仕事のプレッシャーで潰れそうなときはどう乗り越えればいい?プレッシャーを感じやすい人の特徴・要因・対処法を解説

重要な仕事や初めての仕事を任されると、プレッシャーを感じて潰れそうになってしまい、なかなかその重圧をはねのけられず、悩んだことのある人もいるのではないでしょうか。
そこで、プレッシャーを感じる要因や、感じやすい人の特徴を解説。プレッシャーを軽くするおすすめの対処法を、これまでに1万人超のメンタルを救ったという「金髪アフロと赤メガネ」がトレードマークの精神科医&メンタル産業医、井上智介先生に伺いました。

仕事のプレッシャーを感じているビジネスパーソン
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仕事で感じる「プレッシャー」とは?

「プレッシャー」とは、自分だけではコントロールできない、周囲の状況などから生まれる精神的な重圧や緊張感のことです。
仕事においては、クリアするのが難しい課題や目標を抱えているときに、プレッシャーを感じる人が多いです。例えば、自身のスキルよりも高いレベルの業務や役割を任されたときや、仕事のボリュームが多く、自身のキャパシティを超えている場合などが挙げられます。
プレッシャーを強く感じると、体や心、行動にネガティブな影響が現れることがあります。身体的には、腹痛や頭痛などさまざまな「痛み」を伴ったり、夜に眠れなくなったりする人もいます。心理的には不安感が高まり、オフの間も仕事のことで頭が一杯になって切り替えができなくなったり、「自分はダメだ」「何をしてもうまくいかない」とネガティブな思考になったりするケースがあります。
行動の変化としては、気持ちの焦りから、普段は何でもないところでケアレスミスをしてしまったり、自信をなくして周囲とのコミュニケーションを避けがちになり、職場で孤立してしまったりする人も見られます。
このように、強いプレッシャーはさまざまな不調の原因となり、うまくつきあうことができない場合、どんどん悪循環に陥ってしまう可能性もあるでしょう。

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プレッシャーを感じやすい人の特徴

誰でも仕事をしていれば何らかのプレッシャーを感じることはありますが、中でも次のようなタイプの人は、よりプレッシャーを感じやすい傾向があるようです。

完璧主義タイプの人

何でも常に100点満点を目指す完璧主義の人は、「小さなミスも許せない」と自らハードルを上げ、自分自身にプレッシャーをかける傾向があります。周りの人が「もう十分では?」と思う状況でも、満足できずに頑張り続けるため、仕事のプレッシャーが増幅されやすい状態であると言えるでしょう。

責任感の強い人

責任感が強い人や、真面目すぎる人は「任されたことは必ずやり遂げなければならない」と、仕事を背負い込む傾向があります。自分の手に余る状況に追い込まれても、すぐに周囲に相談したり、助けを求めたりすることができない人が多く、仕事のプレッシャーを一身に引き受けてしまいがちです。

不安になりがちな人

不安感が大きい人や心配性の人も、プレッシャーを感じやすい傾向があります。常に慎重に物事を進めるため「リスク管理ができている」とも言えますが、わずかな可能性や最悪の事態も想定してシミュレーションをしないと気が済まず、そのため途中でエネルギー切れを起こしてしまうことがあります。

頼まれたらNOと言えない人

人から仕事を頼まれると、いつも「いいですよ」と二つ返事で引き受けてしまう人も、プレッシャーに囚われやすいタイプです。「人の期待を裏切りたくない」という気持ちが強く、本当は自分の仕事で手一杯のはずなのにNOが言えないため、後から追い詰められて一人で悩む状況になりがちです。

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プレッシャーを感じる要因

仕事の場面では、他者からもたらされる状況や与えられた役割が引き金となって、強いプレッシャーを感じることが多いようです。プレッシャーを引き起こす要因としては次のような例があります。

失敗したときのことを想像してしまう

未経験の仕事を任されたときなどに、「上手くいかなかった最悪のケース」を想像して不安になり、強いプレッシャーを感じることがあります。また、過去に大きな失敗をしてトラウマとなっている場合も、似た場面で「また同じ失敗をしてしまうのではないか」という恐怖心がよぎり、重いプレッシャーとなってのしかかることがあるでしょう。

