あなたはできている?語彙力を鍛える習慣と心がけ【チェックリスト付】

「語彙力」とは、豊富な語彙を使って相手にわかりやすく説明する力のこと。頭の中にある意見や考えをうまく言語化して伝える際、語彙力は必要不可欠とされています。語彙力がビジネスにどんな影響を与えるのか、そして語彙力を鍛える方法などについて、『「うまく言葉にできない」がなくなる言語化大全』の著者であり、伝える力【話す・書く】研究所所長、山口拓朗ライティングサロン主宰・山口拓朗さんに伺いました。語彙力のチェックリストも紹介しています。

語彙力イメージカット
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あなたには語彙力がある?簡単チェックリスト

自分に一定以上の語彙力があるかどうか、以下の項目をチェックしてみましょう。チェックリスト2つ以上に当てはまった場合、ビジネスに必要な語彙力が足りない可能性があります。

□ 「ヤバイ」という言葉をよく使う
□ SNSやチャットでスタンプを多用する
□ 相手に何か聞かれたとき、ぱっと言葉が出てこないことがある
□ 相手に質問したとき、質問の意図を理解してもらえないことがある
□ 「それってどういう意味?」と聞き返されるときがある
□ 読書をあまりしていない
□ 体験したことを周囲にアウトプットする習慣がない
□ 知らない言葉と出会ったとき、意味を調べない

いずれの項目も、語彙が不足している、もしくは新しい言葉をインプットする習慣がない人の特徴です。

例えば、喜怒哀楽を表現するときにすべて「ヤバイ」と言っている人は、ヤバイ以外の表現が頭の中から失われている可能性が大。スタンプも同様で、本来言葉で伝えるべきことまでスタンプに頼っていると、知らず知らずのうちに語彙力が低下している恐れがあります。

「相手に聞かれたときにぱっと言葉が出てこない」「質問したときに質問の意図を理解してもらえない」「それってどういう意味?と聞き返される」は、いずれもこちらの語彙力が不足しているために起こることです。特に後者2つは、語彙力不足による「言葉足らず」が原因であることがほとんどです。

読書は、新しい言葉と出会うための大事な習慣の一つです。体験のアウトプットは、知っている言葉や新しく出会った言葉をそのままにせず、周囲に発信して脳に定着させるために必要です。
そして、語彙力が高い人ほど、新しい言葉に出会ったら必ずその場で意味を調べています。「こんな言葉、知らなかった」で放置せず、意味を調べて理解する習慣をつけることが大切です。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

語彙力がないと、言いたいことが言葉で表現できない

ビジネスにおいては、頭の中にある意見や考え、アイディアなどを言葉にして伝えなければならない場面、すなわち「言語化力が必要とされる場面」が多いですが、「言いたいことはあるのに、それをうまく言葉にできない」と悩む人が少なくありません。

言語化力を身に付けるためのファーストステップが、語彙力を伸ばすこと。知っている言葉が少ないと、頭の中にある意見や考えにピッタリの言葉が見つけられず、うまく言語化して表現することができないからです。

語彙力は、「知っている言葉の多さ」と「その言葉を使いこなす力」で成り立っています。言葉のバリエーションを増やし、かつそれを使える状態にすることで、自身の意見や考えを的確に言葉にできるようになり、相手に正しい意図が伝わるようになります。

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語彙力を伸ばす三大要素=「出会う」「調べる」「覚える」

語彙力辞典など、言葉をとにかく覚えることを目的とした本が数多く出ていますが、ビジネスパーソンとして忙しく働いている人が、言葉の本を読んで一から勉強するのは現実的とはいえません。新しい言葉を取り入れる習慣を日常生活に組み込みながら、即戦力となる言葉を増やすのがポイントです。

ビジネスパーソンが語彙力を伸ばすためには「新しい言葉に出会う」「知らない言葉を調べる」「脳に定着させて覚える」という3つの要素を意識する必要があります。これにより、使える言葉のストックがどんどん増えていくので、この3つをぜひ習慣化していきましょう。

