40代がキャリアに行き詰まったら?転職せずに「停滞期」を乗り越えるヒント

40代は、仕事に慣れて20代、30代のころのような成長感が得られにくくなる人も増えてきます。社内での昇進レースの行く末がおぼろげに見えてくることで、「進むべきキャリアがない」と行き詰まりを感じてしまう人もいるでしょう。
「転職」という選択肢以外に、キャリアの頭打ち感を打破する方法はあるのでしょうか。今の会社で再び成長感を持って働き続けるために、後半のキャリアとどう向き合っていけば良いのでしょうか。キャリアコンサルタントの粟野友樹さんに聞きました。

クエスチョンマークの落とし穴とビジネスパーソンのイラスト
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40代がキャリアに悩んでしまう理由とは

40代は、仕事で一定の経験を積んできているだけに、全く新しい仕事に出合う機会は、20代、30代に比べて減ってきます。一定の「やり切った感」を覚えるとともに、若手時代に比べて自身の成長を実感しにくくなる人は少なくありません。

スキルや経験の成長が鈍化してしまい、これから先の昇進や昇格のペースが何となく見えてしまったことで、「自分の適性を活かす場所がない」、「これ以上期待されていない」など組織内での頭打ち感から、モチベーションが低下した停滞状態、キャリア・プラトーに陥りがちです。

キャリアの停滞感や悩みの原因はどこにあるのでしょうか。「主観的に捉えているか」-「客観的に捉えているか」を縦軸に、また、個人的な要因と外部的な要因のどちらに起因するかを横軸にして、2つの評価軸でマトリックスにすると、大きく次の4つに分けられます。

キャリアの停滞感や悩みの4つの原因

1. 気おくれタイプ

チャンスに対して行動がもう一歩踏み出せなかったタイプ。
昇進や希望の仕事、あるいは転職などのチャンスや可能性はあったものの、その時は何となく気おくれして行動が起こせずに見送った人や、自己主張できなかった人もこのタイプに入ります。「自分があの時、応える努力をしていたら、今は部長になれていたかもしれない」などの後悔を引きずっていることもありそうです。

2.運命論タイプ

仕事や上司との出合いのタイミングや巡りあわせが悪かったタイプ。
スキルアップをしようと思った時期に、家族の事情や業務の都合で資格取得を途中で断念したり、本来なら昇進のタイミングだったときに、相性が悪い上司からの評価が意にそぐわない結果になっていたり、外部要因でキャリア構築ができなかったと感じている人がこのタイプに入ります。「もっと市場価値の高いキャリアを歩めたはずなのに」と思いながら、運命論的に受け入れ諦めていることも。

3.自信喪失タイプ

会社から期待される水準や能力に対し、自分の能力や適性が追い付いていなかったと感じているタイプ。
昇進や社内公募などにチャレンジしたが見送られてしまったり、転職市場を見ても自分の経験・スキルでは市場価値が低いと感じたりする経験を通じて、自信を喪失している人もこのタイプに当たります。

4.冷笑・諦めタイプ

「会社自体が頭打ちだから」「部署の上位ポストが詰まっているから」など、現状に諦めを感じているタイプ。業界や他部署と比べて硬直している組織や、上司の考えの古さを冷ややかに見つめつつも、自身のキャリアの舵取りに行き詰まりを感じている人もこのタイプに当たります。

以上のタイプ分類は概念的なもの。どれか1つにきれいに分類されるわけではなく、複数の側面が重なることも多いでしょう。悩みや不安は、本来くっきり分類できるわけではありませんが、自分の悩みや閉塞感と向き合うときのヒントにしてみてください。

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停滞期を乗り越えるためのキャリアの考え方

ビジネスパーソンとしてのキャリアをフルマラソンで例えると、40代はまだ折り返し地点に到達するかどうかという段階です。ネガティブにとらえがちな40代のキャリアの停滞期を乗り越えるための考え方を、それぞれマラソンを例にご紹介しましょう。

1.気おくれタイプ

頭の中であれこれ考えすぎて怖くなったり、気おくれしたりする前に、一度アクションを起こしてみましょう。
マラソンに例えると、走る力はあるにもかかわらず、大会に出ることを尻込みしているようなもの。例えば、10キロマラソンやハーフマラソンでも構いません。一度大会に出てみると、自分の力を客観的に測ることができ、違った世界が広がります。
仕事でも、まずは、小さなことや気軽にチャレンジできることから始めましょう。自己分析的なことよりも、社内外の人に相談する、昇進や昇格試験などへ再チャレンジの可能性を探る、自分のペースでできる副業にトライするのも一つの方法です。