責任や周りの期待が大きい

上司や取引先などから、実力以上の過大な要求や期待をかけられているときにも、強いプレッシャーを感じがちです。例えば、まだ経験が浅く自信もないのに、リーダーに抜擢されたり、ビッグクライアントを任されたりしたときに、強いプレッシャーを感じるケースも多いでしょう。

自分にできるかどうか自信がない

「自覚している実力」や「自信」と、「与えられる業務レベルや期待の大きさ」との間にあるギャップが大きいと感じるほど、心理的な負担感も大きくなり、ストレスへとつながります。真面目で責任感が強い人ほど、周りに頼ることができずプレッシャーばかりが大きくなり、押し潰されそうになるケースもあるのです。

ミスができない状況である

例えば、上司からの「この仕事はミスしてはいけない」という圧を感じたり、あるいは事業に損害を与える、リカバリーが困難であるなど、ミスがもたらす影響が大きかったりする場合も、「失敗できない」という緊張感から気持ちに余裕がなくなり、プレッシャーを感じることがあります。

プレッシャーを感じたときの対処法

上述したように、プレッシャーの多くは、「実力以上の役割を任された」「キャパシティ以上の業務量を割り当てられた」など、自分でコントロールできないことが引き金となって生まれるものです。
したがってプレッシャーに対応するには「自分でコントロールできる部分」だけに注目し、そこにリソースを集中させるのが大前提です。コントロールができないことばかりを思い悩んでも、事態は変わることがないからです。
その前提の上で、次の方法を試してみてください。今の自分に合った方法、やりやすい方法から着手してもらえればと思います。

カスタマーと会話するビジネスパーソンのイメージカット
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成功したイメージを描く

プレッシャーが強すぎると、「失敗したらどうしよう」「達成できなかったらどうしよう」と悪い方向にばかりに考えがちになります。
そこで、スポーツ選手が本番前にイメージトレーニングをするように、「自分が着実に仕事をこなしていく様子」「目標を達成した姿」をイメージしてみてください
その際、例えばプレゼンなら、自分が登壇した姿を外から見ている「第三者視点」と、参加者が自分の話に耳を傾け、終了後に拍手をしてくれる様子などの「自分視点」の両方をイメージすることが大切です。そうすれば、イメージがよりクリアで具体的になり、心が落ち着いて、思い描いた行動を取れるようになるでしょう。

深呼吸など緊張を緩和する方法を見つける

プレッシャーを感じたときに緊張を和らげるための、自分なりのルーティンを見つけましょう。例えば深呼吸には、副交感神経を優位にして自律神経のバランスを整え、心拍数を下げて心身をリラックスさせる効果があります。したがって、緊張がピークに達したときに深呼吸をすることは理にかなっています。
ほかにも「何度か屈伸を繰り返す」「グンと伸びをする」など、気持ちを切り替え、落ち着かせることができる方法であれば何でも構いません。ぜひ、自分にとってしっくり来るものを探してみてください。

失敗も経験になると考える

この世に、絶対に失敗しない人など存在しません。「失敗したらどうしよう」というプレッシャーに苛まれたときは、失敗を自己否定の材料ではなく、「学び」や「成長」の機会と捉えながらトライすることを意識すれば、重圧が少し軽くなるはずです。

周りに話を聞いてもらう

同僚でも家族でも友人でもいいので、信頼できる人に「プレッシャーを感じてしんどい」という今の状況を聞いてもらいましょう。つらい状況を理解し、共感してもらうだけで気が楽になり、緊張感が和らぎます。

自分の強みや長所を把握して自信につなげる

周囲があなたの力を認めていることに対して「荷が重い」と感じるのは、自分を過小評価しているせいかもしれません。プレッシャーを撥ねのけるには、意識して自分の強みや長所を再確認し、自信につなげることも大切です。これまでの成功体験や、モチベーション高く取り組めた仕事などについて、一度振り返ってみましょう。
自分一人で振り返るだけでなく、家族や友人、上司など、信頼できる人に話を聞くこともお勧めです。今の状況について悩みを打ち明ける中で、第三者の目を通して自分でも気づかなかった強みや長所を再発見し、よりポジティブな気持ちになれる可能性があります。

短くても自分の時間を作る

どんなに忙しくても、自分のための時間を確保しましょう。好きな音楽を聴く、動画を見るなど、気分転換の時間を1日15分持つだけでも、心が安らぎ緊張がほぐれるはずです
プレッシャーに押し潰されそうなときは、1日中仕事のことばかり考えがちになり、ますます心身に負担を与えます。意識的に仕事を忘れる時間を確保して、自分自身を緊張から解放しましょう。