要素1:「言葉に出会う」ための4つの方法

語彙力を伸ばすには、まずは新しい言葉をインプットすることが必要。次の4つの方法で、言葉に出会う機会を増やしていきましょう。

会話をする

リモートワークの拡大などで、人と会話する機会が減っている今は、自分で意識しないと言葉がどんどん頭の中から失われていきます。
「スマホでさまざまな情報を収集しているし、SNSで頻繁に会話をしているから大丈夫では?」と思う人もいるかもしれませんが、その言葉は「ヤバイ」「エグイ」だったり、ネット用語だったりと、簡略化された言葉やビジネスでは活用できない言葉が多いのではないでしょうか。そして、いつも見ているサイトや、知り合いとのやり取りだけでは、自分の枠を超えた言葉に出会うのは難しいものです。

言葉の流出を阻止して、新たな言葉との出会いを増やすためには、「人と積極的に会話する」ことが有効です。オンラインは、なるべく余計なことはしゃべらず効率的に話そうという空気感が少なからずあるため、できれば会って会話をしたほうが話の内容が濃くなり、新しい言葉にも出会いやすいでしょう。
勉強会やセミナーなどに足を運ぶのも効果的です。普段仕事でかかわる人とは別の領域の人と会話をすることで、新鮮な「言葉のシャワー」を浴びることができ、新たな刺激も得られるでしょう。

そもそも会話をすることは、言語化力アップに直接的につながります。雑談や会話は、相手の言葉や言外のしぐさを見ながら、こちらの出方を臨機応変に変えなければ盛り上がりにくいもの。「今の言葉では伝わらなかったのかな」「もっとこういう言い方にしてみよう」などというトレーニングが即座にできるのでお勧めです。

体験する

体験することで得た感覚や感情、情報などは、その人独自のものです。オリジナリティのある言葉は、人を惹きつけ、説得力を持って相手の胸に迫ります。持っている言葉に奥行きを生み、深みを増すためにも、積極的にさまざまな体験をしましょう。

体験の内容はどんなものでもOKです。例えば、山に登る、旅行に行く、レストランに行く、美術館に行く、コンビニの新作スイーツを食べる、などなど。ただ、どんな小さな体験であっても、「体験して終わり」にはせず、体験した感想をいろいろな言葉で表現してみることが大切です。

例えば、美術館で絵画を見たときに、「斬新な色使いだな」という感想を持ったら、まずはそれを口に出してみましょう。そのうえで、「斬新」という言葉を別の言葉で言い換えられないか考え、今の自分の気持ちに一番しっくりする言葉(例えば、独創的、奇抜など)を口に出してみましょう。
頭の中にしっくりくる言葉がなければ、辞書などでぴったりの言葉を探してみて、新しい言葉に出会いに行くといいでしょう。

このように、新しい言葉に偶然出会うのを待つだけでなく、体験を機に自ら積極的に言葉に出会いに行く意識を持つことが重要。意識を持てば、すべての体験が新たな言葉との出会いと学びにつながります。

本を読む

本は、新しい言葉や情報の宝庫です。優秀なビジネスパーソンほど、多くの本を読んでいると言われています。

読書する習慣のない人は、ぜひ日常に「本を読む」を取り入れ、新しい言葉に触れる機会を増やしてほしいと思います。本はどんなものでもいいですが、「今の自分にはちょっと難しい」ぐらいがお勧め。7割が既知情報、3割が新規情報ぐらいの割合が理想です。

そして、読書の生産性を上げるために、目的を持って能動的に読む「アクティブ・リーディング」をぜひ実行してみてください。やり方は、次の通りです。

【アクティブ・リーディングのやり方】

  1. 「自分がこの文章を読む目的」を考えながら読む
  2. 目次や小見出しがある場合は、事前に目を通して全体を把握する
  3. 「読み終えたらアウトプットする」(書く・話す・説明する)と決めて読む
  4. 「なぜ?」「なにが?」「どういう意味?」などつっこみを入れながら読む
  5. 記憶に残したいところや大事なポイントに、線やマーカーを引く
  6. 読み終えたら実際にアウトプットする

アウトプットは、SNSに感想を書く、サイトにレビューを書く、ノートに気づきや学びをまとめる、誰かに感想を話す、などの方法があります。
これらを実践することで、本に載っている言葉や情報が入りやすくなり、記憶への定着率も高まるでしょう。

