コロナ禍で志望者増!「社会人大学院」の選び方

自粛生活が続く中、自身のキャリアを見つめ直し「もっと知識を増やしたい」「学び直したい」と社会人大学院での学びを考える人が増えています。一方で、自分に合った大学院をどう選べばいいかわからないという声も。そこで、学校選びのポイントについて、専門家に詳しく解説いただきました。

社会人大学院イメージカット

乾 喜一郎さん
リクルート進学総研 主任研究員(社会人領域)

乾 喜一郎さん・リクルート進学総研 主任研究員(社会人領域)1992年東京大学教養学部卒。長年キャリア情報誌の編集・制作に携わり、2006年「ケイコとマナブムックシリーズ」編集長に就任。2019年よりリクルート進学総研主任研究員(社会人領域)。これまで取り上げてきた1000人以上の社会人大学院生の事例をもとに、学習者の立場に立った提言を行っている。文部科学省などにおいて有識者委員を歴任。

金剛寺千鶴子さん
リクルート スタディサプリムックシリーズ編集長

金剛寺千鶴子さん・リクルート スタディサプリムックシリーズ編集長1988年リクルートに新卒入社。宣伝、人事、採用関連メディアの商品企画・編集長を経て、2007年よりまなび領域に異動。リクルート進学総研と社会人領域メディアの編集を兼務。

リクルート進学総研
スタディサプリ社会人大学・大学院

オンライン講座拡大などを受け、社会人大学院を目指す人が増加中

社会人大学院イメージカット

コロナ禍を機に、「学び」に関心を持つ人が増えています。在宅勤務の拡大や長引く自粛生活の中で内省の機会が増え、「もっと知識を増やしたい」「新たな武器をつけたい」と考える人が増えているようです。そして大学や大学院側も、オンライン講座を拡大するなどしてwithコロナへの対応を強化してニーズに応えています。

「以前から『学びたい』人は一定数いましたが、時間と距離とお金がハードルになっていました。その中、在宅勤務の拡大で時間に余裕が生まれ、オンライン化で距離の制約もなくなったことで、志願者が増えた社会人大学院も多いようです。とくにオンライン授業と言えばこれまで一方向的なものがほとんどでしたが、各大学ともリアルタイム・双方向性のプログラムを強化していて、学びの幅も広がっています」(乾さん)

 

8,568通り、あなたはどのタイプ?

知識習得、学位、人脈…社会人大学院で学ぶ「メリット」

社会人大学院イメージカット

仕事に役立つ知識が得られスキルアップできる、専門スキルを身に着けキャリアアップできる…など、社会人大学院で学ぶメリットはさまざまあります。乾さん、金剛寺さんは次のようなメリットも挙げています。

「大学院は、大学の講義のようないわゆる座学だけではなく、ゼミやワークショップのような、常に“自分で考え、意見を言う”ことが求められる授業が中心となります。そこでは、自分の経験に基づいたアウトプットに対し、教授や同じテーマを学ぶ学生たちからさまざまなフィードバックが寄せられ、この対話を通じてそれが磨かれていきます。それを振り返ることで、学んだことが肚に落ちていく。こうした『アウェイ』での学びによって、これまでの固定概念を突き崩すことができるのです。しんどいですが、その分、日々成長している自分も実感できると思います」(乾さん)

「実際に学んでいる人の話を聞くと、知識の習得はもちろん、社外の人脈ができたことをメリットとして挙げる人が多いですね。社会人大学院でできる人脈は、世代も業界・職種も異なる人がそれぞれの居場所から越境して集まり、一つの研究テーマをもとに意見をアウトプットしフィードバックを受け続けた間柄。このような関係性は、日常生活の中では築きにくいものですし、“越境経験”もなかなか得ることのできない貴重な経験です。バックグラウンドの異なる同級生たちの、全く異なる視点からの異質な意見にチャレンジングに向き合い続けた経験は、仕事でも活かすことができると評価される傾向にあります」(金剛寺さん)

また、社会人大学院を修了することで得られる「修士」の学位は、特に若手ビジネスパーソンにとっては大きな武器になります。

「海外では、上位の職種では修士以上の学位をエントリー条件に置いている募集が多い。今後グローバルな人材獲得競争が進むにつれ、外資系企業だけでなく日本企業でも修士を求める企業が増えていきます。グローバル人材の募集では、修士を持つ海外人材と求人市場で戦わねばならない場面も増えるでしょう。将来のキャリアを考えれば、修士を取るメリットは大きいと思われます」(乾さん)

 

8,568通り、あなたはどのタイプ?

自分に合った社会人大学院を選ぶには?

