「何もかも嫌…」人間関係を全リセットしたくなった時に知っておきたいこと|川崎貴子の「働く女性相談室」


「働く女性の成功、成長、幸せのサポート」という理念のもと、キャリア支援やコンサルティング、結婚コンサルタントなど、幅広い領域で活躍されている川崎貴子さん。その経験と女性経営者ならではの視点から、のべ1万人以上の女性にアドバイスをしてきた川崎さんが「“働く女性”に立ちはだかるさまざまなお悩み」に厳しくも温かくお答えするこのコーナー(→)

今回は、「仕事もプライベートも何もかも嫌になった…人間関係すべてリセットしたい!」というお悩みについてです。

<相談>
仕事では気の合わない上司から理不尽に怒られ、表面上の付き合いの同僚にはマウンティングされ、恋人とは別れて、家族に会えば「結婚はまだか」と言われ…。もう何もかも面倒くさくなり、すべての人間関係を投げ捨ててしまいたい衝動に駆られます。SNSをやめたり、引っ越したり、転職したりなど考えていますが、もういっそのこと誰も知らない場所へ行って、人生やりなおしたい、とすら思っています。現実逃避かもしれませんが、逃げることはそんなに悪いことなのでしょうか?
(26歳 事務職)

「何もかも捨てて人生をリセットしたい」
人生が上手くいかない時、自分が嫌になった時、どんなに強い人だって誰しも一度は思ったことがあるのではないでしょうか?現在では「人間関係リセット症候群」なんていう言葉もあり、リアルやSNS上の人間関係に疲れてリセットしたいと切望する人が増えているのかもしれません。
現に私に相談に来る女性たちも、「すべてをリセットしたい」と訴えるような話は多く、その相談内容によっては
「クラウチングスタートで、全力で逃げろ!」
と、スターターピストルを私自ら打ち鳴らす事もあります。

今の環境や人間関係に疲れて逃げ出す事は、決して悪い事ではないと私は思います。
「逃げる」以外に自分の心身を守れない場合だってある。自分を幸せにしない場所から逃げる事は生き抜くための一つの知恵であり、防衛本能でもあると言えるでしょう。

ただし、「職場も」「友人関係」も「居住エリア」も変えるという、極端な人生の方向転換にはメリットとデメリットがあります。
メリットに関しては相談者さんも重々承知だと思いますので、今回はデメリットと代替案を中心に筆圧高めで書かせていただきますね。

「凪のお暇」が共感できる理由

「凪のお暇」という漫画があります。今期のドラマでも放送されているのでご存じの方もいるでしょう。

主人公の凪ちゃんは、いつも空気を読んで職場の人間関係にへとへとになっている真面目なOL。同僚に仕事を押し付けられ、自分のミスじゃないのに上司に叱られ、唯一の希望だった職場恋愛中の彼との結婚も立ち消えに…。彼女はとうとう過呼吸を起こし倒れてしまいます。
そんな彼女が取った行動が「全リセット」。
会社を退職し、引越をして、SNSをやめて、携帯を手放し、すべての人間関係を清算します。そして、何もないところから、少しずつ自分らしく行動していく凪ちゃん。
過呼吸になるほどのストレスから逃げるという選択は彼女にとって必要だったのだと、とても共感できるストーリー展開です。

主人公の凪ちゃんは不安に駆られながらも自分を変えようと、楽しみながら生活していますが、
実際のところ、全リセットってエネルギーいるんですよ。
新しい生活を一から立ち上げることもそうですが、お金や将来の不安、心配かけないよう家族への配慮など…。
このエネルギー消費量を考えると到底割の合わない新生活になるのです。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

自由になるための「全リセット」が不自由を生み出すことも

「煩わしい諸々から自由になるために〝全リセット″したのに、結局得たものは自由の真逆だった」
と相談に来た女性がいました。

30歳になった途端、人生のすべてが嫌になり、なかなかプロポーズしてくれない彼氏と別れ、自分の頑張りを認めてくれない会社を突然辞め、どうせなら住む町も変えたいと引越をし、SNS上でも友達を全ブロック。

「でも、すっきりしたのは最初だけで、あとからじわじわ後悔しました。彼とも会社の人とも顔を合わせられず、『二度と行けない町』『二度と行けない店』『二度と会えない人』ができてしまった。友人たちに関しても、全員が嫌いだったわけではなかったのに突然ブロックしてしまったので、彼女たちはどう思っただろうと思うといたたまれず…。後悔ばかりで、新たな人間関係を築こうという気持ちが沸かないんです」

自由になるための突発的な行動が、思いもしなかった不自由を作り出してしまったのだと彼女は言うのです。後悔せずに、現状打破する方法は何だったのでしょうか。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

「人間関係リセット症候群」かも?と思ったら、何をしたらいいか

いわゆる「人間関係リセット症候群」と呼ばれる人たちの特徴として、

1. 人の顔色や空気を読んで、人に嫌われない事に意識を集中させやすい。
2. 自分の意見を言わず、受動的な人間関係を築きやすい。
3. 真面目で完璧主義である。
4. 結果よりもプロセスを大切にしている。

が、挙げられます。相談者さんも傾向として当てはまるのではないでしょうか?

