上司と合わないときはどうする?関係を改善させるたった一つのシンプルな方法

「上司と合わない」ことがストレスで、転職を考える人は少なくないようです。しかし、会社組織で働く以上、多くの場合は上司の存在を避けては通れません。苦手な上司との関係を改善するためには、状況をどう捉え、どう対処すればいいのでしょうか。

『上司のトリセツ』の著者であり、2万人以上の社会人と接してきた経験を元に、ビジネスパーソンに成功のコツを伝授している、グッドモーゲージ株式会社 代表取締役の横山信治さんに聞きました。

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上司と合わないのイメージカット
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上司と合わないのはあなただけじゃない

私は、「横山塾」という私塾を通じて幅広い年代・職業の方々と接してきましたが、これまで相談を受けてきたビジネスパーソンに一番多い悩みが「嫌いな上司への対処法」です。逆に、上司のことが好きで仕方がない人には、ほとんどお目にかかったことがありません。

多くのビジネスパーソンが「上司が嫌い」で悩んでいる

それほど多くの方が、上司問題で悩んでいるのは事実ですが、少し考えてみてください。
対上司に限らずあなたの人生では、全ての人間関係が自分の思い通りに進んできたでしょうか?仮に1000人のコミュニティがあれば、1000通りの異なる考え方があります。「自分=1」に対して「自分以外=999」ですから、自分と全く同じ考え方に出会うことはまずありません。それが大前提です。

ですから「これまで人生で一度も理不尽さを感じたことがない」という人はいないでしょう。特に、「上司と部下」のように力関係がある場合は、どうしても理不尽なことが起きがちなのです。

つまり、上司が嫌いなのは、普遍的な自然現象のようなものです。決してあなただけの問題ではありません。しかし私がそう言っても、多くの方は「いいえ、うちの上司は特別変なのです」と譲りません。上司が嫌いという感情が強いあまり、自分のケースは特別だと考えがちです。

選択の軸は「自分は仕事で何を手に入れたいのか」

こうなると、選択肢は大きく2つしかありません。ひとつは、異動や転職で上司から物理的に離れること。もうひとつは、我慢して踏みとどまることです。

「我慢するなんて損じゃないか」と思う方もいるかもしれません。しかし、「仕事で実現したい目標は何か」を考えたときに、今の場所で頑張るのが正解なのであれば、我慢にもメリットがあるはずです。

例えば、「早く1000万円プレイヤーになりたい」「出世して大きな仕事がしたい」という目標がある方が、その一方で、自分を評価する立場にある上司を嫌い、敵に回すことは矛盾しています。なぜなら、一般的に上司も、自分を敵と嫌っている部下を高く評価することはないからです。

上司に評価してもらいたいなら、苦手でも好きになろうとすること。好きになるのは無理でも、ストレスを感じずに仕事をして成果を出すためには、少なくとも嫌いにならない努力をすることは必須です。

上司嫌い問題で悩む人は、まず「自分が仕事で手に入れたいもの」と「上司が嫌いな気持ち」の優先順位をよく考えましょうその上で「それでも上司が嫌で仕方がない」とか「上司のせいで目的が実現できない」という結論に至ったら、異動を希望するか、転職活動を始めればいいでしょう。

上司と合わない原因が「自分」にある可能性も

そもそも、上司と合わない原因があなた自身にある可能性もあります。
人とのコミュニケーションがうまくいかない原因に「0-100」はありません。もちろん、相手が90で自分は10など、相手のほうに圧倒的に原因があったとしても、残りの10は自分に原因があり、たとえわずかであっても自らの工夫で改善できる点もあるはずです。

上司と部下のコミュニケーションにおいても同様で、「100%上司が悪い」というケースは実は非常に稀です。例えば、上司に苦手意識を持つあまりコミュニケーションを避けていたり、上司の意見やアドバイスも批判と捉え受け入れようとしなかったり…などということはありませんか?

