その後のやり取りがスムーズになる可能性があります。
ビジネスメールの書き出しの考え方やポイントなどについて、伝える力【話す・書く】研究所所長、山口拓朗ライティングサロン主宰・山口拓朗さんに伺いました。

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ビジネスメールの書き出しが重要である理由

メールを始め、ビジネス文書は書き出しが重要。書き出し部分に何が書かれているかによって、人は送り主の「人となり」など、いろいろなことを無意識のうちに判断しています。
特にビジネスメールの場合は、その人の性格や人間性、志向、仕事への向き合い方なども表れやすいので、書き出しから気を抜かないことが大切です。

ただ、書き出しはある程度パターン化されていて、さほど複雑ではありません。後述する例文を参考にしながら、相手との関係性やシチュエーションに応じて書き分けるといいでしょう。

ポイントは、「相手が求めていることを書く」こと。つまり、要件をシンプルに、かつわかりやすく伝えることを意識しましょう。

例えば、「相手が大事なクライアントだから」と、過剰にかしこまった書き出しをする人がいますが、そんなことはまず求められていませんし、まどろっこしくなり要点が伝わりにくくなる可能性があります。さらには、「このメールに返信するときには、同じぐらいかしこまって書かなければならないのか」とうんざりさせてしまう恐れもあります。どんな相手に対しても、相手の立場に立った誠実な書き出しを心がけましょう。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

ビジネスメールの書き出しQ&A

ビジネスメールの書き出しに関するお悩みポイントや素朴な疑問について、説明していきましょう。

書き出しの基本構成は?

メールの基本的な構成要素は、1. 件名、2. 宛名、3. 挨拶、4. 自己紹介、5. お礼や目的など、6. 本文(結論)、7. 本文(詳細)、8. 相手にしてもらいたい行動、9. 締めの挨拶、10. 署名、の10要素になります。

このうち、書き出しに相当するのは1から5になります(件名は最初に目に入る項目であり、書き出しに含めて説明します)。

1. 件名

件名は、一目で内容や要件がわかるように書きましょう。例えば「企画書をお送りします」「○○システムの納品期日の件」「次回打ち合わせの日程調整について」など。稀に、送り主の社名と名前だけが書いてあったり、「先日はありがとうございました」とだけ書かれていたりするような、用件が想像できないメールがありますが、受け手によっては非常にストレス。後回しにしたり、場合によってはスパム扱いされたりする可能性もあるので注意しましょう。

2. 宛名

「どこまで書けばいいのか」と悩む人が多い宛名。基本的には社名と名前(フルネーム)で十分。部署名やチーム名まで無理に入れなくても大丈夫です。2回目のやり取りからは、社名は省略し、「山田様」など名字だけでOKです。
なお、漢字の間違いにはくれぐれも注意を。例えば「わたなべ」という苗字には、渡辺、渡邊、渡邉、渡部などさまざまな漢字があります。「さいとう」も斉藤、斎藤、齋藤、齊藤などがあり、間違えられることを嫌がる人もいます。相手のメールに返信する場合は、署名からコピー&ペーストすることをお勧めします。

3. 挨拶と4. 自己紹介

「お世話になっております。株式会社○○の小川一郎です」という挨拶と自己紹介が一般的。ただ、初めて連絡を取る相手の場合は、「お世話になっております」の代わりに、「初めまして」もしくは「初めてご連絡させていただきます」という挨拶のほうがスマート。必要に応じて、簡単な自社の紹介(どんなものを扱っている会社か)や自分の紹介(こんな商品の営業を担当している、など)を追記するといいでしょう。

5. お礼や目的など

相手と面識がある場合は、例えば「先日は打ち合わせの機会をいただきありがとうございました」「昨夜は遅くまでお疲れ様でした」など、お礼やねぎらいの言葉などを入れると、本題に入る前のいいワンクッションになるうえ、プラスアルファの好印象も与えることができます。
加えて、「本日は○○の件でご連絡しました」など、メールを送った理由や目的を冒頭に入れると、その後の本題に入りやすいという効果があります。

敬語はどれぐらい守るべき?

相手との関係性にもよりますが、ビジネスメールは敬語の中でも尊敬語ではなく、謙譲語が適しています。
尊敬語は、相手や相手の行動に敬意を払うときに使う言葉。謙譲語は、自分がへりくだることで間接的に相手を立てるときに使う言葉です。尊敬語で固めすぎると、前述のような「過剰にかしこまった書き出し」になってしまう可能性が高いので注意が必要。謙譲語で相手を適度に立てるぐらいが、読みやすい書き出しになります。

もし気心のしれた親しい関係性であれば、社外の人であっても丁寧語がなじむケースもあります。丁寧語とは、「借りる→借ります」のように、相手や内容を問わず、表現を丁寧にしたり、上品にしたりするケースで使う言葉のこと。「お借りいたします」と謙譲語で書くと仰々しく感じられる時は、丁寧語を検討しましょう。

なお、初めてかつ自分よりかなり目上の人に対しては、礼節を尽くしたほうが無難。かしこまり過ぎない程度に尊敬語を取り入れるといいでしょう。

時候の挨拶は入れたほうがいい?