上記4つの特徴はとても日本人的な、ある意味美点ではあるのですが、侵略者に攻め込まれる格好のシグナルでもあります。この根本原因を改善しない限り、どこの土地、どこの国へ行こうとも侵略者たちは、
「みーつけた!」
と言ってすり寄って来ることでしょう。

つまり、これらの特徴をだだ漏れにしたまま新たな人間関係を築いても、再び「全リセット」をする羽目になり、新天地でもまた侵略者がいて…と、要は癖になりやすいのです。

転職を繰り返す、引越を繰り返す、人間関係を渡り歩く…。
若くて元気なうちはいいですが、「流浪の民人生」はなかなかにハードモード。私たちは、自分たちが思うよりずっと、社会や人間関係という基盤に守られて生きているものです。前の会社の上司に声かけてもらえて良い職場に転職できた、とか、病気しても保険証があるから心配ないとか、死にたいぐらい絶望していても友人に話を聞いてもらって日常を取り戻せた、などなど。
そんな人的、社会的資産を全放棄して生きる気力があるのなら、「侵略者に利用されない私」になった方がずっとラクです。

例えば

1. すべての人に好かれるのは無理、と割り切る。
2. 嫌な事は嫌、やりたいことはやりたいと言えるようになる。
3.「完璧じゃない私も私である」と認める。
4. プロセスにこだわらず、「結果を出すこと」に注力する。

を、「繰り返し意識する」ことです。
思考パターンを変えると行動が変わり、行動が変わると人間関係も変わり、必要な人間関係と不要な人間関係をご自身で仕分けできるようになります。

心にデヴィ夫人を飼う

真面目で繊細な人ほど割を食うなんて理不尽すぎます。でも、多いんですよ。
自分の気分を上げるためにマウンティングしてくる人、やりたくない仕事や厄介ごとを平気で押し付ける侵略者はどの企業にもコミュニティにも絶対存在します。
だとしたら、自衛する以外ありません。

そこでお勧めなのが、心の中にデヴィ夫人を飼う事。
デヴィ夫人がいつまでも人気があるのは、「スカルノダイサンフジン」の威力ではなく、彼女が「NO!と言える日本女性だから」ではないかと。そして、70代になってもチャレンジャブルで、「喧嘩上等」の気概を持っているからだと勝手に推測しています。

侵略者が近づいてきたら心の中のデヴィ夫人を発動させて、
「あーた、このわたくしにマウンティングするなんて10万年早いわよ」
と、声に出さなくともそんな表情や佇まいで威嚇しましょう。

侵略者がやりたくない仕事を押し付けようとしてきたら、
「これはあーたのお仕事でしょう?違うかしら?」
と、はっきりくっきり言い放ちましょう。

人は模範無しに変わるのは難しいので、完全に心に住まわせるまでデヴィ夫人の観察は必要です。彼女のあの「わたくしを馬鹿にする者は絶対に許さない」という気概、「NO!と言えるデヴィ」をぜひとも心の中で飼いならしてみてください。

決断の前に「充電」を

相談者さんもそうですが、「全リセット」の誘惑に駆られる時って、何もかも面倒くさくなった時。要は気力体力が足りてない状態なんです。
本来、そういう状態の時は一番、「重大な決断をしてはいけない時」なんです。客観的な判断をくだせない恐れが大いにあるからです。

ですから、「もうだめだ!全リセットしたい!」と思ったら、
まずは休んで体力付ける。
次には気分を変えてリフレッシュする。
こうして、たっぷりご自身を充電してから、ひとつひとつ建設的なジャッジをしていって欲しい
と思います。

逃げて得ならいいけれど、逃げ損だけは踏みとどまるが吉です。

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回答者:川崎貴子f:id:kashiemi:20171127101518j:plain

リントス(株)代表。「働く女性に成功と幸せを」を理念に、女性のキャリアに特化したコンサルティング事業を展開。
1972年生まれ、埼玉県出身。1997年、人材コンサルティング会社(株)ジョヤンテを設立。女性に特化した人材紹介業、教育事業、女性活用コンサルティング事業を手掛け、2017年3月に同社代表を退任。女性誌での執筆活動や講演多数。(株)ninoya取締役を兼任し、2016年11月、働く女性の結婚サイト「キャリ婚」を立ち上げる。婚活結社「魔女のサバト」主宰。女性の裏と表を知り尽くし、フォローしてきた女性は1万人以上。「女性マネージメントのプロ」「黒魔女」の異名を取る。2人の娘を持つワーキングマザーでもある。

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イラスト:yoko
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