特別なキャリアがない30代は大丈夫?不安を払拭する新しいキャリアの見つけ方

30代は、同期の中でも昇進や昇格スピードに差が出てくる時期でもあります。他の人が自分よりも先を行っているように見えて不安を感じたり、人に語れるようなキャリアがないことに漠然とした悩みやモヤモヤを抱えたりすることも。
30代でぶつかるキャリアの壁と新しいキャリアの見つけ方について、キャリアコンサルタントの粟野友樹さんに聞きました。

公園にて考え事をしている人
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30代で「キャリアがない」と悩むのはなぜか?

30代は自分がこれまで積んできたスキルや経験を活かし、将来に向けてのキャリアパスを考える時期です。しかし、上からの指示を夢中でこなしていた20代とは違う立場や役割の変化に、改めて「自分にはキャリアがない」と漠然とした不安を感じている人もいるでしょう。

今後のキャリア構築にどんな視点を持てばいいのかを考える前に、まず自分の不安や悩みの原因がどこにあるのかを考えてみましょう。
「主観的に捉えているか」-「客観的に捉えているか」を縦軸に、また、視点が社内と社外のどちらを向いているかを横軸にして、2つの評価軸でマトリックスにすると、キャリアへの不安は大きく次の4つに分けられます。

キャリアへの4つの不安

1.自己分析過剰タイプ

社内のごく近くにある情報だけにとらわれて視野が狭くなり、自己評価が低い状態。
「同期入社の経理にいるAさんはすでに2年前に係長になっている」、「同じ部署の理想の上司Bさんは35歳のときに課長職になっていた」など、周囲の昇進や自身の理想と現実とのズレに必要以上に焦りを感じているタイプです。

また仕事に慣れてきたからこそ、ルーティンワークにマンネリを感じる人や、20代のころとあまり変わらない仕事内容や役割に「成長実感をもてない」、「もっと責任ある仕事を任されてもいいはず」、「専門性が高まっていない」と感じている人もいるでしょう。自身が考えるキャリアプランやビジョンに比べて進度が遅いと心が急いている人も、このタイプにあたります。

2.自己喪失タイプ

意識は高いのですが、自分とは違う環境にある他者と比べてばかりで、自分を見失っている状態。メディアなどで取り上げられる起業家や同年代のビジネスパーソンが活躍する情報に触れ、劣等感を持ったり、「自分はなぜあの人たちのようになれないのか」、「どこで遅れを取ったのか」と自分を追い込んでしまったり、自分は自分、他人は他人と思えないタイプ。

また、「大学の同期のCさんは外資系企業に転職してバリバリやっているらしい」、「後輩のDさんは上司に目をかけられている」など、表面的な情報やウワサに踊らされて落ち込んでしまう人も、このタイプにあたります。

3.ミスマッチタイプ

現在の組織内で思ったような働きができていない、評価が低い状態。
上司とうまく意思疎通が図れていない、同僚と相性が悪いなど、周囲との人間関係が壁となり、思うような働きができていないなど仕事の内容や会社での立場に悩みを抱えている人。

また職場や仕事内容になじめず、昇級・昇格に前向きな希望が持てないなどの人も、このタイプにあたります。

4.市場価値偏重タイプ

現在の自分のキャリアでは、たいした市場価値がないと考えている状態。
業界平均年収などのランキング情報と比較し、自身の市場価値が低いと感じて、今のままのキャリアでよいのかと不安や不満を感じている人。

また転職サイトを見ても自分のキャリアでは希望するような年収は望めない、登録しても思うようなスカウトメールが届かない、面接で落ちたなど、転職活動の結果から、自身のキャリアに先行き不透明感を覚えている人も、このタイプにあたります。

これら4つの分類は、一つの見方です。
「何をどう考えて動いたら良いかわからないから(なんとなく)将来が怖い」と感じている人もいるでしょうし、これらの複数タイプにまたがる人もいるでしょう。悩みや不安は、本来くっきり分類できるわけではありませんが、自分の不安と向き合うときのヒントにしてみてください。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

自分の不安と向き合い新たな一歩を踏み出すために

不安や焦りを生んでいる原因が分析できたら、次はそれぞれのタイプ別に対策を考えてみましょう。

1.自己分析過剰タイプ

自身が思い描くキャリアパスと現実との違いに焦燥感があるとしても、第三者からは全く違う評価を得ているかもしれません。実際は年齢相応に周囲の期待に応えて成長しているのに、自身の理想が高すぎたり、周りから一目置かれている部分に本人が気づいていなかったりすることも。
まずは社内外の第三者と仕事について対話し、キャリアの棚卸しや強みの言語化をしてみましょう。違う視点を取り入れることで、取るに足らないと思っていたスキルや経験、専門性が大きな武器になると気づくこともあります。

