一流の人は「好きで得意なこと」に“早く”出会っていた。そんな機会を多くの人に届けたい|大島伸矢さん(一般社団法人スポーツ能力発見協会)

多くの人にとって、自分の体力や身体能力を知る機会は学生時代に限られるのではないでしょうか。学校の体力測定といえば、先生たちがメジャーとストップウォッチで懸命に計測している光景が目に浮かびます。1964年の制度開始以来、実はこのアナログ手法は全く変わっていません。条件が不揃いで結果が計測者のスキルに左右されるため、野球・サッカー・バスケなどのプロリーグでは学校の測定値を採用せず、精密機器を使った独自の測定結果を参照するといいます。

信頼できる数値で子どもたちの体力を表し、得意と不得意を明確にしてスキルを伸ばす活動を行っているのが 一般社団法人スポーツ能力発見協会 理事長の大島伸矢さんです。協賛企業のサポートで、子どもたちは無償でプロと同じくらい精密な測定値を得られます。結果を基にアスリートを目指す生徒も出てきました。大島さんは今後、障がい者スポーツの領域でもこの活動を生かしたいと考えています。

大島 伸矢(おおしま・しんや)

1970年生まれ。学生時代はプロサッカー選手を目指したものの、ケガのため断念。大学卒業後は就職・起業を経験したのちにカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)株式会社傘下のコンサル・マーケティング企業に入社。投資先選定、新規事業立案や自治体の財務システム導入などに携わる。そのとき能力の精密測定を事業化するプランと出会い、2007年に知育面で活用する株式会社プライム・ラボを設立。2014年には体育面で活用する一般社団法人スポーツ能力発見協会(DOSA)を設立した。

一流の人たちは早く「好きで得意なこと」に出会っていた

—大島さんが手がけているのは「子どもたちの能力を正確に測定する事業」とお聞きしました。この事業を始めたきっかけを教えてください。

僕は学生時代にプロを目指してサッカーをやっていましたが、ケガのために断念せざるを得ませんでした。大学を卒業して就職や起業をしてもまだ本当にやりたいことが見つからない。でもそのころ付き合っていた友人の中にサッカーでプロになった人、一流のミュージシャン、芸人たちが多くいて、彼らは胸を張って「自分の仕事はこれ」と言い切っているんです。

自分と比べてみると、彼らは小さいころに将来の仕事とつながるものと出会って成功している。サッカーでも音楽でも、自分が好きで得意なこと、つまり「やりたい」と「できる」が一致していることを早く見つけて能力を伸ばしてきた。これを誰でも再現できるようにすればもっと個人の能力を有効に伸ばすことができるのではないか。そう考えて、今の事業に思い至りました。

知育面で行っているのは「Primeチェック」です。人の脳には国語的知性・論理数学的知性、人間関係的知性、身体運動的知性など8つの指標があるという理論を基本に構成しています。各知性をチェックし、得意なことは伸ばす、苦手なことは得意なことを利用して伸ばすというアドバイスをしています。例えば単語暗記でも、視覚情報よりも音声情報のほうが覚えやすい、コミュニケーション力が高いなら人を介して一問一答形式にしたほうが頭に入るなど、必ずその人の知性に合った方法があるからです。

体力面で行っているのは「SOSU」という測定プログラムです。どんな競技種目でも因数分解すれば基本的な運動の組み合わせで成り立つので、その中の素数を抽出するという意味で名づけました。例えばサッカーでシュートを打つなら、求められるスキルは「速い足振り・片足でブレないバランス力・正しいフォームを作る柔軟性」という素数に分けられます。機材を使って正確に測定すると自分の得意・不得意スキルがわかり、向いているスポーツも割り出されるので、この情報を子どもや保護者と共有して「やりたい」と「できる」が一致する分野をアドバイスしています。

実現したいことは、信頼する友人によく話す

—知性測定、体力測定の事業化というのは、皆さんに理解してもらうまで苦労が多かったのではないですか。

もともとは取引先の企業内で事業化できないか、実証実験まで進めていたプランでした。そのとき塾を経営する企業が「面白そうだ」と手を挙げてくださり、塾の生徒の協力を得て知能チェックを進学相談に生かしてもらいました。この基盤があったので独立後も展開しやすかったです。

僕はおそらく、事業の維持や拡大よりも、何かをゼロから立ち上げることが好きで向いているんだと思います。「Primeチェック」が軌道に乗ると、今度は8つの知性の身体運動能力に特化した能力測定事業をやってみたくなりました。

学校の体力測定は、1964年からずっと先生によるメジャーとストップウォッチだけで計測されているんです。もっと精密な機材で測定すれば正確な身体能力がわかり、僕が出会ったアスリートたちのように早くから一流を目指す子も出てくるかもしれない。また運動が苦手だと思っている子にも得意な動きは必ずあります。その情報を知らせることで運動嫌いを減らし、体を動かす機会を増やせばみんな健康になる可能性が高い。だから事業化する意義があるのだとよく友人たちに話していました。

「SOSU」を大きく展開するきっかけになったのは、その話を聞いて「サポートしたい」と申し出てくれた経営者がいたからです。思いを話すと応援してくれる人と出会える、というのはあると思います。

苦手や不便を知るからわかる、ありがたみ

—そうすると、大島さんは交友関係を広く保つタイプですか。

30代になるまでは意識的に人とつながろうとしていました。今は信頼できる人とだけつながればいいと考えています。ただ、この人脈も20代で「苦手な人とも頑張って付き合ってみる」「なるべく多くの人と出会う」という経験が基本です。最初から選り好みせず苦い思いも体験したからこそ、出会った何千人もの中から本当に信頼できる人を絞ることができたと思います。

僕は「不便、不便、便利」「まずい、まずい、旨い」の法則と呼んでいるんですが、人の感性は上下両方のレベルを知らないと磨けないと考えています。初めから心地よいことばかり選んでいると、本当に良いものと出会ったときの感動、ありがたみがわかりません。これは人や食べ物、ツールなどいろんなことに当てはまるんじゃないでしょうか。

大島さんは身体能力の測定事業を障がい者スポーツの世界にも広げています。後編では、パラアスリートが抱える社会的な課題についてお聞きします。

後編はこちら
 

DOSAはリクルートキャリアと共に、「障がい者アスリート応援プロジェクト」をスタートしました。実績がなくても能力や可能性のあるパラアスリートの挑戦を後押しすべく、個々の選手が抱えるハードルを取り除くための支援を行い、世界で活躍することを目指し、強化指定選手や代表選手になるまでのあと一歩に伴走します。

「障がい者アスリート応援プロジェクト」(→)
https://www.recruitcareer.co.jp/athlete/

インタビュー・文:丘村 奈央子  撮影:平山 諭

Pagetop