自分の力を最大限発揮できる人の特徴。それは「安売り」をしないことーー『マネーの拳』に学ぶビジネス格言

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。今回は、三田紀房先生の『マネーの拳』をご紹介します。

『マネーの拳』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

ここでは、私がオススメする名作マンガの一コマを取り上げます。これによって名作の理解を深め、明日のビジネスに生かしていただくことが目的です。マンガを読むことによって気分転換をはかりながら、同時にビジネスセンスも磨くことができる。名作マンガは、まさに一石二鳥のスグレモノなのです。

©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「長く(商品を)売るためには、適度な空腹感で市場をコントロールすることだ」

(『マネーの拳』第4巻 Round.27より)

地元・秋田の高校を中退した花岡拳(はなおかけん)は、友だちの木村ノブオとともに上京。花岡は、偶然始めたボクシングによって才能が開花し、世界チャンピオンにまで上り詰めます。

その後、ボクシングを引退した花岡は、タレント活動をしながら居酒屋を開業しますが、経営は思うようにいきません。そんな時に知り合ったのが、通信教育業界の成功者・塚原為之介会長でした。花岡は会長の教えを受けながら、ビジネスの世界でも頂点を目指すべく、新しいビジネスをスタートさせますが…。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

下請けからの脱出

大手企業・一ツ橋商事の下請けとして、格闘技グッズのTシャツ製造・販売から事業をスタートさせた花岡。事業は軌道に乗るものの、結局は大手の顔色をうかがいながら、製造量すら自分たちで決められない状態です。自由を求めて、花岡は次の事業計画を立ち上げます。

それは「直営のTシャツ専門店をオープンさせ、そこで自分たちがつくった商品を売る」というアイディアでした。花岡は、お店の名前を“T -BOX”に決定。着々と開店準備を進めます。しかしこの計画が、一ツ橋商事の知るところとなります。一ツ橋から一方的に委託契約を破棄され、動揺する従業員たち。ところが、花岡はすでにこうなることを予想していました。

従業員を集めると、花岡はこう告げます。「これまでは大企業の都合に苦しめられてきた。でも、これからは市場の手応えを感じながら、自分たちの商売を自分たちでコントロールすることができる」と。「商品が売れるからといって、そのまま増産していては、やがて飽きられ市場価値がなくなる。逆に商品を意図的に品薄状態にすれば、商品価値を高められることも可能だ」と話すのでした。

 

8,568通り、あなたはどのタイプ?

人は希少性を感じると欲しくなる

今回は、花岡が部下と在庫管理について話している場面です。たとえブームが起きたからといって、それにメーカー側が過剰に反応してしまうと、増産態勢が整ったころにはブームが終わってしまう、といったことになりかねません。

ですから「つくれば売れる」とわかっていても、あえて増産せずに次のブームを仕掛けていく、というのは、アパレル業界などでしばしば行われている手法です。こうすることによってブランド価値が高まり、商品にプレミアがつくこともあります。

人は、簡単には手に入らないものほど、貴重なものだと感じて欲しくなる傾向があります。これを「希少性の原理」と言い、マーケティングなどでもよく取り入れられています。あなたもどこかで、本当は買うつもりなどなかったのに、「残りわずか」「期間限定」「先着○名様」といった言葉を目にした途端、つられて商品を買ってしまった経験があるのではないでしょうか。

役職も「安売り」してはいけない

事例をひとつお話しましょう。私はサラリーマン時代の後半に、社内ベンチャーでアウトレット事業を起業しました。最初に1号店をオープンした当時の店長は私です。三重県に1号店をオープンさせたのは2002年2月のことでした。当時、アウトレット業界は急成長の入り口に立っており、私が経営するお店も、半年後には千葉県に2店舗目をオープンすることが決まります。

 

しかし、そうなると、マネジメントができる人間の育成が事業の成長スピードに追いついていきません。特に2号店の時は、1号店をオープンした半年後でしたので、事業規模としては一気に倍になる計算です。店長を任せられる人材不足は明らかでした。だったら、2号店の店長は誰にしたのかと言うと、私が兼務しました。

 

お店が三重県と千葉県では、気軽に行き来できる距離ではありません。しかし、これに関して、私は妥協しませんでした。店長というポジションは、現場を回していくのに非常に重要なポジションであることを理解していたからです。ただ単に「人手が足りないから」というだけの理由で、オープニングスタッフとして採用した人の中から店長っぽい人から指名するような形をとったり、店長という役職を経験しているからというだけですぐさまお任せしたりといった、役職の“安売り”をしたくありませんでした。「店長は、誰でもなれるものではない」「適格者にしか任せられない」という希少性を持たせ、役職にふさわしいと考える人材が育つまでは、しばらく身体を張って自社の店長ブランドを守り抜いたのです。

こうして、最初の店をオープンしてから1年経ち、さらに2店舗を同時オープンすることになった際、新規店の店長として仕事の本質を十分に理解している人に任せることができたのです。私が店長という役職を安売りしなかったことで、結果的に企業は組織運営を成功させることができました

一方私は、それ以降は店長職を他人に任せ、自らは経営者への道を進むことにしました。マネジメントノウハウを身につけた私も、それまで培ってきた貴重な経験が実を結んだのです。

今回の話をご自身の仕事に応用するのであれば、「自分が守るべきものは何なのか?」ということです。その「守るべきものの価値を高めるために、自分はどのように行動すべきなのか?」ということを、ぜひ考えてみてください。

▶あなたの知らない自分を発見できる。無料自己分析ツール「グッドポイント診断」

俣野成敏(またの・なるとし)
30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン()』及び『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?()』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」()』を上梓。著作累計は38万部。2012年に独立、フランチャイズ2業態5店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、『日本IFP協会公認マネースクール(IMS)』を共催。ビジネス誌の掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』1位に2年連続で選出されている。一般社団法人日本IFP協会金融教育研究室顧問。

俣野成敏 公式サイト(

【関連記事】
俣野 成敏氏の記事一覧(

PC_goodpoint_banner2

Pagetop