偏差値30台で問題児…が、ケンブリッジ大学院卒のベストセラー作家に。彼の人生を変えた「群れない」生き方とは?

著書『「すぐやる人」と「やれない人」の習慣』が20万部超のベストセラー、塚本亮さん。ケンブリッジ大学大学院 修士課程を修了。現在はグローバルリーダーを多数育成し、結果を出されています。

華やかに成功しているように見える塚本さんですが、高校時代は停学処分にもなった問題児だったそう。これまでに、どんな考え方や生き方の変化があったのでしょうか?実践されていた「組織の中で自立し、結果を出す方法」に迫ります。

プロフィール

塚本 亮(つかもと・りょう)氏

1984年、京都生まれ。ケンブリッジ大学大学院 修士課程修了。偏差値30台、退学寸前の問題児から一念発起して、同志社大学経済学部に現役合格。その後ケンブリッジ大学で心理学を学び、帰国後、京都にてグローバルリーダー育成を専門として「ジーエルアカデミア」を設立。世界最大規模の英語能力試験IELTS(アイエルツ)の教育指導と、心理学に基づいた指導法が注目され、国内外から指導依頼が殺到。学生から社会人までのべ100人以上の日本人をケンブリッジ大学、ロンドン大学をはじめとする海外のトップ大学・大学院に合格させている。

また、映画『マイケル・ジャクソンTHIS IS IT』のディレクター兼振付師であるトラヴィス・ペインをはじめ、世界的に活躍する著名人の通訳を務めるなど、グローバルに活躍中。

「群れない」という考えに行きつくきっかけは、
高校時代の“自宅謹慎”

―世界最大規模の英語能力試験IELTS(アイエルツ)の教育指導で日本での先駆的な役割を担うだけでなく、執筆活動や通訳など多方面でご活躍されている塚本さんですが、もともとはかなりの問題児だったそうですね。

小・中学校と全く勉強ができなくて偏差値は30台、得意なこともなく、当時は劣等感しかありませんでした。高校も進学校ではなく、周りはやんちゃな人たちばっかり。そこで出会った仲間たちと一緒に悪いことをして、自分の居場所を作っていたんです。

そして高1の冬、学校で大きなケンカをする事件を起こし、それが新聞やテレビでも大々的に報道されてしまったんです。引き金となったのは私ということで、停学処分となり、2週間の自宅謹慎となってしまいました。

―大変な事件になってしまったんですね…。その当時の心境は?

さすがに「このままではヤバいな」と思い、自分を見つめ直そうと思いました。そこで親に「本でも読んでみたら?」と薦められて。本屋さんに行ったんです。高校生なので、参考書を買うべきところなのでしょうが、頭に入ってこないのもわかっていて(笑)。父が経営者をしていた影響もあり、なんとなく手に取ってみたのが松下幸之助さんや稲盛和夫さんなど、経営者の本でした。

その中にあったスティーブン・R・コヴィー氏の「7つの習慣」を読んだときです。自分の中にガツンと入ってくるのを感じました。そこには、【人は「依存」⇒「自立」⇒「相互依存」への成長プロセスを歩む。自立した個人同士が協働する(相互依存)ことでしか、本当のシナジーは生み出せない】と書いてあって、そこでハッと気づいたんです。「今の自分とつるんでいる仲間の関係は、まさに“依存”ではないか?」と。同時に、自分が見てきた世界の狭さも痛感しました。

ほかにも経営者の本を読んで、「成功者でも意外とみんな道を外れているな」と、色んな生き方を知ったことも大きく、まさに人生の転機ともいえる謹慎期間でした。

謹慎以降は今までの友人たちと縁を切りました。周りに流されて、仲間の中だけで、自分の存在価値を見出そうともがいていたのですが、そういった考えを一切捨てることにしたんです。まずは「自立」を目指そうと。そこで初めて「群れない」という感覚を意識するようになりました。

依存から離れ、「自立」するために

―「自立」するためには、人との物理的に距離を置くことで確立されるのでしょうか。

いえ、それだけでは確立されないと思います。結局、仲間と縁を切っても、依存を断ち切ったという実感にはつながりませんでした。自分に自信がないままだったんです。だから他人とは違う自分の「強み」を伸ばして結果を残したいと思いました。

そこで「目標を作ろう。まずは勉強を頑張って、大学受験しよう。」と決めたんです。そもそも一般受験して同志社大学に現役で大学に受かった人が7、8年もいない高校なので、それが他人とは違う強みにつながると信じてました。もちろん、周囲の人間からは笑われましたね。先生も受かるわけがないと。

でも、周りから「無理だ無理だ」と言われると、かえってそれがモチベーションになりました。それに経営者の本を読み続けていると、みんな逆境を乗り越えて成功しているので、自分にとっても「チャンスだ」と思っていました(笑) いい意味で勘違いをしたまま勉強を続けることができましたね。

群れずに自分を確立し、「相互依存」にいたるコツ

―「群れない」で生きるという考えは、学生時代に実践された“周りへの依存を断ち切り、自立すること”がベースになっているのですね。
ただ、実際社会に出ると、“会社”という枠にはまっていると閉塞感を覚えながら、働いている人たちも多いのではと思います。そういった中で「群れない」生き方を実践するのは難しいのでは?