上司に不満を募らせるだけではなく、自分にも何か問題点があるのではないか、改善できる点があるのではないかと考え、行動してみることが、ビジネスパーソンとしての成長にもつながります。

「自分が変わる」が、上司との関係性を変えるたった一つの方法

まずは「上司が嫌い」「上司は特別」などという感情や思考は封印しましょう。その上で「うまくいかないのは、自分の接し方が間違っているからだ」という前提から始めることが大切です。たとえ100%間違いではないにしても、誰かが行動を変えない限り、関係性は変わりません。他人を変えることは不可能ですから、自分がアクションを変える以外に方法はないのです。

つまり、今日からでも上司への接し方=コミュニケーションを変えれば、関係性を自分で変えることが可能です。それが理解できれば、最初のハードルはクリアできたも同然でしょう。

では、どのように上司と合わない状況を改善していけばよいのか、具体的なコミュニケーションの方法を紹介していきましょう。

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上司と合わない状況は「質問」で劇的に改善される

「関係改善のためにアクションを変える」というと、難しく感じるかもしれませんが、実はとてもシンプルです。まずは、わからないことを上司に質問すればいいのです。

上司が気分よく答えられる質問をたくさんする

コミュニケーションとは、好意を示すまでは行かなくとも、「あなたと敵対しません」「あなたとうまくやりたいです」というメッセージを送ることから始まります。

前提として、苦手な上司との間にはコミュニケーションの回数が少なすぎることが多いため、まず回数を増やすことが重要です。そのために最も簡単にできて、最も効果的なのは、上司に質問することです。

人は質問をされると自己重要感が上がり、「自分を認めてくれている」と感じるものです。例えば報連相の機会にでも「私は○○課長のように営業先で話せないのですが、うまく話すコツは何ですか?」「部長のようにプレゼンがうまくなるにはどうしたらいいですか」など、上司から学びたいことについて質問してみましょう。これを聞かれて怒る上司はまずいません。喜んで話をしてくれるでしょう。

アドバイスは素直に実行し、「やってみたらこうでした。ありがとうございました」と、必ず報告とお礼をすることも大切です。話すタイミングがなければ、感謝のメールを送ってもいいでしょう。

この時点で、すでに上司との間の空気感は変わっているはずです。質問を重ねてコミュニケーションの回数を増やしていけば、苦手意識はかなり払拭されるでしょう。

上司に「改善したほうがいい点は何か」を聞いてみる

圧倒的に上司に原因があり、上司のほうが変わるべきだと思っている場合も、ここは100歩譲って上司に「私自身が変えたほうがいいこと、改善したほうことを教えてください」と聞いてみましょう。

前述のように、人は質問をされると自己重要感が高まります。部下の側から「改善したほうがいいことを教えてほしい」と言われたら、多くの上司は悪い気はしません。たとえ口の悪い上司であったとしても、このように部下から聞かれたら、面と向かってキツいことは言わないはず。𠮟責や注意ではなく、「もう少しこうしてみたら?」とアドバイスをくれると思います。

そして、その内容を素直に実践してみて、後日「ご指摘いただいた点について気をつけているのですが、改善できていますでしょうか?」などと改めて聞いてみると、さらに関係性は変わるはずです。

「上司が悪いのだから」と反発しているだけでは、何も変わりません。癪(しゃく) だと思うかもしれませんが、自ら改善点を聞いてそれを実践すれば自分自身の成長につながりますし、上司もあなたに良い感情を抱くようになって関係性も変わっていくでしょう。そして、アドバイスを受け入れ行動することで成果も出しやすくなり、評価も上がると考えられます。

自分が納得できなかったことを確認する

上司への苦手意識は、「上司が自分を嫌っている」という誤解が原因のこともよくあります。

私が新人の営業だった頃、保険キャンペーンでトップの売上を上げたことがありました。しかし、当時赴任した支店長は、褒めるどころか「保険で1位になったからって調子に乗るな」と全員の前で言い、私はそれ以来彼のことが嫌いでした。

