皆が「群がる」ものに、大きなチャンスなんてないーーマンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー(→)。今回は、三田紀房先生の『インベスターZ』です。

『インベスターZ』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい奥深い一言をピックアップして解説します。

©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「市場の常識では戦争は買いなんだよ」

(『インベスターZ』第8巻credit.63より)

大人気マンガの『インベスターZ』より。創立130年の超進学校・道塾学園にトップで入学した主人公・財前孝史は、各学年の成績トップで構成される秘密の部活「投資部」に入部します。そこでは学校の資産3000億円を6名で運用し、年8%以上の利回りを上げることによって学費を無料にする、という極秘の任務が課されているのでした。

“連戦連敗“でも日本の株価が上がり続けた理由

「夏休みの間、投資部の活動はどうするのか」と気になった財前が、先輩に尋ねてみると、先輩は「投資部員は全員、軽井沢で行われる3泊4日の合宿に参加する決まりになっている」と答えます。この夏合宿は毎年、歴代OBも参加する伝統行事であり、現役生を心身ともに鍛える「地獄の特訓」なのだ、と言います。

合宿が始まると、予告通りOBたちによって徹底的にしごかれる部員たち。しかし怒鳴られているうちに、財前はいつの間にか自分の中に「億単位のお金を動かしていることに対する奢りの気持ち」が芽生えていたことに気づくのでした。

今回参加したOBの中に、長老の加藤さんがいました。80歳を超えている加藤さんは、戦時中の投資部を守り抜いた“功労者”の1人です。財前が「戦争中の投資は大変ではありませんでしたか?」と聞くと、なんと「戦争中は、株は儲かった」のだと話します。加藤さんは「戦争中でも株価が下がらなかった一番の要因は、国が株を買い支えていたからだ」と、そのカラクリを明かすのでした。

「市場の歪みは、いつか必ず是正される」

『インベスターZ』によると、「日本の株式市場は、あの東京大空襲があった後でも開いていた」とあります。万一、株価が下がれば国民が不安になり、真実に気づくのではないかと恐れた政府筋が、株価を死守していたからだ、と言うのです。

当時の日本の戦局が厳しいことは、すでにいろいろなところに表れていました。兵士が足りないために、学徒出陣と言って、ついには未来ある学生までもが戦争に駆り出されました。生活物資は足りず、子どもは親と引き離され、田舎に疎開させられました。確かに、新聞は「敵機撃滅」の記事で埋め尽くされ、株価も上がっていたものの、危機が迫っているというサインは隠しようがなかったのです。

現在、日本の株式市場では日銀の存在感が増しています。ブルームバーグの報道(2018年9月11日付ウェブ版)によれば、日銀は2013年の異次元緩和の開始後、ETF(上場投資信託)の買入額を年間約1兆円に拡大。2016年7月には約6兆円に増額し、3年余りで株価が約6割上昇した、とあります。日本のETF市場シェアの75%を日銀が占めるという、いびつな構造が問題になっています。戦前の日本のように、再び私たちがこのツケを払う時がくるのでしょうか?

©三田紀房/コルク

人は相場が上がっているのを見ると便乗したくなる

市場である資産の価格が上昇すると、それに釣られて購入する人が必ず一定数、現れます。もともと「相場が上がっていると買いたくなる」のが人間です。人の持つこの習性は、これまでしばしば市場の価格操作に悪用されてきました。

これが、規模が大きい株式市場などの場合だと、参加者が多いために、かなり大量の資金を投入しなければ、価格操作を行うのは難しいでしょう。けれど、例えば規模の小さい仮想通貨市場などであれば、そこまで大きな金額を用意しなくても、価格操作をすることは比較的容易になります。参加者が少ない分、1人あたりの市場に与える影響が大きくなるからです。つい最近も、仮想通貨の中では規模の大きい、あるコインの価格が1日で2倍になったことがありました。
それがその価格で売れるかどうかは全くの別の話になりますが。

面白いことに、ある資産の価格が上がると、私が運営しているマネースクールのもとにも、それに関する問い合わせが増えます。先ほどの仮想通貨の価格が2倍になった時も、「買ったほうがいいでしょうか?」という問い合わせが何件か入りました。私は仮想通貨に関する書籍も出版しているのですが、書籍も市場の相場が上がっている時にはよく売れ、停滞している時には本の売れ行きも鈍くなります。

大事なのは、チャンスに気づけるだけの余裕を持つこと

投資の世界に限らず、勝者はいつでも少数派です。そこそこのチャンスだけを着実に拾っていく戦略もありますが、「安い時に買い、高い時に売る」というのが投資のセオリーである以上、「みんなが群がっているモノの中には(大きな)チャンスはない」ということに気づかなくてはいけません。こう言うと、おそらくたいていの人は「じゃあ、(大きな)チャンスはどこにあるのか?」と思うでしょう。

私は、そういう方に対して、「まずは余裕を持てるようになること」をオススメいたします。チャンスとは、余裕のある人のところにしかやってきません。それは言い方を変えると、「チャンスとは探すものではなく、気づくもの」だということなのです。

マンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス 第48回

俣野成敏(またの・なるとし)
30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン(→)』および『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?(→)』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」(→)』を上梓。著作累計は42万部。2012年に独立、フランチャイズ2業態5店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、『日本IFP協会公認マネースクール(IMS)』を共催。ビジネス誌の掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』1位に2年連続で選出されている。一般社団法人日本IFP協会金融教育研究室顧問。

俣野成敏 公式サイト

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