TODOリストを作り、タスクを分割して考える

大きな課題を前に「あれもこれもやらねば」と焦ってしまい、もはや何をすればいいかわからなくなる人は少なくありません。この場合は課題を小さく分割し、業務内容を整理してTODOリストを作ることで、やるべきことの交通整理ができ、プレッシャーも軽減されます。
取り組むべき行動を一つひとつこなしていくことで、焦らず慌てず、目の前の業務に向き合うことができるでしょう。「仕事が着実に進んでいる」と実感できるので、不安や焦りも軽減するはずです。

できること・できないことの間に境界線を引く

業務を見える化すると、「これはできる」「これは一人ではできそうにない」という判断もしやすくなります。上記のTODOリストを作る際、業務をできることとできないことに分けておくと、できることに力を集中しやすくなります。
プレッシャーを感じがちな人は、「全て自分がやらねば」と業務を抱え込んでしまう場合が多いのですが、見える化することで「この部分は〇〇さんに任せたほうが、効率がいい」と頼ることができたり、「これ以上はキャパオーバーになる」と断れたりするなど、冷静にピンポイントで判断できるようにもなります。

「完璧主義」は捨てる

プレッシャーを感じやすい人の中には、完璧を求めすぎているケースが多く見受けられます。例えば、商談資料を作る際に、細部の言いまわしが気になったり、レイアウトの小さなズレが気になったりして、何度も見直してしまう人がいますが、それは自己満足に過ぎません。
プレッシャーが大きな仕事ほど不安になる気持ちはわかりますが、ここで最も大事なのは「提案が相手にわかりやすく伝わること」であるはずです。仕事の本質を見直し、肩の力を抜いて「相手が納得すればOK」「言いたいことが伝わればOK」と完璧主義は横に置いて臨みましょう。

自宅で仕事のプレッシャーを感じているビジネスパーソンのイメージカット
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仕事のプレッシャーを味方に変える考え方とは?

ここまでは主にプレッシャーの負の側面について述べてきましたが、仕事で適度なプレッシャーを感じることには多くのメリットもあります。
適度なプレッシャーから生まれる緊張感は、仕事に対する集中力を高め、自分の潜在能力を引き出し、大きく成長させるスイッチになります。実際に、プレッシャーをばねにより高い成果を上げられるという人や、周囲からの期待がモチベーションになり、実力以上の力を発揮できたという人も少なくありません。そしてプレッシャーを伴う困難を乗り越えた経験は、「自分ならできる」という自信につながっていくでしょう。
したがって、仕事にプレッシャーを感じる自分を否定する必要はありません。上述した対処法を参考に、バランスを取りながら、上手に付き合っていくという視点を持つことが大切です。そうすればプレッシャーはあなたの味方になってくれるでしょう。

もし、そうした工夫をしてもプレッシャーが強くて押し潰されそうになる場合は、強い緊張にさらされ続け、心身ともに疲れ切ってしまいます。上司に相談して、業務を変えてもらったり業務量を減らしてもらったりするなどの対応が必要です。
加えて、朝起きられない、食欲が湧かない、出社しようとすると頭痛や腹痛が出たり勝手に涙が出たりする…などの症状がある場合は、すでに限界を超えているのに無理に自分を奮い立たせている可能性が大。心身からのSOSを軽視せず、早めに産業医などの専門家に相談するようにしましょう。

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メンタル産業医・精神科医 井上 智介さんプロフィールメンタル産業医・精神科医 井上 智介さん

兵庫県出身。島根大学を卒業後、大阪を中心に精神科医・産業医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、一般的な労働の安全衛生の指導に加えて、社内の人間関係のトラブルやハラスメントなどで苦しむ従業員にカウンセリング要素を取り入れた対話を重視した精神的なケアを行う。さらに、すべての人に「大ざっぱ(rough)」に、「笑って(laugh)」人生を楽しんでもらいたいという思いから、SNSや講演会などで心をラクにするコツや働く人へのメッセージを積極的に発信中。『職場のめんどくさい人から自分を守る心理学』(日本能率協会マネジメントセンター)、『職場の「しんどい」がスーッと消え去る大全』(大和出版)など著書多数。

記事制作日:2023年6月27日 記事更新日:2025年5月28日
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