人間関係で仕事をやめたいと思っているときに試したい対処法

どんな環境にいても尽きないのが人間関係の悩みです。とくに職場では、苦手な人・合わない人ともコミュニケーションを取らざるを得ない状況にストレスを感じる人も多いのでは。人間関係がうまくいかないときの対処法を、人事・採用コンサルタントとして多くのビジネスパーソンと向き合ってきた曽和利光さんに伺いました。

仕事をしながら考え込む女性社会人
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「人間関係」の悩みは、「誤解」から生まれる

仕事の悩みのトップを占めるのが「人間関係」です。

職場はプライベートの人間関係とは異なり、気の合う人とも合わない人とも、何とか一緒にやっていかなければいけないもの。「今の上司が嫌だ!」と異動や転職などで環境を変えたとしても、次の上司と合うとは限りません。

そこで、まずは今の環境で、人間関係の改善のためにできるアクションを考えていきましょう。

これまで、人事・採用コンサルタントとして多くの企業の「人間関係の悩み」に向き合ってきました。そこで感じているのは、人間関係の悩みの多くは「誤解」から生まれる、ということです。

テレビドラマや小説などで“お仕事もの”の作品を見ていても、最初は意地悪な同僚や先輩、上司が出てきます。しかし、「実は人知れずこんな思いを抱えていた」「実は誰よりもチームのために動いていた」などの背景が描かれ、最終的に“いい人”として描かれる(主人公と和解する)ケースが見られます。

例えば上司と部下の関係で、部下側は「あの上司は自分にだけ厳しい」「成果を出したのに認めてくれない」と不満や不信感を抱いているとしましょう。

しかし、上司側から見ると、「あいつなら、高いハードルを課したほうが成長できる!」「今の成果で満足してもらいたくない」と、期待感や愛情ゆえの厳しさであるかもしれません。

相手の意図を誤解し、ネガティブに解釈したままでは、「あの上司はひどい」という評価が増大していきます。

もし、上司が更なる期待感から「君に大きなプロジェクトを任せたい」と言ってきたとしても、「できないとわかっているのに、また目標を課してきた」などとマイナスに捉える悪循環が続いてしまうのです。

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人間関係の誤解を解く対処法

「誤解」の可能性があるのなら、解くためのアクションを起こしてみましょう。

人間関係を理由に仕事をやめたり異動したりしても、次の職場環境で同じ悩みに直面するかもしれません。今の環境で“対処法”を身につけておいて損はありません。

【対処法1】周囲に“人物像”をヒアリング

「気の合わない先輩」「嫌な上司」などで悩んでいるのなら、まずは、その人の人物評価を周りに聞いてみましょう

「あの上司との関係に悩んでいる。あなたにとってはどう見えているか」と、人事担当者、他の部署のマネージャー層、その先輩や上司の上司に当たる人に質問をぶつけてみるのです。

縦・横・ナナメさまざまな関係の人に話を聞けると、自分と同じような意見から、正反対の見方まで、相手のことを複層的にとらえるヒントが出てくるかもしれません。

「分かるなぁ。彼は他人に厳しくてきついよな」と賛同する人もいるでしょうし、「あの人は昔からすごく面倒見がよかったんだよ」「チームが低迷していたときは、落ち込んで目も当てられなかった」といった良い面や弱さを知るエピソードに出合えることもあるでしょう。

相手に対するそうした第三者の評価を知ることで、自分の評価が相対化され、注目していなかった側面に目が向くことがあります。

「組織のために嫌われ役を買って出る“偽悪者”であるかもしれない」。例えばそんな見え方に触れることで、関係を修繕していくモチベーションにつながっていきます。

【対処法2】相互理解の場を作る

次におすすめするのは、お互いのことを知る場・時間を設けることです。

苦手で嫌だ…と避けるばかりではなく、自分から「悩みを相談したい」と、面談など一対一で対話できる場を作ってもらうよう提案。そこで、自己開示から始めてみるのです。

相手の心を開き、考えや価値観を理解するには、まずは自分から考えや価値観をオープンすることが大切です。すると、相手もそのペースに合わせ、「実は、私もこう考えている」と話してくれるようになります。