漠然と学びに興味を持った人が、一から社会人大学院探しをする場合、「いきなりどんな大学院があるのか調べ始めるのではなく、まずは興味のあることを学んでみることが大切」(乾さん)とのこと。具体的にどういうステップを踏めばいいのか、解説します。

Step1:自分の興味・関心に注目する

社会人大学院に関心を持った時点で、何らかの「学びたいもの」が自分の中にあるはず。まずはザックリとでいいので、興味・関心に注目することから始めましょう。

例えば、「マーケティングの知識をつけたら営業に役立ちそうだ」「企画の仕事に就いているけれど、統計学に関する知識が足りないと感じる」「社会貢献につながる活動がしたいので、国際問題について知りたい」「漠然と将来起業したいと思っているが、経営視点をどう養えばいいかわからない」など、知りたいテーマが見えてくるはずです。この時点では「なんとなく」でかまいません。次のステップのきっかけになればいいのです。

Step2:どんな学習機会があるのか、本やネットなどで調べる

Step1で見えてきた自身の興味・関心を軸に、どんな学びの場があるのか調べてみましょう。最初から大学院の正規課程である必要はありません。各大学院のホームページでもさまざまな学習機会が紹介されていますが、初心者はさまざまな大学院・講座が一覧で見られるガイドブックやサイトのほうが調べやすいでしょう。

そこで、何となくピンときたもの、自分に合っていそうだなと感覚的に思ったものをピックアップしてみましょう。

Step3:興味を持った講座を受講してみる

大学院に通うのは、お金も時間もかかります。まずは自分に合っているかどうか、体験してみることが大切です。どの大学院も何かしら体験の機会は設けていますし、関連したセミナーなどが頻繁に開催されています。いまはオンラインで無料で参加できるものもたくさんあります。あまりテーマを絞らず、ぜひ幅広く受講してみてください。

お勧めしたいのは、興味があるテーマだけをピンポイントで学ぶことができる「科目等履修生制度」です。大学にもよりますが、「週1回1時限で14~15回」などで構成されていて、興味を持ったテーマの全体像を学ぶことができます。その後、正式に入学することになれば、単位として認められるのもメリット。この制度を活用しながら入学後の姿をイメージしてみるといいでしょう。

Step4:上記を踏まえ、自分の興味の方向性を再度見つめる

いくつかのセミナーや科目を受講していくうちに、学びの意志と方向性が明確になっていきます。これまで感じた「これを専門にしたい」「ここを深掘りしたい」をもとに、具体的なテーマを絞り込み、進学先をピックアップしていきましょう。

なお、前述の「科目等履修生制度」を活用する場合、一緒に学ぶのは「一足先に入学している先輩たち」になります。その顔ぶれや学びのレベルなどを判断材料にするといいでしょう。

Step5:本格的に学ぶ場所を固め、志望理由書(研究計画書)を書き応募する

これまでのStepを踏む過程で、進学先の候補が絞り込まれてきたはず。そのうえで、自分に合った履修方法、入試形態を考え大学院を選びましょう。その際、プログラム内容や学費、施設、サポート環境なども確認して総合的に判断しましょう。

<主な履修方法>
・仕事が終わった後や土日を使って学びたい→夜間大学院、昼夜開講制大学院
・退職、休職してじっくり学びたい→昼間開講制大学院、昼夜開講制大学院
・空いた時間に学びたい、通える場所に学校がない→通信制大学院
・仕事をしながら自分のペースでじっくり学びたい→長期履修制度のある大学院

<入試形態>
・社会人入試=社会人を対象とする入試で、例えば「年齢22歳以上」「社会人経験3年以上」など一定の条件を満たす受験生に対して行われる。一般入試よりも受験負担を軽減する科目設定になっており、その文社会経験や進学意欲を重視する選考になっている。
・AO入試=面接やプレゼンテーションなどで人物面を評価する入試で、社会人向けに採用している大学院もある。
・一般入試=一般の大学を卒業した人、および卒業見込みの人が受けるものと同じ入試。社会人に対象を絞っていない大学院の場合、一般と同様、専門科目や英語なども課されるケースが多い。

いずれの入試形態においても、重要とされるのはどんな目的で、どんな研究をしたいのかを示す「研究計画書」(修士論文が課されない専門職大学院では「志望理由書」)です。作成のポイントは、オリジナリティある内容を、要点を分かりやすく整理しまとめること。これまでのStepで明らかにした「目的意識」を自身の社会人経験と関連付けながら作成しましょう。

 

分野、学び方が多彩になった今こそ、学びのチャンス

社会人大学院イメージカット

自身のスキルやキャリアアップにつながり、またさまざまな人と出会い、自身の視野を広げられる社会人大学院。ただ、目指す人が増える一方で、「せっかく学んだ知識を活かさず放置したまま」の人も少なくないのだとか。

社会人が大学院で学ぶ最大のメリットは、学びを振り返って自己省察することで、自身の業務と接続できること。知識や情報をただインプットするだけでは、アプリをダウンロードして放置しているのと同じです。『この知識は、あの業務に活かせそうだ』など、一つひとつの知識をメタ化して認知しようとすることで、確固たる知識として自身に装着され、日々の業務に応用できるようになります」(金剛寺さん)

「私はこの分野に関わって20年以上になりますが、比べ物にならないほど分野・学び方ともに多彩になっています。そして企業側も、副業やプロボノを容認する動きなど、『社外での学びを本業で活かしてほしい』と考えるところが増えています。仕事の経験を学びの場に持ち込んで新しい知識を創造する。それが仕事の場に持ち込まれると、当然軋轢や葛藤が起きます。そこからイノベーションが生まれることが、企業からも期待されているのです。社会人が学びを深める機会がどんどん充実している今こそ、学びのチャンス。ぜひ自身の興味を掻き立てて、学びを自身のキャリアに活かしてほしいですね」(乾さん)

 

▶あなたの隠れた才能を見つけ出す。転職活動にも役立つ!無料自己分析ツール「グッドポイント診断」

EDIT&WRITING:伊藤理子
PC_goodpoint_banner2

Pagetop