私は起業しているので確かに会社に属する人よりも、自立しているように見えるのかもしれません。しかし、会社という枠があったとしても「群れない」で生きることは出来ると思うし、むしろ会社員ほど、会社や所属している組織に対し、相互依存であるべきだと考えます。

例えば、会社で掲げる目標や信念に対し、ただ従っているようだと依存ということになりますが、少しでも会社の戦略や経営方針に違和感を覚えることができるのって自立できているからだと思うんです。さらに社員として貢献を目指し実績が伴ってくれば、会社にとっては有益な存在になる。自分に自信をつけることもできるし、発言にも信ぴょう性が増し、より良好な相互依存の関係を保てます。

だから、決して「群れない」ために一人でいろ!とか、偉い人に楯突けばいい!とか、転職しろ!とか、そういうことではないですね。

今はSNSでいつでも誰とでもつながっていられますし、若い人ほど周りとの調和を大切にしているように感じます。しかし、環境に流されるのではなく、一人になって自分の内なる声に耳を傾けて何がやってみたいことなのかを考えてみる時間、自分の武器(強み)を磨くための「群れない時間」を持つことが大切だと思っています。

―なるほど。でも、結局会社に長く勤めるほど、周りに感化され、気がついたら流されがちになりそうです。自立心を保つのは、難しくなっていきませんか?会社と相互依存の関係と保つにはどうしたら良いのでしょう。

常に「外の世界」に目を向けることが大切だと思います。私はもっと外の世界と多くの価値観を知りたいという思いで、留学しました。

もともと高校のときにお世話になった先生がカナダ人で、面白い考え方をたくさん知っていたので、いつか英語を学んでみたいと漠然と考えていたんです。そして、大学生になってから、さらに強みを増やしたいという気持ちに加え、興味を持った心理学を極めたいという気持ちも重なったんですね。ちょうど、就職活動も始まっている中で、周りにはミーハーだと言われたけど、関係ないと思っていました。むしろこのまま周りと同じように就職するのがいいのか?と疑問を持ったのが行動のきっかけだったんです。

若い人と話していると「興味のあるものが見つからない」とたまに言われます。そんなとき、少しでもいいからかじってみればいいのにって思います。やる前にいろんなこと考えすぎていて、もったいないです。やりたいかやりたくないかなんてやってみないとわからないじゃないですか。外に目を向けながら、好奇心をくすぐるものには、まず少しでもいいからチャレンジしてみる。うまくいったらそれを極められるところまで極めればいいし、うまくいかなくったって、すぐに次に移ればいい。これを繰り返せば、少しずつですが自分の強みも増え、価値観が広がるので、自立した自分でいられる。周りと相互依存の関係を保つ手立てになるのではと思います。

―組織の中でも、自立するための要素は「外の世界に常に目を向けること」、「興味のあるものを極めること」。でも会社で発生するタスクって必ずしも「興味のあること」ばかりではないですよね?それを探しながら仕事を続けるのことに、虚無感を覚えそうなのですが、どうしたら払拭できるのでしょうか。

仕事においてモチベーションを高めるならば、これをやったら実績につながるのでは?という意識も大切です。会社で実績を残すことができれば、仮にその会社を巣立った場合にも次につながる何かを得ることができるはずなのです。実績を意識することで自信をつけ、強みを見つけていく上でだけでなく、次につながるための人間関係も良好にします。

留学先はイギリスのケンブリッジ大学の大学院でしたが、MBAの取得でいらしている日本人が多かったんです。当時の私よりもだいぶ年上で、しかも会社から送り込まれた優秀なビジネスパーソンばかり。それに、みんな自分の武器(強み)を持っていて自立の精神が強いと感じました。大学院卒業後、独立したり、ほかの会社に行ったりしても、前職のつながりで仕事が舞い込んでくるというほうがとても多かったです。私は卒業して、すぐ起業したのでそういった土台がなく、うらやましく思いましたね。

―そういった自立心を養うには、日々どういったことを心がけているのでしょうか。

私は、中長期的な目標を基本的に持っていないんです。それよりも、目の前の短期的な目標を見つけて実践するというのを、とにかくたくさんしてきました。高校の時から「何も強みがない」と思っていたので、そこは誰よりもやってきたと思っています。うまくいったら成功体験になり、自信につなげていきました。

―一般的には「年末などに、翌年の長期目標を手帳に書いたりするのがいい」と勧める本もあったりしますが。

長期目標を逆算すると「意味づけ」になってしまいます。意味づけを考えすぎるとクリエイティブな発想は出てこないし、動けなくなってしまう。時代の変化が早い昨今だからこそ、長期的な目標に執着するよりもその変化に応じて柔軟に生きたいと思っていますね。だから、逆算することよりも、目の前のことを楽しむようにしています。

短期的な目標を持つのは仕事でも、プライベートで興味を持ったものにしても、なんでもそうです。上手くいかなければ別に次の目標を立てればいい。最長で3カ月くらい。
手数が多いので、当然失敗も増えますが、そうすると直観力みたいなものも身についてくる。例えば「こっちは危険なにおいがする」などのセンスも磨かれます。これは本を読んだだけでは体得できません。トライ&エラーで体験していくことで、腑に落ちてきます。まずはやってみる。

また、一見プライベートで関係がないなと思ったことでも、強みとして蓄えておくと何かのきっかけで仕事に活きるということもあります。私の場合は、もともとサッカーが好きでイギリス留学時代にサッカーに関する英語を趣味で覚えていたんです。おかげでたまたまJリーグのチームで研修する機会があったとき、とても活きたという経験もあります。

―これから自立の道を歩もうとしている人にアドバイスをお願いします。

「群れない」精神を養うために、強みを増やしていくことで、自分の世界を広げ、先の未来も広げてくことになり、結果的になりたい姿に近づくことができるのではと思います。
そして、自分の置かれた環境の中で目立つ結果を残す。一つでもいいのでピラミッドの頂点を残すと、人の記憶に残るんです。

組織の中で自立し、相互依存して組織と自分自身を高め合うことで、シナジーを起こし、より大きな結果を残すことになりますよ。

インタビュー・文:倉島 麻帆  撮影:平山 諭

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