雇用保険とは?在職中でももらえる給付金も紹介【社労士監修】

「雇用保険」とは労働に関する保険の一つで、雇用に関するさまざまな支援を行う保険制度のこと。失業した時にもらえる「失業手当」のイメージが強いと思いますが、実は雇用保険の保険給付にはさまざまな種類があり、在職中であっても受け取れるものもあるのです。
この記事では、雇用保険の概要と、在職中でももらえる給付金の種類について解説します。雇用保険の内容を理解して、在職中でも上手に活用しましょう。

雇用保険_教育訓練給付のイメージカット
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記事監修

社会保険労務士法人 岡 佳伸事務所
岡 佳伸氏

大手人材派遣会社、自動車部品メーカーなどで人事労務を担当した後に、労働局職員(ハローワーク勤務・厚生労働事務官)としてキャリア支援や雇用保険給付業務、助成金関連業務に携わる。現在は開業社会保険労務士として活躍。各種講演会講師および記事執筆、TV出演などの実績多数。特定社会保険労務士、キャリアコンサルタント、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。

「雇用保険」とは失業や雇用継続、キャリアアップに関する保険制度

「雇用保険」とは、失業した人や教育訓練を受ける人に対して必要な給付を行うことで、労働者の生活の安定、失業防止、雇用機会の増大、能力開発などを図ることを目的にした保険制度のこと。労働者を雇用する法人や個人事業主には原則強制適用される、政府管掌の強制保険制度です。

雇用保険といえば「失業保険」のイメージが強く、「失業したときにサポートしてくれるもの」という印象を持っている人が多いかもしれませんが、実は雇用保険にはさまざまな種類があり、育児休業や介護休業中の給付金や大学院や専門学校に通う際の給付金など、いま転職・退職の予定がないで人ももらえる給付金があります。この機会にぜひ知っておきましょう。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

在職中にもらえる雇用保険とは?

在職中にもらうことができる雇用保険には、大きくわけて「教育訓練給付」「育児休業給付」「雇用継続給付」の3つがあります。

スキルアップが目指せる「教育訓練給付」

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労働者の主体的なスキルアップを支援するため、厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した際に、受講費用の一部が支給されるというもの。給付条件は、受講開始日時点で雇用保険加入期間が1年以上あること(専門実践教育訓練を受講する場合は2年以上)。なお、以前教育訓練給付を利用したことがある場合は、前回利用開始日から雇用保険加入期間が3年以上あることが条件になります。

対象となる教育訓練は約1万4000講座。オンラインで受講できる講座や、夜間や土日に受講できる講座もあるので働きながらでも受講が可能です。

教育訓練は「専門実践教育訓練」「特定一般教育訓練」「一般教育訓練」の3つにわかれていて、それぞれ給付率が異なります。
「専門実践教育訓練」「特定一般教育訓練」の給付金を受給するには受講開始日の1カ月前までに申請手続きを行い、受講開始前に訓練対応キャリアコンサルタントによる「訓練前キャリアコンサルティング」を受ける必要があります。

専門実践教育訓練

主に労働者の中長期的なキャリア形成につながる教育訓練が対象。厚生労働省指定の専門実践教育訓練を受講した場合、受講費用の50%(年間上限40万円)が訓練受講中6カ月ごとに支給されます。
なお、失業者がこの訓練を受講して目標とする資格を取得し、かつ訓練修了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合は、追加で受講費用の20%(年間上限16万円)が支給されます。

例えば、次のような講座が対象となります。専門的かつ実践的で、長期間にわたる教育訓練が多いのが特徴です。

  • 業務独占資格などの取得を目標とする講座
    介護福祉士、社会福祉士、看護師、美容師、歯科衛生士、保育士、調理師など
  • デジタル関係の講座
    ITSS(ITスキル標準)レベル3以上のIT関係資格取得講座、第四次産業革命スキル習得講座(経済産業大臣認定)
  • 大学院・大学などの課程
    専門職大学院の課程(MBA、法科大学院、教職大学院など)、職業実践力育成プログラム(文部科学大臣認定)など
  • 専門学校の課程
    職業実践専門課程(文部科学大臣認定)、キャリア形成促進プログラム(文部科学大臣認定)

