商談中の沈黙は気まずい?沈黙を味方にする考え方

「セールススタッフには製品やサービスを淀みなく説明できるトーク力が欠かせない。」

そう考える方は多いのではないでしょうか?

そして、そう考えてしまうと、商談中の沈黙が気まずくなってしまい、どんどん畳み掛けるように話してしまうことに…。
商談中の沈黙は全く気にすることは有りません。その理由を1400社以上の営業支援実績がある株式会社エッジコネクション代表の大村さんが解説します。

商談中のイメージ
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【話し上手】より【聞き上手】

まず、営業に対しての認識でよく聞く間違いがこちらです。セールススタッフは【話し上手】でなければならないと考える方が多いのですが、【聞き上手】であることのほうが重要です。

話し上手ということは、情報を与えることが上手ということです。ですが、今の御時世、ほぼすべての人がスマートフォンを持っています。情報はいくらでも自分で取りにいける時代です。

そのような時代において重要なのは、「なにが必要なのか気付かせてあげる」ことです。必要な情報は自分で調べ、必要であればそのまま購入までいけてしまうのが現代社会です。そんな時代において、“セールススタッフ”というスマートフォンではない“人間”がやらないといけない仕事は、「あなたはどんなことで困ってるのでしょうか?」というのをうまく聞き出し、「あ、私はこれで困ってるんだ。」と自覚させることなのです。

その後には、「その点で困ってるなら当社製品はいかがでしょう?」という説明に入りますが、説明が苦手であれば、わかりやすい資料を作ってそれを読んでもらうこともできますし、説明動画を流してそれを見てもらう事もできます。とにもかくにも、「買わなきゃ!」という気持ちにさせるのがセールススタッフの最大ミッションであり、そのためにはこちらから話をし続けるより、相手の話を聞き、相手が話しながら「なるほど、実は自分はこんなことを考えていたのか」と自分自身で気付かせることのほうが重要なのです。

【エースセールススタッフ】の本当のイメージ

セールススタッフは話し上手ではならないと考える人は、俗に言う【セールススタッフ】のイメージとズレていることが多いです。

「いつもエネルギッシュで見るからにイケイケで、少し興味がある素振りを見せるとマシンガンのようにセールストークが飛んでくる」

エースセールススタッフに対してこのようなイメージを持っていないでしょうか?

もしかしたら、世界のどこかにはこういうエースもいるのかもしれませんが、このイメージは一般的ではありません。こんなセールススタッフが聞き上手な可能性は低く、聞き上手ではないということは、お客様の心の奥底に眠る本当に欲しいモノを見つけ出す手助けはできません。人々の手の中にスマートフォンがなかった時代は、このような話し上手のセールススタッフがエースになっていたのかもしれませんが、今はそうではないのです。

繰り返しますが、セールススタッフとして活躍するには【聞き上手】であることが重要です。そして、聞き上手を極めた人がエース社員になるわけですから、このようなイメージの人が多いです。

「一見物静かだがその分癖がなく、清潔感のある見た目であり、こちらの聞いたことに的確に答えてくれる以上は過度に押してくることはなく、とはいえ、約束はしっかり守ってくれる人」

これが、現在におけるエースといわれるセールススタッフの特徴です。

握手をするビジネスマンのイメージ
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8,568通り、あなたはどのタイプ?

商談中の沈黙はお客様にとってどんな時間なのか

さて、以上のように現代社会におけるセールススタッフのイメージを捉え直すと、商談中の沈黙をどのように捉えるべきなのか見えてきます。

まず、セールススタッフが一方的にまくしたてるように話し続け、お客様が沈黙している状況はもっての外です。お客様の胸の内は押し売りされるかもしれないという不安でいっぱいに違いありません。自分が本当に欲しいモノは何だろうか?なんて考えているわけもなく、どのようにその場から離脱すべきかを必死に考えている状況でしょう。