2.自己喪失タイプ

誰しも、断片的な情報や真偽がわからない情報をもとに比較評価しがちですが、人それぞれ個性や環境、運・出会いのタイミングの違いはあります。不安を感じたり、自信を失っていたりするときは、あえて他者との比較評価は意図的に控えることが肝心です。
自分にフォーカスをあて、これまで担当してきた仕事や成し遂げたプロジェクトなど、改めて書き出して、自分の強みを言語化してみましょう。自分を知り外向けではないキャリアビジョンを考えることが前進につながります。

3.ミスマッチタイプ

思うような働きができていないと感じるのは、経験やスキルだけが要因ではないかもしれません。
与えられた仕事内容や役割が、自身のもつ特性や強みとミスマッチなのであれば、上司と役割期待のすり合わせや目標再設定をしてみましょう。あるいは社内で部署異動を検討してみてもいいでしょう。例えば営業部門でマネジメントの昇格を目指すのではなく、経理・財務などで専門性を目指すなど、キャリアパスを見直したり、社内公募に応募したりしてみるのも一つの方法です。

4.市場価値偏重タイプ

ビジネスパーソンの市場価値は持っている資格の数や現在の年収だけではありません。自身に対する評価軸を変え、視野を広げてみましょう。これまで取り組んできた仕事や工夫して改善した業務なども、キャリアを構成し、社内外で評価される要素です。そうした視点で自分の仕事を見直し、自身を再評価してあげましょう。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

30代が充実したキャリアを積み上げるためのヒント

キャリアは人、仕事、環境との出会い

「キャリアがない」と悩んでいる30代の人は、何か目立った経歴や難易度の高い資格がないと、キャリアとして認められないのではないかと思っている人が大半だと思います。
しかし、実際には、転職でも組織内での人事評価でも、①経験・スキル、②人間性や仕事の価値観などの両面から総合評価がされます。専門スキルや役職、難度の高い資格保有は、1つの評価される軸にはなりますが、スキルだけではなく、どのような姿勢で仕事に取り組んできたか、どんな創意工夫をしたかも評価されるのです。

専門スキルを身につけるために自身でビジョンを描き、パーパスを持ってキャリアプランを考えることは大切ですが、そこにしばれられ過ぎると、過度に今現在の社内評価や自己分析、あるいは他者との比較にとらわれてしまいます。

しかし、キャリアは人や仕事との出会い、環境の変化など他者との関わりの中で構築されていくもの。サクセスストーリーを見聞きすると、自分で努力して苦難を乗り越えて行かなくてはと思いがちですが、そんな強迫観念をもたなくていいのです。

外の人との出会いをつくることが突破口に

プログラミングやデータ分析、語学などのリスキリング、MBAなどの資格取得など、自分の進みたい方向に合うものであればやってみましょう。しかし、目の前の短期的な仕事やキャリアアップだけに焦点をあてすぎず、少し余白をもって、見方を変えることも大切です。

社内の研修や資格取得コースは、「今ある環境の価値観」に縛られた選択肢になりがちです。異なる視点をもつために有効なのが、外の人との対話をすることです。
違うジャンルに進んだ大学時代の友人や、趣味の仲間、副業先の同僚、社内であればあえて別の部署の人との接点をもつことで、違う環境の価値観に触れることができます。
すると一面的でないキャリアが見えてきます。何より、同じ資格取得でも、会社での評価のための勉強では限界がありますが、自分がやりたいことを仲間とともにやるのであれば、同じリスキリングでプログラミングの勉強をしても、意味合いも推進力も違ってきます。

自身のこだわりを大切にすることも重要です。こだわりを継続していくと、仲間ができます。仕事に新たな視点や刺激をもらえたり、ともに起業や副業を始めたりすることもあるでしょう。短期的なキャリアよりも、長い目でみて自身のものとなる経験やスキルを身につける場を得ることにつながっていきます。

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組織人事コンサルティングSeguros
代表コンサルタント粟野友樹氏

大学・大学院にて人材教育ファシリテーションの経験を積み、大学院を修了後、GMOインターネットグループ、外資系金融機関、パーソルキャリアを経て2018年より現職。これまでに約500人の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

取材・文:中城邦子 編集:鈴木恵美子
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