自分の評価を決めるのは「一時的な成功」ではないーー『マネーの拳』に学ぶビジネス格言

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。今回は、三田紀房先生の『マネーの拳』をご紹介します。

『マネーの拳』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

ここでは、私がオススメする名作マンガの一コマを取り上げます。これによって名作の理解を深め、明日のビジネスに生かしていただくことが目的です。マンガを読むことによって気分転換をはかりながら、同時にビジネスセンスも磨くことができる。名作マンガは、まさに一石二鳥のスグレモノなのです。

©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「価値とは一度変動すると、どうにでも変化するんだ」

(『マネーの拳』第7巻 Round.62より)

地元・秋田の高校を中退した花岡拳(はなおかけん)は、友だちの木村ノブオとともに上京。花岡は、偶然始めたボクシングによって才能が開花し、世界チャンピオンにまで上り詰めます。

その後、ボクシングを引退した花岡は、タレント活動をしながら居酒屋を開業しますが、経営は思うようにいきません。そんな時に知り合ったのが、通信教育業界の成功者・塚原為之介会長でした。花岡は会長の教えを受けながら、ビジネスの世界でも頂点を目指すべく、新しいビジネスをスタートさせますが…。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

「もし、大手が金にモノを言わせて強引に攻めてきたらどうする?」

Tシャツ専門店のビジネスで成功し、株式上場も果たした花岡。しかし、上場するということは、それだけ会社が世間から注目を浴びる、ということでもあります。花岡の会社の創業メンバーである大林・菅原・八重子は、会社が大きくなるに従って入ってくる、優秀な人材に危機感を募らせていました。

自己の存在意義を脅かされていると感じた幹部たちは、会社の買収を目論む花岡のライバル・井川の誘惑に負け、手を組むことを約束してしまいます。彼らは、井川の協力の下で“クーデター”を起こして、会社の主導権を握ろうと考えたのです。そんな状況を知ってか知らずか、1人でふらりと縫製工場に現れる花岡。鉢合わせした八重子は、動揺を隠せません。

何とかその場を取り繕おうと、八重子が花岡にこう聞きます。「上場すると、他社からM&A(合併・買収)を仕掛けられやすくなると聞く。もし、大手が金にモノを言わせて強引に攻めてきたらどうする?」と。すると、花岡は「資金が豊富にあるからといって、必ずしも買えるとは限らない」と言います。「要は、相手に『買うのは費用対効果的に見合わない』と思わせることが肝心だ」と話すのでした。

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価値を決めているのは“人間”

今回の話のキーワードは“価値”です。「自分の存在意義」「会社の買収」「費用対効果」等々、すべて価値が関係しています。もともと、価値とは人によって感じ方が違いますし、時期によっても上下します。例えば「10年前に発売された携帯電話を今、使いたい」と思う人はいないでしょう。けれどマニアにとっては、ぜひともコレクションに加えたい1品かもしれません。

 

発売当時は飛ぶように売れていた商品も、時間とともに世の中に行き渡り、相対的に価値が下がっていきます。このように、市場では需要と供給のバランスによっても価値が変わります。元来、モノやサービスを手に入れるための媒介に過すないはずのお金でさえ、日々、価値が変動しています。

 

もともと、お金自体に価値はありません。1万円札の製造原価は、20円ほどだと言われています。なのに、人々はお金そのものに価値があるかのように錯覚しています。つまり、お金に価値を与えているのは人間であり、万一、人々の間で国やお金に対する疑念が生じれば、一国の経済が崩壊しかねない危うさを孕んでいるわけです。

©三田紀房/コルク

一時的な評価ですべてが決まるわけではない

この話を私たちの仕事に活かすのであれば、「価値は常に変動している」、という点です。仕事で生み出された価値は、“評価”という形で還ってきます。しかし、たとえ仕事で一時的に良い評価が得られたとしても、そこで手を抜いてしまっては、いずれその評価は覆されてしまいます。

通常、会社での評価が一瞬で決まってしまうことなど、ほぼありえません。それにも関わらず、巷では一瞬を求める魔法のようなノウハウが氾濫しています。かけられる時間があれば、何も無謀なことはしなくても高確率で周りの評価を上げることは難しくありません。

会社の評価とはどのように決まるのかについて、私の事例をお話しましょう。私は現在、2業態5店舗を所有するビジネスオーナーですが、店長をトップマネジメントの一存で決めることはしません。まずは希望者に手を挙げさせ、スタッフ・幹部を含めた全員の投票によって決めています。立候補者はプレゼンテーションを行うものの、実はその前から、誰が店長になるのかはすでに決定しています。なぜかと言うと、仕事の評価とは、結局のところ「日頃の積み重ね」だからです。「プレゼンテーションは最終確認の場にすぎない」ということがわかっている人が選挙をパスできるのです。

ビジネスとは、あくまでも“継続”が前提

実際は、自分と一緒に日々、働いている人たちの総合評価で、あなたの価値は決まっています。あらゆるプレゼンは、自分を含めた全員を納得させるための儀式に過ぎません。セールスの場合は、顧客との日常のコミュニケーションや情報発信、ニーズの把握とそれに応じた商品の提案等が決定要素となるでしょう。

先ほど、「一時的な良い評価は続かない」と言いましたが、逆に言うと、1度下がってしまった評価も、後で挽回することはできる、ということです。長い時間をかけて蓄積されてきた評価は、簡単には覆らないとはいえ、それと同じくらいの時間をかければ、良い評価に変えることは十分可能なのです。

俣野成敏(またの・なるとし)
30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン()』及び『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?()』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」()』を上梓。著作累計は38万部。2012年に独立、フランチャイズ2業態5店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、『日本IFP協会公認マネースクール(IMS)』を共催。ビジネス誌の掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』1位に2年連続で選出されている。一般社団法人日本IFP協会金融教育研究室顧問。

俣野成敏 公式サイト(

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