それから20年後に、元支店長と話す機会があり「あれで天狗になれば成長が止まっただろうし、他の営業から嫉妬されていたので、わざとあのように言った」と聞かされました。確かに、私の栄転のために推薦状を書いてくれたのも支店長でした。実はずっと応援していてくれたのです。

小さな誤解が解けただけで、相手の見方が大きく変わることは多いものです。ですから、上司に言われて納得できないことも質問してみましょう。「あのとき○○と言われましたが、何を直せばよかったのでしょうか?」などの聞き方なら角も立たず、ほとんどの上司はきちんとフォローをしてくれるはずです。

ここまでのコミュニケーションが構築できれば、上司と合わない悩みは、ほぼ解決と言えるのではないでしょうか。

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行動を変えても上司と合わない状況が変わらなかったら

もしあなたの上司が本当に特別で、自力で関係改善ができない場合は、別のアクションを起こす必要があるかもしれません。

社内の第三者に相談する

上司との接し方を見直しても関係が改善しない場合は、人事や上司の上司に相談するのも一案です。第三者の客観的な目からのアドバイスや、関係修復のためのサポートが受けられるかもしれません。部署やチームの異動を検討してもらうこともできるでしょう。
ただし、セクハラ、パワハラ、不正などのコンプライアンス違反に関しては、我慢することなく直ちに第三者に助けを求めるべきです。できるだけ記録を取った上で、会社の当該窓口に相談しましょう。

転職する

転職はひとつの選択肢ですが、常に忘れて欲しくないのは「自分の目標は何か」ということです。「評価されたい」「年収を上げたい」のであれば、今の上司とうまくやる努力をした方が近道かもしれません。それでも会社を辞めるなら、現職と同等かそれ以上に自分を評価してくれる会社を探し、内定を取ってから辞めましょう。先に退職して経済的不安に陥ると、転職先で妥協してしまう可能性が高くなるからです。

中途入社した職場では人間関係を一からつくることになりますが、場合によっては現職以上に複雑かもしれません。さらに、上司が嫌いで転職した人は、自分の行動を変えない限り、転職先でも同じ問題を抱えるケースが多いのです。いずれにせよ、苦手な人とも付き合えるコミュニケーションスキルを磨くことは必要でしょう。

反面教師と捉えて自身のキャリアに活かす

ごく稀にではありますが、中には本当に「ダメダメな上司」も残念ながら存在します。例えば、全然仕事ができない上司、人間性に難があり皆から嫌われている上司などが当てはまります。こういう上司の場合は、接し方を変えたところで、状況は変えにくいかもしれません。

ただ、「全然仕事ができない上司」に当たった場合は、悲観するどころか大きなチャンスと捉えるべきでしょう。仕事ができない上司に成り代わって、どんどん上司の仕事をこなしてしまえばいいのです。上司側も、優秀な部下にやってもらったほうが都合がいいので、責任ある仕事、難易度が高い仕事なども任せてくれるはずです。

成果を上げたところで上司の手柄になってしまう可能性はありますが、ビジネスパーソンとしての経験値が上がりスキルも身につけられるでしょう。上司目線で働くことで、管理職としての視野も得られると思います。
それに、周りの人は誰が成果を上げたのか、誰が功労者なのかがわかっているので、いつか必ず評価され、抜擢されるときが来ると考えられます。

「皆から嫌われているヒドい上司」であっても、学びはあります。どういう上司が嫌われるのか、観察することができるからです。
嫌な上司を反面教師と捉え、「こういう言動をする人は嫌われるんだ」と把握し、逆張りで行動すれば、自身のスキルアップに活かすことができるでしょう。将来マネジメントサイドに就いたときにも役に立つと思われます。

とはいえ、このような上司と日々接していると、イライラさせられることも多いことでしょう。そんなときは、その場の状況を心の中で実況中継すると、ネガティブな感情が抑えられるのでおすすめです。