特定一般教育訓練給付金

主に、労働者の速やかな再就職及び早期のキャリア形成に資する教育訓練が対象となり、受講費用の40%(上限20万円)が訓練修了後に支給されます。

例えば、次のような講座が対象となります。就職・転職で求められる資格に関する講座が多いのが特徴です。

  • 業務独占資格などの取得を目標とする講座
    介護職員初任者研修、大型自動車第一種・第二種免許、税理士など
  • デジタル関係の講座
    ITSSレベル2以上のIT関係資格取得講座など

一般教育訓練給付金

上記以外の雇用の安定・就職の促進に資する教育訓練が対象となり、受講費用の20%(上限10万円)が訓練修了後に支給されます。

例えば、次のような講座が対象となります。仕事に活かせる資格や検定、そして社会人大学院などにも適用され、活用範囲が広いのが特徴です。

  • 資格の取得を目標とする講座
    英語検定、簿記検定、ITパスポートなど
  • 大学院などの課程
    修士・博士の学位などの取得を目標とする課程

教育訓練給付に関してより詳しい内容を知りたい場合は、以下のページをご確認ください。

厚生労働省「教育訓練給付制度のご案内」

介護で休業する際の助けになる「雇用継続給付」

雇用継続給付とは、高年齢者、介護休業者の職業生活の円滑な継続を援助、促進することを目的とした制度。「介護休業給付」「高年齢雇用継続給付」の2つがあります。

「介護休業給付」は家族の介護のために休業する必要のある人に給付されるもので、一定の要件を満たした場合に休業前の給与の67%が支給されます。
受給できる期間は介護の対象となる家族1人につき93日間ですが、この範囲内であれば最大3回まで受給可能です。

「高年齢雇用継続給付」は、高年齢者の就業意欲を維持、喚起し、65歳までの雇用継続を援助・促進することを目的に給付されるもの。60歳到達時点に比べて賃金が75%未満に低下した状態で働き続ける60歳以上65歳未満の一定の一般被保険者が支給対象となります。

雇用継続給付に関してより詳しい内容を知りたい場合は、以下のページをご確認ください。

ハローワーク「雇用継続給付」

育児による休業期間をサポートする「育児休業給付」

「育児休業給付」は、育児休業中に給与が支給されない場合に給付されるもので、一定の要件を満たした場合に最初の6カ月は休業前の給与の67%、6カ月経過後は50%が「育児休業給付金」として支給されます。

受給できる期間は子どもが1歳になるまで(パパママ育休プラス制度を利用する場合は1歳2カ月)1年間ですが、保育園に入れないなどの事情がある際は、最長2歳まで延長できます。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

退職したらお世話になる「失業保険」についても知っておこう

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雇用保険の中で最も馴染みがあり、利用者も多いのが「失業保険」。失業した人や勤務先を自己都合で退職した人に対して、一定の条件を満たした場合に失業保険(基本手当)が支給されます。

失業中の生活を心配することなく新しい仕事を探し、1日も早く再就職するための「支援」として支給されるものであり、すでに転職先が決まっている人や再就職する意思のない人は受給できません。

失業保険を受給するには、自己都合による退職の場合は12カ月以上、会社都合による退職の場合は6カ月以上の雇用保険被保険者期間が必要です。

給付額の目安は、退職前6カ月の給与の総支給額の合計×給付率。給付率は退職時の時の年齢、賃金によって異なりますが、45%~80%となります。手当を受けられる日数は、離職美の年齢や雇用保険被保険者期間、離職理由などによって異なり、最低90日~最高360日の間で設定されています。

失業保険に関する詳しい情報は、以下の記事を参考にしてください。

関連記事:退職前に知っておきたい失業保険の基礎知識

失業中も在職中も支えになる雇用保険を、上手に活用しよう

このように、失業中だけでなく在職中も活用できる雇用保険。「在職中ももらえる雇用保険があるなんて知らなかった…」という方が多かったのではないでしょうか?

特に教育訓練給付金については勤務先が教えてくれるものではなく、自分自身で調べて申請する必要があります。資格取得などはもちろん、社会人大学院やビジネススクールなどでの学び直しも対象になるケースがありますので、スキルアップや資格取得を目指す際には、もらい損ねがないように支給の対象になるかどうか確認しましょう。

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EDIT&WRITING:伊藤理子
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