女性だけが被害者にあらず!セクシャルハラスメント問題を皆で考えよう

“セクハラ”と聞くと、加害者は男性、被害者は女性、とイメージしてしまいがちです。しかし、ハラスメントの問題はさまざまな性別の組み合わせで起こっています。ハラスメント問題のない職場、ひいては社会にしていくためにも、「この問題に性別は関係ない」ということを皆で意識していく必要があります。

今回は、女性のキャリアに特化したコンサルティング事業を手掛ける川崎貴子さんに、主に「女性・同性からのセクシャルハラスメント」について語っていただきます。

多様な人々が集うミニチュア
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セクハラ問題に性別は関係なし

「セクシャルハラスメント」がどのような言動を指すのか、どんな問題があるのかについては、以前に比べてだいぶ認知されてきたように思います。

このセクハラ問題、過去に裁判になった事例やメディアでの報道・特集記事は珍しくないですし、SNS上でも問題提起の声が日々上げられるようになってきました。

企業によっては講習会を行ったり、相談窓口を設けたりと、「セクハラ、ダメ絶対!」という認識は、社会的に形成されてきたのではないかと感じております。

しかし、それはあくまでも「男性から女性へのセクハラ」に関して、です。

セクハラというと、つい「男性が加害者で女性が被害者」という印象を持ってしまいがちですが、性別に関係ないケースもあります。

女性が同僚の男性に性的なアプローチをすることを意味する「逆セクハラ」という俗語がすでにありますね。また、私のもとへは「職場にいる女性が私に対してセクハラ発言をするので困っている」という女性からの相談も増えています。

今回は、そのような事情もあり、注意喚起のために筆を取った次第です。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

女性が加害者になるケースも

「女性からのセクハラ?まさか!」
と、お思いになる方もいることでしょう。

ハラスメント問題など、直面しないに越したことはありません。当事者でない限りは、「(非力に思える)女性が男性に対して物理的・精神的に強い行動に出る」「女性が女性に関係を迫る」といった状況を想像しづらいのも、無理のないことです。

ただ、知っていただきたいのは、「セクハラの被害者は性別関係なく存在する」、そして「セクハラとは暴行や強引な誘いを繰り返す等のハードなものだけを指していうのでない」ということ。

職場において、仕事には無関係な、特に性的な言動や態度を繰り出され、それに対し不愉快な思いをする人がいれば、性別に関係なく、それはもう被害者であり、セクハラ案件なのです。

この「女性が加害者側のセクハラケース」があまり注目されていないのには理由があります。

前述したような「被害者は女性」という人々の思い込みが払拭されない原因でもありますが、「セクハラは男性からのケースばかりではない」という事実の周知がまだまだ不足しているのです。

現状では、例え上司にセクハラの相談をしたとしても、「ただのコミュニケーションのつもりで言ったのでは?」「本人は軽いジョークのつもりなのでは?」「その程度ではセクハラとはいえないのでは?」と、進言した人がまるで神経質扱いされてしまうことが少なくありません。

しかし、私に相談に来る人たちはそのようなケースでなくとも、セクハラがつらいので転職を考えるほど悩んでおり、職場に行くのが憂鬱だと口を揃えて言います。

そこで、女性自身もうっかり加害者にならないために、事例と解決方法を紹介します。「どんなことがセクハラになり得るのか」知っていただけると嬉しいです。もちろん、男性から女性へのセクハラ解決策としても同じ考え方ですので、どなたも参考になさってください。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

本人に直接伝えられないケースの解決策

《女性から男性へのセクハラ》
ある男性は特定の女性上司から人前でとにかく褒められ、露骨に「気に入られて」いることに悩んでいました。それだけなら同僚に冷やかされるだけで我慢もできたそうですが、困ったことに、物理的な距離感が近いのだそうです。自分だけ、指示を受ける度に肩が触れるほどに「密着」され、どうやって対処すべきなのかと。

このケースには、本人は自分に対する女性上司の態度に不快感を覚えるものの、部下という立場上、女性上司を傷つけないよう、波風を立てないよう、直接伝えることを我慢してしまう、という背景があります。それが見えない女性上司の方は「彼は嫌がらない、許されている」と勘違いしやすいのです。

彼は同僚に相談するも重く受け止めてはもらえず、「うらやましい」とだけ言われてしまったそうです。また、男性上司に言ったとて「男子がそんなこと気にするな」と言われるのがオチだと、あきらめてもいました。

