デキる人は「受容力」も高い?ビジネスで受容力を活かせるシーンや高め方をプロが紹介

受容力と聞いてどんな能力を想像しますか?例えば診断テストなどで「受容力がある」という結果が出ても、受容力を活かして活躍するイメージが湧かないという方もいるようです。この記事では、受容力とはどんなスキルなのか、ビジネスのどんなシーンで活かせるものなのか、そして受容力の伸ばし方などについて、株式会社人材研究所代表で、組織人事コンサルタントの曽和利光さんに伺いました。

同僚と朗らかに会話するビジネスパーソンのイメージ画像
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受容力とは「オープンマインドにさまざま意見を受け入れられる」力のこと

受容力とは、文字通り「受け入れる力」のこと。英語で言えば「オープンマインド」な状態で、どんな意見や考えであってもいったん素直に受け入れることを指します。

性格心理学の世界では、人の性格は大きくわけて5つの因子によって構成されるという「ビッグファイブ」という学説がありますが、その5つの中の1つがOpenness(受容性、開放性)です。つまり、受容力は比較的ベーシックなスキルと位置付けられており、ビジネスにおいても活かせる場面が多いとされています。

なお、「自己受容力」とは、自己を受け入れること。つまり自身のいい面も悪い面もすべて、あるがままを受け入れること。いい面を素直に受け入れることで自己肯定感が高まり、悪い点を受け入れることで、今後の打ち手をポジティブに考えることができます。

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受容力は、変化の激しい今の時代こそ活かせるスキル

一般的に、仕事ができる人は受容力が高いと言われています。

スタンフォード大学のクランボルツ教授は「計画的偶発性理論」において、個人のキャリアの8割は、偶然の出来事によって決定され、予期せぬ出来事がキャリアに大きく影響することがある、と説明しています。
受容力が高ければ、たとえ自分の専門外の仕事、志向とずれている仕事が回ってきても、「これも何かの縁だ」「まずはやってみよう」と柔軟に対応できたり、偶然に大きなチャンスが訪れたときも尻込みせず「面白そうだから乗ってみるか」と行動に移せたりするなど、「偶然」を活かせるようになります。

その結果、上司に「この人はどんな仕事も嫌がらず、前向きに引き受けてくれるから、今度は大きな仕事も任せてみよう」と思ってもらうことができ、より面白く、責任ある仕事が回ってくる可能性があります。さまざまな仕事にかかわることで視野が広がり、思わぬ道が開けることもあります。

そして、特に日本企業では、受容力が高い人は評価されやすい傾向にあります。

日本では新卒採用の際、総合職採用がまだ主流で、ジョブローテーションでいろいろな部署を経験するケースが多いため、新しい環境をすぐに受け入れ、柔軟に対応する姿勢が求められます。自身の役割が明確に決まっているジョブ型とは異なり、関わる業務やプロジェクトによって臨機応変に役割を変えながら、物事を先に進める力も必要とされます。特に変化の激しい今の時代においては、受容力の高さはビジネスにおいてメリットが多いでしょう。

現在では、多くの企業、職場が、社員の多様性を尊重する時代になっています。いろいろな価値観を持った人が、それぞれの力を発揮して、影響し合いながら成果を上げることが求められる傾向にあります。「受容力=多様性を認め受け入れる力」でもあるので、受容力が高い人が力を発揮しやすい土壌があると言えます。

一方で、受容力が高い人は、1つの業務に執着心を持ち、目標に向かってわき目もふらず突き進みやり切るのは苦手とされています。
何でも素直に受け入れる受容力の高さは、「絶対こうでなければならない」というこだわりや執着とは対極のもの。したがって、例えば、成果報酬型の営業などでは、受容力が高すぎる人は力を発揮しにくいと言われています。

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受容力にマイナス影響を与える「エコーチェンバー現象」と「フィルターバブル」

受容力を高める方法をお伝えする前に、まずは受容力にマイナスの影響を与える「エコーチェンバー現象」と「フィルターバブル」をご説明しましょう。

総務省では、エコーチェンバー現象を「ソーシャルメディアを利用する際、自分と似た興味関心をもつユーザーをフォローする結果、意見をSNSで発信すると自分と似た意見が返ってくるという状況を、閉じた小部屋で音が反響する物理現象にたとえたもの」、フィルターバブルを「アルゴリズムがネット利用者個人の検索履歴やクリック履歴を分析し学習することで、個々のユーザーにとっては望むと望まざるとにかかわらず見たい情報が優先的に表示され、利用者の観点に合わない情報からは隔離され、自身の考え方や価値観の「バブル(泡)」の中に孤立するという情報環境」と紹介しています。

つまり、ネットで情報検索するほどに、見たいものしか見なく(見えなく)なり、自分の思いや志向などがどんどん強化され、他の意見を相容れない状態になり、誰しも知らず知らずのうちに偏った考えになってしまう可能性があるので、注意が必要です。

「ビジネスに活かせる受容力」の高め方

受容力を維持し、伸ばすためには、「エコーチェンバー現象」と「フィルターバブル」に影響されないよう、普段からさまざまな価値観に触れる努力が必要です。

例えば、ネットでレコメンドされる本ばかりではなく、書店に足を運んでいろいろな
本を手に取り乱読してみる、共感しにくい意見を持った人の本や動画を敢えて見てみるなど、対立概念を取り込むのは有効
です。なんか考えが合わないな…と感じる同僚や先輩と飲みに行き語り合ってみるのも一つの方法。いろいろな意見を理解することで、自分の意見や考えを相対化することができ、フラットな視点で物事を判断できるようになるでしょう。

ただ、もしも「自分は受容力が低い」と自認しているならば、こだわりや執着心が活きる企業や仕事を選ぶという考え方もあります。例えば、前述したような成功報酬型の新規開拓営業などでは、受容力よりも執着心がある人のほうが目標達成しやすく、評価も得やすい傾向にあります。研究職や技術職など自分の専門領域を極めるような仕事も、こだわりや執着心が必要であり、受容力がさほど必要とされないケースもあります。また、「今はこの商品・サービスに集中し事業を軌道に乗せる」という1→10のタイミングにあるスタートアップ企業も、力を発揮しやすい環境と言えます。
もちろんある程度のバランスは必要ですが、受容力の高さに応じて自分が活きる環境を選ぶというのは一つの方法です。

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人材研究所・曽和利光氏プロフィール画像株式会社人材研究所・代表取締役社長 曽和利光氏

1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャーなどを経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)、『人材の適切な見極めと獲得を成功させる採用面接100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)など著書多数。最新刊『定着と離職のマネジメント』(ソシム)も話題に。

EDIT&WRITING:伊藤理子

 

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