2.運命論タイプ

運命やタイミング、人との相性に原因を求めている人は、巡りあわせや相性の良し悪しから離れて、自分にフォーカスしてこれまでを振り返ってみましょう。
マラソンに例えると、力を出し切れない理由を「向かい風だったからいいタイムが出せなかった」「小雨が降ってきたから後半失速した」などと常に思っているようなもの。同じ条件で他に好タイムを出しているランナーもいるとしたら、持久力や給水のタイミングなどに要因があるのかもしれません。
キャリアの棚卸しをして、自分の得意不得意を整理してみましょう。人を変えることはできなくても、自分を変えることはできます。自分の強みを捉え直し、部署異動で環境や評価、仕事を変えてみてもいいでしょう。

3.自信喪失タイプ

自信を喪失しているのは、特定の価値観や考え方に縛られているせいかもしれません。他の選択肢を探してみましょう。
例えば、走るのは好きでもマラソンは距離が長すぎて合わない人もいます。野山を走るトレイルランニングに挑戦したら、自然の中で起伏もあり楽しめるかもしれませんし、走る側ではなく、マラソン大会を運営する側になることで、全く違ったマラソンとの関わりが生まれるかもしれません。
これまでの仕事の評価、企業文化での見方、過去の転職活動の結果などはたまたまマッチしなかったと切り替えましょう。リスキリングで新たにスキルを身につけることもいいですし、後進の育成や部署内の生き字引のような存在になることも意味があります。上司・部下、他部署ともバランスを取って仕事ができること自体が、立派なキャリアになります。

4.冷笑・諦めタイプ

組織や仕事の内容を冷めた目で批判的に見ていると、現状から距離を置いてしまいがち。まずは、やりきることに専念してみましょう。
マラソンで言えば、レースに申し込みながら参加せずに、あるいは途中棄権して、後から参加した場合のデメリットを数えているようなものです。
まずは、自分なりの目標を設定し、そこに向かって完走を目指しましょう。批判的・客観的な視点は必要な部分もありますが、過ぎれば仕事を自分のこととしてとらえる力が弱くなります。社内で新しい仕事を作って環境を変えるなど、上司や部署内に提案して自分でやってみるところから始めましょう。

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転職せずに成長を続けるためのヒント

1.キャリアの成功を疑ってみる

キャリアへの停滞感は、周りから見ればどこも問題がないのに、自分一人で行き詰まりと思い込んでいるケースも少なくありません。まずは、世の中に出回っているキャリアに関する言説を疑ってみましょう。正解は一つではないのに、社会で言われるサクセスストーリーやメディアが伝えるキャリアの成功者、研究者のキャリア理論などを、生真面目に受け入れ過ぎているのかもしれません。

2.自分を再評価する

経済はグローバルに動き、環境の変化は激しく、予測がつきにくくなっている今の時代、キャリアパスを絞り込みすぎることはリスクにもなります。年収や役職、資格などに振り回され過ぎず、むしろ自分のやってきたことを評価しましょう。

これまでしてきた仕事、社内外の人脈、プライベートな活動で得た知識や経験など、様々なものが自分のキャリアでありオリジナルなもの。例えば、平凡なキャリアと思っていても、実は偏りのない仕事をしてきたことが、バランサーとして希少性が高い存在であったり、人と人をつなぎサポートする社内の“ハブ”として新たな役割を認識できたりするかもしれません。自分のやってきたことをプラス評価で再認識しましょう。

3.他者視点で新規開拓をする

自分で棚卸しするだけでなく、仕事とは関係のない友人・知人、あるいは社外のキャリアコンサルタントやコーチなど、第三者の違う視点を入れることが有効です。自分を活かせるスタイルがどこにあるのか、自分の興味や成長のベクトルがどちらを向いているのかを見直してみましょう。新しい仕事や組織を社内で立ち上げたり、起業や副業の発想が生まれたりするかもしれません。

40代はフルマラソンで言えば、まだコース半ば。1回歩いてまた走り出してもいいのです。今は調子が悪くてペースが上がらなくても、一定ペースで走りきることで好記録になったり、前半速かった人より先着したりといったことが、いくらでも起こり得る段階なのです。

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組織人事コンサルティングSeguros
代表コンサルタント粟野友樹氏

大学・大学院にて人材教育ファシリテーションの経験を積み、大学院を修了後、GMOインターネットグループ、外資系金融機関、パーソルキャリアを経て2018年より現職。これまでに約500人の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

取材・文:中城邦子 編集:鈴木恵美子
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