精神科医が教える「仕事が辛い」悩みの特徴と対処法

「仕事が辛い」と悩んだ経験は持つ人は多いのではないでしょうか。コロナ禍の影響で働く環境が大きく変化する中で、仕事のストレスや体調不良に悩む若手社会人が増えているようです。そこで、『言語化の魔力』の著者であり、YouTubeチャンネルでも人気が高い精神科医、樺沢紫苑(かばさわ しおん)さんに、仕事が辛いと感じたときの対処法について聞きました。

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Photo by Adobe Stock

仕事の辛さを我慢しすぎて、ストレス症状が出ることも

仕事が辛いと感じてしまうのは、決してあなただけではありません。私のYouTubeチャンネルにも仕事の場面での質問や悩みが数多く寄せられています。

仕事の辛さを我慢しすぎてしまうと、ストレス症状が出ることがあります。例えば、仕事中に以下のような異変が現れたら注意しましょう。

  • 打ち合わせの予定を忘れてしまう
  • 少し前に話していたことを覚えていない
  • 書類やスマートフォンなどを置き忘れることが増えた

これらは「脳疲労」の兆候であり、ストレスが溜まったことでノルアドレナリンの分泌が減少、注意力や集中力が低下することから現れる症状です。「全身倦怠感」や「頭痛」「頭重」「肩こり」「首回りの疲れ」「下痢」「便秘」「動悸」「息苦しさ」「多汗」などの体調不良が起こることもあります。

こういった症状が続く場合は、上司や社内に産業医がいれば相談したり、心療内科などにかかったりするなどして、無理に働き続けないようにしましょう。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

「仕事が辛い」と悩む人の特徴とは?

一方で、ストレス症状が出ないまでも「仕事が辛い」と悩んでいる人には、主に3つの特徴があります。

    1. 1.「辛い」「苦しい」などのネガティブ感情に支配されている
    1. 2.仕事の対処法がわからない
    1. 3.前に進めない停滞感、閉塞感がある

これらに対し、ネガティブ感情に支配されず、対処法を手に入れ、停滞をやめ前進するためにはどうしたらいいかを考えていきましょう。

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対処法1:仕事の基礎体力を鍛える

いくら有能な人でも、入社直後から責任のある企画やチームの中心になるような仕事を任されたりすることはありません。指示されたことをこなすだけの“受け身の仕事”が一般的です。最初は、面白さややりがいを感じにくいでしょう。

しかし、この時期は、「守破離」(しゅはり)の守にあたります。「守破離」とは茶道や武道などで言う修業上の段階を示す言葉。「守」とは流儀や基本の型を守って学ぶこと。「破」とは本来の流儀を身に付けた上で、自分が良いと思ったものを工夫して、既存の型を破ること。「離」と独自の工夫を高め、既存の型を離れオリジナルに進化させることです。

どんな世界でも、「守」で基本を学ぶことが大切です。面白さを感じられるようになるのは「破」や「離」の境地に至ってからでしょう。スポーツ競技に例えるとわかりやすいかもしれません。例えば野球部に入ったら、まずはキャッチボールや筋トレ、ランニングなどの基礎体力づくりから始めることがほとんど。基礎体力とスキルを身に付け、強くならなければ試合には勝てません。

若手社会人の場合はまだ「守」の段階だから、スポーツで言えば基礎練習や筋トレに対応する仕事が多いのです。書類やデータの整理の仕方、企画書の基本のフォーマットや会議の進め方、議事録の取り方など、一つひとつを守って学ぶ時期だと言えます。

そうした基礎知識やスキルをきちんと習得した上で、次のキャリアがあることを理解していると、今やっている仕事が将来役立つようになってきます。つまり、先のイメージを持つことで、「仕事が辛い」というネガティブ感情に支配されずに、自分なりの面白さを発見していくことができるのです。

たとえ受け身の仕事であっても、優先順位をつけたり、業務を効率化するツールを使ったりすることで業務の工夫や改善を行い、守破離の「守」を「破」や「離」に変換することができます。それができる人は、「仕事が辛い」から脱却しやすいし成長も早くなります。責任ある仕事も任せられるようになっていくでしょう。

対処法2:人に話す勇気を持つことで、「辛い」を打開する

「仕事が辛い」と感じたときの有効な対処法は、人と話すことです。一人で悩んでもなかなか解決できません。少なくとも1週間たっても自分ではどうしたらいいかわからないことは、人に聞くか教えてもらうことが大切です。

