お金の流れが見えてくれば勝利も見える?!ーー『マネーの拳』に学ぶビジネス格言

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。今回は、三田紀房先生の『マネーの拳』をご紹介します。

『マネーの拳』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

ここでは、私がオススメする名作マンガの一コマを取り上げます。これによって名作の理解を深め、明日のビジネスに生かしていただくことが目的です。マンガを読むことによって気分転換をはかりながら、同時にビジネスセンスも磨くことができる。名作マンガは、まさに一石二鳥のスグレモノなのです。

©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「知人からの出資を受けるというのは、自由を担保に金を借りることだ」

(『マネーの拳』第4巻 Round.35より)

地元・秋田の高校を中退した花岡拳(はなおかけん)は、友だちの木村ノブオとともに上京。花岡は、偶然始めたボクシングによって才能が開花し、世界チャンピオンにまで上り詰めます。

その後、ボクシングを引退した花岡は、タレント活動をしながら居酒屋を開業しますが、経営は思うようにいきません。そんな時に知り合ったのが、通信教育業界の成功者・塚原為之介会長でした。花岡は会長の教えを受けながら、ビジネスの世界でも頂点を目指すべく、新しいビジネスをスタートさせますが…。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

ギリギリの状況下での選択

花岡は、新規事業として渋谷にTシャツ専門店のT -BOX 1号店を出店します。しかしライバル・井川が出店したイタリアンカジュアルショップに顧客を奪われてしまい、苦戦を強いられます。さらなる売り上げ増を目指して、新宿の駅ビルに出店を決めるものの、資金が足りません。花岡は、秋田の工場を担保に銀行に融資を依頼しますが、1号店の売り上げが伸び悩んでいるのを見た銀行は、融資に難色を示します。

止むなく、従業員に頭を下げて給料の4割減を申し出た花岡。ところがそれを聞いた技術者・八重子が声を上げます。「花岡社長にはスポンサーがいるはずだ」と。スポンサーとは、花岡のビジネスに1億円を出資した塚原会長のこと。花岡が「それはできない」と答えると、「どうして従業員だけに苦労を強いるのか」と、詰め寄る八重子。それに対する花岡の返答が、「本日の一言」に取り上げた言葉です。

花岡は「相手が銀行なら、自分の資産を担保として差し出せば自由までは奪われない。しかし知人に出資を依頼すれば、われわれは金を出した者の言うことを聞くしかなくなり、自由が奪われる。結局、最後は金を出した者が勝つのだ」と語るのでした。

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会社の規模を拡大する方法はさまざま

今回は、会社の資金調達について語られています。一般に、会社がお金を調達する方法には、「直接金融」と「間接金融」の2つの方法があります。直接金融とは、会社が株券や社債などを発行し、それを販売することによってお金を調達する方法です。それに対して間接金融では、銀行などの金融機関を通じてお金を調達します。

一方、株や融資などのオーソドックスな手法以外に、会社を大きくする方法として、最近、よく行われているのがM&A(企業の合併・買収)です。近年、急激に大きくなっている会社のほとんどが、「M&Aを繰り返した結果だ」と言ってもいいくらいです。

他人の資本を使って規模を拡大する方法とは?

他に、自分は資本を出さずに“他人の資本を使って”業態を大きくする方法があります。それがフランチャイズ方式です。フランチャイズ方式とは、本部(フランチャイザー)が自社のノウハウやビジネスモデルを加盟店(フランチャイジー)に貸与することによって、ロイヤルティー(加盟料)を徴収する仕組みです。この方法には「短期間でも規模を拡大できる」という大きなメリットがあります。

競争が激化している昨今は、「儲かっているビジネスがある」と見るや、瞬く間にあちこちにそっくりなお店が立ち並び、ライバルが多くなってしまうことがあります。そのような中で、仮に、会社が自分たちの資金だけで出店しようとすると、かなりの体力が必要です。その点、フランチャイズは本部と加盟店が完全に別会社になるため、資金の調達も別々に行います。これなら、本部にとっては自社ですべてを賄わなくても店舗を増やすことが可能です。一方、加盟店にとっては、すでに実績のあるノウハウを購入することによって、ビジネスの成功確率が上がります。

時間を先取りするには、「お金」を使うほかない

例えば私が最近になって参入した新業態は、もともと、私の知人が始めたビジネスでした。友人はその会社を、しばらくは自分たちだけでじっくりとブランドの足場固めをしていくつもりだったそうです。

しかし、最初に出した1号店が爆発的に会員数を増やすと、あっという間に似たコンセプトのお店が出店攻勢をかけてきました。マーケティングは、「消費者の認知を巡る争い」だと言っても過言ではありません。つまり、必ずしも最初に始めた者が勝利を手にするわけではないのです。後発組であっても、先に世間に認知された者が市場の勝者となります。そのことを知っていた知人は、一刻も早く業界第一人者の地位を確立するために、フランチャイズ化に踏み切りました。そして、フランチャイズ店舗の経営を得意としている当社との相思相愛に至ったというわけです。

これだけ変化の早い時代で、時間を先取りするためには、お金を使うしかありません。よってお金の調達手段がわかれば、会社の戦略も自ずと見えてくるのです。

あなたもこれを機会に「自社のお金の流れ」にも目を向けてみてはいかがでしょうか。今まで見えていなかった何かが見えてくるかもしれません。

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俣野成敏(またの・なるとし)
30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン()』及び『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?()』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」()』を上梓。著作累計は38万部。2012年に独立、フランチャイズ2業態5店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、『日本IFP協会公認マネースクール(IMS)』を共催。ビジネス誌の掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』1位に2年連続で選出されている。一般社団法人日本IFP協会金融教育研究室顧問。

俣野成敏 公式サイト(

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