例えば「山の木々もすっかり色づいてまいりましたが、いかがお過ごしですか?」「新緑が美しい季節となりましたが、お変わりありませんか?」などといった時候の挨拶。プライベートなメールならば入れてもいいかもしれませんが、ビジネスメールはスピーディーなやり取りが大事。省略して問題ありません。

ただ、ニュースになるほど酷暑が続いているとか、まさに台風が直撃しようとしている、大雪が降っているなど、「今まさにトピックとなる天候や気候の変化が起きている」ような場合は、「酷暑が続いて体力的に厳しい日が続きますが…」「台風が明日関東上陸とのことですが…」など、相手を気遣ったり心配したりする意味で軽く触れるのは好印象です。

社内の同僚相手であればラフな書き出しでもよい?

前述のように、ビジネスメールは「相手が求めていることを書く」のが基本。「同僚や後輩だからラフに、先輩だから敬語で」と画一的に決めてしまうのではなく、相手との関係性を踏まえてカジュアル・フォーマルのバランスを考えましょう。したがって、相手がラフなやり取りを求めているのであれば、それに合わせるといいでしょう。相手が「お疲れ様です」を端折って本題に入ってきたのであれば、返信する際に同様に省略しても問題ありません。

判断に迷ったら、相手からのメールの書き方に合わせましょう。通常、ビジネスメールでは「!(ビックリマーク)」や「(笑)」、顔文字などは使いませんが、相手が使って来たらそれに乗っかってもOK。相手が社外の人であっても、「お世話になります!先日の打ち合わせは盛り上がりましたね(笑)」などと砕けた表現をしてきたら、こちらも「思いもよらないアイディアが飛び出して驚きました(笑)」のように、多少砕けた書き出しにするとコミュニケーションが円滑になります。

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【例文3つ】相手別・ビジネスメール書き出し(挨拶+自己紹介+お礼や目的)

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前述の「書き出しの基本構成」のうち3. 挨拶、4. 自己紹介、5. お礼や目的など、の例文をご紹介します。

クライアント、取引先の場合

いつもお世話になっております。
株式会社□□の鈴木です。

先日はお忙しい中にも関わらず、
お打ち合わせの時間をいただきありがとうございました。
貴重なご意見をいただき、とても勉強になりました。

そのときのご意見をもとに企画を練り直し、
修正企画書を作成しましたので添付いたします。

●ポイント

「いつも大変お世話になっております」は、社外のどんな立場の人にも活用できる挨拶。そのうえで、「先日は商談の機会をいただきありがとうございました」「先日も期日通り○○をご納品いただきありがとうございます」などとお礼の言葉を添えるといいでしょう。加えて、何の目的でメールをしたのか簡単に触れておくとスムーズです。

上司や先輩の場合

お疲れ様です。営業1部の加藤です。

昨日は遅くまでA社のロープレに付き合っていただき、ありがとうございました。

アドバイスを踏まえて、プレゼン資料を作成しましたのでご確認をお願いします。

●ポイント

目上の人であっても、社内メールにかしこまった挨拶はあまり必要ありません。前置きはそこそこに、まずは要件をわかりやすく伝えることが重要。仕事の相談なのか、進捗報告なのか、日報の提出なのか、冒頭で簡潔に伝えましょう。
そのうえで、簡単なお礼の言葉やねぎらいの言葉を添えると◎。部下からのちょっとした気遣いは上司や先輩も嬉しいものです。

同僚の場合

昨夜はチーム会の幹事お疲れ様でした!
さすが山本さんがチョイスしたお店、
雰囲気が良く料理もとても美味しかったです。

その席で話題に挙がった営業ネタの件で連絡しました。
リストを社内フォルダに格納したのでリンクを送ります。

●ポイント

親しい同僚であれば、カジュアルな書き出しでも問題ありません。相手のメールのトーンに合わせて、適度に砕けた表現を用いるといいでしょう。相手がそれを良しとするようなら、「お疲れ様です」の言葉や「宛名」を省略するのもありです。

【例文6つ】初対面、謝罪、返信…状況別・ビジネスメール書き出し

ここでも、前述の「書き出しの基本構成」のうち3. 挨拶、4. 自己紹介、5. お礼や目的など、を意識した例文をご紹介します。

会ったことのない人に初めてメールをする場合

まずは自分が何者であるのか伝えましょう。社名と名前だけでなく、何をしている会社であり自分はどんな仕事をしているのか、わかりやすく簡潔に伝えることが重要です。
そのうえで、どういう経路で連絡先を知ったのか、何の目的で連絡をしたのかを伝え、本題へとつなげましょう。
なお、ケースバイケースではありますが、「相手のこと(企業のこと、事業内容のこと)」を十分調べたうえで連絡した」ことが伝わるひと言を添えると、自身の姿勢が伝わり好印象を得やすくなります。

