錯綜する現代社会の“情報戦”を生き抜くには?ーー『マネーの拳』に学ぶビジネス格言

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。今回は、三田紀房先生の『マネーの拳』をご紹介します。

『マネーの拳』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

ここでは、私がオススメする名作マンガの一コマを取り上げます。これによって名作の理解を深め、明日のビジネスに生かしていただくことが目的です。マンガを読むことによって気分転換をはかりながら、同時にビジネスセンスも磨くことができる。名作マンガは、まさに一石二鳥のスグレモノなのです。

©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「社長はオレたちをどうするつもりなの?」

(『マネーの拳』第8巻 Round.67より)

地元・秋田の高校を中退した花岡拳(はなおかけん)は、友だちの木村ノブオとともに上京。花岡は、偶然始めたボクシングによって才能が開花し、世界チャンピオンにまで上り詰めます。

その後、ボクシングを引退した花岡は、タレント活動をしながら居酒屋を開業しますが、経営は思うようにいきません。そんな時に知り合ったのが、通信教育業界の成功者・塚原為之介会長でした。花岡は会長の教えを受けながら、ビジネスの世界でも頂点を目指すべく、新しいビジネスをスタートさせますが…。

情報に翻弄される者の運命

Tシャツ専門店のビジネスを展開し、大成功を収めた花岡。株式上場を果たすものの、それは同時に、常に外敵から狙われることをも意味します。特に、花岡の追い落としを狙うライバル・一橋商事の井川は、この機にM&A(合併・買収)を仕掛けて、花岡の会社を買収しようと企みます。井川が目をつけたのは、会社の変化についていけず、動揺している幹部たちでした。

社内での影響力の低下に焦りを感じていた、創業メンバーの大林・菅原・八重子の3人は、井川の口車に乗せられ、協力することに同意してしまいます。一方、その動きを察知した花岡は、大林を買収防衛対策室の責任者に任命。証券アドバイザーの牧とともに、会社の防衛策について検討します。

逆スパイに仕立て上げられた大林は、花岡が自分をどうするつもりなのか、恐怖に駆られます。耐えきれなくなった大林は、1人で牧のもとを訪れ、真意を問い正します。牧は、「花岡社長の動きが読めない。普通では考えられない行動だ」と言うのでした。

会社の内外では、常に情報戦が行われている

『マネーの拳』の第8巻では、M&Aを成功させようとする井川と、それを阻止しようとする花岡の間で、激しい情報戦が繰り広げられます。上に添付したマンガのコマをご覧いただくと、幹部の大林が、証券アドバイザーの牧に社長の胸の内を訊ねています。大林が、自分が裏切った社長側の人間と思われる牧から真実を聞き出そうとしているところに、深い意味があります。

以前、『マネーの拳』の作者である三田紀房(のりふさ)先生と対談した際に、先生が「情報収集は、他人に聞くのがもっとも手っ取り早い方法です」とおっしゃっていたのが印象に残っています。つまり、情報を探し回ることが情報収集ではない、ということです。情報収集とは、「誰に」「何を聞くのか?」ということが、何よりも大切です。大林は、社長の情報を得るのに、もっとも相応しい人物を選んでいたことになります。

実際、現実の世界でも、会社内外のあちこちで、情報操作が頻繁に行われています。例えば、秘密が他部署に漏れないように遮断したり、自部署の社員を他所へ偵察に行かせたり。現場が「良くない情報が上にいかないよう隠ぺいする」、などといった話もよく聞きます。

©三田紀房/コルク

あなたも会社の管理対象になっている?

情報とは、人を介して伝わる以上、会社側からしてみれば「社員の言動にも、ある程度の注意が必要」、ということになります。ですから、例えば会社の名前の入ったドメインを貸与されている方は、メールの内容を会社によってチェックされている、と認識しておくべきです。当然、会社のパソコンでの閲覧履歴などもチェックの対象に含まれることも。

私の経験をお話しますと、以前、サラリーマン時代に立ち上げた会社に、しばらくすると本社から常勤役員が派遣されることになりました。俗に言う天下りです。私がゼロから創業した社内ベンチャーは9年間で14億円企業にまで成長し、連結決算の対象にまでなっていました。親会社としては、会社の規模的に無視できない大きさにまで育っていたにも関わらず、自分たちの息が全くかかっていないことを懸念したのでしょう。

周りに流されないことが大切

ほかの役員は名ばかりの非常勤で、実質的には私が一人で経営していました。もともと本社はメーカーで、流通について知っている者もいなかったために、手を出しにくかったのもあるのでしょう。当初は放っておいたらそのうち消える事業として見られていたため、まさかそこまでの大所帯になるとは思っていなかったということもあると思います。しかし、その役員がやってくるころには、私は独立する腹を固めていたため、タイミングとしては申し分ないものでした。このエピソードも広義で言えば子会社の内情を知るための活動です。

最後に万一、読者の方が会社の内紛や情報合戦に巻き込まれないためには、どうしたらいいのかをお伝えしておきたいと思います。それは「自分が本来、やるべきことをやっていれば、恐れることはない」、ということです。結局のところ、「巻き込まれてもかまわない」ということ以上の防御策はないのですから。

俣野成敏(またの・なるとし)
30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン()』及び『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?()』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」()』を上梓。著作累計は38万部。2012年に独立、フランチャイズ2業態5店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、『日本IFP協会公認マネースクール(IMS)』を共催。ビジネス誌の掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』1位に2年連続で選出されている。一般社団法人日本IFP協会金融教育研究室顧問。

俣野成敏 公式サイト(

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