例えば、嫌な上司が怒鳴り散らしていたら、「また上司が怒っています!おおっと、机を叩き出しました!さて、次は何をするのでしょうか!?」などと自分の中で実況すると、その状況を客観的かつ冷静に見られるようになり、怒りや不満などにつながりにくくなるでしょう。

ネガティブな感情は貯め込むと心身にマイナス影響を及ぼしますし、貯めすぎて爆発してしまうと上司との関係性もより悪化します。もちろん、行き過ぎたパワハラ発言などは会社に相談すべきですが、このような方法で感情を抑え、自分にプラスに活かすのも一つの方法です。

【ケース別】上司と合わないときはこう考えてみよう

基本的に質問することでコミュニケーションを深めていけば、上司との関係はどんどん良くなって行きますが、それでもわだかまりがあるときは、どう考えると良いでしょうか。ケース別にお答えします。

「上司が嫌すぎて冷静に対処できません」

上司が嫌いな感情に囚われすぎている限り、状況は良くなりません。そんなときは自身の状態を観察する「内観」がおすすめです。
まず深呼吸をして、上司に言われて腹が立ったことなどを思い出し、次に、頭の中にもうひとりの自分をつくって会話をするのです。例えば「あの言い方は酷かったな」「でも上司も予算があるから大変だよ」「きつすぎないか」「あなたも後輩にきつく言ったことがあるよね?」などと会話を続けていくと、感情が収まり、ものごとを客観的に見られるようになります。結果、上司の立場を自分に置き換えて考えられるようになれば、まずは大きな前進でしょう。

「営業成績がいいのに上司に評価してもらえません」

評価に関しては上司の判断ではなく、会社の方針である可能性が高いです。優秀なのに評価が低いとしたら、営業成績だけでなく、コミュニケーションスキルや周囲との連携なども含めて評価対象にする会社だからかもしれません。まずは上司と話し合い、自分に足りないものを指摘してもらうことが必要でしょう。評価基準そのものに不満があるのなら、実力主義の会社に転職するのも一つの方法です。

「相手によって態度を変える上司に我慢できません」

接する人によって態度を変えてしまうのは、大なり小なり誰でもしている人間の性のようなもの。しかしながら、会社組織で露骨にそうした態度を取る人は、部下からは好かれませんし、上の立場の人からの信用を得ることもできません。一般的にマネジメント能力も低く、いずれどこかで昇進が止まってしまうことが多いものです。そんな見方をしつつ接すれば、さほど腹も立たないのではないでしょうか。

上司と合わない状態を放置しない!人生と仕事を変えるのは小さな行動から

繰り返しになりますが、上司と合わないことは、万人に共通するオーソドックスな悩みです。

しかし、そこで自分の目標を見据えて行動を起こすのか、感情に流されるままイヤイヤ仕事を続けるのか、どちらを選択するかで人生は変わります。「自分の行動を変えてみよう」という気持ちになれば、上司が嫌い問題は、ほぼ解決したと言ってもいいでしょう。とにかく一歩を踏み出してみましょう。

 

横山信治氏グッドモーゲージ株式会社 代表取締役
横山 信治(よこやま・のぶはる)氏

1982年、日本信販(現三菱UFJニコス)入社。2001年2月、ソフトバンクファイナンスに転職し、日本初のモーゲージバンク(証券化を資金調達手段とした住宅ローン貸し出し専門の金融機関)SBIモーゲージ設立。当初4人でスタートした会社を、従業員250名、店舗数191店舗の上場会社へ成長させる。東証1部上場の金融グループでの役員、社長を経て、2014年4月独立。12歳で6代目笑福亭松鶴に弟子入りし、上方落語協会最年少落語家「笑福亭手遊(おもちゃ)」としてテレビ、劇場に多数出演。笑福亭鶴瓶氏の元兄弟子。『入社3年目までに身につけたい上司のトリセツ』(日経BP)『40歳からは、小さなことにくよくよするな』(PHP研究所)など著書多数。

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