離職票とは?発行手続きや退職証明書との違いを解説

会社を退職後、失業手当を受給するために必要となるのが「離職票」です。離職票の発行手続き、「離職証明書」や「退職証明書」といった類似書類との違い、記載する内容など、離職票にまつわるさまざまな疑問について、社労士 岡佳伸さん監修のもと解説します。

離職票イメージ画像
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離職票とは

離職票(雇用保険被保険者離職票)は、ハローワークから発行される書類です。
次の2種類があります。

  • 雇用保険被保険者離職票-1

雇用保険の資格喪失を通知するもの

  • 雇用保険被保険者離職票-2

離職前の賃金の支払い状況と離職理由が記載されたもの

離職票が必要なのはどんなとき?

離職票は、これまで勤務した会社を退職する際、雇用保険の基本手当(失業手当)を申請する際に使用します。退職後、すぐに次の会社に入社する場合、あるいは雇用保険の基本手当を受給しない場合には必要ありません。

離職票の発行手続きはどうすればいい?

離職票の発行手続きは、会社側で行います。会社は従業員が退職すると「離職証明書」を作成し、管轄のハローワークに届け出ます。ハローワークが確認後、離職票が会社へ送付され、会社から退職者に送付します。

退職後に雇用保険の基本手当を受給する予定であれば、念のため会社に離職票が必要である旨を伝えておくといいでしょう。

離職票と退職証明書との違いは?

退職証明書は、会社が退職者に対し、退職した事実を証明するために発行する書類を指します。離職票は様式が決まっているのに対し、退職証明書の内容やテンプレートは会社によって異なります。

退職証明書は、転職先あるいは応募先企業から提出を求められることがあります。また、国民健康保険への切り替えや国民年金の加入手続きなどの際、離職票がない場合の代替で使われることもあります。必要となった場合、退職した会社に発行を依頼しましょう。

退職証明書は、労働基準法第22条により、会社に発行義務が定められているものです。会社は従業員から退職証明書発行の申請を受けた場合、拒むことはできません。なお、退職証明書の発行義務は退職から2年以内とされています。

離職票と離職証明書との違いは?

離職証明書の正式名称は、「雇用保険被保険者離職証明書」です。これは、会社が離職票を発行するにあたり、ハローワークに提出する申請書類です。

手書きの場合は3枚の複写式になっており、1枚目に必要事項を記入してハローワークに提出すると、確認後に戻ってきた書類の3枚目を「離職票-2」として使用できます。

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離職票の書き方とチェックポイント

離職票は基本的に会社側が項目を記載しますので、自分で記入する項目は一部のみです。「離職票-1」「離職票-2」それぞれについて、ポイントをご紹介します。

「雇用保険被保険者離職票―1」とは

雇用保険被保険者離職票―1画像
出典:ハローワーク

「離職票-1」の書き方とチェックポイント

「雇用保険離職票-1 資格喪失確認通知書」は、雇用保険の資格を喪失したことを被保険者(退職者)に通知する書類です。雇用保険被保険者番号、資格取得年月日、離職年月日、氏名、性別、生年月日、喪失原因、事業所番号、事業所名称などが記載されています。

「喪失原因」とは、3が「事業主都合による離職」、2が「それ以外の離職(自己都合等)」です。

  • 個人番号(マイナンバー)

個人番号(マイナンバー)については自分自身で記入します。

  • 求職者給付等払渡希望金融機関指定届

「求職者給付等払渡希望金融機関指定届」の欄には、基本手当の振込を希望する金融機関名を記入します。

金融機関確認印の欄もありますが、通帳やキャッシュカードを持参する場合は空白でも手続きが可能です。過去に雇用保険の給付を受けたことがあり、振込先金融機関に変更がない場合、記載は不要です。

「離職票-2」の書き方とチェックポイント

「雇用保険被保険者離職票-2」は、離職票-1とセットで発行されます。手書きの場合はA3の複写用紙で、離職証明書(事業主控)、離職証明書(安定所提出用)、離職票-2がセットになっています。

ハローワークの確認後、離職票-2に公共職業安定所長の印が押され、会社に交付されます。電子申請で発行された離職票はPDF形式です。

「雇用保険被保険者離職票―2」とは

雇用保険被保険者離職票―2画像
出典:ハローワーク

●離職理由

左側の「離職理由」の離職者記入欄に記載します。自己都合による退職で、事業主との認識に相違がなければ、「具体的事情記載欄(離職者用)」の欄に「同上」、「事業主が〇を付けた離職理由に異議」の欄で「無し」を選択し、左下の署名欄に署名・押印します。