次に、聞き上手でお客様の質問に的確に答えつつ、お客様が本当に欲しいものを考えるきっかけになるような質問をしているセールススタッフはどうでしょうか?このような商談ができている中でのお客様の沈黙、それは、【お客様が考えている時間】なのです。

「当社商品について興味を持っていただいたということなのですね。ありがとうございます。ですが、お話を伺っている限り、急いで当社商品をお買い求めにならなくても良いような状況かと思いまして…。それなのに、わざわざこのようにお話できるお時間をいただけたのは何か私では推察できない理由があったのでしょうか?」

例えば、こんな質問が成立するような商談の流れがあったときです。この後にお客様が沈黙したとします。これがまさに考えている時間です。

「確かに、言われてみれば、そんなに急いで買おうとしなくてよかったな。でも、なんでわざわざ買おうとしちゃったんだろう。そうだ!他の人にはそう見えるけど、本当はあそこも不安で早く買っておかないと大変なことになる可能性があるんだった!」

考えた結果、お客様はこのような感じで自分の「買いたい」という意思を固めていきます。

場合によっては、考えた結果、「やはりいらないな。」となるかもしれません。その時、お客様の気持ちは、「余計なものを買わなくて済んだ!ありがとう!」となっているでしょう。成約が取れなくて残念かもしれませんが、まくしたてて「二度と会いたくない」と思われるよりかはましなのではないでしょうか?

商談中の沈黙はセールススタッフにとってプラスの時間

このように、商談中のお客様の沈黙とはお客様が考えている時間であり、考えた結果は、【買う】か【買わない】かの二択になります。「買わない」とお客様が決めてしまうとセールススタッフとしては残念な気持ちになりますが、しっかり話を聞いてくれて、考える時間をくれて、その上で「買わない」、正確には「買う必要が無い」と決めることができたのならお客様はセールススタッフに対してポジティブな印象を持つはずです。

また、「買う必要が無い」とは、さらに正確には「“今は”買う必要がない」だったり、「“私は”買う必要がない」だったりします。状況が変わったら、もしくは誰か知り合いで困っている人がいたら、また連絡をくれるかもしれません。

そうは言っても、まだまだお客様の沈黙は怖いと思うかもしれません。そのようなときは、お客様の表情を見るようにしてください。表情を見てみると、明らかに悩んでいるとわかると思います。怒ってる、イラついてる、という表情では無いことが分かれば、「あ、悩んでらっしゃるな。少し待とう。」という気持ちになれるのではないでしょうか?また、何か助け船を出したい場合は、「何かお考えですか?」と聞くようにしてください。ちなみに…と、別トピックを持ち出してしまうとお客様はまた考えることが増えるとともに、持ち出すトピックによってはせっかくいいところまで来ていた商談を自ら振り出しに戻すことにもなってしまうからです。

このようにお客様の沈黙はセールススタッフにとって先々のプラスにつながる時間なのです。沈黙の不安感に耐えかねてマシンガントークをまくしたてることのないよう、ぜひここに書いた沈黙を怖がらないエースセールススタッフのイメージで商談に臨んでほしいと思います。

大村康雄氏大村康雄

株式会社エッジコネクション代表。新卒生として米系金融機関であるシティバンク銀行入行後、営業職の同期で唯一16ヶ月連続売上目標を達成。2007年、営業支援・コンサルティング事業を展開する同社を創業。営業効率を解決することを中心に、営業戦略設計・テレマーケティング・商談代行・各種研修・経営コンサルティング・M&A仲介・人材育成など1400社以上を支援。ワークライフバランスを保ちつつ業績を上げる様々な経営・営業ノウハウを構築、体系化し、多くの経営者が苦しむ状況を変えるべく各種ノウハウをコンサルティング業、各メディア、ラジオ等で発信中。東京都中小企業振興公社や商工会議所など毎月各地で営業・経営関連セミナー多数。

文・編集:株式会社エッジコネクション
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