例えば先輩からネチネチ注意されることが辛いのだとしても、自分だけがそうした対応をされているのか、誰に対してもそうなのか、聞いてみなければわかりません。上司や他の先輩、同僚に相談してみましょう。人に話すことで多くの「仕事が辛い」悩みは改善していきます。

真面目な人ほど一人で解決することや我慢することが正しいと思いがちですが、それは違います。人に相談する勇気を持ちましょう。人に聞くことで仕事ができるようになれば、会社の貢献にも繋がります。人の力を借りることが迷惑だなどと臆せず、相談したり聞いたりしてください。

心のモヤモヤを自分の中にだけとどめていることは、大きなストレスになります。言葉にするだけでもストレスは抜けていきますし、言語化しアウトプットすることで、他の人と共有できるし共感も生まれます。すると一人で抱えていた「辛い」が、軽くなり安心や癒やしに変わるのです。

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対処法3:「昨日よりできた」で、前に進めない辛さを脱出

仕事が辛い理由の一つには、前に進めない閉塞感や停滞感を打開できないことが挙げられます。ビジネスシーンでの課題や悩みに対する対処法は、書籍やインターネット上で広く紹介されています。そうした情報を活用して、業務上の停滞となっている原因を改善していきましょう。一歩でも前に進むことで気持ちが楽になるからです。

例えば上司から「報告が遅い」と言われ、逐一報告したら「自分で判断できないのか」と叱責されたことに対し、「なぜ?」と一人で悶々としているだけでは、前に進めません。その力になってくれるのは読書です。本に書かれていることの全てが正解ではないとしても、読む本の数を増やして情報をインプットしていけば、考え方の基準や仕事を進める上での指針が次第にできていきます。

昨日できなかったことが今日できるようになったら、そこには自己成長があり、小さなことでも毎日の仕事の中に成長できる要素はきっとあります。ぜひ、小さな気づきや発見を見つけましょう。小さい「できる」でも、積み上げていくと「辛い」を脱却することができ、仕事は楽しくなっていくはずです。

「仕事が辛い」から脱出したいときに役立つお勧め書籍

最後に、仕事が辛いと悩む若手社会人の方に、よくお勧めしている書籍をご紹介します。仕事で困ったときや、「できる」をもっと積み上げたいときにぜひ役立ててください。

●『あなたが上司から求められているシンプルな50のこと』(濱田秀彦著)

信頼され、仕事を任されるようになるための「報連相」や、上司の信頼を得て、高く評価されるための「仕事力」などについて、「上司が求める視点」から書かれた書籍です。あなたが「良かれ」と思ってやっていることは、実は上司は全く求めていなかったと気付くはずです。本書のポイントをおさえれば、上司から評価される仕事ができるようなるはずです。

●『AI分析でわかった トップ5%社員の習慣』(越川 慎司著)

著者のパートナー企業で成績がトップ5%の社員の行動や習慣を調査し見つけた共通点や95%の一般社員との違いから分析した効果的な時間術を紹介しています。自分のやり方に固執するよりも、「うまくやっている人」の習慣を取り入れた方が、効率的に仕事ができるはずです。

●『ストレスフリー超大全』(樺沢紫苑著)

私の著書ですが、人間関係、仕事、プライベート、体調、メンタルなどの悩みに対して、エビデンス(科学的データ)に基づくノウハウを解説し、今できること、すべきこと(ToDo)を明確に紹介しています。「仕事が楽しくない」を乗り越える方法や、「仕事が覚えられない」対処法も解説しているので、ぜひ参考にしてください。

樺沢紫苑(かばさわ しおん)氏_プロフィール画像

精神科医、作家、映画評論家 樺沢紫苑(かばさわ しおん)氏

1965年、札幌生まれ。1991年、札幌医科大学医学部卒。札幌医大神経精神医学講座に入局。大学病院、総合病院、単科精神病院など北海道内の8病院に勤務する。2004年から米国シカゴのイリノイ大学にてうつ病、自殺について研究。帰国後、東京にて樺沢心理学研究所を設立。 精神医学の知識、情報の普及によるメンタル疾患の予防を目的に、YouTube、Facebook、メールマガジン、Twitterなどを通じて累計約80万人に、精神医学、心理学、脳科学の知識、情報をわかりやすく発信している。著書に『アウトプット大全』(サンクチュアリ出版)など41冊。近著に『言語化の魔力』(幻冬舎)がある。

WRITING:中城邦子 EDIT:馬場美由紀

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