人生の目的とは?精神科医・樺沢紫苑氏が語る「人生の目的の見つけ方」

「何のために働いているのかわからない」「人生の目的が見つからない」そんなことを考えながら、何となく日々をやり過ごしていることはありませんか?
進みたい将来の目標を見失っているビジネスパーソンに向け、『アウトプット大全』『言語化の魔力』の著者であり、YouTubeチャンネルでも人気が高い精神科医、樺沢紫苑(かばさわ しおん)さんがアドバイスを送ります。

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なぜ、人生の目的がわからなくなるのか?

「人生の目的がわからない」「どうやってみつけたらいいのかもわからない」と思っている人の多くは、10年後や20年後など、遠い先の目的や将来像を思い描くことが、人生の目的を持つことだと思っているのではないでしょうか。

しかし、20代、30代でいくらイメージしたとしても、数十年後、必ずしもその通りにはなりませんし、いくら一生懸命考えてもそれが正解かどうかは、検証できません。人生の目的がわからないのは当然なのです。

わからないから不安になる。不安になれば思考や考え方はネガティブなものに寄っていっていしまいます。そうでなくとも現代人はゲームや配信ドラマ、SNSなどで夜更かしをして睡眠時間が削られたり、寝る前にブルーライトを浴びることで睡眠の質が下がったりしがちです。脳疲労の状態で将来に対して考えても不安や心配が浮かんでも、プラスの思考にはなりにくいのです。

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一日一日積み上げていくことで到達するところこそ人生の目的

人生の目的とは、一生をかけて探すことではないでしょうか。一生かかって見つけて、80代、90代になったときにいい時間を生きてきたなと思えればいいわけです。私にとっての人生の目的は、「今日一日を楽しんで、いい一日にすること」です。といっても、享楽的に楽しむという意味ではありません。

いい一日にするためには、自分と向き合って、何をしているときに楽しいと感じるのか、どんな時に幸せだと思うのか、日々観察する必要があります。また、自己投資も含めて苦手や不得意としていることを改善していき、今日できることをやっていくことで、自分にとっていい一日になっていきます。

そうやって一日を幸せに過ごすことが7日間続けば1週間幸せだったことになりますし、それが4週続けば1カ月幸せだったことになる。そうやって40年を積み重ねたら、「なんて幸せな人生だったのだろう」「なんて充実していたのだろう」と、思えるはずです。

目的を方向性やビジョンという言葉に置き換えてみよう

「自分の目的がわからない」「将来の目標が見つからない」、あるいは「目的なんてない」という人は、目的を「方向性」、あるいは「ビジョン」という言葉に置き換えて考えてみましょう

目的には目指す方向だけでなく、最終的な到達点が含まれます。何かゴールを決めなければなりませんが、逆にゴールを決めてしまうことで、それ以上には進めないというマイナス面もあります。

方向性やビジョンであれば、どうなりたいか、どういう方向に進みたいかですから、無限に行ける可能性があります。そして方向性であれば、自分と向き合うことで、「人と接する仕事が好き」「パソコンと向き合っている方が合っている」など、何となく自分が好きなことや得意なジャンルが見つかるのではないでしょうか。

自分の方向性やビジョンを知るためには、診断ツールを使うこともオススメです。例えば、適職診断を使って自分がどうやって働きたいのかをプライベートとバランスを考えながらイメ―ジして、自己分析ツールを利用して自分の強みや長所を見つけるなど、仕事で活躍できるシーンを想像してみるとよいでしょう。

行動して、インプット・アウトプット・フィードバックを回そう

自分の方向性を見つけるためには、行動することが大切です。例えば、友人の手伝いで店頭での接客をしたときに「楽しい」と感じるか、「自分には向いていない」と思うかの違いで、一つの方向性が見えてきます。

あるいは、デザインの仕事に興味があったらデザイン系のワークショップに参加してみることで、意外に細かな部分のチェックや調整が多いと感じるかもしれません。頭の中だけで考えるのではなく、実際にやってみて気づくことが大切なのです。

こんなことがあるという情報をインプットしたら、実際に行動に起こしてアウトプットし、自分に向いているのかいないのかフィードバックする。そうやって小さなアクションや行動を積み重ねて、「インプット・アウトプット・フィードバックのサイクル」を回すことで、自分がどの方向に向いているのか、どの方向に進むべきかがつかめてきます。

好奇心を大切にしよう

もう一つ大切にしてほしいのが、「好奇心」です。好奇心は言い換えれば心のコンパス。「それって面白そう」と感じる心です。何をやっているときに楽しいのか、どういうことをしているときに幸せを感じるのか、好奇心がどの方向に向いているのか、アンテナを立てておくことを意識しましょう。

楽しいといってもスマートフォンのゲームや配信ドラマなどは、受身型の娯楽です。黙ってそこにいれば与えられる楽しさではなく、好奇心に従い、趣味の活動をしたり、人と会ったり、イベントや会議に参加して、自分自身が動きながら手応えを見ていくことでで、自分の楽しいと感じる方向性や心のアンテナが向いている方向が見えてきます。

寝る前にポジティブな振り返りをして、3行日記をつける

方向性を見つけたら、一日一日を充実させていきましょう。そのためにお勧めしたいのは、寝る前に「3行ポジティブ日記」を書くことです。一日を振り返り、楽しかったできごとや前向きな気持ちになれたことを3つ書く。続けているうちに、自分に起きているポジティブなことを発見する能力が自然と高まります。

「あの店で食べた料理は美味しかった」「あの人の話に笑った」「こう言われて嬉しかった」などプラスのできごとを3つ書き出せるようになったら、寝る前に布団の中で、ポジティブなことを振り返るだけで構いません。一日をポジティブに振り返ることは、幸せな一日一日を積み上げていくことにつながっています。

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目的(方向性)に向かって1段ずつ上ることが成功への近道

振り返りは明日をもっと良くする、ひいては人生の目的に向かって階段を一歩ずつ上っていくことにもつながります。

例えば一日を振り返ったときに、予定の仕事の7割しか達成できていなかったとしたら、どうやったら明日はもっとパフォーマンスを上げられるかなと考えればいい。自分はコミュニケーションが苦手だということに、今日気付いたら、明日コミュニケーションの本を読んでみるのでもいいでしょう。

10年、20年後の目的に悩むよりも、今日一日をどう集中して過ごすかに心を配りましょう。大きな目標を立て、10年後にこうなりたいという高い目的を持っていたとしても、今を怠けている人はそこに到達できません。今日階段を一段上ることが重要なのです。

今日一日を十分に満喫してやりきっていく。そうした日々を積み重ねていれば、間違いなく将来はいい方向に向かって行けるはずです。

樺沢紫苑(かばさわ しおん)氏_プロフィール画像

精神科医、作家、映画評論家 樺沢紫苑(かばさわ しおん)氏

1965年、札幌生まれ。1991年、札幌医科大学医学部卒。札幌医大神経精神医学講座に入局。大学病院、総合病院、単科精神病院など北海道内の8病院に勤務する。2004年から米国シカゴのイリノイ大学にてうつ病、自殺について研究。帰国後、東京にて樺沢心理学研究所を設立。 精神医学の知識、情報の普及によるメンタル疾患の予防を目的に、YouTube、Facebook、メールマガジン、Twitterなどを通じて累計約100万人に、精神医学、心理学、脳科学の知識、情報をわかりやすく発信している。著書に『アウトプット大全』(サンクチュアリ出版)など。著作50冊目となった近著は『19歳までに手にいれる7つの武器』(幻冬舎)がある。

WRITING:中城邦子 EDIT:馬場美由紀
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