彼のように、本人に直接伝えるのが難しく、身近に相談する相手もすぐには見つからない場合はどうしたらいいのでしょうか。

解決方法としては、信頼できる上層部の人間や人事部に「不快で、業務に支障が出ます」と速やかに相談できれば、それが理想です。

会社としてもこのような問題が起こっていることは望ましくないと判断し、解決に向かって動いてくれるはずです。

しかし、会社には相談できない、という状況ももちろん考えられます。

その場合は、ひとつの手段として、東京都にお住まいであれば東京都労働相談情報センターに無料で相談することができます。その他のエリアにお住まいの人も、各県に同様の機関がありますので、相談してみましょう。

【参考】労働相談│労働相談情報センター

【参考】東京都以外の労働相談コーナーはこちらから:総合労働相談コーナーの所在地

相手に悪気がないケースの解決策

例え相手が性的な対象ではなくても、性的で不快な言葉をかければそれはまごうことなき「セクハラ」であります。

《女性から女性へのセクハラ》
ある女性は、隣の席の同僚女性(既婚、子持ち)に「お尻、垂れ過ぎじゃない?」と体をじろじろ見ながら言われたり、「なんで結婚しないの?」とか「女は子どもを産んでなんぼだよ?」などと毎日のように不快に感じる言葉を聞かされたりします。そこで、意を決して上司に部署移動させてほしいと頼んだとか。しかし、「仲良いからだよ。女性同士ってそういう話するでしょ?」と流されたそうです。

確かに、プライベートの親友に言われたらそこまで不快ではないかもしれないけれど、あくまでも相手は職場の同僚です。そんなこと言われる筋合いはないとモヤるのも当然。それも毎日とあれば相当のストレスとなり、モチベーションが下がって当たり前ではないでしょうか。

その同僚女性に、もしかしたら悪気はないのかもしれません。上司が思っているように、彼女のことを仲良しだと思っていて、「仲の良い女友達には何でも言っていい」をデフォルトにしている可能性も高いです。

だとすると、たとえ上司から軽く注意してもらっても「無関係な人の意見」として取り合わず、態度を改めない恐れが大。ですので、思い切って本人と直接、一度きちんと話してみるのがいいでしょう。

「ごめんね。私は結婚や子どものこと、自分の体のこととか、職場で話題にされたくないの。〇〇さんの話を聞くのは好きだし、趣味の話とか世間話ならいいのだけど」

と、本心を伝えましょう。

本人は(彼女がそうと考える)常識の範疇でコミュニケーションを取っているだけ、という認識だからこそ、ストレートに言わないとわからないのです。

空気を読んだり、気を使ったりし過ぎて我慢を続けるのは決して美徳ではありません。「NO!」とはっきり伝えることも、ときには重要ですよ!

ハラスメントのない職場にするために

時代は変わり、今は「自分が大丈夫と思っていても、他人がそう感じるとは限らない」「誰かの言動で不快な思いをする人が我慢するような世の中であってはいけない」という考えが広まりつつあります。特に、若い世代の人たちがこの問題を真剣に考えてくれる姿をよく見ます。

私が彼らから学ぶことは、これからさらに多様性や配慮を求められるであろう社会において、古い価値観を捨て、現代に求められる感性をちゃんと磨き続けないと、良い職場は絶対に作れない、ということです。

「“みんなちがってみんないい”けど、だからこそお互いの気持ちに配慮しよう」

色々な人種、性別、セクシャリティ、宗教を持つ人々がそれぞれの価値観を持ち寄って、同じ目標に向かって頑張るために、私たちはもっと想像力を鍛え、デリカシーを持って職場に向かいたいものですね。

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プロフィール

川崎 貴子

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リントス(株)代表。「働く女性に成功と幸せを」を理念に、女性のキャリアに特化したコンサルティング事業を展開。
1972年生まれ、埼玉県出身。1997年、人材コンサルティング会社(株)ジョヤンテを設立。女性に特化した人材紹介業、教育事業、女性活用コンサルティング事業を手掛け、2017年3月に同社代表を退任。女性誌での執筆活動や講演多数。(株)ninoya取締役を兼任し、2016年11月、働く女性の結婚サイト「キャリ婚」を立ち上げる。婚活結社「魔女のサバト」主宰。女性の裏と表を知り尽くし、フォローしてきた女性は1万人以上。「女性マネージメントのプロ」「黒魔女」の異名を取る。2人の娘を持つワーキングマザーでもある。

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