初めまして。突然のメールで失礼いたします。

デジタル広告のエージェンシーである株式会社□□で、
企業様のメディア展開をサポートしている営業担当の坂口太郎と申します。

○○社の△△様からご紹介をいただき、ご連絡させていただきました。
貴社が□□媒体への展開を検討されていると伺い、
ぜひ一度ご提案の機会をいただけないかと考えております。

久しぶりにメールをする場合

久しぶりの相手には「お世話になっております」よりも、「ご無沙汰しております」「久しぶりにご連絡いたします」などの書き出しがお勧め。「お変わりありませんか?」「お元気でいらっしゃいますか?」などの言葉を添えるのもいいでしょう。相手の活動・活躍を見聞きしていたのであれば「ご活躍の噂は伺っております」と入れるのも悪くありません。

「その節は大変お世話になりました」は汎用性の高い言葉。数カ月のブランクでも数年のブランクでも通用するので、うまく活用しましょう。

大変ご無沙汰しております。お元気でいらっしゃいますか?

その節は、大変お世話になりました。
山口様の多方面でのご活躍は、秘かに拝見しておりました。
またご連絡できることを嬉しく思っております。

謝罪するメールの場合

書き出しでお詫びをするのはもちろん大切ですが、何のお詫びなのかも併せて説明しないと、相手に伝わりません。また、相手がミスを知っているのか、それともこのメールで報告するかによっても書き出しは変わります。
なお、ミスのレベルにもよりますが、重大なミスであればあるほど、書き出しだけでなく随所で詫びの言葉を述べ、「お詫びを重ねていく」ことが重要です。

いつも大変お世話になっております。
株式会社□□の小林です。

すでに田口マネージャーよりお聞き及びかと思いますが、
○○の件でご迷惑をおかけし、大変申し訳ございません。

今日はお詫びとともに、再発防止策についてお伝えしたく、ご連絡いたしました。

言いにくいことを伝えるメールの場合

例えば、取引先に取引内容の変更をお願いしなくてはならない、部下にプロジェクトから外れるよう言わなければならない、など言いにくいことを伝える際は、「ポジティブな書き出し」が鉄則。いきなりズバリと切り出したり、ネガティブな雰囲気を醸し出したりするのは、好手とは言えません。
普段のお礼や感謝の気持ち、ねぎらいの気持ちを伝えたうえで、本題に入りましょう。

いつもお世話になっております。
株式会社□□の山本です。

□□社様には、いつも精度の高い製品をご納品いただき、感謝しております。

これからも末永いお取引をお願いしたいと思っておりますが、
一部取引内容の変更をご相談したく、ご連絡いたしました。

お願い事や依頼メールの場合

単に「発注する」のではなく、相手の自己重要感を高めるようなひと言を、書き出しの中に入れるのは有効です。例えば、「この仕事は○○さんがプロだと聞いた」「△△さんはいつも精度が高いからぜひお願いしたい」などと入れると、相手は嬉しいし頑張ろうと思えるものです。その後の仕事もスムーズに進み、納品物のクオリティも高まるでしょう。

お疲れ様です。マーケティング部の長谷川です。

実は、新商品○○の売り場展開用のPOP制作を
佐々木さんにお願いしたくご連絡しました。

昨年佐々木さんにお願いしたPOPが非常に好評だったので、
ぜひとも佐々木さんにお願いしたいのです。
勝手ながら、以下に詳細を記しますのでご検討ください。

相手から来たメールに返信する場合

相手のメール内容に対するリアクションを、書き出しの中に入れましょう。例えば、仕事の依頼であればお礼を、質問や相談であればそれに応える旨を書くといいでしょう。
返信メールで意外に多いのが、相手の要件に対してズレた返信をしてしまうケース。自分へのリマインドの意味合いも含め、書き出しで「~について返信します」のように書くのも一つの方法です。

お疲れ様です。経理部の市川です。

クライアントのインボイス対応に関する質問をいただき、ありがとうございます。

いただいた3つの質問にお答えします。
差し支えなければ、営業部の皆さんにも共有いただけるとありがたいです。

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伝える力【話す・書く】研究所所長、山口拓朗ライティングサロン主宰・山口拓朗さん山口拓朗さん

伝える力【話す・書く】研究所所長。「論理的に伝わる文章の書き方」や「好意と信頼を獲得するメールコミュニケーション」「売れるキャッチコピー作成」などの文章力向上をテーマに執筆・講演活動を行う。『伝わるメールが「正しく」「速く」書ける92の法則』(明日香出版社)のほか、『残念ながら、その文章では伝わりません』(だいわ文庫)、『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(日本実業出版社)、『書かずに文章がうまくなるトレーニング』(サンマーク出版)などがある。2023年11月に最新刊『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)が発売予定。
山口拓朗公式サイト

EDIT&WRITING:伊藤理子
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