脳内アンテナを張る

人間は、意識しているものは目に入ってくるけれど、意識していなければその多くを見過ごしてしまっています。そして、意識している情報は「大事な情報だ」と脳が判断し、積極的に脳に取り込もうとします。

その特性を活用し、「集めたい情報」を意識し脳内アンテナを張ると、必要性の高い言葉や情報を集中的に集められるようになるのです。

脳内アンテナを張るには、「集めたい情報を書き出す」のが有効。書き出すことで意識が強化され、関連する言葉や情報が自然と集まってくるようになります。すぐに使える言葉や情報を効率よく収集することで、話したり書いたりする際の言葉選びの苦労が減り、実のある内容を的確に伝えられるようになるでしょう。

要素2:「言葉を調べる」には辞書やChatGPTが有効

語彙力が高い人は、意味がわからない言葉、あやふやな言葉に出会ったとき、「正しく言葉を知るチャンス!」とばかりに必ず調べます。チェックリストにも入れましたが、知らない言葉を放置せずに意味を調べるというのは、語彙力アップの基本動作です。

一昔前までは、言葉の意味は紙の辞書で調べるしかありませんでしたが、今はスマホがあります。知らない言葉に出会ったら、いつでもどこでも手間なく「○○とは」と検索して調べることができます。
そして、単に言葉そのものの意味を調べるだけでなく、できればその言葉の類語や対義語、反対語も調べると、そもそも検索した言葉の意味を深く理解できるうえ、言葉のストックも増やせるのでお勧めです。

GhatGPTなどのAIチャットサービスも、知らない言葉を調べるのに便利です。「○○について詳しく教えて」「○○の類語を教えて」などと入力すれば、即座に回答が得られます。表示された回答の中で知らない言葉に出会ったら、さらにそれを深掘りすれば、質の高いインプットが得られるでしょう。

要素3:「言葉を覚える」には「アウトプットする」「使える状態にする」

前述の「新しい言葉に出会う」「調べる」ができても、「覚える」ことができなければ語彙力は向上しません。大切なのは、「よし、覚えたからOK」で終わりにしないこと。覚えたつもりでも、使わなければ時間が経つにつれ徐々に忘れてしまうからです。

言葉を覚えるために重要なのは、その言葉を「使う」こと。脳内で待機させず、話したり書いたり、人に教えてみたりすることで、脳から引き出しアウトプットすることで、言葉は記憶に定着します。

ポイントは、新しい言葉をインプットしたら「間髪を入れずに使ってみる」こと。できれば30分以内に使い、さらに2週間以内に3回以上くり返し使ってみる」ことをお勧めします。これにより、新しい言葉を「重要な情報だ」と脳が認識し、語彙力アップにつながります。

このように即座に、くり返しアウトプットした言葉は、普段から「使える状態」になります。
言葉は、クローゼットにしまった洋服と同じ。奥にしまい込んだ洋服(言葉)はなかなか取り出さず、手前にある洋服(言葉)ばかり使っていることが多いと思います。新しい言葉を覚えたら意識して何度も使えば、脳の取り出しやすい位置に移動させることができ、必要に応じてさっと取り出せるようになります。これをさまざまな言葉で繰り返していくことで、使える言葉が増え、徐々に語彙力が強化されます。

なお、語彙力アップは言語化力を身に付けるためのファーストステップとお伝えしましたが、「具体化力」「伝達力」という2つのスキルとも大きくかかわっており、これら3つを鍛えることで言語化が飛躍的にうまくなります。
詳しくは、以下の記事をご覧ください。

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「言語化大全」書影山口拓朗さん

伝える力【話す・書く】研究所所長。「論理的に伝わる文章の書き方」や「好意と信頼を獲得するメールコミュニケーション」「売れるキャッチコピー作成」などの文章力向上をテーマに執筆・講演活動を行う。『伝わるメールが「正しく」「速く」書ける92の法則』(明日香出版社)のほか、『残念ながら、その文章では伝わりません』(だいわ文庫)、『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(日本実業出版社)、『書かずに文章がうまくなるトレーニング』(サンマーク出版)などがある。2023年11月に最新刊『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)が発売。
公式サイト:http://yamaguchi-takuro.com/

EDIT&WRITING:伊藤理子

 

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