マッチョな職場ってどんな職場?特徴や職場で感じるマッチョイズムへの対処法を紹介

「プライベートの時間を大切にしたいが、自分の職場では休暇を取りづらいし、柔軟な働き方ができる環境でもない……」

そんな悩みを抱いているなら、その職場には「マッチョイズム」が根付いているのかもしれません。「マッチョな職場」とはどういうものか、マッチョな職場で働いていることをどのように捉え、対処すればよいのかについて、リクルートワークス研究所の研究員・筒井健太郎氏が解説します。

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マッチョイズムとは?

マッチョイズムとは「伝統的な男性らしさの規範への囚われ」を指します。「伝統的な男性らしさ」の特徴としては、「挑戦」「収入」「評価」「出世」などを重要視することが挙げられます。

精神的・肉体的な強さを持ち、他者に依存せず、弱みを見せず、目標達成のためにまい進する。家庭よりも仕事を優先し、社会的地位を高めることを目指す──このような意識や姿勢を持つことが外部から「規範」として求められ、それに囚われている状態が「マッチョイズム」です。これは、男性だけでなく女性も陥っている現象です。

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マッチョな職場とは?職場におけるマッチョイズムの特徴

組織におけるマッチョイズムは、一般的に「弱みを見せてはならない」「強さと強靭さ」「仕事最優先」「弱肉強食」などが挙げられます。「マッチョな職場」には、具体的には次のような特徴が見られます。

  • 自信を持ち、弱い感情を抑圧することが求められる
  • 活動的で持久力があり、長時間働くことが称賛される
  • 家庭や趣味といった組織外活動より仕事を最優先することが求められる
  • 休暇を取りづらい
  • 競争が激しく、競争に勝った者が評価される

近年、育児・介護の両立支援に力を入れる企業が増えています。しかし、マッチョな職場においては、上司が両立支援制度を活用するメンバーに対して「仕事へのコミットメントが低い」と捉え、ネガティブな人事評価をすることもあります。

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マッチョな職場が生まれた背景と現在の課題

なぜ、マッチョな職場が生まれるに至ったのでしょうか。

かつての日本企業の組織構成は「男性総合職」がマジョリティであり、「終身雇用」を前提に働いていました。こうした画一的な男性中心社会でマッチョな職場風土が築かれてきたのです。そのため、多くの男性が職場において「(伝統的な)男らしさ」のプレッシャーを感じていると考えられます。

プレッシャーをもたらす要因の筆頭は「社会全体の風潮」とされていますが、それに続く要因として「男性の直属上司」「男性の同僚・知人・友人」が挙がっており、組織内で「伝統的な男性役割」が維持・再生産されてきたと考えられます。

そもそも企業や組織とは「成長」を志向するもの。成長戦略を描くためには「競合に勝つ」必要があります。経営において「成長」と「競争」は掛け算で考えられやすいため、組織のトップほど「競争に勝たなければ」という意識が強くなり、マッチョイズムが評価・温存されやすいといえるでしょう。

ところが近年、「ダイバーシティ(多様性)経営」の取り組みが活発化してきました。かつての「終身雇用の男性総合職」が中心の組織ではなくなり、女性活躍が推進され、働き方も多様化しています。

画一性を前提としたマネジメントが通用しなくなり、これまでの働き方とのギャップが生まれています。従来、マッチョな職場から離脱していくのは女性が中心でしたが、男性も違和感や葛藤を抱くようになってきました。経営層もそれを課題として捉え、職場のカルチャーを変えていこうとする気運が高まっています。

しかしながら「成長」=「競争に勝つこと」という思考は根強く、マッチョイズムからの脱却が難しい職場もまだまだ多いようです。

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もしマッチョな職場に勤めていたら?考えるべきポイント

「自分の職場ではマッチョイズムが強い」──そう感じた場合に、考えておきたいことをお伝えします。

職場が「自分に合うかどうか」を見極める

近年、マッチョな職場は「時代にそぐわない」というネガティブな面に注目されがちですが、ポジティブな側面もあります。

先にも触れたとおり、競争に勝つことで成長を目指す風土であるため、働く個人としても成果や成長につながりやすいのです。自己成長やキャリアアップへの意欲が高い人にとっては適応しやすい職場であるといえるでしょう。

一方、「成長しなければ」というプレッシャーを感じ続け、疲弊して「燃え尽き」「離職」に至ることもあります。自己成長が充実感や自信につながればよいのですが、成長の延長線上には「他者との比較」があり、「競争」を強いられることになるためです。また、マッチョな上司の言動は「パワハラ」にもなりやすく、それを受け続けるとメンタルに不調をきたすケースも多く見られます。

