noteプロデューサー徳力基彦さんに聞いた─SNSを転職・キャリアアップに役立てる方法は?

ビジネス書を読むのもいいし、セミナーに通うのもいい。キャリアアップや転職のためにできることは、さまざまにあるが、実はSNSやブログをスタートさせることもキャリアアップや転職活動に活きてくる。実際に、たくさんの実例も出てきているという。自身もブログで人生が変わったと語る『「普通」の人のためのSNSの教科書』の著者・徳力基彦さんに、アドバイスを聞いた。

転職とSNSのイメージ画像

noteプロデューサー/ブロガー 徳力基彦(tokuriki)氏

noteプロデューサー/ブロガー 徳力基彦(tokuriki)氏 プロフィール画像NTTやIT系コンサルティングファーム等を経て、アジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。代表取締役社長や取締役CMOを歴任。現在はアンバサダープログラムのアンバサダーとして、ソーシャルメディアの企業活用の啓発活動を担当。note株式会社では、noteプロデューサーとして、ビジネスパーソンや企業におけるnoteやSNS活用のサポートを行っている。著書に『「普通」の人のためのSNSの教科書』『顧客視点の企業戦略』『アルファブロガー』等。

SNSに発信することで、自分を見つけてもらえる可能性

日本では、SNSやブログは仕事とは関係がないものだと考えている人が少なくなくありません。でも、携帯電話やメールなどのコミュニケーションツールと大きく違うのは、不特定多数の相手から、自分を見つけてもらえることです。

例えば、「新商品開発をやってみたい」「デジタルマーケティングをやりたい」と考えていることを、SNSやブログで自分のアイデアと合わせて発信する。すると、それを上司や人事に知ってもらえる可能性が出てきます。

「仕事で頑張っていれば、いつかは最適な部署に異動させてくれるだろう」と考えている人も多いと思いますが、それでは他力本願。自分から発信することで、やりたい仕事ができるようになる。今はそんなこともあり得る時代なんです。

もちろん、一方的に主張していただけでは難しいでしょう。しかし、やりたいことのためにさまざまな努力を続けている。それを自分の得意なこととして、発信できたならどうでしょうか。

得意なことを発信し続けると、見つけてもらいやすいのがSNSなんです。それは社内のみならず、社外に対してもです。今は、普通の会社員でもいきなりメディアから取材のオファーが来たりすることもあります。

こんなことは、インターネットの登場する前にはありえないことでした。取材をしてもらうために、広報や宣伝を通じて積極的にアピールすることが必要だった。最近ではそんなことをしなくても、SNSやブログによって思わぬオファーが来たり、著名人とつながれたりする。それが、会社の仕事にもプラス効果をもたらすこともあるでしょう。

SNSやブログを使わないのは、古いコミュニケーションツールしか使っていない、ひと昔前のスタイル。違う仕事のやり方があることをぜひ知ってほしいのです。

企業がSNSに対する評価は「二極化」している

ただし、注意しなければいけないことがあります。まず、会社によってはSNSやブログを社員が行うことを、快く思われないケースが少なくないことです。私自身、『「普通」の人のためのSNSの教科書』を出版した後、何人かからこんな声をもらいました。

・内容はとても面白かったけど、うちの会社はSNSが禁止されている
・SNSをやることに、上司がいい顔をしない

この背景の一つには、従業員に不適切な投稿によって起きたSNS炎上があります。これは企業の業績に大きなダメージを与えることになりかねない。SNSを使う、イコール炎上の危険、というイメージを持つ会社は少なからずあります。

また、「会社員は勝手に会社のことを話すべきではない」「若い社員が社外に発信するなんて10年早い」といった暗黙の空気が流れている会社もあるようです。

ショッキングなのは、学生が大企業の内定をもらうと、SNSのアカウントを消してしまう人が多いと聞いたことでしたね。若気の至りで恥ずかしいというなら、それもわかりますが、入社後も先輩が使っていないからと、再開しないそうなんです。

せっかくデジタルネイティブが入社しているのに、彼らのSNS力を会社は使っていない。一方で、SNSをうまく使ってキャリアアップを果たし、転職先からオファーをもらっている人もいるわけです。

発信すれば、社内よりも社外から評価を受けることもある。もちろん、SNSを使って会社の仕事に活かしている人も少なくありません。

だから今、起きているのは「二極化」。SNSを使うなんて個人のスタンドプレーだ、組織の中で黙って働け、という会社と、社員もSNSで目立ったほうが会社の業績にもつながるという会社。まず見極めなければいけないのは、自分の会社がどちらに近いかということなのです。

SNS発信がきっかけでスカウトが来ることも

実際にSNSを使ってキャリアアップを果たした事例を、いくつか紹介してみましょう。

大手飲料メーカーでデジタルマーケティングについて発信していた人は、デジタルに詳しいマーケッターとして認知され、ベンチャー企業からスカウトが来ました。SNSのおかげだったと本人も言っています。

前職はデジタル活用が進んでいる会社で、個人が実名でどんどん情報発信をしていました。例えば、先端のマーケティング事例や参加したイベントの講演メモですね。その内容が素晴らしくて、行けなかった人でもポイントがよくわかると喜ばれていました。

最終的には、何万円もする有料セミナーにインフルエンサー枠で招かれたりするようになっていったんです。もちろんご本人の力量あってこそですが、SNSによる発信がその力量を高める上でも役立ったことは間違いないでしょう。

なぜなら、情報は出せば出すほど、入ってくるものだからです。日本人は詰め込み型の教育を受けていて、インプットファーストなので、なかなか外に発信しないんですね。しかし、発信しなければ、何も戻ってこないんです。

