“誰でも手に入る情報”を鵜呑みにした人の末路とは?ーーマンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー(→)。今回は、三田紀房先生の『インベスターZ』です。

『インベスターZ』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい奥深い一言をピックアップして解説します。

©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「目減り分を取り返そうとして買ったのが、雑誌やウェブに出ているおすすめの人気株…」

(『インベスターZ』第7巻credit.53より)

大人気マンガの『インベスターZ』より。創立130年の超進学校・道塾学園にトップで入学した主人公・財前孝史は、各学年の成績トップで構成される秘密の部活「投資部」に入部します。そこでは学校の資産3000億円を6名で運用し、年8%以上の利回りを上げることによって学費を無料にする、という極秘の任務が課されているのでした。

「投資でミスをしない」究極の投資法とは?

道塾学園を創設した藤田家初代当主の玄孫(やしゃご)・美雪は女子中学生。9歳にして株を始め、現在は個人資産2000万円を運用している投資家です。密かに道塾学園の投資部をライバル視している美雪は、自分も級友の町田と久保田の2人を誘って女子投資部を結成します。美雪の指導のもとで、それぞれ自己資金10万円から始め、まずは順調な滑り出しを見せます。

最初の1ヶ月ほどは調子よく上昇を続けていた株価ですが、その後は下げに転じます。慌てた2人は長期投資用の株を売ってしまい、そのお金で雑誌やウェブの有名投資家が勧めている株に買い直します。しかし結局、それも値下がりし、ほぼ元金に戻ってしまいました。がっかりする2人に、美雪は「初めてチャレンジしたことで良い結果が出ないのは当たり前」だと諭します。

町田が「今までミスをしたことはないの?」と聞くと、「ない」と即答する美雪。「もちろん、損失は山のようにある。けれどその損失は、失敗ではない」のだ、と。「なぜなら、私はバフェットさまの言う通りに売買しているから」だと言う美雪。彼女は9歳の時に投資家のウォーレン・バフェット氏の本を読み、以来、心の師としてその教えを守り、資産を増やしてきたのでした。

女子投資部の部員が投資で失敗した理由

結成した女子投資部ですが、早くも試練が訪れます。どんな銘柄を購入しようとも、終始右肩上がりで価格が上がっていくものなどありません。需要と供給のバランスの中で、価格は絶えず上下を繰り返しているのが普通です。

ここで、女子投資部の部員たちが失敗した理由は3つ考えられます。まず第1に、目先の上下に振り回されて、長期投資用の株を売ってしまったこと。物語の中でも「嫁入り道具株」と言っているように、長期投資は最低でも5年10年持つのが当たり前です。それをたった1ヶ月で売ってしまったのですから、軽率だったと言わざるを得ません。

第2に、その行動が“投資”というよりは“投機”に近かったこと。購入した会社の価値が上がるかどうかではなく、目の前の株価が上がるかどうかしか眼中にない、短絡的な考え方です。

そして第3に、雑誌やウェブの情報を鵜呑みにしてしまったこと。ほとんど無料に近い情報をそのまま信じてしまうことほど、危険なことはありません。

©三田紀房/コルク

情報は、取得する方法によって用途が異なる

もしかしたら、「無料の情報ではないですよ?ちゃんと本代を支払いましたから」とおっしゃる方もいるかもしれません。確かにその通りなのですが、「何十倍と儲かる投資の情報が、数百円の雑誌の中に書かれている」というのは、そもそも考えにくいのではないでしょうか。

通常、雑誌というのは取材した内容などを文章にまとめて、出版するまでに時間がかかります。ですからその間に、情報が古くなってしまうのは否めません。他にもう1つ、雑誌等に掲載されている投資情報のデメリットとして、「オーダーメイドではない」ことが挙げられます。要は一般論が書かれているのであって、必ずしもその情報がすべての人にマッチするわけではない、ということです。

紙媒体が優れているのは、「手元に置いて何度も見返せること」です。ですから、優れた投資家の考え方や情報の見方、応用の効く投資手法などを学ぶには適しているでしょう。けれど、「今のオススメ銘柄はこれだ」といった鮮度の高い情報を知るには、不特定の人向けに書かれた公の媒体では不向きなのです。

自己流に陥らないためには、他人からのアドバイスが必須の要素

実際は、その人の資産状況や家族構成、目指す未来などによって、「何に投資をするのがもっとも相応しいのか?」というのは異なります。もともと投資をする際、すべての判断と責任は自分にあるとはいえ、有益な情報もアドバイスもないままに、正しい判断ができる人というのは限られているのが実情です。

投資に限らず、どんなことでも成功するには勉強することが不可欠です。その際、女子投資部でいう美雪のような存在がいれば、万一、道を間違えても早めの軌道修正が可能でしょう。つまりコミュニティに所属するなり、師匠を見つけるなりして、フィードバックをもらえる環境があったほうが望ましい、ということです。

マンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス 第42回

俣野成敏(またの・なるとし)
30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン(→)』および『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?(→)』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」(→)』を上梓。著作累計は42万部。2012年に独立、フランチャイズ2業態5店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、『日本IFP協会公認マネースクール(IMS)』を共催。ビジネス誌の掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』1位に2年連続で選出されている。一般社団法人日本IFP協会金融教育研究室顧問。

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