「相手に伝わらない」をなくす!伝達力を上げる「5つの大原則」と「3つのテンプレート」【あてはめるだけ】

自分の思いや考えを一生懸命伝えているのに、相手になかなか伝わらない‥と悩んでいる人はいませんか?もしかしたら「伝え方」に問題があるのかもしれません。
そこで、伝える力=伝達力を磨く方法や、より効果的に伝えるポイントなどについて、『「うまく言葉にできない」がなくなる言語化大全』の著者であり、伝える力【話す・書く】研究所所長、山口拓朗ライティングサロン主宰・山口拓朗さんに伺いました。

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「自分本位」な伝え方では、思いは伝わらない

世の中には、伝え方にスポットを当てた書籍がたくさん存在します。
たとえば、結論から言う、ポイントを絞って伝える、インパクトのある言葉を使う…など、どのような流れや表現を用いれば伝わるのかを、多くの書籍が指摘しています。

しかし、伝えるテクニックばかりを磨いても、中身がなければ伝わるはずがありません。どう伝えるかに注力する前に、「何を伝えるか」についても考えることが重要です。

そして、伝える力=伝達力は、昨今ビジネスで必要とされている「言語化力」にも深くかかわってきます。頭の中にある意見や考え、アイディアなどを言葉にして伝えなければならない場面、すなわち言語化力が必要とされる場面は多いですが、いくらいい意見やアイディアがありそれを言葉にできたとしても、伝え方を間違えば相手には理解してもらえません。
意図を正確に伝えることで、意見を通したり、仕事をスムーズに進めたりするためにも、テクニックだけに留まらない「伝達力」を磨くことが大切です。

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物事を伝えるための「5つの大原則」

物事を伝える際には、相手に「正しく」伝わることが大切。相手の立場に立ち、欲しい情報をわかりやすく届けることで伝達力が高まり、誤解やすれ違いがなくなります。
その際の大原則が、次の5つ。これらを普段から意識することで、着実に伝達力が磨かれます。

大原則1:相手が理解しやすい言葉を使う

たとえば、小学生相手に東大の教授が普段通りの授業を行ったとしたら、その内容は全く伝わらないでしょう。相手に伝えたいことを正しく伝えるためには、相手の知識レベルに合わせることが鉄則。ビジネスシーンにおいては、相手の立場や役割、仕事内容、経験年数やスキルレベルなど、バックボーンに応じて使う言葉を選ぶといいでしょう。
相手の知識レベルやバックボーンがわからない場合は、「中学生でもわかる言葉」を意識してかみ砕いて伝えるといいでしょう。

大原則2:一文は長くても60~70文字を意識する

だらだら続く長い文章は相手に伝わらないし、そもそも読んでもらえない可能性もあります。メールなど文章で物事を伝える際には、「一文一義」(1つの文章の中に1つの意味だけを盛り込む)にすると、ぐっと伝わりやすい文章になります。
一文一義を守らないと、1つの文章の中に複数のメッセージが入り混じることになり、相手が理解しにくくなります。また、主語と述語が離れることで、主語と述語が正しく呼応しない「ねじれ文章」になってしまう恐れもあります。

一文の文字数の目安は長くても60~70文字。70文字を超えたら「文章を分けることはできないか」「余計な話や無駄な修飾語が入っていないか」とチェックしてみるといいでしょう。

大原則3:「アサーティブ」に伝える

今の気持ちや考えをとにかく伝えなければ!と「伝える」ことだけに意識が向き過ぎると、自分の主張をバーっと言葉にしてしまい、相手が意見を投げかけてきても聞く耳を持たず否定してしまいがちになります。そんなコミュニケーションばかりを取っていては、思いが伝わらないどころか、人間関係そのものが悪化してしまいます。

「アサーティブ」とは、相手のことを尊重しながら自分の意見や主張、感情を伝えること。伝えたい思いが強いときほど、いったん冷静になって「相手の意見を尊重する。そして自分の意見も主張する」というアサーティブな伝え方を意識することで、建設的なコミュニケーションが可能になります。

大原則4:相手に「伝わっているか?」を確認する

何かを伝えている最中には、相手の表情や姿勢を観察しながら「本当に伝わっているかどうか」を確認する必要があります。もしも、あまり伝わっていない様子であれば、説明の仕方を変えたり、情報を補足したりすることが大切。こうやって伝え方のPDCAを回すことで、伝える力、ひいては言語化力もどんどん磨かれていきます。

伝わっていない場合、相手は何らかのサインを発しています。
代表的なものは、「表情が曇る」「首をかしげる」「眉間にしわが寄る」「押し黙る」「ボーっとして上の空になっている」など。そんなときは、「ご理解いただけましたか?」「ご不明点はありますか?」などの言葉を投げかけて確認しましょう。
なお、説明が長くなるときに、「ここまでは大丈夫ですか?」などと途中でいったん区切り、質問を受け付けるといいでしょう。

大原則5:相手の「ニーズ」を把握する

相手のニーズを把握するということは、「相手にとって必要な要素を見極める」ということ。ニーズがわかれば、不要な要素をばっさり切り捨てることができるほか、相手に喜ばれる「要約」ができるようにもなります。

不要な要素を切り捨てる際には、自分が捨てたいことを捨てるのではなく、あくまで「相手にとって必要のないこと」を捨てる意識が大切。
例えば、仕事の提案を通したい場合。相手が利益追求型の上司であれば、この提案で利益がどれだけ出るかなど、数字で示せることに焦点を絞り、そのほかの情報はいったんばっさり切り捨てたほうが理解されやすいでしょう。一方、社会問題に興味を持っている上司であれば、利益や数字よりも社会的な意義を訴えたほうが同意を得やすくなります。