右側の「離職区分」の欄は、ハローワークにより判定された離職理由コードです。

●離職理由コード

1A:解雇(1B及び5Eに該当するものを除く)
1B:天災その他やむを得ない理由により事業の継続が不可能になったことで解雇
2A:雇止めによる離職(雇用期間3年以上雇止め通知あり)(特定受給資格者)
2B:雇止めによる離職(雇用期間3年未満等更新明示あり)(特定受給資格者)
2C:特定理由の契約期間満了による離職(雇用期間3年未満等更新明示なし)
2D:契約期間満了による退職(2A、2B又は2Cに該当するものを除く)
2E:定年、移籍出向
3A:事業主からの働きかけによる正当理由のある自己都合退職(特定受給資格者)
3B:事業所移転に伴う正当理由のある自己都合退職(特定受給資格者)
3C:正当な理由のある自己都合退職(3A、3B又は3Dに該当するものを除く)
3D:特定の正当な理由のある自己都合退職(被保険者期間6月以上12月未満)
4D:正当な理由のない自己都合退職
4D:正当な理由のない自己都合退職(給付制限一か月)
5E:被保険者の責めに帰すべき重大な理由による解雇(懲戒解雇)となります

●具体的事情記載欄(事業主用)

「具体的事情記載欄(事業主用)」には、会社側が把握している離職理由が記載されます。「自己都合」「契約期間満了」「解雇」といったものです。

会社が記載した内容が事実と異なっている場合、例えば、会社都合退職であるにも関わらず「自己都合」と書かれていたら、会社の記載と異なる理由を書くことで、異議があることを表明できます。また、ハローワークに相談すると、ハローワーク側で調査が行われます。

●離職日以前の賃金支払状況等

左側に「離職日以前の賃金支払状況等」欄があります。「(8)被保険者期間算定対象期間」は、離職日からさかのぼって被保険者であった期間を1カ月ごとに区切り、記載されています。

月ごとに「労働した日数が11日以上ある期間」を被保険者期間1カ月として計算。この期間が、離職日以前の2年間に12カ月(特定理由離職者や特定受給資格者の場合は、離職の日以前1年間に6カ月)あれば、雇用保険の受給資格を得られます。

この2年間、病気・出産・育児などで働けなかった期間がある場合、その期間を加えて最大被保険者算定退職期間を4年間で計算することができます。

●賃金支払対象期間

「(10)賃金支払対象期間」とは、離職日から賃金の締日ごとに区切って記載されます。その期間の賃金の支払いの基礎となった日数を(11)欄に記載。⑫欄には賃金額が記載されます(A欄は月給や月ごとに支払いがきまっているもの、B欄は日給や時間給を記載)。

賃金額はその月に実際に支払われた額ではなく、その月の労働による額が記載されます(諸手当も含む)。雇用保険の基本手当日額は、賃金額をもとに離職した日からさかのぼって、賃金支払基礎日数が11日以上ある月の6カ月間の平均額により算出されます。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

離職票が会社から届かない場合は?

会社は、退職者が被保険者資格を喪失した翌日から10日以内に離職証明書を提出する必要があります。退職して10日以上経っても離職票が届かない場合、手続きが行われたかどうか会社に確認してみましょう。

会社の手続きが遅れる場合、ハローワークに身分証明書や退職証明書などを持参し、雇用保険の加入歴を調べてもらう方法もあります。受給資格があれば仮決定を受けられ、後日、離職票が届いたら本決定となります。

会社から離職票が交付されないときは、会社を管轄するハローワークに申立てをして離職票の交付請求を行うことにより、会社に督促してもらうことも可能です。

離職票をなくしたらどうする?

現在、電子申請で発行されている離職票はPDFで作成されているため、再印刷が可能です。離職票を紛失した場合は会社に相談し、メールや郵送で送付してもらえるかどうか確認してみましょう。

ハローワークに再交付の申請書を提出し、再発行してもらう方法もあります。「雇用保険被保険者離職票再交付申請書」に必要事項を記載の上、本人確認ができる書類(運転免許証・住民票など)のコピーを添付して郵送、または窓口で申請してください。

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社会保険労務士法人 岡佳伸事務所 岡佳伸氏社会保険労務士法人 岡 佳伸事務所 岡 佳伸氏

大手人材派遣会社、自動車部品メーカーなどで人事労務を担当した後に、労働局職員(ハローワーク勤務・厚生労働事務官)としてキャリア支援や雇用保険給付業務、助成金関連業務に携わる。現在は開業社会保険労務士として活躍。各種講演会講師および記事執筆、TV出演などの実績多数。特定社会保険労務士、キャリアコンサルタント、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。

取材・文:青木典子 編集:馬場美由紀
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