話す内容は、「今の会社に入った理由」「今の仕事を選んだ思い」など、自分のライフストーリーに紐づいたものがいいでしょう。

「今はまだまだ業績面でご迷惑をおかけしていますが、この会社を選んだときは**を実現したいと思っていたんです」

「もともと、家族が**の仕事をしていて、自分もそんな風になりたいなと思って、この仕事を目指したんです」

などと話をすると、同じテーマで相手も自己開示をしてくれるようになり、仕事への思いの理解が深まります。

理解が深まれば、行動への解釈が変わる

上記のように理解が深まることが、なぜ人間関係の改善につながるのでしょう。

相互理解ができても、相手の行動は、基本的には変わりません。でも、それに対する自分の捉え方が変われば、許容範囲が広がっていく可能性があります。「あの人なら仕方ない」と思えるかどうかで、人間関係の悩みは小さくなっていくかもしれないのです。

例えば、友人の中に「毎回、遅刻する人」「メールやLINEなどのレスポンスが悪い人」がいたとします。相手のことをよく知らなければ、「私のことを軽んじている」と考え、相手を責める気持ちが生まれます。

しかし、相手の行動特性を知っていれば「きちんと動くのが苦手なだけで、悪気はない」と解釈でき、ストレスがたまりません。

職場の人間関係でも同じです。嫌だと思っていた上司や先輩でも、相手をよく知れば、「他人に厳しく言うのは、こういう考えの人だから」と捉えられるようになる。「自分だけが攻撃されている」という悪循環も解消されていくでしょう。

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理解できてもやっぱり苦手!人間関係の解決策が見つからないときは

とはいえ、「相手の特性や考えは分かったけれど、苦手なものは変わらない」と思うのも自然なことです。

そんなときには、人事や上司、さらにその上の部門長などに相談しながら、次の対処法も検討してみましょう。

クッション材となる人に入ってもらう

苦手な上司がいるならば、相手と自分との間に、双方とうまくやれるに先輩に入ってもらう。そんなやり方も一つの対処法です。

合わない関係性の例に、「目標達成への執着心が強い上司と、いろんな物事に関心を持つ拡散タイプの部下」があります。

上司からすれば、「飽き性で腰が据わらない、目標達成意欲の低い人」と映りますし、部下からすれば「一つのことにとらわれた、頭の固い強引な人」と映ります。直接やりとりすると、相手へのネガティブな解釈がどんどん膨れ上がっていきます。

そこに、どちらともぶつからない受容的な先輩を間に入れ、レポートラインにクッション材を入れると、双方のストレスは大きく軽減されます。

チーム編成を動かすことになるので、人事や上司の協力が必要になりますが、「あの先輩なら自分とも相手とも、和やかにコミュケーションを取っている」と思う人を見つけ、「間に入ってほしい」と相談しておくのもいいかもしれません。

オフィス内で物理的距離をとる

苦手な人とは物理的な距離をとり、「できるだけ視界に入らないようにする」「最低限のコミュケーションで済むようにする」工夫も大切です。人事や組織のトップに相談しながら、レイアウト変更(デスクの配置換え)をお願いするのも一つの方法でしょう。

「あの人が嫌だから席替えして」というのはわがままな要望だと思うかもしれませんが、組織内の人間関係を円滑にし、業務効率を上げるのは会社の役割。環境を少しでも変えて、仕事への集中力が高まるのなら、会社側にとっても対応したい事態のはずです。まずは相談してみてはいかがでしょうか。

人間関係トラブル解決法が社会人としての大事な力にも

人間関係の悩みに向き合うのは、大変なパワーが必要です。「逃げた方がラク」と転職を考えたくなる方もいると思います。ただ、どこに行っても、自分にとって完璧な、一切の悩みのない人間関係はありません。

転職をする行動力があるのなら、まずは今の環境で、人間関係改善のアクションを起こしてみては。自分なりのストレス軽減ノウハウを持っておくことは、これからの長い社会人生活を送る上で、大事な力になると思います。

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曽和利光さん曽和利光さん

株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャー等を経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)など著書多数。最新刊『人材の適切な見極めと獲得を成功させる採用面接100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)も話題に。

取材・文:田中瑠子
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