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話の組み立てに役立つ「3つのテンプレート」

伝え方や言語化に苦手意識を持つ人の中には、「一文一義で端的に伝えることはできるけれど、話すことそのものが下手」という人が少なくありません。
そんなケースの場合は、今からご紹介する「結論優先型」「列挙型」「ストーリー型」の3つテンプレートを活用すると、話をうまく組み立てることができます。

話の組み立て方の基本のキは「幹→枝→葉」。何の話なのかがわかる「核となる情報」から話を始め、だんだん細かい情報に枝分かれしていくイメージです。3つのうち、どのテンプレートを使う際にも、この「幹→枝→葉」を意識して組み立てるといいでしょう。

ワンメッセージを掘り下げて伝えたいときは「結論優先型」

1つのメッセージを伝えたいとき、一から順に説明をし始める人は少なくありません。しかし、話の展開が見えないと、相手は「結局何が言いたいの?」とストレスを感じます。これを避けるためには、「私はこれから、こんな話をします」と、まず話の全貌や結論を伝える必要があります。それが「結論優先型」です。

結論優先で物事を伝える場合は、次の4つのステップを意識しましょう。この順番に話すことで、たとえ話が少し長くなっても、相手をイライラさせず聞いてもらうことができます。

●結論優先型の4つのステップ

1.結論(最も伝えたいメッセージ)
2.理由・根拠(もっとも伝えたいことがそれである理由や根拠)
3.具体例(詳細)
4.まとめ(なくてもいいが、長くなる場合はあると親切)

このテンプレートは、報連相をはじめ、何かしらの提案や企画を伝えるときに重宝します。また、会議やミーティングで賛成・反対を表明する際や、限られた時間の中で何か説明をしなければならないときにも有効です。

複数の情報を整理して伝えたいときは「列挙型」

「このプロジェクトのポイントは3つあります。1つ目は○○、2つ目は△△、3つ目は□□です。まずは1つ目の○○からご説明します」などと伝えるのが列挙型です。ワンメッセージに絞り込む結論優先型とは異なり、伝えたいことがいろいろあって、かつ重要さのレベルが並列的である場合に、この列挙型のテンプレートが役に立ちます。

ただ、伝えたいことがたくさんあるからと言って、すべてを羅列しても相手の心には残りません。相手のニーズに合わない情報は切り捨て、ニーズを満たせる「特に大事なポイント」にしぼりこむことが大切です。

列挙型の良いところは、ポイントが厳選・整理されているので、相手がストレスなく内容を理解できる点。「ポイントは3つあります」と最初に言われれば、「ああ、ポイントが3つあって、1つずつ説明してくれるんだな」と話の展開を予想しやすくなり、その後の話も頭に入ってきやすくなります。

なお、列挙数は3~5つがスタンダード。数が多くなるほど、相手の理解度が下がりやすくなるので注意しましょう。

相手の感情を動かし共感を得たいときは「ストーリー型」

相手の心を揺り動かしたいとき、興味を引き付けたいときに有効なのが、「ストーリー型」のテンプレート。次の4つのステップを意識して話を組み立てると、ドラマティックに物事が伝わります。

●ストーリー型の4つのステップ

1.発端(世の中や自分の中にあるマイナス因子)

2.転機(マイナス因子を解消する人やモノ・出来事との出会い)

3.成長(転機となる出会いによる効果や効能、変化、進化)

4.未来(素晴らしい未来像、ハッピーエンド)

ストーリー展開が大事なので、最初はマイナスから始めましょう。どん底だった主人公が何かをきっかけに成長し、どんどん輝いていくという展開には、誰しも引き付けられるものだからです。そして最後は、ハッピーな話で締めると印象はぐんとよくなります。

例えば、ステップアップ面談で成長をアピールしたい、面接でこれまでの経緯を伝えたいなどという場合、テンプレートに当てはめて以下の要素で伝えるといいでしょう。

●ストーリー型の例

1.発端
ハウスメーカーに入社し営業部門に配属されたが、当初は専門用語が全く分からず、職人さんに質問されても何も答えることができなかった。

2.転機
そんな私に一から現場のことを教えてくれたのが、先輩のAさん。たくさんの現場に同行させてもらい職人さんとのやり取りを見せてくれたおかげで、専門用語はもちろん現場の方々との関係性の築き方、仕事の進め方を学ぶことができた。

3.成長
1年後、現場監督を任されるようになり、職人さんのニーズをくみ取り先回りして行動できるまでになった。

4.未来
チーム一丸となってお客様のマイホームづくりに携れることに、やりがいと誇りを持っている。今後もお客様の幸せな未来のために努力を続けていきたい。

なお、伝達力は言語化力を身につけるために重要なスキルであるとお伝えしましたが、「語彙力」「具体化力」という2つのスキルとも大きくかかわっており、これら3つを鍛えることで言語化が飛躍的にうまくなります。詳しくは、以下の記事をご覧ください。

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「言語化大全」書影山口拓朗さん

伝える力【話す・書く】研究所所長。「論理的に伝わる文章の書き方」や「好意と信頼を獲得するメールコミュニケーション」「売れるキャッチコピー作成」などの文章力向上をテーマに執筆・講演活動を行う。『伝わるメールが「正しく」「速く」書ける92の法則』(明日香出版社)のほか、『残念ながら、その文章では伝わりません』(だいわ文庫)、『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(日本実業出版社)、『書かずに文章がうまくなるトレーニング』(サンマーク出版)などがある。最新刊の『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)は発売3カ月で5万部超えのベストセラーになっている。。
公式サイト:http://yamaguchi-takuro.com/

EDIT&WRITING:伊藤理子

 

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