マッチョな職場風土のポジティブな面とネガティブな面を踏まえ、自身に合っているかどうかを見極めることが大切です。

なお、マッチョな職場が合うかどうかは、性格や志向によることもありますが、今置かれている状況にも左右されます。

例えば、20代独身で「今は時間をすべて仕事に注いでキャリアアップを図りたい」というモードであれば、マッチョな職場は適した環境と言えるかもしれません。しかし「今は育児と仕事を両立させたい」など、仕事以外の時間やライフスタイルを大切にしたい時期にはつらさを感じることもあるでしょう。

「今」の自分にとって適した環境であるかどうかという観点でも考えてみてください。

自分の価値観を知る

マッチョな職場が、実は自分に合っていないことに気付いていないケース、あるいは合っていると勘違いしているケースもあります。

心理学用語に「過剰適応」という言葉があります。
これは、周囲の環境に合うように自身の行動や考え方を変える程度が度を超えている状態を指します。その状態に陥り、「自分に合っている」と思い込んでしまっているかもしれません。マッチョイズムに適応して、スキルアップやキャリアアップを果たせていたとしても、自身の根底にある価値観と照らし合わせたとき、「実は合っていない」ということもあるのです。そのことにちゃんと気付くことが大切です。

以下の「氷山モデル」で示しているように、見えやすい部分と見えづらい部分があります。「性格」「動機」「価値観」など見えづらい部分にも着目し、マッチョな職場が本当に自分に合っているかどうかを判断しましょう。

自身の価値観を見つめ直すためには、次の方法を試してみてください。

氷山モデル

「キャリア・アンカー」のワーク

「キャリア・アンカー」とは、アメリカの組織心理学者であるエドガー・シャインが提唱した概念であり、「自身のキャリアを選択する際の軸となる価値観や欲求」を指します。ワークブックを活用し、自身がキャリアにおいて大切にしたい価値観を洗い出すことができます。

ライフラインチャート

「ライフラインチャート」とは、これまでの人生での節目の出来事や自身の成長を視覚的に表現するものです。横軸に時間、縦軸に「幸福度」を記入し、折れ線グラフで人生の「山」と「谷」を可視化します。

「山」と「谷」の部分には自身が何を大切にしているかが表れますが、さらに「谷から回復するとき」に何があったかも振り返ってみるといいでしょう。

Who am Iテスト

「私は○○です」という文章の「○○」に当てはめる言葉を20個挙げてみてください。最初は周囲の人々や社会から認識・期待されているワードが出てきますが、後半になるとワードを出すためには内省が必要となります。

外部から与えられたものではなく、自身の内側にあるものが出てきやすくなり、自身が本当に大切にしていることを探索するのに役立ちます。

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マッチョな職場が合わないときの対処法

自分にはマッチョな職場が合わないと判断した場合、どう対処すればいいのでしょうか。「辞める」ことも一つの手段ですが、その前に「声に出す」ことが大切です。

仕事に満足感を得られていない状況が続き、つらく感じるようになってしまっているのであれば、それを周り素直に伝え、ちゃんと助けを求める。そのように声を上げてみることで状況が変わるかもしれません。

マッチョで強いことを良しとする風土に適応しようとすると、その意識が強いほど、自分の弱い部分が隠れてしまいます。日差しが強いほど、影は強くなります。そこで、自分の弱さを認めること、周囲の人に弱さをさらけ出す勇気を持つことも大切です

それでも状況が改善できなければ、転職するのも一つの方法です。転職活動する場合、同じようなミスマッチを繰り返さないために、「情報収集」をしっかり行ってください。

企業のホームページなど外側に表出している情報だけでは、その企業のカルチャーや社員の考え方などまではつかみづらいものです。内側まで掘り下げて情報収集し、企業のカルチャーと自身の価値観がマッチするかどうかをすり合わせてみましょう。

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マッチョイズムに縛られず、自分の人生を生きる力を育もう

職場にあるマッチョイズムが自身の持つ価値観とマッチしているのであれば、そのまま受け入れればいいでしょう。

しかし、今は多様な価値観が許容・尊重される時代。組織から与えられた一元的な価値観に染まらず、自身の価値観を大切に生きる道を選ぶことも可能です。

無理にマッチョイズムに適応しようとするのではなく、自身の人生を生きる力をしっかりと育んでいきましょう。自分の人生を歩みために、自身の価値観にしっかりと向き合ってください。

株式会社リクルート リクルートワークス研究所
研究員 筒井 健太郎氏

筒井健太郎さん
2009年早稲田大学法学部卒業後、東京海上日動火災保険株式会社入社。商品企画・開発、法人営業に従事。その後、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社、そして、株式会社セルムにて組織人事コンサルタントを務めた後、2022年4月より現職。
2019年8月名古屋商科大学大学院マネジメント研究科修了。修士(経営学)。現在、立教大学大学院経営学研究科博士後期課程在籍。Executive MBA、中小企業診断士、1級キャリアコンサルティング技能士、PCC(Professional Certified Coach)

取材・文:青木典子 編集:馬場美由紀
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