外資系企業で活躍できる人の「3つの条件」とは?

好景気を反映して、転職マーケットは活況。売り手市場が続いています。
これは日本企業だけでなく、外資系企業も同様。今まで以上に採用の門戸を広げているので、外資系への転職を検討している人もいることでしょう。ただ、中には「高い英語力が必要では?」「成果が出ないとすぐにクビになるのでは?」などと二の足を踏んでいる人もいるようです。

長年外資系企業の人事として活躍し、現在はグローバル人材の育成を手がける株式会社AT Globe 代表取締役の鈴木美加子さんは「皆さんが抱いている外資系企業に対する不安は、大半は誤解」と指摘します。では、実際のところはどうなのか、現状の動向を踏まえて詳しく解説いただきました。

株式会社AT Globe 代表取締役社長 鈴木美加子さん

大学時代から独学で英語を学び、22歳で英検1級に合格。卒業後は日本GEに入社し人事部に所属。その後、製薬会社、証券会社、IT企業など外資系企業数社で人事および人事責任者を務め、2014年にAT Globeを設立。現在は、現在はグローバル人材を育成する「世人塾」運営のほか、英国発のアセスメントツール「Lumina」を用いた個別キャリア相談、転職支援などを行っている。

「高い英語力」を求めない部署も実は多い

外資では高い英語力が求めれるのでは…と転職に二の足を踏んでいる人が多いようですが、必ずしもそうとは言えません。もちろん、英語力があるに越したことはありませんが、ポジションによって大きく変わります。

例えば、マネジメント層になればTOEIC800以上、スタッフ職では人事や経理、法務などのバックオフィス部門は700以上を求める企業が多いようです。ただ、外資が特に採用を強化している営業職、エンジニア職においては、英語力があまり問われないケースが増えています。売り手市場の折、職種経験+英語力を求めると応募者がガクンと減ってしまうからです。

もちろん、部門長が外国人である可能性は高く、上司とのコミュニケーションや社内メールなどでは英語を使うことがあるでしょうが、ほとんどの企業が「営業先は日本企業」であり、営業職にそこまで高い英語力は求めていません。エンジニアは、プロジェクトが世界にまたがるケースが多いので英語力があるほうがベターではありますが、意欲とポテンシャルがあればOKとする企業が多いようです。

このような状況下、もしもTOEIC600程度の英語力を持っていれば大いに歓迎されるので、外資における転職チャンスはぐんと広がるでしょう。

皆さんにぜひお伝えしたいのは、「完璧な英語を求めなくてもいい」ということ。日本人は、「文法を守らないと」「間違った表現をしたら恥ずかしい」という意識が強いようですが、“日本で働く日本人”に完璧な英語は求めていません。知っている単語を並べてでも、意欲的にコミュニケーションをとって自分の意見を伝えようとする姿勢が重要です。

外資においては「目を見て話す」ことも大切。日本では会話の時、相手の目をあまり見すぎないほうがいいとされていますが、外資では別。アイコンタクトは必須と心得ましょう。

「即クビ」は誤解!現状改善プログラムでサポートも

「外資系企業では、ある日突然クビを言い渡され、オフィスに入ることさえ許されない」というイメージが根強いようですが、誤解です。まったくのゼロとは言いませんが、99%の外資において当てはまりません

たしかに、外資系企業において終身雇用は保証されていませんが、これは今や日本企業も同じ。そして、著しく成果が上がらないなど何か問題があったとしても、すぐに解雇するのではなく、改善プログラムを設け、人事主導で現状を変えるサポートをしています。

例えば、「3カ月後」などゴールを決めて、この間に何に取り組み、何をどれぐらい改善するか目標を細かく設定。その後は定期的に面談を行って進捗を確認し、その都度アドバイスを行います。クビが怖くて外資への転職を敬遠している人が一定数いるようですが、安心して臨んでいただきたいですね。

「給与水準が高い」は事実だが、成果重視である点に留意

「外資は給与水準が高い」とよく言われますが、これはおおよそ当たっています。メーカーをはじめ有形商品を扱う会社やサービス業などはやや低く、無形サービスを扱うコンサルティング会社やIT、金融は高め…など、業界によって多少の差はありますが、給与水準自体はおしなべて高い傾向にあります。

本国の給与水準自体が高い、多少なりとも英語力が問われることに対するプレミアムなど、給与水準が高い理由はさまざまありますが、「徹底した実力主義・成果主義」である点が最も大きく影響しています。

年齢や経験、性別に関係なく、成果を出した分その対価として賃金が支払われたり、昇進・昇格したりするのが外資。若手であっても実力を発揮して高収入を得ている人はたくさんいますし、マネジメント職に就いている人も大勢います。私が以前勤めていた外資系証券では、30歳で外為部門の責任者を任され、1億円超の年収だった人がいたほどです。

なお、成果を上げるまでの「プロセス」は一切評価されません。日本企業はプロセスも重視する傾向にありますが、外資においてはいくら「これだけ頑張った!努力した!」と主張しても、結果が伴っていなければ認められません

そして、成果を出して高い収入を得たとしても、それをずっと維持できるわけではありません。成果次第で翌年にはがくっと収入が落ちたり、降格したりする可能性もあります。良くも悪くも変動があることは、心に留めておいてほしいですね。