セミナーに参加し、発表のポイントや感想などを投稿すれば、見た人がコメントをくれたり、意見をしてくれたりする。そこから、新しい考え方が生まれたりする。参加した人たちと一緒に深掘りすれば、より知見が高まります。

同じセミナーに行くにしても、発信した人とそうでない人とでは、得られる情報や知見は何倍も違うと思います。また、人脈も得られます。ぜひ、インプットファーストからアウトプットファーストに思考回路を切り替えて下さい。

業界に特化した情報を発信することが、本人を際立たせるケースもあります。ドラッグストアに勤務していた人がSNSで発信したことで、ドラッグストア界隈でどんどん目立っていったんです。後に独立し、コンサルティングなどを事業にされています。

小売りや飲食関連では、先にも書いた炎上リスクもあるので、SNS活用には厳しい会社が多数あります。ただこの方の場合は、逆にそういった業界の中で上手な情報発信をされたからこそ、重宝され、有名になることになったのです。

あまりSNSが使われていない業界や今の会社であれば、この方のようなポジションになれるチャンスがあります。まだポジションは空いている業界はたくさんあると思います。

ネガティブな投稿は絶対にしてはいけない

では、SNSやブログをスタートさせるなら、何から始めればいいのでしょうか。
まずは、上司にきちんと相談することです。やってはいけないのは、勝手に始めてしまい、上司に見つかって止めなさいと言われてしまうこと。上司を説得し、上司の理解をもらって始めたほうがいいでしょう。

勝手に会社のことを部下がSNSで書いていたりしたら、上司としても面白いことではない。「一言、相談してくれたら…」という上司も多いはずです。

実は経営者の多くはデジタルシフトをもっともっと進めないといけない、と考えているんです。実際、トップ自らが旗を振っている会社も多い。ところが、中間管理職は、どうしてもリスクを重視してしまうんですね。大事なことは、現場での成功事例を作っていくこと。リスクはあるが、成果も出るという実例がほしいのです。

成功事例を作りたいとうまくアピールし、実際にうまくいけば、それを組織全体にも広げられます。トップはそれを待っていたりもする。上司としても成功事例を作れれば、デジタルシフトへの大きな実績になります。

逆に、絶対にやってはいけないことは、ネガティブな投稿をすること。怒りのエネルギーが、SNSでは伝播しやすいのは事実です。しかし、何かを批判したり、怒ったりしていることは、デメリットになる。個人が組織とつながった瞬間、それ自体がリスクになり得ます。だから、ネガティブな投稿は絶対にしないことですね。

自分のためのメモを投稿することから始めよう

ネット上での発言は、匿名であってもひどい誹謗中傷をしていると発信者情報開示請求により特定されることがありますし、なにより削除しきれず、ずっと残ってしまうことになります。くれぐれも慎重に始めることが大事です。では、何を発信していけばいいのか。

まずは、自分のためのメモを投稿することから始めること。フォロワーを増やしたい、早く仕事に役立てたいとなれば、意味のあることを発信したくなりますが、それはものすごくハードルが高いんです。逆に何も言えなくなってしまいかねない。

ただ、どんなことも誰かの役に立てる可能性があります。だから、本を読んで学びになったことでもいいし、講演を聞いて気になったことでもいい。まずは難しいことを考えずに、
自分のためのメモを書く。なぜなら、世の中にいる、自分に似たような数人に役立つ可能性があるからなんです。

そして次のステップは、誰かの顔を思い浮かべること。あの人にこの話をしたいけど、会えない。だから、それを文章にして投稿してみる。すると、その人と似たような人たちがリアクションしてくれる可能性が高まる。そこから、双方向のコミュニケーションが始まる可能性が出てきます。

人に見つけてもらえるために意識をしたほうがいいのが、自分の軸を決めておくこと。自分はこういう自分でありたい、こんなふうに知ってもらいたい、というイメージを持っておくことが大切です。

あの人はこういう話に詳しい、となればわかりやすいですよね。だから、その話題を中心にして、情報発信してキャラを確立していく。ここは少しずつで構わないので、じわじわと戦略的に行う必要があります。

SNSの力を活用して、自分のキャリアを作るには

気をつけたいのは、過大な期待を持ったり、焦ったりしないこと。いきなりフォロワーが何万人もついたり、メディアから取材依頼が来たりするはずがありません。

メモからコミュニケーション、そしてメディアへ、という3つのステップがありますが、いきなりメディアをゴールにすると苦しいですね。プロでも簡単ではない。まずは自分のためのメモ、周りの人とのコミュニケーションだと思って始めることです。

インターネットは蓄積効果があるので、確実に知識もスキルも積み重なっていく。これがあとでリターンになって返ってきます。最近は、拡散するスピードが速まっていますが、甘く考えないほうがいい。

まずは、1年はかかると考えたほうがいいですね。仕事と考えてじっくり取り組むことです。それこそ人生100年時代。デジタル領域で自分のキャリアをどう作っていくか、今のうちに練習しておいても損はないと思います。

いい情報発信をしていくためには、尊敬する人のアカウントをフォローしていくこと。すると、自分のタイムラインが尊敬する人の投稿で埋まる。そこにリアクションすると、尊敬する人が自分を認識することもあります。

私自身もブログをきっかけに、心の師匠だと思っていた本の著者にコメントを返してもらえたことがあります。個人でやっていたブログによって会社を有名にしたり、人とつながることで仕事がうまくいったりすることもあるんだと気づかされました。

若い人ほど、仕事におけるSNSの力をわかっていないと感じています。遊びのツールだと思っている人は多い。そのポテンシャルを教わらないまま会社に入っている。情報発信できなかった時代を知っている世代からすれば、今は本当にすごい時代なんです。SNSという武器を、ぜひうまく使ってほしいと思っています。

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INTERVIEW&WRITING:上阪徹    EDIT:馬場美由紀

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