「ジョブホッパーが多い」は極端な表現。長く働く人も多い

「外資で働く人は、短いスパンでどんどん会社を移りステップアップしている」というイメージも強いようですが、高い実績を持っていても転職回数が多すぎる人には、外資であってもあまりいい印象は持ちません。この点は、あまり日本企業と変わらないと思います。

目安としているのは「3年」。転職回数が多く、かつ1社当たりの勤務年数が3年以下だと、マイナス印象を持つ企業が多いようです。1年目に仕事を覚え、2年目に試しながらブラッシュアップし、3年目に自分のやり方で高い成果を上げられると捉えているため、この「3年サイクル」を1回も回せていない人は、たとえ高い実績を上げていたとしても「協調性が低いなど何か別の問題があるのでは?」「忍耐力に欠けるのでは?」などと判断します。

「1社で長く働いている人は少ない」という印象もあるようですが、決してそんなことはありません。定年という概念がないため、このように思われるのかもしれませんが、10年、20年と長く腰を据えて働いている方もたくさんいます。気になる人は、面接時などに応募企業に確認するといいでしょう。

「外資系企業で活躍できる人」3つの条件とは?

ここまでの説明で「外資系企業はそこまでハードルが高くない」と感じていただけたかと思います。ただ、外資系企業は日本企業とは異なる文化があり、特有の考え方があります。ここでは外資系に向いている人、活躍できる人の特徴をご紹介しましょう。

【1】必要以上に謙遜せず、堂々とアピールできる

日本には「謙遜の美徳」がありますが、外資にはそんな価値観は存在しません。「能ある鷹」なら「爪を隠す」のではなく、しっかりとその爪を見せないと評価されません

以前、私がキャリアカウンセリングを行った方に、英語ができるかどうかを聞いたところ、あいまいな答えが返ってきたので「できない」と判断しました。しかし、よくよく聞いてみると、何とTOEICスコア970とのこと。びっくりして、即「転職先の候補から外資を外しましょう」とお伝えしました。

英語力を聞かれたら「TOEICは970です。ビジネス会話には困りません」とハッキリ伝えられる人でないと、入社してから様々な場面で損をする人材になるからです。

自身のスキルと意欲を最大限アピールすることで、100ある実力を120、150にみせるぐらいの気概が、外資においては大切なのです。

【2】想定外のことにも動じない

日本企業は長期的な視野で事業戦略を練り、利益目標を立てますが、外資は年単位、四半期単位など短いスパンで戦略を見直します。その背景は、外資は株主重視の姿勢が強く、利益追求→株主還元の姿勢を第一に置く企業が多いため。事業計画の見直しや、手がけている事業からの撤退など、決断のスピードも速いのが特徴です。

そのため、外資においては利益次第で会社の方針が急に変わり、今手がけている仕事が根底から覆されることがたびたびあります。私がある米系IT企業で人事を務めていたとき、第一四半期は大量採用が命題だったのに、第二四半期に入った途端に「採用は一切ストップ、凍結」、第三四半期に再び採用開始という指示が下ったことがあります。人材エージェントを多数巻き込んで採用活動を進めていたので、対応に苦労させられました。

こういうとき、すぐに新しい方針に沿って新しい業務に取り組めるタイプと、やるべきことを見失い感情的になるタイプがいますが、外資に向いているのは前者。「思いもよらないことが起こり、方針ががらりと変わるのは外資の宿命」と冷静に捉え、すぐに頭を切り替えて動ける人でないと、苦労するかもしれません。

【3】「キャリアは自分で作る」という考えを持っている

日本企業は、一から人材を育てようとするところが多く、ある程度成長しても「こういう研修を受けてはどうか」と手取り足取り面倒を見て導いてくれるようですが、外資にはそういう手厚い環境はほぼありません。もちろん研修や教育制度はありますが、個人個人が「自分のキャリアに必要なもの」を、自分の意志で習得しようという姿勢が大切です。

仕事も同様。やりたいプロジェクトがあれば積極的に手を上げ、「自分のキャリアに必要な経験を自ら取りに行く」という能動的な姿勢が必要です。

以前、ある日本企業で女性管理職研修を行ったとき、参加者同士が「結婚して共働きだから、私の稼ぎは保険みたいなもの」と話しているのを聞いて心底驚きました。ここが外資ならば、「会社が傾いたときは、私からクビにしてください」と言っているのと同じ。終身雇用が保証されていると錯覚できる大手企業の中だから、このようなことが言えるのでしょう。

こういう環境をありがたいと思う人もいるのでしょうが、スキルやキャリアの向上は期待薄ではないでしょうか?外資ならではのほどよい緊張感は、スキルアップ、キャリアアップのために必要だと私は思います。

私は最初からずっと、外資系企業で働いてきました。1年目の新人時代に全社を巻き込んだプロジェクトを任されるなど、若手の頃からどんどんチャンスを与えられ、ストレッチ目標に一生懸命取り組む中で成長することができました。

外資は年齢も、性別も一切関係ないので、女性もイキイキ活躍していますし、出産を経て復帰している人も大勢います。人事という管理部門にいたこともあり、今までの職業人生において、社内で性差を感じたことは一度 もありません。

自分の力でキャリアを切り開きたい、やりがいを持ってイキイキ働きたいと考えている人は、ぜひ「外資で働く」も選択肢に加えてほしいですね。

取材・文:伊藤理子 撮影:刑部友康

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